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【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 28】シナリオでジョッキー要素を見つけると「おっ!」と思っちゃうってお話

柿ヶ瀬
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最終更新

 武豊騎手がダービーを勝つとジャパンダートダービーでも勝っていると知ってノットゥルノの単勝を買ったところ本当に勝って逆にビックリしている柿ヶ瀬です。

 さて武豊騎手と言えば、ちょっと前の『ウマ娘』のCMで、武豊騎手やクリストフ・ルメール騎手がキタサンブラックやサトノダイヤモンドを育成しているCMがありました。キタサンブラック編の武豊騎手は、これまでも『ウマ娘』ではプロモーターを務めてくれたこともあり、過去にCM出演がありましたので、そんなに驚きはありませんでしたが、サトノダイヤモンド編のクリストフ・ルメール騎手が登場したのはさすがに驚きました。しかもどちらも勝負服を着ているのも二度ビックリ。


 さて、確かにキタサンブラックと言えば武豊、サトノダイヤモンドはルメールのイメージ――競馬をやっている人間からすると当然あります。しかし実際のところ同じ馬に同じ騎手がずっと乗り続けることは意外と多くありません。

 例えばキタサンブラックは古馬になってからはずっと武豊騎手ですが、クラシック時は北村宏司騎手が主戦でしたし、サトノダイヤモンドは5歳まではずっとルメール騎手でしたが、6歳時には戸崎騎手や川田騎手、モレイラ騎手やアヴドゥラ騎手という短期騎手免許で来日した海外ジョッキーなんかも乗っています。

 乗り替わる理由はそれぞれですが、期待以上に走ったことでより実績のある騎手に依頼するようになったり、怪我や騎乗停止、あるいは海外遠征などで乗ることができなかったり、他に優先される馬(同じレースだけでなく、別開催の競馬場に期待の馬がいるなど)を選んだりなど、さまざまな理由で騎手は乗り替わることがあります。

 では『ウマ娘』に登場して、デビューから引退までずっと同じ騎手が乗っていた馬というのはどのくらいいるのでしょうか?

 現在名前が確定している81頭で、たった1人だけを背に乗せてきた馬はわずかに13頭。ウマ娘のモデルとなった競走馬たちの3分の1以上に乗っている(81頭中34頭!)武豊騎手を現役中ずっと背に乗せたのは、スペシャルウィークでもキタサンブラックでもスーパークリークでもなく、マーベラスサンデーとアドマイヤベガの2頭だけ。

 アドマイヤベガは菊花賞を最後に引退してしまうのでわずか8戦でしたが、マーベラスサンデーは条件馬の頃からGIまでしっかり武豊鞍上で15戦を走り抜いています。結構意外だと思われるかもしれませんね。

 今回はそんな騎手とウマ娘のお話をしていこうと思います。

サクラの面々

 サクラバクシンオーとサクラチヨノオーはどちらもずっと小島太騎手(その後調教師となり現在は定年で引退)が乗り続けました。お気付きだとは思いますがどちらもサクラ冠名。そして、ゲームのチヨノオーシナリオやクライマックスシナリオの突発イベントで“ヴィクトリー倶楽部”という名前が出て来ることはご存知かと思いますが、この元ネタは所属先の境勝太郎厩舎。勝=ヴィクトリーということでしょう。実は、この境勝太郎調教師の娘婿が小島太騎手だったりします。

 元々サクラの馬は小島太騎手が乗ることが多かったのですが、この繋がりによって境勝太郎厩舎にサクラの馬が集まるようになり、いつしか“サクラ・境勝太郎・小島太”は黄金のトライアングルとも言うべき定番の組み合わせとなっていたのです。筆者前後の世代の競馬好きであれば、このトリオを何十回、いや何百回と見てきたのではないでしょうか。

 サクラと言えばサクラローレルはどうなの? と思われた方もいらっしゃると思います。実はここからがこの項目のキモです。ローレルももちろんサクラの馬だったので、時々突発的な乗り替わりはあれど主戦は小島太騎手、そしてもちろん厩舎も境勝太郎厩舎でした。

 しかしサクラローレルの現役中に大きな転機が訪れます。それは小島太騎手の引退、そして翌年の境勝太郎調教師の引退です。そう、サクラローレルの現役中に“サクラ・境勝太郎・小島太”のトライアングルは終了するのです。そして小島太が境勝太郎の後を継いで晩年のローレルの調教師となるという歴史の移り変わりがあったのです。

 もしかしたら、先日発表されたサクラローレルのコミカライズでは、このあたりの要素をくみ取った描写が何かしらの形で出てくるかもしれません。ワクワクして開始を待ちたいと思います。

ダイワスカーレット

 ダイワスカーレットは“アンカツ”の愛称でも有名な安藤勝己騎手(現在は引退、競馬評論家)がデビューから競走馬引退までずっと乗り続けました。しかしそうならない可能性が、早くもデビュー前にありました。

