モラルなんてポイなんよ! シリーズ初体験でもわかる。『セインツロウ』は悪事を楽しむための遊園地なんだって

まさん
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 2022年8月23日にPLAIONから発売されたオープンワールドアクション『Saints Row(セインツロウ)』。本作は、シリーズの世界観や登場人物を一新して初心者でも遊びやすく生まれ変わったリブート版です。

 実際にシリーズ初心者が遊んでも本当に楽しめるのか。本作からはじめて遊んでもノリについていけるのか。これまで遊んだことはないけれど、なんとなく気になっている。そんな人のために、本作で初めてシリーズに触れたライターによるレビュー(プレイレポート)をお届けします。

ウワサ通り……いやそれ以上にハチャメチャでノリがいい

 おバカなイベントやシステムに、ブラックコメディのような軽いノリで行う犯罪。リアルな方向とはまったく逆のハチャメチャさをウリに、オープンワールド・クライムアクションの人気シリーズとして人気を博したのが『セインツロウ』シリーズです。

 自分も「無茶苦茶でおもしろい!」というウワサは聞いていたものの、いつか遊ぼうと思いながら機会を逸していました。そんな『セインツロウ』が、このたびリブート。ストーリーも登場人物も一新されて、これまで遊んだことがない人でも楽しめる作品になっているとか。これはもう、まさに絶好のタイミングですよ! やるしかない!!

 というわけで今回は、シリーズ初心者である自分が製品版を遊んでみました。結論を先に書いてしまうと、シリーズを知らなくてもまったく問題なし! チュートリアルも充実していますし、ミッションをこなしていくたびに次々と新しい要素が出てきて飽きません。その内容も確かにリアルとは正反対。おバカでシュールで笑えて最高でした。では、実際に遊んでみて感じた魅力をお届けしていきたいと思います。

  • ▲主人公の容姿や性格は、いつでも作り替えられます。性別の設定がないのは今どきなのに、股間の大きさ設定には謎のこだわりがあるところが好き。

 本作の舞台は、アメリカ南西部にある架空の都市“サント・イレソ”。犯罪者だらけのこの町で、プレイヤーは犯罪組織“セインツ”を結成し、ボスとなって組織を拡大していくのが目的です。

 どれくらい犯罪者だらけかというと、一般人よりもギャングのほうがうろついているんじゃないかと思うほど。交通ルールもないに等しく、車で移動しながら歩道で人を跳ね飛ばそうが、標識をぶち壊そうが、割と自由です。悪評が上がって警察に追いかけられるかもしれませんが、悪評はそのうち下がりますし――返り討ちにしてしまえばいいわけですからね。

 そもそも、最初は自分の車どころかそこら辺の車を奪うのは日常茶飯事。一般人の車の窓ガラスをぶち破って奪い、乗り捨てていくのが当たり前の犯罪都市です。警察に通報されて追いかけられても、車両ごとやっちゃえばおとがめなし。いくらアメリカでも無法すぎる……。これが自由の国って、そういうことなんですね!

  • ▲運転手を弾き飛ばし、奪った車で目的地までドライブ。一般人っぽい相手から奪った車でクラシックを流しながらゴキゲンなドライブを堪能しましょう。

 拠点に良さそうな建物が解体されるのを防ぐためにショベルカーで工事現場を破壊して回ったり、ムカつく敵組織から情報を聞き出すために簡易トイレごと車で引きずって振り回したり(あとでそいつの形見として簡易トイレが手に入る)と、ミッション中に発生するイベントの数々も世の中の法をガン無視。

 現実では絶対にしちゃいけない100%の犯罪行為を働き、自分の手で破壊活動をしていくのは悪い笑顔が出るほど快感です。大暴れしても大丈夫。自分たち、セインツこそが法(ロウ)なのだから。

 と言っても、ゲーム開始時からしばらくはイベントもまだまだおとなしめです。組織どころか、アパートで共同生活をする普通の若者って感じです。……いや、初っぱなから銀行強盗するのは普通ではありませんが、この町や『セインツロウ』基準では大人しいほうです。

