『メガドラミニ2』で遊べる『闘技王』『ビューポイント』の特徴を明かす。エムツーとのやりとりやデバッグ裏話も

豊臣和孝
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 セガから、10月27日に発売予定のゲーム機『メガドライブミニ2』。その開発者インタビューを掲載します。

 『メガドライブミニ2』は、令和初のゲーム機として話題を呼んだミニハード『メガドライブミニ』から、内容を一新し、大きくパワーアップした新ハード。収録タイトルは、50タイトル以上が予定されています。

 収録予定のタイトル第4弾発表にあわせて、ソフト開発の責任者である奥成洋輔さんへのインタビューを実施。第4弾タイトルの魅力を中心に、収録経緯などを語っていただきました。

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第4弾はやり込み系が中心

――第4弾タイトルのテーマはあるのでしょうか?

 “光と闇の行方”ということで、前回のRPGの続きと、“歴史とシミュレーション”の紹介の回でした。ただ、タイトルが“光”と“闇”のどちらかに属しているというわけではないです(笑)。あとは“グループシナジー”ですね。

 ジャンルとして、やり込み系のゲームを多く選んでいます。

――私見になりますが、カートリッジで発売されたタイトルに対してメガCDのタイトルは「(ゲーム内容を)知らず反応しにくい」という温度感を感じました。

 それは仕方がないことなんです。そもそもメガドライブというハード自体、当時は日本国内でのシェアは3番手、4番手でした。その周辺機器を買わないと遊べないメガCDは、そこからさらに選抜されたユーザーということになります。なおかつ、これまでのセガ復刻系でもメガCDタイトルはほぼ出ていません。知名度が低いのも当然なんです。

 比較的遊ぶチャンスがあったのは『ソニックCD』くらいですかね? 当時、メガCDでメジャーだった『夢見館の物語』や『シルフィード』ですら遊ぶチャンスがこれまで実機以外になかったため、これでは知らなくても当然だと思います。今回の『メガドラミニ2』ではメガCDのゲームが遊べるのはひとつのポイントですが、メガCDのゲームを遊んだことがある方は少ないということは念頭に置いています。

 一方で、メガCDに強い思い入れを持っていただいている方々に向けて提供したい作品はたくさんありました。ただ移植難易度が高いことと、残念ながら収録許諾が得られなかったもの、権利者が見つからなかったものも多く、期間内でできる限りのものが入っています。ラインナップ全体でメガCDが珍しく見えると思いますが、それだけがメインというつもりはなく、あくまでメガドライブ全体の復刻に主眼を置いていることは変わらないです。

第4弾発表タイトルをそれぞれ解説

『エコー・ザ・ドルフィンCD』
『ゲイングランド』
『ソーサリアン』
『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』
『闘技王 キングコロッサス』
『ポピュラス』
『三國志III』
『天下布武~英雄たちの咆哮~』
『電忍アレスタ』
『真・女神転生』
『ビューポイント』

『エコー・ザ・ドルフィンCD』

 『エコー・ザ・ドルフィン』は、メガドライブの代表的なゲームのひとつですが、前回『メガドライブミニ』の日本版には収録しなかったんです。これはニンテンドー3DSに移植した時に、反響がイマイチだったことに加えて、ゲームそのものの難易度が見た目に反して高いためです。ただ、ゲームとしては遊んでいて非常に楽しいですし、知名度もある。そこで今回はメガCD版でリベンジしました。

 『エコー・ザ・ドルフィンCD』には、1作目と2作目の両方が入っていてお得なんです。さらに音楽が一新されていたり、ムービーが入っていたり、豪華な部分がある。日本ではメガドライブ晩年にリリースされたので、ほとんどの方はカートリッジ版でのみ触れていたと思われます。メガCD版であれば過去の復刻版に触れた方々にも新鮮でしょうし、改めて満喫してもらえるかと。

 なお『I』と『II』は当時も別々のディスクになっていたので、『メガドライブミニ2』でもメニューから選んで別々に起動します。セーブもそれぞれで4カ所できるということです。ある意味2本分のお得なソフトですね。

