『信長の野望・新生』開発者インタビュー! AI、外交、戦略、内政…、ゲームシステムの意図を伺った

うどん
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 コーエーテクモゲームスより、本日7月21日発売の歴史シミュレーションゲーム最新作『信長の野望・新生』。今回は発売記念ということで、『新生』の魅力や気になる点を開発現場の中心であった小山氏と劉氏にさまざまなお話しを伺ってきました。

 今回お話を聞いた2人は、開発プロデューサーを務める小山宏行(コヤマ ヒロユキ)氏と、ディレクター兼リードプランナーを務める劉迪(リュウ ミチ)氏。小山氏は開発全体のとりまとめを担当し、劉氏は現場監督といったポジションで、おなじみのプロデューサー・小笠原賢一(オガサワラ ケンイチ)氏はプロモーションをはじめ全般を統括する役どころとなる。

  • ▲ディレクター兼リードプランナー・劉迪氏(左)と、開発プロデューサー・小山宏行氏(右)氏

 若手の開発者も多く取り入れ、新しい風で開発に臨んだという『新生』。“君臣一体”を謳う本作の家臣AIや、こだわりのゲームバランスなど、その狙いや意図とは……?

――改めて『新生』の一番のポイントはどこでしょうか?

小山:武将たちがまるで本当に生きているような感じを受けるAIと、それをとりまとめるプレイヤー大名との関係性で、家臣と一体となって天下統一に向かう“君臣一体”を目指しました。前作以前の作品での家臣たちは、基本的には駒に過ぎず、自分から能動的に何かをやることはあまりありませんでした。今回は、自分たちからも主君の天下統一を助けようと積極的に動くようになりました。そこが本作の一番の特徴でもあり魅力だと考えます。

――確かに家臣たちがかなり積極的に意見を具申してきますね。勝手に出撃したりもするのに驚きましたが、敵勢力に対して「あいつら許せねえ!」と生き生き飛びだすので不思議と許せる感じがありました。

劉:具申にせよ出撃にせよ、家臣たちの行動にはそれぞれ理由があります。「ここでこうすればいいよね」と、しっかり理由を見せるのは今回とくに注意した部分で、開発チームでは“動機”と呼んでいました。その動機をしっかり見せないと、なんでこのタイミングでこんなこと言い出すの? というストレスになってしまいますから。その上で、大名であるプレイヤーには「そういう理由ならわかるけど、今回はどうしようか」と、具申を実行するかどうかの判断を委ねる形を目指しました。

  • ▲内容に注目してほしい各武将の発言。動機づけ、理由づけがしっかりされており、AI家臣たちが何を考えて献策してきたかがはっきりわかる。
  • ▲攻略目標を設定したときは、とくに集中的に対象への有効な策を用意してくれる!

――戦略面では一見『創造』のように見えて、部隊を集めて決戦に臨む『大志』的な戦略もあり、メリハリのある戦争が展開されます。制作にあたって、とくに意識した部分はどこでしょうか?

劉:まず、しっかり内政してしっかり戦に臨む、当たり前のことですがそこをちゃんと表現しようというのが私の中にありました。内政を雑にやってもどうにかなっちゃう、適当に出陣してもパワープレイでどうにかなっちゃう、そういう雑なゲームには絶対したくなくて、バランス取りは慎重にやらせていただきました。

――内政を適当にやっていると、とくに部隊の腰兵糧が足りなくなりますね……。

劉:そうですね、腰兵糧の限界から簡単には遠征できません。途中の郡を制圧する時間、敵味方の能力差による城を落とす時間など、いろいろと計算して調整しています。例えば城下方針を“進軍”にして兵糧の消費を抑えるとか、内政の段階から先の戦略を構築して遊んでほしかった。おそらく、みなさん最初はとにかく部隊を強くするような政策や施設を取りたくなると思うのですが、それ一辺倒だと短期戦ではよくても、長期戦はどんどん苦しくなるはずです。金銭収入的に政策も吟味しなければならないですし、それぞれのメリットとデメリットの取捨選択ですね。

小山:私はテストプレイではよく東北の大名を触りました。城と城との距離が離れていることもあって、大きくなればなるほど遠征がどんどん苦しくなっていくんです。これが織田信長であっても、尾張や畿内のうちは問題なくてもそれ以上の遠征になればやっぱり苦しくなるでしょう。昔の作品だと、勢力がある程度大きくなるとどんどん遠くまで攻めていけて、勝利確定が早かったと思います。『新生』では、いろいろと工夫しないと順風満帆にそのまま領土拡大とはならないはずです。

  • ▲腰兵糧の管理と、いかに合戦に持ち込むかがポイントとなった『新生』。近場の戦いではそれほど困らないが、違う地方への遠征となるとかなり大変!

