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【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 30】ダイイチルビーとケイエスミラクル。新ウマ娘の追加に思うことのお話

柿ヶ瀬
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 柿ヶ瀬です。8月21日の“ぱかライブTV Vol.20”の翌日にこれを書いています。今は旅行中の新幹線内です。なぜこんなことに。

 ともあれ1.5周年記念夏の陣と銘打たれたこのぱかライブで、またしてもたくさんの発表がありました。筆者はダイタクヘリオス役の山根綺さんの登場時、そもそも紹介される順番が遅く、そして謎のヘリオズというタスキをかけて登場して来たときに直感しました。

 「これは何かある。俺たちが待っていた何かがあるかもしれない」

 その予感は当たります。しかしその予感、予想を越えるものが待っていました。

その名前を、誰がウマ娘で想像できたか?

 このコラムでお話したこともあるので、覚えがあるかもしれません。

 ダイタクヘリオスには、「この馬もウマ娘に来てくれ!」と競馬好きの多くが望むくらい関係性の深い馬がいました。その名はダイイチルビー。アニメ2期第1話でヘリオスが叫んだ“つれないお嬢様”。

 何度も同じレースを走り、ダイイチとダイタクで五十音順が並ぶためにいつも仲良く出走想定で隣同士になっていたことから、某競馬漫画などで恋物語としてネタにされ、某先輩競馬ゲームでは現実の世界で結ばれることのなかったこの2頭の仔がスーパーホースとして登場するなど、日本競馬の歴史でもトップクラスに空想・妄想された2頭だったと言ってよいと思います。

 “ぱかライブTV Vol.20”の最後、『ウマ娘』最新情報でついに、ついにダイイチルビーのウマ娘登場がアナウンスされました。筆者のテンションは一気に沸騰し、沸き上がり、そして、1分後にはその沸き上がった脳味噌は冷却されてしまいました。もう1人のウマ娘が登場することを聞いてしまったからです。ケイエスミラクル――その名前を聞くまで、筆者の競馬の記憶からほぼ消えかかっていた馬でした。

 ケイエスミラクルはダイイチルビーが最後に勝利したスプリンターズステークスで1番人気だった馬でした。直線、ダイイチルビーとの競り合いとなったところで、故障を発生し、安楽死となってしまいました。ダイイチルビーに騎乗していた河内洋騎手は、レース後のインタビューで「ケイエスミラクルと叩き合って勝ちたかった」と話した通り、故障がなければ結果は変わっていたかもしれません。

 『ウマ娘』にはサイレンススズカやライスシャワーなど、競走中の故障でこの世を去った名馬がいます。昨日声優が発表されたアストンマーチャンも、競走中ではありませんが現役中に病でこの世を去りました。

 『ウマ娘』から競馬に触れた方にも、競馬のことを知っていく上で、名馬たちの悲劇と向き合うことになった方は多かったのではないかと思います。しかし、ケイエスミラクルという馬には辿り着かなかったのでは、とも思うのです。もちろん思い入れが強いファンも多いとは思いますが、そんな方でもケイエスミラクルがウマ娘になると考えた方は少なかったのではないでしょうか。

 まず前提としてケイエスミラクルはGⅠを勝っていません。もちろんGⅠレースを勝ってないから知られてない、なんていうことはありませんが、そもそもケイエスミラクルは戦績も少なかったのです。

 1991年の4月に4歳未出走戦でデビューしてわずか10戦。年末のスプリンターズステークスで命を落とすまでのわずか8カ月。それがケイエスミラクルの現役期間です。10戦5勝、勝った重賞はGⅡスワンステークスのみ。この戦績ではあまり知られてないのも仕方ないことかもしれません。思い入れができる前にいなくなってしまった、そういう馬だったかもしれません。

 すでにネットなどで調べた方も多いかと思いますが、ウマ娘のプロフィールでも書かれている、ミラクルと名付けられることとなったデビュー前の2度の命の危機。わずか10戦のキャリアで3度もレコード勝利した快速ぶりを見た方たちからは最強スプリンターだったと言う声も上がるかもしれません。しかし当時ネットがなかったがゆえにエピソードを知ることができなかった人も多かったというのも事実ではないでしょうか。筆者もこのスプリンターズSは見た記憶はありますが、ケイエスミラクルのエピソードそのものは当時知ることなく、後年競馬本か何かで知ったはずです。

物語はひとつだけじゃない

 さて、そんなケイエスミラクルが登場すると発表された時に、先述の通り盛り上がっていた筆者はスッと頭が冷えたと書きました。それはケイエスミラクルという競走中の事故で命を落とした悲劇の馬が追加されたから、というわけでも、ケイエスミラクルに思い入れがあって辛い思い出がよぎった、というわけでもありませんでした(0だったかと言われればそうではないかもしれませんが)。

 ヘリオスとルビーの恋物語、とは言わずとも、それに近しい楽しいストーリーを妄想していたところに、ケイエスミラクルという、ダイイチルビーを語る上で実は欠かせなかったウマ娘が登場したことで、自分が見てきたもの、そして率先して記憶してきたものは、競馬の歴史の中でほんの一部分、一側面でしかなかったのだなと考えさせられたのです。『ウマ娘』運営は、様々な視点から競馬の、あるいは一頭の馬の歴史物語を伝えていくんだな、と。そう改めて考えさせられたからです。

 先にも申し上げた通り、ダイタクヘリオスとダイイチルビーのお話は、結構な割合の競馬好きが『ウマ娘』において見てみたいと考えたのではないかと考えています。しかしヘリオスにはダイイチルビー引退後にメジロパーマーと爆逃げコンビを組むことになる物語があったのと同様、ダイイチルビーにもダイタクヘリオスだけでなくケイエスミラクルという別の物語もまた存在していたのです。そのことを思い知らされ、襟を正すような気持ちになったがゆえにヘリオス・ルビーしか見えておらず興奮していた筆者は冷静にならざるをえなかった、ということなのです。

ウマ娘ちゃんは語りたい?

 さて、その後『ウマ娘』初の舞台化が発表されました。発表されたメインキャストはダイタクヘリオス、ダイイチルビー、ケイエスミラクル、ヤマニンゼファーの4人。ああ、そうか、と思いました。やはり『ウマ娘』運営にとってもダイタクヘリオスとダイイチルビーは深く語りたい存在なのだろうなと。

 現在『ウマ娘』でエピソードを語られる場は、もちろんアプリゲームが主軸ではあるのですが、それだけでは足りません。なので『シンデレラグレイ』や今後スタートすることになるサクラローレルの漫画、あるいはスペシャルウィークやトウカイテイオー、そしてすでに発表されているテイエムオペラオーたち99世代を描くアニメなどの各メディア展開でも多く語られます。

 さらにここに舞台という新たな手段を増やすことで、多くの語りたい、また語られるべき競馬の歴史、エピソード、そして物語を『ウマ娘』として大いに語ることができる。そう言った意図も見えてくるような発表だったのではないかと筆者は感じました。どういう演出になるのか、どういうシナリオになるのか、どういう視点になるのか。楽しみです。できれば配信などで見る機会があれば嬉しいのですが……。

 また、同じく発表された新育成シナリオ「グランドライブ」ではどんなストーリーやエピソードが語られるのかも楽しみにしたいと思います。

 というわけで、また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!

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