『ゲイングランド』

 シミュレーション的なステージをリアルタイムに攻略していくアプローチが斬新なゲームだったと思います。『SEGA AGES』の時にアーケード版を復刻できたのですが、実はアーケード版よりもメガドライブ版を遊んでいた人の方が多かったんじゃないかと。

 もとのタイトルはアーケードの高解像度モニターでチマチマ遊ぶゲームだったため、戦術性は高いのですがあまり迫力がなかったんですね。メガドライブ版は、キャラクターサイズをそのまま移植して、コンパクトにまとめた結果、ゲームの移動範囲が非常に狭くなったのですが遊びやすくなり、好移植だったのかなと思います。

 アーケード版を遊ばれていた人からすると、画面が狭くてもの足りない部分があったのですが、“現代面”と呼ばれる追加ステージが10面追加されているので、そこも評価されていましたね。

 一方で「ゲームセンターでは一瞬でなくなっちゃったけど、家庭用でやりこめるなら買ってみよう」と入手された方々は、ゲーム性を理解していただき、楽しんでいただけたのではないかと。ゲームのコンセプトはそのままに、うまく反映できたタイトルになっていると思います。

 『ボナンザ ブラザーズ』などと同様に「『メガドライブミニ』に収録してほしかった」という声があったアーケード移植作品で、今回は前作のリベンジとして収録しました。

『ソーサリアン』

 まずは大前提として日本ファルコム様の代表作の移植で、メガドライブ初期タイトルとしてはとても人気がありました。ただ、このゲームは非常に当時の“パソコンライク”なゲーム。文字ばかりのキャラクターメイキングから始まり、最初はたじろぐ人もいるかと。

 そのため、こういったとっつきにくい作品は『メガドライブミニ』に収録することは避けていました。ただ、『メガドライブミニ2』を購入される方であれば、こういったハードルを越えられるであろうと。50タイトルもありますから、マニュアルを読まないと遊べないゲームもあえて押さえていく形で選びました。

――移植版『ソーサリアン』の中でも、“音”の関係でメガドライブ版は難易度が高いとよく言われます。

 サンゴの謎ですよね。あと『ソーサリアン』は不老不死が前提みたいな難易度なところもありますけど……そういう「知っている人にはなんでもないけど、いきなり今から遊ぶにはハードルが高い」といわれる名作も今回はあえて選んで入れているわけです。現在はファンによる攻略サイトなどもあると思うので、大いに“レスキュー”として活用していただければと。

 最近はG-MODEアーカイブスでガラケー版のPCシナリオ移植版など、『ソーサリアン』で遊ぶ方法は他にもあるので、メガドライブ版で気に入ったら他のものも遊んでみるといいかもしれませんね。

『ファンタシースターII 還らざる時の終わりに』

 前回『メガドライブミニ』でシリーズ4作目の『ファンタシースター 千年紀の終りに』を入れた理由は“今の人が遊んでも楽しめるゲームである”というところ。また、現在サービス中の『ファンタシースターオンライン2』しか『ファンタシースター』を知らない方でも、“らしさ”を感じていただけるところもあります。スタッフが重なっている部分もあり、『千年紀の終りに』を選んだんですね。

 ただ、「メガドライブの中で一番印象的な『ファンタシースター』は何か?」というと最初に出た『II』で間違いないと思います。ですが、1989年の黎明期のRPGをそのまま遊ぶと今となっては非常に難易度が高いために『メガドライブミニ』では外したんですが、今回は改めて選びました。

 とはいえ、そのままだとちょっと厳しいので、以前にエムツーさんとやったPS2『SEGA AGES2500』で搭載した、難易度を下げるモードを掘り起こしてきました。移動速度2倍、戦闘エンカウント率1/2、経験値とお金がそれぞれ2倍になるという“イージーモード”です。これでようやく“ちょっと厳しいRPG”くらいになるかと(笑)。