 デビュー前から武豊と安藤勝己が調教で乗っていましたが、実は武豊でデビュー予定でした。しかし先約があった関係でスカーレットの新馬戦は安藤勝己にお鉢が回ってきたのでした。競馬ではよくあることですが、こんな運命の悪戯で名コンビが生まれることもあるのです。あるいは安藤勝己でなければ、ウオッカとのライバル関係はまったく別の形になっていたのかもしれません。

 余談ですが、少し前に行われた新しい名古屋競馬場のこけら落としイベントで、安藤勝己氏とオグリキャップ役の高柳知葉さんのトークショーが行われました。ご存じの方も多いでしょうが、安藤勝己騎手は元々同じ東海地方にある笠松競馬場の騎手で、オグリキャップの笠松時代にも乗っていた過去があります。

 一緒に行われた『ウマ娘』ポップアップショップでオグリ以外にも、デジタル、ファル子の地方ダートで結果を出してた面々、馬主が三重の方、そして伝説の金鯱賞などで中京競馬場――いわば東海地方に縁のあるサイレンススズカ、そして東海地方や地方競馬にはまったく縁がないものの、安藤勝己氏とコンビを組み続けたダイワスカーレットがいたのは、恐らくそういうことでしょう。

 ちなみにポップアップショップ出店期間(トークショーの日ではありませんでしたが)に、筆者も新しい名古屋競馬に行きました。5,000円負けました。

シンボリルドルフ

 シンボリルドルフはデビューから引退まで、岡部幸雄騎手(現在は引退、競馬評論家)とともに走り、御存知の通り七冠を達成しました。岡部幸雄はシンボリルドルフと同じように……と言っていいかはわかりませんが、日本近代競馬になっていく過程において、騎手としての旗頭とでも言うような存在だったのではないかと思います。

 現在ではすっかり主流となったフリーランスの騎手としての先駆けであったり、それに伴う騎乗依頼を第三者に仲介してもらう“エージェント制度”を確立させたり、先日引退された藤沢調教師もモットーとしていた“馬優先主義”を提唱したりと、現在の競馬界にさまざまな影響を与えた名ジョッキーです。

 筆者が競馬を見始めた頃は、岡部幸雄という関東のレジェンドに相対する関西の若き天才・武豊、という構図だったものです。『ウマ娘』においてシンボリルドルフが生徒会長として他の馬の見本となっている姿と、少し重なるような気がするのは筆者だけではないと思いますがいかがでしょうか。思えばウマ娘って、いわゆる第二次競馬ブーム――つまり武豊デビューくらいから――の競走馬をモデルにしていることが多いんですよね。ルドルフと岡部幸雄にどこか重なりを見てしまうのは自然なことかもしれません。

 ちなみにウマ娘のシンボリルドルフに盛り込まれているわかりやすい岡部幸雄要素としては、コミカライズの『シンデレラグレイ』や、少し前に登場したSSRシリウスシンボリの話に出てくるシンボリルドルフのモットー“Take it easy”あたりでしょうか。これは「気楽にやろうよ」って意味ですが、岡部幸雄はこれを座右の銘とし、よく馬に(もちろんシンボリルドルフにも!)話しかけていたという逸話が有名でした。

トーセンジョーダン

 ここまでの馬たちと違い、トーセンジョーダンは1人の騎手が……という話ではありません。むしろ真逆のお話です。

 何しろトーセンジョーダンは『ウマ娘』に登場するモデル競走馬でもっとも多くの騎手が乗っている馬なのです。その数なんと計17人! 短期免許で来日した実力派外国人騎手が乗ることも多かった馬で、外国人騎手だけでも半分近くの8人が騎乗しています。ここまで乗り替わりが多い、しかもGIを勝つような馬でっていうことになると、相当珍しいのではないでしょうか。

 トーセンジョーダンがギャルキャラになったのは、実在馬が蹄(つまり爪)が弱いという弱点があったことからことからマニキュアなどで保護をする目的もあるところからかけて、ネイルをいじるギャルなウマ娘になった、というキャラクターデザインなのではないかと筆者は考えていますが、もしかしたら騎手が次々乗り替わっていったことから転じて、流行に次々乗っかって行く→流行に敏感なギャルになっている……のかも? なんて想像をするのも楽しいですよね。

 というわけで今回は騎手についてのお話でした。うーん、書ききれない! 

 本当はテイエムオペラオーと和田竜二騎手とかメジロドーベルと吉田豊騎手とか、話したいことはたくさんあるんですよ! とは言えもうオペラオーと和田竜二騎手あたりはすでに『ウマ娘』から競馬を知った方でもかなりの方が知ってしまわれたのでは? という気もしています。

 筆者としては和田竜二騎手、他にもスイープトウショウやカレンチャンに絡めて池添謙一騎手あたりには『ウマ娘』からファンが増えているような肌感覚がありますが、皆さんの周りではいかがでしょうか。

 『ウマ娘』においてジョッキーの要素は、ふんだんに、というほどではありませんが、色々なところにちょこちょこと潜んでいます。育成などのシナリオでちらりと見えるジョッキー要素を見つけると競馬好きは「おっ!」と思ってしまうんですよね。もっとも調教師要素でも馬主要素でもそうなってしまうのでチョロいなあ筆者!

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!

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