世にも奇妙な三国志、三選。曹操の船の怪異とは?【三国志 英傑群像出張版#9-2】
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三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
今回も三国時代ごろの怪談話・妖怪話・オカルト話を「捜神記」という晋の時代(三国時代の次)の書物よりピックアップして紹介したいと思います
しゃべる鼠を無視する男
魏の曹芳が皇帝だった正始年間(239‐254年)に、王周南(おうしゅうなん)という人物が裏邑県(河南省)の知事をしていた。ある日とつぜん鼠が穴から出て、執務室に上がって来て声をかけた。
「王周南、お前は某月某日に死ぬことになっているぞ!」と。しかし、王周南は取り合おうとしないので、鼠は穴へ帰って行った。
やがて予告の日になった。鼠はまた現われた。今回は頭巾をかぶり、黒い着物を着ていた。そして、「王周南、お前は昼になると死ぬぞ!」と言う。しかしやはり王周南は取り合わなかった。
鼠はいったん穴に入ったが、また出てきて同じ事を言ったが、それでも王周南はとりあわなかった。それを何度か繰り返しているうちに真昼になった。
すると「王周南、お前が返事をしないなら、俺はどうしたらいいのだぁ」と言うなり、鼠はひっくり返って死んでしまった。王周南がそばへ寄って見たが、普通の鼠と変りはなかった。
鍾繇(しょうよう)と女の幽霊
魏の鍾繇(しょうよう)……魏の重鎮、鍾会の父。書の達人。
潁川(河南省)の鍾繇が、数ヶ月にわたって朝礼に出席せず、精神を病んだことがあった。
ある人がそのわけを尋ねると、「夜な夜な美女がやって来て、枕を共にしている。それがまためったにないような美しさなのだ」と言う。そこで尋ねた人は、「それはきっと幽霊や妖怪に相違ない。殺してしまいなさい」と勧めた。
やがて女がやって来た。ところが家に入って来ず戸の外で立ち止まっている。鍾繇は「どうしたのだ?」と尋ねると、女は「あなたは私を殺すつもりですね?」と言う。
鍾繇は「そんなことはない」と否定した。ようやく女は屋敷の中へ入って来た。鍾繇は内心うしろめたく、かわいそうであったが、遂に刀で切りつけて太股に傷を負わせた。女はすぐ外へ逃げて、真新しい綿で血を拭くと、遠くへ逃げ去った。
あくる日、人をやって女の足跡(血痕)をたどらせたところ、大きな墓にたどり着いた。
その墓を掘り返してみると、棺のなかには美しい女が横たわっていた。それはまるで生きているかのようであった。
白い服に朱の腰巻を巻いていた。左の太ももに傷があり、そこから流れ出た血を腰巻の綿で拭ってあった。(それは鍾繇がつけた刀傷に違いない。その後、どうなったかは書かれていない。)
曹操の船
濡須口に大きな難破船がある。その船は水中に転覆しているが、水がひいたときには船体が現われる。古老は「あれは曹操の船だ」と言っている。
あるとき漁師がその船のそばで一夜を過ごそうとして、自分の船をつなぎとめた。すると笛や琴の音が響き、歌声が聞こえるうえに、この世のものとも思えぬいい香りがただよって来た。
そして、漁師が眠りこんだと思うと、「お上(曹操)の妓女に近寄ってはならぬ」と夢のなかで誰かに追い払われた。
言い伝えによると、曹操が妓女を乗せていた船がここで転覆したのだとか。
鼠の話、怖いというより鼠の動きを想像すると可愛いと感じてしまいますね。王さんが反応を示していたらどうなったのか? いろいろ想像してしまいますね。
鍾繇の話、鍾繇もこのまま霊と一緒にいるとまずいと思ったから斬りつけたんでしょうね。その前後の話をすごく想像してしまいますね。
このお話、江戸時代の怪談「牡丹灯籠」に似てませんか? 「牡丹灯籠」とは、夜ごと幽霊のお露が牡丹灯籠を下げて新三郎の元を訪れ逢瀬を重ね……、というお話です。
この元は明の時代の『牡丹燈記』だといわれていますが、元ネタは鍾繇のこの話なのかもしれませんね。
曹操の船の話、これはどこかヨーロッパの海賊船の話でありそうですね。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』的な。
曹操は生き延び、妓女は死んでしまったのでしょうか。誰が警告したのか? それも謎です。映画『レッドクリフ』の小喬の代わりにされていた妓女の事を思い出してしました。
次回も怪談話・妖怪話・オカルト話をお送りしたと思いますので、お楽しみに!
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!
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