 ただし、それでもマップは自力で攻略していただくことになるため、申し訳ありませんがそこだけは「迷ってください」ということになります。

 もちろん「当時のゲームバランスがいいんだ」という方のために、ノーマルのまま遊べるようにもなっています。どちらでクリアしてもエンディングは同じです。

――『ファンタシースター』を振り返ると『II』から本格的にシリーズが始まったと改めて思います。

 現在まで続く『ファンタシースター』の世界観、惑星間を移動して探査する流れが『II』から始まっています。『千年紀の終りに』の“ギルド”で世界観がおおよそ完成するのですが、そこも『II』で提示された世界観があってこそ。逆に初代の『I』はファンタジーとSFが混ざっていて、開発者の好きなものを何でも詰め込んでみた感じは、昨今のラノベのような世界観に近いかもしれないですね。

 かわいらしいキャラクター、アニメっぽいデザインなどは『II』で定まりました。そのため、『II』は絶対に収録すべきだろうと。Switch版の『SEGA AGES』で『I』をやって続きをやりたくなっていた人は、ぜひ『メガドライブミニ2』で遊んでください。

『闘技王 キングコロッサス』

――総合プロデュースを担当された漫画家の荻野真さんが描かれたパッケージイラストが印象的で覚えている人も多いと思うのですが、当時アクションRPGは激戦区で埋もれてしまった印象があります。

 当時遊ばれた方が少ない点はよく理解しています。そういう意味では「当時遊んだことがないゲームを今回ぜひやってみてください」というタイトルです。『メガドライブミニ』でいうと『ダイナブラザーズ2』や『ロードモナーク』のような再発見ゲームです。

 実は『メガドライブミニ』で入れようと思って途中までできていたのですが、最終的に外れた1本でもあります。本作は荻野真先生の世界観や設定がキモになっているんですが……実は開発スタッフが『ファンタシースター 千年紀の終りに』とかなりかぶっているんですよ。

――初めて聞きました。不勉強ですみません。

 全員ではないのですが、一部スタッフが『千年紀の終りに』の前に手掛けたのが『闘技王 キングコロッサス』なんですね。

 例えば、シナリオとデザインは吉田徹で、彼は『千年紀の終りに』を手掛けていますが、ネイなど『II』のメインキャラクターデザインでも知られています。彼が『II』と『千年紀』の間に手掛けたタイトルなので、『闘技王 キングコロッサス』というゲーム全体で、匂いがするんですよね。ドット絵をよく見るとキャラクターの雰囲気などが『ファンタシースター』っぽいとか。

 『時の継承者 ファンタシースターIII』はAMチームが作っているのでちょっと手触りが違うんですが、むしろ『ファンタシースター』の雰囲気をより匂わせているのがこの『闘技王 キングコロッサス』です。

 そういうところも踏まえてプレイしていただくと楽しんでいただけるのではないかと。

――『闘技王 キングコロッサス』の話題になると雰囲気や冒頭の会話が中心になりがちで、そこには気づきませんでした。

 『メガドライブ』のゲームはあの頃たくさん出ていましたし、1本1本の情報を丁寧に情報雑誌などでアピールすることはできません。また当時は開発者インタビューもあまりなかったため、知られることなくひっそりと発売されていました。地味なところもありますが、いろいろな装備を使って遊べる、アクションRPGとしてのおもしろさがあります。

 もちろん、荻野先生の考えられた世界観もポイント。映画『グラディエーター』さながらの奴隷となってコロシアムで戦う話は今でも独特ですよね。

――開始早々にいきなり厳しいことを言われますからね。

 ひらがなで「ぜんぶ おまえが わるいのじゃ!」と言われる、見た目の愛らしさとは変わったおもしろさがあります。あとは音楽にもすごく凝っています。有名な音楽家の磯田健一郎さんが担当しているのですが、これがまた「メガドライブでよくこんな音が鳴るな!?」というほどカッコいい。

