ポストアポカリプスの世界を冒険する猫とドローンのバディ物。愛おしさにあふれる『Stray』は最高の猫SF!【電撃インディー#308】
- 文
- まさん
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電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はフランスのBlueTwelve Studioが開発したPS5/PS4/PC(Steam)用ソフト『Stray』のレビューをお届けします。
ちなみに、本作はPlayStation Plusエクストラおよびプレミアムの定額サービス対象となっており、加入者は購入せずにプレイすることが可能です。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
ニャーンニャーンニャニャ(猫の可愛らしさを全力で見せつけてくる探索)
フニャ-----! ニャアアア! ニャン……ニャニャ……ニャアァァァァ……あ、すみません。
『Stray』をクリアしてエンディングを見た直後だったので、感動のあまり思わず猫になってしまいました。いや、本当にそれぐらい素晴らしい猫ゲーだったのです。
猫の仕草、猫の行動、猫の勇気。猫の良さがこれでもかと詰め込まれており、だからといってただ猫に癒やされるゲームではありません。
しっかりした、SFアクションアドベンチャーでもありました。エンディングの締め方も良く、クリアした時に良いフランス映画を見たような読後感も。とても良いゲームです。
猫のインパクトばかりが先行して話題になっていますが、本作はポストアポカリプスな世界を舞台にしたアクションアドベンチャー。崩壊して人がいない廃墟。ロボットだけが住むサイバーパンクなシティ。謎の怪物が徘徊する空間。そうした場所で猫を操作しながら、猫になりきり、猫として冒険する猫アドベンチャーであり、相棒のドローン“B-12”とともに冒険するバディ物でもあります。
ボリュームとしては、初見で3時間から6時間ほどでクリアできる中編といった内容なのですが、魅力がグッと凝縮されていますし、それを引き出すのが猫という存在。夏目漱石の小説のように名前はなく、どこにでもいそうなイエネコが主人公だからこそ、退廃的な世界が美しく輝いて見えます。プレイヤーが猫であることに意味があるのです。
ゲームの流れは、主に“猫の身体能力を生かしてサイバーパンク風な街を探索するパート”と“敵と戦ったり逃げたりしながら次の街を目指して進むパート”が交互に展開していきます。
とくに、街の探索パートでは猫の素晴らしさが前面に押し出されているので、ここを遊ぶだけでも満足。室外機や細い手すり、隙間などをヒョイヒョイ登って移動するのはまさに猫です。猫でしかできない縦の空間を生かした探索が楽しい。もう、これだけで1つのゲームにして欲しいくらいです。
ゲーム開始時に仲間の猫たちと探索する冒頭のパートからもそうなのですが、本作は、まず最初に猫のかわいらしさをこれでもかと見せつけてきます。
猫同士でスリスリ仲良くしていたり、一緒に歩いているかと思いきや気が散ってちょうちょを捕まえようとしていたり、猫たちが見せてくれる気ままな姿が猫好きにはたまりません。キュートさしかない。
このゲームには猫の素敵さが存分に詰め込まれているので、遊び終えると猫派になってしまうくらいのにゃんこゲー。意味もなく〇ボタンでニャーニャー鳴いたり、物を落としてみたり、爪とぎしてみたり……気が付くと猫になりきって猫として遊んでしまいます。ニャー。
何かするたびに猫の可愛らしさを強調するような場面があり、システムとしても猫のためのポイントが用意されています。
特定の場所では△ボタンを押すと寝ることもできますが、寝ることにゲームとしての意味はありません。寝られるだけです。ですが、寝る姿がたまらないですし、それでいい! 扉や床に爪とぎできるポイントがあるのも見どころです。
PS5なら、爪とぎをするたびにDualSenseのアダプティブトリガーから感触が伝わってきます。猫の爪とぎ体験を思う存分できるのです。そう、好きなだけ爪を研いでいいんですよ!
こうした猫要素がゲーム的に意味を成す場面もありますが、たいていは無意味。爪とぎ出来る場所があるなら、好きな時に好きなだけしていいのです。同様に、〇ボタンを押せばいつでもニャーニャー鳴けます。ゲーム的に意味がない場面でも、好きなだけ鳴いていいのです。だって、私は猫なのだから。
とはいえ、このゲームは癒しゲーではなく猫の大冒険。仲間たちとはぐれ、地下に落下して痛々しく足を引きずる描写などもあり、カワイイだけのゲームではないとわかります。
だがしかし、ご安心を。猫が大変な目にあうのも、すべては猫の可愛らしさと勇敢さ。そして、相棒のB-12との友情や世界観を際立たせるため。猫のためのアクセントですから。怖い場面でも勇気を振り絞って遊んでみましょう。
ニャーーーーーニャニャ(猫だって勇気を振り絞る。チェイスやバトル要素も)
先ほど説明したように、本作は猫お散歩ゲーではなく1つの物語があるSFアドベンチャー。プレイヤーである猫は、謎のサイバーパンク風都市から脱出して地上を目指すべく、旅をすることが目的となります。
その過程では、何もかもを食べつくす恐ろしい怪物・ZURKが立ちはだかることも……!