 とりあえずは雇われの軍人や警備員としてのメインミッションをこなしつつ、拠点を確保するまではチュートリアルだと思ってプレイしましょう。無法を楽しむゲームなだけかと思いきや、本作にはしっかりとしたストーリーがあるんですよね。軍人として活躍する主人公の生活をもっと見てみたいと思うくらい、物語もおもしろいです。

 人間としてありえないくらい頑丈で、アクション映画でも無理なんじゃないかと思うほど大活躍するんですよ。いきなり、飛行機にぶら下がって銃撃戦をさせられたり、トラックからトラックへ飛び移ったり、シチュエーションが燃える! まあ、すぐにクビになるのですが……。

  • ▲飛行機にしがみつきながら戦い、落下してからも無傷で格闘。タフすぎる主人公が頼もしい。こりゃ、ボスとしてなんでもできるわけですわ。

 拠点を手に入れたあとは銃を撃ちまくり、敵対する組織の車をぶっ壊し、とにかく気持ちよく楽しめる……と言いたいところなのですが、ここでシリーズ初心者ならではのワナに引っ掛かりました。まず、拠点を手に入れる以前にメインミッションに意外とてこずりました!

 デフォルトの難易度“事業家”で始めたのですが、敵がカタいし攻撃も激しいし、なにより手強い。何度もゲームオーバーになりました。個人的には、デフォルトの1つ下“ハスラー”でちょうど良い難しさでした。アクションに不慣れだけどこういう雰囲気のオープンワールドアクションを楽しみたい! って初心者は一番下の“観光客”でも良いと思います。むしろ、一方的にこちらが強いくらいでいいんですよ。そのほうが、気持ちよく犯罪行為に浸れますから。

 豪快に銃でボッカンバッカン車や爆弾を爆破して巻き込んだり、スキルでなぎ倒したりできるのは気持ち良いのですが、集団相手に立ち回る場面も多いので割とボッコボコにされやすい。ゲームオーバーが続くようなら、素直に低難易度で蹂躙するのをオススメします。

 ほかにもアクティビティの設定が充実していて、細かく調整ができる点はとてもありがたいですね。時間制限イベントもオフにできちゃいます。自分は、時間制限が大嫌いなので即オフ。3D酔いの対策も細かくできるので、余計なモーションブラーや背後に回るカメラ演出などは切っちゃうのもアリです。3D酔いに弱いなという人は、酔いにくい設定に細かく変えていきましょう。

  • ▲難易度だけではなく、細かい設定も可能。高難易度でも敵の耐久力を下げて、攻撃は激しいけどこちらもサクサク倒せる。なんて調整もできます。

ムチャクチャなシノギで組織拡大。ボスは過酷なお仕事

 序盤のストーリーもおもしろいのですが、やはり本番は本拠地を手に入れてから。ミッションを進めていくと拠点となる教会が手に入り、本格的な組織の運営がスタートします。ここから、ゲームとしての自由度や遊びの幅が一気に拡大! ミッションを進めるだけではなく、何をしても自由です。

 そんな中でとくにやるべきなのが、シノギ。ギャングなのでシノギは大事。ギャングというかヤの人っぽい単語ですが、本作では自分の好きなエリアにフロント企業を立てることで“シノギ”が発生。領土を拡大して収入を得る巨大な寄り道要素が発生します。シノギの進行度で解禁されるミッションもあるので積極的にシノギをこなしていくことが重要。

  • ▲拠点の2階にある地図(エンパイア・テーブル)でシノギを選び、好きなエリアに設置すると悪徳企業の運営がスタート。企業の運営といっても、働くのはボス自身ですが……。な、なぜだ!