 『メガドライブミニ』には未収録ですが『クライング 亜生命戦争』というシューティングゲームの音楽も担当されており、現代音楽的で個性的なアプローチをされているので、ぜひ体験していただきたい1本です。

――今回のお話で『闘技王 キングコロッサス』の存在感ががぜん高まりました。

 ちなみに『メガドライブミニ』に収録した『ストーリー オブ トア ~光を継ぐ者~』も、それまでなかなか知られていませんでしたが、かなり好評でうれしかったですね。『ベア・ナックルII』の後に『ストーリー オブ トア』を遊ぶと「なるほど、同じスタッフか」というおもしろさがあるのですよね。

 荻野先生は『メガドライブミニ』発売の少し前、2019年4月29日に亡くなられてしまったのですが、荻野先生の版権を管理されている会社があって、そちらと交渉して許諾いただいています。

『ポピュラス』

 今回も海外開発タイトルから1本を入れています。前回の『メガドライブミニ』の際、僕の中で「このゲームは絶対にいい!」と収録したのが『ロード・ラッシュII』です。当時遊んだ人があまりいなかったので「なんだ、このタイトルは? 知らん!」とか言われたんですけど、発売後には「こういうゲームなんだ! おもしろいじゃん!」といういい反響がたくさんありました。

 そこで今回もEA様にお世話になろうと『ポピュラス』を選ばせていただきました。『ポピュラス』はスーパーファミコンやPCエンジンにも移植されていて、知名度は高いですしね。

――国内で最初に出たのはPC-9801版だったと思いますが、その時点で人気がありましたね。

 私の周りではAmiga版プレイヤーもいましたね。メガドライブ版は3ボタンに特化した操作系が優秀で、CPUパワーもあって快適に遊べて当時かなりヒットしたように記憶しています。

 16bit時代にはエポックメイキングなゲームでしたし、神様視点という斬新さもあります。ただ、ちょっと触っただけだと、自分が何をすればいいのか、わからない部分もありました。

 『メガドライブミニ』の時は、瞬間的、直感的に遊べるゲームを入れたんですが、今回は公式サイトで公開されているPDFマニュアルを読んでいただく形を想定しつつ収録しました。

 また、当時はパスワードがメチャクチャ大変だったんですけど、『メガドライブミニ2』はどこでもセーブできる機能があるので、気兼ねなくコツコツ遊んでいただければいいかなと思います。

『三國志III』

 今回は定番の歴史シミュレーションも押さえたいと、『三國志III』と『天下布武~英雄たちの咆哮~』を選びました。

 私は『メガドライブミニ』を開発する時に当時の専門誌のうち読者投票のあった『BEEP!メガドライブ』と『メガドライブFAN』の最終結果を合体させて、独自にランキングデータを作ったんです。

 このデータは『BEEP! メガドライブFAN―2誌合体! メガドライブミニ総力特集号』という書籍に、“2誌合同カートリッジソフト人気ランキング”として載せましたが、『三國志III』は408本中29位と、評価がメチャクチャ高いんですよ。

 メガドライブ版『三國志III』はカートリッジ版とメガCD版が出ていて、先に出たカートリッジ版のほうがランキングは上です。当時のレビューを確認すると、メガCD版は起動時間やCDの読み込みでテンポが劣る点が評価を下げていたようですね。

 ただ評価は高いのですが、メガドライブのゲームとして独自性があるわけではありません。そのために『メガドライブミニ』では収録を見送っていたのですが、当時これほど人気があるゲームなら、独自要素がなくてもメガドライブで出ていた人気作として、収録するべきだろうと思いました。

 ちなみにメガドライブで『三國志』は『II』、『III』、『IV』が出ていて、『IV』はスーパー32X専用ですが、これらを含むすべての歴史シミュレーションの中で『三國志III』が1番人気なんです。

 あとは、意外な一面になるんですが、コーエーテクモゲームス様は新作だけでなくリメイクなどを多数出されているなかで、テクモ作品は各社のミニハードに提供されているのですが、コーエー作品は提供されていないんですよね。