見た目はなんとなくモルモットに似た小さめの可愛らしい存在なのですが、これがなかなか怖い。猫に集団で群がり飛びついてきます。猫にとってのノミみたいに邪魔な存在です。
集団でとびつき、猫にまとわりついてくるのを〇ボタンで振り払いながら逃走するチェイス要素や、ZURKから隠れたり戦ったりしながら目的を果たすステルス要素など、ただ猫カワイイだけではなく脅威に立ち向かう必要もあるのです。
安全な場所と危険な場所のメリハリはついていますし、あくまでもアクセントとして用意されたものですが、普通のゲームっぽい要素が出てくるのでビックリするかも? 戦える場面もありますが、基本的には猫の特性を生かして逃げたり隠れたりしながらやり過ごすアクションになっています。段ボールに隠れるのも猫っぽくていいですね。
とはいえ、そこまで難しいアクションではありません。猫っぽさを演出する程度の内容なので、苦手な人でも意外となんとかなるのではないでしょうか。
ステルスの判定もゆるいですし、見つかっても猫らしくジグザグに動いて回避したり、走ってやり過ごしたりと、難易度自体も低め。
中盤に多少不気味なステージはあるものの、ホラー的な要素はそこくらい。リトライも容易で、振り切るのもそこまで辛くありません。猫の勇気を振り絞って進みましょう。大丈夫、ドローンの相棒B-12がついています。
彼(?)と一緒ならきっと最後までいけるはず。パズル的な謎解きもそこまで難しくありませんし、アクションステージを抜ければ街にたどり着けます。安全な地帯で好きなだけ猫らしく振る舞いましょう。
ンニャーニャニャニャ(猫を愛でるほど進化したロボットたちとの交流もテーマ)
本作は、ただただ猫の愛らしさにもだえるゲームではありません。当然、猫は素晴らしいのですが、猫を通して進化したロボットたちの生態を眺めていくと、そこもしっかり作り込まれていることに気が付きます。
人がいない世界で文明を作り、人間の芸術を理解して祖先である人間をリスペクトしている。どこかコミカルでありつつ、ZURKとの生存競争に苦しんでいるロボットたちが愛おしいのです。彼らもまた、この世界に生きています。相棒のB-12が猫語に翻訳してくれるので、ロボットとのコミュニケーションは問題ありません。
猫らしく振る舞いながら、ロボットたちの足元にスリスリしてあげたり、猫の良さを教えてあげましょう。きっと、みんな猫の可愛らしさにメロメロです。
とはいえ、そんな自分はただの猫。気まぐれで、自分の感覚で動く猫にはロボットたちそれぞれのお仕事なんて関係ない話。物を落としながら机や棚に飛び乗って、イタズラだってできちゃいます。
ペンキを受け渡してるロボットにすりすりして落下させてしまったり、麻雀卓に飛び乗ってゲームを台無しにしてしまったり……。そんな猫ちゃんの行動に対してロボットたちも怒ったり、諦めたり、反応は千差万別。その姿は、人間が猫を愛でる時と変わりません。突然、お腹の上に飛び乗った時の反応も、人間が猫に対してしてしまう反応そのもの。PS5だと寝息や鳴き声がDualSenseから聞こえてくるので、リアルに猫がいるような感覚を味わえます。これはたまらないわけですよ!
本作は、猫の目を通して見ることでゲームとしてもSFアドベンチャーとしても新鮮な驚きがもたらされています。
もしも、操作キャラクターが猫でなかったら普通のSFアドベンチャーだったかもしれませんが、猫を主役にして猫の目からロボットたちの世界を見て、猫の視点の高さから相手を見上げ、建物によじ登り……猫として冒険することで世界を新たな角度から眺められる。そんな気さえしてくるのです。
ただ1点、注意した方がいいこととして3D酔いがあります。カメラ視点が猫の高さで通常とは違うので、人によっては3D酔いするかもしれません。
完全に猫の視点から見るよりも、画面中央や全体を見るようにしたほうが酔いにくいので、どうしても酔ってしまうという人はオプションで視点マーカーをONにしたり、いろいろと設定をいじってみると良いかもしれません。
本作は猫を主役にした1本のSFアクションアドベンチャーとしても、相棒とのバディ物としても、そして猫のキュートさを存分に味わうためのものとしても、唯一無二の魅力を放っています。
ゲームとしてはサクッと終わる程度の短さに、ぎゅっと濃縮された世界の作り込みも素敵です。サイバーな下町から賑やかな都市へと渡り歩き、そこに生きるロボットたちの生活を眺めるだけでも楽しめます。
酒場のカウンターにちょこんと飛び乗り、ビリヤードをいたずらして、猫でしかできない場所を思う存分歩き回り、B-12との楽しい旅の想い出を作ってください。クリアしたとき、きっと心に残る作品になるはずです。
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