 フロント企業の運営と言うことで、ボスである自分は家でのんびり……できません。生き馬の目を抜くように、どの勢力も拡大を狙っているこの世界。部下任せでは生きていけないのです。ボスが直接出向いて売りさばく車を盗み、当たり屋をやって保険金詐欺を働き、率先してシノギをこなす必要があります。

 ……なんだか、全部ボス任せに見えるなこの組織。いや、ちゃんと部下も働いていますよ。そういうミッションもありますからね。ですが、人類としてはあり得ないタフさと強さを持つボス自身が出向いたほうが早く解決しますからね。それなら仕方がない。そもそも、やってることが常人には不可能なものばかり。

 どこをどうやったら、そんな方法でお金を稼ごうと思ったのかという頭の悪いシノギもあり、笑いながらプレイできます。とくに“保険金詐欺”の強引な展開は最高。車の前に飛び出して連続で跳ね飛ばされる当たり屋をやることで、保険金が次々に舞い込むというボス以外にはできないシノギです。

 命の扱いが物理シミュレーターゲーム並の軽さ。でも大丈夫、ボスならできる。

  • ▲空中で跳ね飛ばされるほど、保険金の入手料がアップ。さらに、アドレナリンが高まると跳ね飛ばされるだけで車が大爆発。大事故で保険金もがっぽがっぽ! やはり、人間じゃないのでは?

 交差点の真ん中に飛び出して跳ね飛ばされながら、チャリンチャリンと保険金が舞い込むのを見ていると「なるほど。細かいことは気にしなくていいんだ!」という謎の説得力が生まれますね。

 普段できない犯罪を楽しめるのがクライムアクションの魅力ですが、発想がぶっ飛んでいますし、自分もぶっ飛んでいくので、ちょっとした疑問もぶっ飛んでいきます。

 シノギ以外のサイド・ハッスル(サブクエスト)や探索要素も充実。ゴミ箱を漁ってお金を稼いだり、各地の屋根にある物資をちょろまかしたり、写真を撮ったり、公園の観光案内を読んだりと、適当にエリア内を探索しているだけでも発見がいっぱい。

 ボスなのに、やっていることがしょぼい? いやいや、何を言っているんですか。千里の道も一歩から。意外と馬鹿にできませんよ。とくに、カメラで撮影することは必須です。本作では、ファストトラベルのポイントを見つけてもすぐに飛べません。カメラで撮影しないと登録されないのです。見つけたら、忘れずに撮影しましょう。

  • ▲風景を撮影しまくるゲームでもあり、ある意味観光気分。敵に追われていると落ち着いて撮影できないので、邪魔するやつを全部ぶっ倒してから撮りましょう。

 全体的に明るく脳天気。犯罪と言ってもゲームならではの笑える感じなので、初心者である自分でも楽しく世界に入り込めました。ブラックコメディのようにあっさり人が倒れ、ボッカンバッカン大爆発。スナック感覚で犯罪が行われていると、もうそういうものだと受け入れられちゃう。バカバカしいサイド・ハッスルやメインミッション、シノギも多くて、肩の力を抜いて楽しめます。

 犯罪組織だらけの街なのに、ペイントボールでのんきに陣地の取り合いをする気が抜けるようなイベントもお気に入り。どういう世界なんだ、ココは。

 普段は股間を執拗に狙ったり、何度も何度もナイフを突き立てたり、見てて痛々しいテイクダウンの演出も、ペイントボール中は専用モーションに変化。ドラマのように離れた位置から殴ってるように見せたり、当てているフリをして相手が大げさに吹っ飛ぶ演技をしてくれます。みんな、真剣に楽しんでいるのです。死と隣り合わせの世界で、こんな遊びができるギャップがいいですよね。