――言われてみると確かに……。

 当時の歴史シミュレーションの中では『三國志III』の完成度がもっとも高いと言われています。しかもメガドライブ版『三國志III』は当時としてはCPUの思考スピードが速くて快適。それであれば収録してもいいんじゃないかと。

 また、先述のように『三國志III』はカートリッジ版が出た後に、メガCD版が出ました。今回コーエーテクモ様にご相談して、カートリッジ版とメガCD版の両方を収録させていただきました。実は今回収録するメガCDタイトルは全20本ですが、当初は開発タイトル数も20本で、うち1本は海外版専用のため日本版は19本だったのですが、タイトルリストをCDだけでソートすると、1列5タイトルなので5で割れないのが中途半端で(笑)。そこで、収録の決まっていたタイトルのうち『三國志III』だけ両収録にしてもらうことで、無事にCDタイトルを20本にすることができました。

 エムツーさんはなんか気が付いたら計画よりも仕事が増えていて申し訳なかったんですが、「メニューが綺麗に揃ってよかったですね!」って言ってくださいました(笑)。

 メガCD版の特徴としては、シナリオが増えていること、図鑑があること、音楽がCD-DAで素晴らしいこと、サントラモードがあること、シナリオが始まるたびにムービーが挿入されることといった豪華さがあります。

 当時は読み込み面でテンポが落ちるデメリットがあったわけですが、『メガドライブミニ2』はオンメモリでロード時間が短縮されているため、当時よりも快適に遊べます。そのため、両方入れる価値はあったかと思います。

――単純にお得ですし、この機会にメガCD版を体験できるのはうれしいですね。

 コーエーテクモ様を代表するタイトルといえば『信長の野望』と『三國志』です! これを機に遊んでいただいて「やっぱり『三國志』シリーズはおもしろいな」と思っていただけたならば、現在リリースされている最新タイトルにも触っていただければうれしいです。

『天下布武~英雄たちの咆哮~』

――私事で恐縮ですが、これが収録されていることが一番うれしかったです。ありがとうございます。

 『信長の野望』や『天下統一』を移植した『乱世の覇者』、『斬』など、メガドライブで戦国シミュレーションは多数リリースされていますが、今回は『天下布武』を選びました。『天下布武』はメガCDでもローンチに近い時期にリリースされた代表作にして、ゲームアーツ初のCD-ROMタイトル。実は僕もコレでメガCDを買ったクチです。

 実は数年後にスーパーファミコンにも移植されているんですけど、あまり知られてないですね。

――当時、光栄という歴史SLGのビッグメーカーに各社が挑戦していくような図式があったと感じます。そうしたタイトルの中で、内容的に一番食らいつけていたのが『天下布武』ではないでしょうか。

 メガCD版のオリジナル作品ですが、触りとしてはPCゲームに近いです。僕はやっていないのですが、ベースはおそらく『HARAKIRI』ではないかと。

 メガドライブらしさでいうと、メガCDの容量を生かした収録武将(約1,200人)、その全員に顔ウィンドウがついている、イベントの多彩さなど、オリジナリティがとにかくあったタイトルです。このタイトル収録によって、結果的にゲームアーツ様のタイトルがたくさん収録されることになりました(笑)。

――ゲームアーツのタイトルは、いくら収録されても文句は出ないと思われます。

 ただし、ここで言ってしまうと……ゲームアーツ様のゲームタイトルは、これを含めた5本ですべてになります。最初にゲームアーツ様と「入れられるものは全部入れましょう!」と話をしたのですが、さまざまな事情によりここまでとなります。これら以外のゲーム収録を期待されていた方、私の力及ばず申し訳ありません。

 ゲームアーツ様にはライセンスなどで本当にご尽力いただきました。改めて感謝しております。

『電忍アレスタ』

――『アレスタ』シリーズはエムツーさんが権利を持っているということで、収録はスムーズだったのでしょうか?