――兵糧的にギリギリの戦いになることも多く、その葛藤は強く感じました。でも、こういう苦しさは嫌がる人もいると思います。そのあたりのバランスはどう意識されましたか?

劉:私は放っておくと、どんどんギリギリになる調整にしたくなってしまいまして……(笑)。そのため、スタッフ内で意見を確認しあいながら調整していきました。雑にやってると厳しくなるバランスではあるのですが、初めての人でもこれくらいならいけるだろう……というくらいには落ち着いていると思います。

――兵糧的な厳しさの話ですが、基本的に腰兵糧は出撃した自分の城から持ち出したものだけになります。腰兵糧の現地調達や、味方の城での補給を入れなかったのは、あえてのことなのでしょうか?

小山:そうですね。あえてその要素は入れていません。開発内でも議論したところで、歴史に詳しい方やシリーズ経験者であれば、当然そういう疑問も出ると思います。でもそれをやってしまうと、そもそも腰兵糧の準備の重要さが失われてしまって、今とはまったく異なるバランスになっていたと思います。なので、エンターテイメントとしてのバランスを重視して、あえて入れていない形となりました。

――じっくり内政する作りになっていますが、戦に巻き込まれるとあっという間に荒廃し、積み立ててきた城の内政が壊れてしまいますよね。最初はそれに困りましたが、 “威風”を利用すれば無傷で郡や城が手に入るのに気づいてからは、合戦の勝利がものすごく爽快感のあるものになりました。

劉:そこは狙って作ったバランスですね。無傷で土地を手に入れたいという動機づけが、大軍と大軍をぶつける合戦を引き起こす形になっています。合戦をやるにしても、集合中の敵部隊を各個撃破すれば勝利は簡単ですが威風は弱くなってしまいます。しかし集合した敵をまとめて叩けば難易度は上がりますが威風は強い。そこも戦略を立てる部分で、どんな合戦にするかの取捨選択をしていただければと思います。

  • ▲劣勢でも大国相手であれば狙っていきたい威風(強)!
  • ▲時間のかかる領地内政を、戦争による荒廃から守るための威風。この組み合わせがゲームを熱くさせている……!

――自分が威風を狙って軍勢をまとめて出すように、敵CPUも“臨戦”を使って部隊をまとめて出すようになりましたね。気が付くと隣の大国が自分に向かって臨戦状態に入っていて、真っ赤な土地にゾッとすることがあります。

劉:そこの表現は「やばいな……」というのを感じてほしくて作った部分です。CPUも今回はとにかく兵の少ない城を狙って兵をどんどん出す形ではなく、ちゃんと作戦を立てて、複数のルートで一気に攻め込むような戦略を取ります。

――ちょっと話が変わりますが、自分で作った軍団に対して攻略指示を出してもまったく動いてくれないことがあります。ちょっと消極的ではないかと思いましたが……。

劉:たぶんそれは、その軍団だけでは勝てないという判断で動かないのだと思います。今回気をつけたことの1つは、勝ち目のない戦いを無闇にやらないことです。ちゃんと勝算がないと攻めませんし、勝算があればどんどん攻めます。その例では、たぶん攻略対象に対して本隊側からも攻めるなど支援することで軍団が動き出すはずです。

――ちなみにCPUの思考に特別な方向性はあるのでしょうか? 例えば織田信長であれば上洛にこだわるような。

小山:そのような大名もいます。この大名ならこんな感じで動いて欲しいよね、というのはやっぱり開発チームにもあって、有名な大名は個別に設定しています。

―気がつくと北条家がいつも超巨大化してるんですが……。

小山:『創造』でも『大志』でもそうだったのですが、北条家がどうしても強くなっちゃうのは開発チーム内でも話題になっています。国は豊かで、武将も優秀で、周りは弱い。どうしても強くなる環境ですよね。今回もやっぱり強くて堅い。史実の北条は関東の守りを固めたということもあって、序盤は関東まで……と動きを調整していますが、それでも時間が進めば攻めるようになるので、気が付くと大きくなってます(笑)。