  • ▲普通のテイクダウン。ナイフでグサグサ刺されるのでめちゃくちゃ痛そう。股間を狙う攻撃パターンがやたらと多いです。

  • ▲ペイントボール中のテイクダウン。殴られているフリと殴っているフリ。自分が着ている段ボールの鎧と合わせてシュールで笑えます。

 人は派手に死ぬし犯罪だらけの町なのですが、なんだか全体的にゆる~い雰囲気。銃撃しまくり車やヘリコプターを乗り換えまくりで爽快にぶっ飛ばすおバカなノリが楽しく、自分が気持ちよくなれる難易度で、頭を空っぽにしながら遊びたいゲームです。収集要素のコレクションなども用意されているので、じっくりやり込めるところも良し。敵として出てくる犯罪組織もどこかコミカルで、クライムアクション系の初心者が笑って楽しめる作品なんだなって思いました。

  • ▲アナーキーなテロリスト集団かつ、本来の意味である偶像的なアイドルでもあるアイドルズ。主人公のせいで、しょっちゅう悲惨な目にあっているので憎めない敵です。サイリウムでシールドを張ってくるやつ以外は!

スカッとするオープンワールド・クライムアクションを満喫!

 本作は、PS3やXbox360が出ていた時代のオープンワールド系クライムアクションの豪快さを残しつつ、今の遊びやすさを合わせたリブート作品。スマホから受注して賞金首を追いかけたり、自分の口座に送金したりといった今風のメニュー画面も使いやすく、遊びやすさの面でもリブートされています。ミッション中でなければ行動可能なエリアが狭まらず、せき立てられることもないので気ままに遊べるのもうれしい。

 目的地を指定すると、道路上に大きな行き先の矢印が出るので迷わないですし、地図を見なくても迷わず移動できます。景色を楽しみながら人や車を跳ね飛ばし、ドライブするのが快感。現実でやったら絶対ダメですが、ゲームだったらいいのです。乗り物を使った破壊行為がとにかく気持ち良い。ストーリー中で建物を破壊するイベントが来ると、なんだかワクワクしてしまいます。

  • ▲ミッション名もイカしているヘリでの爆撃。空から一方的に蹂躙できるのサイコー! 銃で反撃? 豆鉄砲にしか感じませんよ!!

 ヘリによる爆撃や警察車両への襲撃。大きな暴れ方から小さな悪事まで、よく捕まらないと思うほどの悪事ができます。これこそが本作の魅力。悪のバリエーションが盛りだくさん! 遊んですぐに倫理観なんて麻痺しまくり、脳汁出まくりで気持ちよくなるくらい、悪の魅力がたっぷり詰まっています。

 そして何より、ネタバレになるのであえて語りませんが、ストーリーも秀逸。ボスである自分と、ケビン、イーライ、ニーナ。小さな銀行強盗でシノギを得ていた4人の無鉄砲な若者が、組織を結成してどんどん巨大化していく。その過程のアナーキーさに思わず笑みがこぼれますし、細かいミッションを通して紡がれていく4人の生きざまも見どころ。

 ミッションをクリアすると組織にも部下が増えていきますが、ケビンたちは特別感があります。彼らとのギャング生活がどこに行き着くのか。オープニングの不穏な予兆も含めて、ストーリーの先が純粋に気になるつくりです。

 サイド・ハッスル(お金稼ぎ)やシノギは最小限に、物語を目当てに遊ぶというストーリー重視の人でも十分に楽しめるでしょう。とはいえ、サイド・ハッスルもおもしろいのでつい遊んでしまうはず。たとえば、敵対組織が経営するお店に低評価レビューをつけて回るサイド・ハッスルなんてものも。レビューの内容を見ているだけで笑えますよ。

  • ▲低評価の★1レビューをするにしても、内容が稚拙すぎて酷い。何か書くにしても、うんこを持ち出してくるのが小学生みたいなイヤガラセですね。でも、こういうレビューのほうが意外と効果があるのかも?

 ジメジメして熱く、うっとうしい猛暑の今夏。まだまだ暑い日が続きますが、本作を遊べば暑さも忘れるはず。アドレナリン全開で悪さを楽しんじゃいましょう。たまには倫理観を投げ捨てて、ゲームのなかで思う存分大暴れするとスカッとしますよ。巨大な犯罪組織を作り上げましょう。サント・イレソは、あなたを待っています!

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