 認可ではスムーズでしたが、エムツーさんがきっと今後出してくれるかもしれない『アレスタコレクション2』にとって、先々目玉になりそうなゲームを先に収録させていただいているので「ありがとうございます!」と、感謝する一面があります。

 『天下布武』で勉強した後に、同じ戦国時代モノで『電忍アレスタ』と織田・豊臣・徳川・明智の戦いが楽しめる『ぎゅわんぶらあ自己中心派』もプレイしていただければと思います。

 前回収録した『武者アレスタ』の新たな形として作られたゲームなんですが、おそらく皆さんは日本版しか遊ばれたことがないと思います。実は海外版は仕様がちょっと違っていて、パワーアップの中でイマイチ使い道がなかった黄色がすごく強いホーミング弾になっています。

――そんなことが!

 そのため、海外版で遊ぶとちょっと印象が変わるんですよ。そもそもの話ですが、弊社の米国スタッフから「ぜひ『電忍アレスタ』を入れてくれ」と言われた際に、逆に「なぜあえてこのゲームを!?」となったわけです(笑)。そこから「そういえば北米版のソフト持ってたな」と思い出して改めてプレイしてみて、海外版は日本版と仕様が違うことがわかりました。また、海外レビューサイトもあちこち見させてもらったんですがおしなべて評価が高いんですね。

 実際に遊んでみたら、ほとんど変わらないんですけど、少し調整が入っていてパワーアップが違っていたうえに、ロードも少し早くなっていた。そういう違いがあって「これを遊んでもらうというのは、ひとつの手だな」と。最初は海外版『SEGA Genesis mini2』だけに収録することを考えたんですけど、メガCDのゲームをたくさん作れるわけではないので、日本版にもちゃんと入れようということで収録しました。

 そういう経緯もあったので、メニューで起動時に日本版と海外版を選べるようにしてあります。海外版はオープニングも英語になります。

――これで日本のユーザー評価が変わったら興味深いですね。

 「たいして変わらねえよ!」と言われたら「ゴメンナサイ」なんですけど(笑)。若干でも再評価されるとうれしいですね。

『真・女神転生』

――コアなシリーズファン以外は、未体験の人が多いのではないかという『真・女神転生』ですね。

 当時は別会社でしたが今はグループ会社なので、グループシナジーとして、セガハードのアトラス作品を復刻するチャンスがないものかと思っていました。そこで2年前の『ゲームギアミクロ』の時に『女神転生外伝 ラストバイブル』と『スペシャル』を移植させてほしいという相談をしたところ、二つ返事でOKをもらいまして。

 『メガドライブミニ2』ではCDタイトルが選択肢に増えたので『真・女神転生』をやろうと考えました。ただ、『真・女神転生』ほどの作品をこういう50本のうちの1本として入れていいのかとドキドキもしていたんですけど、アトラスに相談したところ、今回もスムーズに話が進みました。その後、宮崎(※)がアトラスに異動になりました。こんなこともあるんだなあと驚きました(笑)。

 メガCD版は、『真・女神転生II』が出るか出ないかくらいのころ、そこから綿々と続くシリーズの形が定まっていない時期の移植なので、独自のアレンジが今の『メガテン』ファンにとっては意外性のある方向性になっています。そのアレンジも一周回って「おもしろいんじゃない?」というような味わいがあるかなと。

 スーパーファミコン版はNintendo Switch Onlineなど、遊びやすい環境にあるんですけれども、メガCD版はなかなかチャンスもありませんでしたので、いい機会になったと思います。

 あと折角の機会なので事前にお伝えしておきますと、今回収録の『真・女神転生』はアトラス監修のもとで、一部表現を修正させていただいております。もちろん『真・女神転生』以外のタイトルにも、少しずつ調整を入れているものがあります。このあたりは、四半世紀以上前のゲームを現代に復刻するうえでの処置でして、ゲームプレイには直接影響のない部分ではありますがご了承ください。