劉:戦略の方向性ではないのですが、効率による差もあります。この大名は効率的にものを進めるけど、こっちは無駄の多い効率の悪い行動を取る……という差もあります。ちなみに、新武将作成に「AIレベル」の項目があります。S、A、B、Cに振り分けられるのですが、これはSほどより効率のよい行動をとると考えていただければと。

  • ▲終盤の大国相手にギエエエエ! となる瞬間。画面が真っ赤! 兵力の逐次投入ではなく、一気に物量をぶち込んでくるのだ……。しかも本体ルートとは別に、陽動作戦のような別方面部隊も同時に出してくることが多く、終盤の大国との戦いは熾烈なものとなる。
  • ▲ちなみに合戦が『創造』『大志』とは大きく異なるルート型なのは、全国地図の行軍となるべく同じ形にした方が、スムーズにプレイを移行できるからとのこと。それとフリーフィールドも開発初期段階では試したそうだが、部隊が何を行おうとしているのかわかりにくかったとか……。

――本作の停戦要素である“仲介”は、弱小勢力にとってありがたいのですが、逆に敵の弱小勢力に使われるとやっかいですね。攻めようとしても仲介で追い返されることがあるのでお互い様と思いつつも、やられると理不尽さを感じてしまいました。

小山:仲介は、我々も調整をどうしようか悩んでいた部分です。とくにCPUが頻繁に使うと微妙な印象を受けてしまいますよね。

劉:ただバランスとして、同盟維持をしながら仲介のためのポイント(信用)もちゃんと維持するのはシビアにはなっています。従属や婚姻をすれば、そこもラクになるのですが。

――外交ポイント(信用)でCPUがズルをすることはないのですか?

劉:そこはありません。CPUもプレイヤーと同じように外交ポイントを貯めて、消費して仲介や同盟を行います。なので、仲介されても諦めずに何度も同じ勢力を攻め続け、ポイントを尽きさせるというのも選択肢です。

  • ▲実行しやすくなった従属と、弱小勢力の命綱となる仲介。外交活動は『新生』でも戦略を大きく左右する。

――『新生』の大きな特徴である知行についてですが、知行の入れ替えが早い時期からできることと、知行を取り上げることのデメリットの薄さが気になりました。

小山:それは開発チームでも議論を重ねたところです。最初は今とは違う形の、もっと史実に寄った形のシステムだったこともあります。でも、それがゲーム体験として面白いかというとまた違いました。例えば城主を石田三成、配下の領主に島左近をと思ったときそれができる、自分の好きな組み合わせを自由にできたほうがやっぱりストレスはない。ルールをガチガチにして本来遊びたいことができなくなってしまうのは、ストレスですし本末転倒な気がします。だから、今はある程度の制限を入れつつ、途中からかなり自由が利きやすいルールにしています。リアリティと面白さの交差を探って、この形にしたわけです。

  • ▲城主+領主の武将の組み合わせを、趣味的な意味でも能力を補う意味でも楽しめるのは本作の魅力のひとつ。
  • ▲城と郡の紐づけ、占領による領有権の移動に関してもやはり悩んだ部分とのこと。当初は『天道』的な争奪戦も考えていたそうだが、リアルにするほど複雑かつゲーム体験としての面白さから離れていくため、まずは今の形に落ち着いたとのこと。

――最後に、これからプレイしようという方にプレイのアドバイスをください!

劉:新しいシステムが多く、最初はいろいろ迷うことも多いと思います。まずは家臣の意見に耳を傾けてもらって、彼らの助言に沿って進めていくのがオススメです。そこから、自分が何をやりたいかをよく考えてプレイしてみてください。『新生』は闇雲なパワープレイで天下を統一できるゲームではないです。とくに政策は全部取っていくのは収入的に厳しいですし、取捨選択が必要になります。取れるから取るんじゃなくて、自分が目指している方向を考えて選んでみてください。

小山:具体的なところで言うと、最初はとくにお金に困ると思います。手持ちのお金はある程度キープしつつ城下施設の商人町を作ったり、郡開発で市の掌握を急ぐなど、とにかく意識してお金を貯めることが大事になると思います。

――ありがとうございました!

  • ▲ちなみに、編制を利用すれば1つの城から複数の部隊を出すことができる。城数の少ない弱小勢力では有用な小ネタになるので覚えておいてほしい!

『信長の野望・新生』製品概要

タイトル名:信長の野望・新生(のぶながのやぼう しんせい)
ジャンル:歴史シミュレーション
発売時期:2022年7月21日
開発:シブサワ・コウブランド
プロデューサー:小笠原賢一


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