宮崎浩幸さん。『メガドライブミニ』を奥成さんと手がけられた。現在、グループ会社であるアトラスに所属。

『ビューポイント』

 今回の50本以外のオマケタイトルです。グループシナジーでアトラスタイトルを入れるんだったら、サミーからも1本欲しいなあと思ったのがきっかけです。ただ、日本のサミータイトルは『戦国伝承』など移植がメインで、サミーのゲームとは言いにくいわけです。適したタイトルが浮かばなかったのですが、アメリカで『ビューポイント』が出ていたことを思い出しました。これもなかなか復刻されるチャンスがないゲームでした。

――海外版しか出ていないので、旅行や仕事で渡米する人にお土産にお願いする人がいたと記憶しています。

 アーケード版に比べるといろいろ足りていないんですけど、初めて触れるぶんにはメガドライブ版でもかなり独特な特徴を味わえるのではないかと。そのため、日本では50本以外の1本というオマケタイトル扱いにして収録しています。

――毎度のことですが、これがオマケとは思えません。

 ジェネシス版(海外版のメガドライブ)で当時一番評価を下げた部分としては、アーケード版と比較すると処理落ちが目立つんですよ。そこで『メガドライブミニ』の『ロックマンメガワールド』の時と同様に“テラドライブモード”の速度を標準で対応しています。

 ジェネシス版のスピードでは遊べません。本来この処理落ちは望まれていなかっただろうということでハイスピードだけをプレイできます。

 逆に、こちらは初めて喋る公開情報となりますが、第1弾で公開した収録タイトルのひとつ『サンダーフォースIV』では、ゲームの速度はノーマルとハイスピードの2種類から選べるようにしました。『サンダーフォースIV』は実はかなり処理落ちするゲームで、処理落ちがゲームバランスに直結する部分もあると思っていますが「処理落ちなしで遊びたい」という人もいるだろうと。

 これはSwitchの『SEGA AGES』の時に入れたものなのですが、エムツーさんから「その追加なら対応できる」という話があったので「せっかくだから入れておこう」ということで選べるようにしています。

――一般的にはこのような蓄積や発展はあまり望めませんが、その点でエムツーさんとの関係はとても心強いと感じます。

 2005年に初めてエムツーさんとタイトルをリリースしてから、気が付くともう17年……。あの時は僕もまだ30代でしたが、今年51歳になりました(笑)。

 エムツーさんには最初に「これからひとつひとつセガハードを作っていこう」と言いました。まず『メガドライブ』と『システム16』と『マスターシステム(Mk-III)』のエミュレーターを完成させて、そこから増やしていったわけです。

 『ゲームギア』ができる? 『システム16』があるからちょっとパワーアップするけど『ハリアーボード』もできるようになった。「じゃあ『Yボード』を使った『ギャラクシーフォース』はどうだ」というように……。

 『SEGA AGES』の時にようやく『システム24』と『MODEL1』までたどり着きました。本当にコツコツとハードの種類を増やしてきた結果、今回『メガCD』まで到達したんですね。ずっとやり続けてきたエムツーさんにとっての“秘伝のタレ”です。

――まさに秘伝のタレですね。

 ハードはひとつひとつがバラバラに出てるのではなくて、アーケードとアーケード、さらにはアーケードとコンシューマはつながっているんです。

 『システム16』があったので、それをベースに『メガドライブ』のCPUに68000を使う、その『メガドライブ』のアーケード用ボードのCボードを作った時には『マスターシステム』の機構が追加で入っているなどです。

 セガハードはそういう進化をずっと続けてきました。エムツーさんのエミュレーターもひとつずつ基板の性能を解析して作っているので、つながっていくんですね。さらには、ひとつひとつ解析しているからこそ細かい機能にも対応できる。

 『メガドライブミニ』の移植を見ても、アジア版にしか収録されていなかった『アウトラン2019』には、このソフトでしか使っていない特殊なモードがあって驚きました。『メガドライブミニ』では70タイトル以上を移植しましたし、その前のバーチャルコンソールも含めると100タイトル以上のメガドライブのタイトルを移植してきたのですが、『アウトラン2019』で「おかしい! 実機ソフト通りに動かないぞ?」ということがあって苦労することもあります。

 今回の『メガCD』タイトルでもそういったことがたくさんあって……「このゲームだけまともに動かない。なんでだろう?」ということを1個ずつ解決していったので、時間は長くかかりました。初めての『メガCD』だったこともあり、それぞれのタイトルで、相当苦労しています。

――『メガCD』は専用CPUが搭載されるなど、単なる周辺機器ではないですからね。そういう意味では、この蓄積が次にどう使われていくのかも楽しみです。

 過去の実績を生かしていろいろな施策ができればいいなあ、というところはもちろんありますね。ただ、今回のプロジェクトだけを見てもタイトル数が多いのでとても大変でした。それぞれを忠実に動かすだけでも相当な苦労がある……何かちょっといじると、すぐ不具合が出るわけです。

 先ほど“テラドライブモード”の話がありましたが、これを使うとまともに動かなくなってしまうことも当然あります。元々その速度で作ることが想定されていないので、そういうことが起きてしまうのです。ちゃんと正しく動いているのかどうか隅々まで調べないといけません。今回も初めて『メガドライブ』や『メガCD』に触れたであろう若いチェックのスタッフたちに、本物とメガドライブミニ2とで相当数のプレイをしてもらいました。

 スムーズに動いているように見えても、オリジナルと違うところがあるかもしれないから、やり比べてもらっているのです。

 移植版だと特にそういう不具合は発生しやすいです。だから経験者になってもらって交互に遊んでもらうのですが、タイトル数が多いと検証の負担が大きいです。特にRPGは大変です。

 第3弾発表タイトルの『ルナ エターナルブルー』開発末期には、動画のリップシンクがずれるという不具合がありました。『メガCD』のCDのピックアップとゲーム再生が実機と完全一致しないとオリジナルと同じ動きにならないんですね。

 開始位置が合っていても微妙に再生速度が違っているとずれてしまったりもします。『ルナ エターナルブルー』のオープニングは、とても長いんですよ。最初はあってるんだけど、最後のほうのヒイロの会話が微妙に口があってないことにスタッフが気付いて、もう大慌て! そこは何度もトライして合わせましたね。

――そういったケースは、細々ひとつずつ作業するしかないわけですね。

 こういう不具合は、実機でプレイしていないと気がつきにくいんですよね。すべてを厳密に比較した場合、今回も違う点は必ずあると思います。ただ、そこは……商品としてお客様にご納得いただける部分として、50本以上を同時開発しているのでご容赦くださいと。とはいえ、普通のお客様にわかるようなところはほぼ大丈夫だと思います。

――最後に第4弾タイトルについて、総括をいただけますと幸いです。

 今回はシミュレーションゲームを発表したため、多少渋めのラインナップになりました。ただ、『メガドライブミニ2』を長く遊んでいただけるお客様にとっては、今回の第4弾発表タイトルは最終的に一番長くご愛顧いただけるんじゃないかと思っています。

 収録タイトルが多いので、最初からやり込み系に飛びつかれる方は限られているかもしれないのですが、アクションゲームやシューティングゲーム目当ての人だったとしても、シミュレーションゲームやRPGを遊んでいただくことで、90年代の香りをいっぱい感じていただき、楽しんでいただけるのではないかと思います。

 『サイバースティック』の復刻も含めて、あの時代のパソコンの記憶に繋がるものもいくつか収録できました。80年代末から90年代初頭にかけたさまざまな代表的なゲームタイトルがプレイできるようになっていると自負しています。

 そうそう、今回もオートデモをつけておりますので、一度電源をつけっぱなしにしてじっくりとタイトル群を見ていただけると意外なゲームの記憶を呼び起こせるかもしれませんね。

――『三輪サンちゃん』は80年代前半なので90年代の記憶に当てはまらないような気がしますが……。

 『三輪サンちゃん』は2022年発売ですので最新ゲームですね! その辺はオマケ枠ですから大目に見てください(笑)。

――本日は長時間、ありがとうございました。

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