感動が増幅される『The Last of Us Part I』のクオリティに脱帽。PS5の性能を生かした環境ストーリーテリング

まさん
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※『The Last of Us Part I』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 SIEから9月2日に発売予定のPS5用ソフト『The Last of Us Part I(ザ・ラスト・オブ・アス パート1)』のプレイレポートをお届けします。

 本作は、2013年に発売された『The Last of Us』をPS5用にフルリメイクした作品です。ストーリーはそのままに、グラフィックやキャラクターモデリングが一新され、より現実味を増した環境ストーリーテリング。多くの人が遊べるように用意された豊富なアクセシビリティ。タイムアタックモードなどの新機能が加わり、はじめて本作を遊ぶ人はもちろん、すでにPS3版の原作やPS4版の『The Last of Us Remastered』を遊んだことがある人でも、新鮮な体験が得られる作品となっています。

 今回はPS3版とPS4リマスター版のどちらもプレイ済みの担当ライターが、フルリメイク版『The Last of Us Part I』をプレイ。ゲームそのものの魅力と、リマスター版から印象として変わった点。新しく用意された要素を中心に、クリアまで遊んだレポートをお届けします。

背景やキャラクターの描写に深みが増し、より感情を刺激するフルリメイク

 2013年に発生した寄生菌によるパンデミックで、人類の文明が崩壊した近未来。人を襲う感染者とモラルを失った危険な生存者たちがはびこる世界で、主人公のジョエルと寄生菌への抗体を持つ少女エリーが過酷な旅をする……。

 2013年に発売された『The Last of Us』は当時としても驚くほどにリアルで、まさに映画的と言えるグラフィックと演出が群を抜いている名作でした。移り変わる季節と旅を通して描かれていく、ジョエルとエリーの心の変化。感染者の恐怖。人間同士の争い。感染の始まりを描いたプロローグから余韻を残すエンディングまで、一瞬たりとも飽きることはありません。没入感のある物語も素晴らしく、今見ても色あせない名作と言って差し支えない作品でしょう。

 本作はPS5専用のフルリメイクということで、実のところ発表当初はあまり期待していませんでした。自分は、もともとこの作品が大好きだったのでPS3版はもちろん、PS4のリマスター版もプレイ済み。すでにお腹いっぱいになるほど遊んだからです。リマスター版の時点でPS4でも十分に通用する美しさでしたし、そこまで変わるのかと疑ってかかっていました。

 そう思って遊んでみたところ、これが全然違う! 公式が出している比較動画で伝わりきらないくらい、全編に渡って背景もキャラクターのグラフィックも作り直されており、臨場感の伝わり方がリマスター版よりも遙かに上です。壊れた世界が本当にあった出来事のようにクッキリと高い解像度で描かれ、当時プレイした時以上に感情移入できました。


 上がPS4のリマスター版、下がPS5のリメイク版。リマスターもハイクオリティですが、PS5の性能を生かしたリメイク版は建物を覆うツタや立体感、経年劣化の表現力が段違いで上がっています。息をのむほどに美しい廃墟です。

 廃墟の美と、対照的な自然の美しさ。服や顔の汚れから感じるリアル。苔の生え方に至るまで、リメイク版のグラフィックは狂気とも言える描き込み。ここまでしなくていいのに、とすら思うほどにすべてが違っています。それでいて、当時の印象とは違わずに違和感がない。実は私、今回PS5のリメイク版を遊んでから、もう1度PS4のリマスター版を遊んでみたのですが、遊び直してからここまで違ったのかと驚愕しました。PS5版を遊んでいた時には、「そうそう、こんな感じだったよ~」と思っていた背景が、比べてみるとまったくの別物。リアリティの面で相当な差がついているのに、それと気づかせないほど自然にすべてが変わっています。

 逆にキャラクターの演技や表情に関しては、その違いを如実に感じるくらいハッキリとPS5版での進化がわかりました。苦労が多い環境に対して、少し若い印象もあった大人たちは年相応に老け込み、しわや汚れからパンデミック後の世界が語らずとも伝わる変化に。


 序盤に同行するテスで比較すると、PS4版のほうはゲーム的な若さを感じます。PS5版でのくたびれた表情から感情を飲み込んで唇をかむ演技は、わかっていてもグッときました。

 原作の時点でも「なんてリアルなんだ!」と驚くくらい、細かい表情をしていたキャラクターたちが、今まで見ていたものは何だったのかと思い直すほどに、演技力が向上。フェイシャルアニメーションの進化が、とにかく素晴らしい。心の機微を繊細な表情で表すイベントシーンはもちろんのこと、移動中のちょっとした仕草からもキャラクターの心情が伝わってきます。

 間違いなく、原作やリマスター版よりもリメイク版をオススメしたくなるほどの差。すでに遊んだことがあるという人でも、質の高い映像表現に満足感が得られるでしょう。

 遊びやすさという面でもグラフィックの向上による恩恵があり、全体的に見やすくなりました。リマスター版だと暗めでわかりにくかった下水道などが、全体的な暗さはありつつも視認性がよくなっています。汚い場所はより汚く、美しい場所はさらに美しく、攻撃に合わせて飛び散ったり壊れたりするオブジェクトや泥臭い服装の汚れまで、誘導されているのではなく自分が世界に入り込んみながら道を切り開いていく感覚。環境の中に行間を感じる、かつてないほどの環境ストーリーテリングが成立しています。

より賢くなった敵AIとの緊張感あふれるステルス&バトル

 映像面において一級品であるだけではなく、ゲームとして体験できる部分もハイクオリティなのが『The Last of Us』。誰もいなくなった廃墟の探索と、容赦のない生存者や感染者との戦いが交互に展開し、緊張と緩和の絶妙なバランスで最後まで飽きることはありません。限られた物資をかき集め、組み合わせて製造し、戦うべき時と逃げる時を見極める。サバイバルアクションとしても文句なしの出来だからこそ、今でも語り継がれる名作なのです。

 本作では、緊張感あふれる戦闘に欠かせない敵のAIを改良。続編の『The Last of Us Part II』で採用された敵のAIをベースにした、原作よりも賢くなった相手と戦えます。体感としては、まず生存者との戦闘では相手に発見されたあとの追い詰められ方が狡猾になっている印象です。背後に回られやすく、きちんと殲滅していかないとリマスター版よりもやられやすいように感じました。

 次に、はっきりと違いを感じたのは感染者の反応。音に反応するクリッカーが、とても気づきやすくなっています。クリッカーは、アナログスティックを倒してゆっくり移動すれば気づかれない相手で、リマスター版ではそこそこの速度で移動してもバレませんでした。リメイク版では、さらにゆっくりスティックを倒して歩かないと発見されやすく危険な相手に。

 これは難易度が上がったというよりも、理不尽さが減ったという言い方が正しいと思います。納得いかないやられ方ではなく、自分のミスで倒されてしまったとわかるので悔しさも倍増。殲滅しなければいけない集団戦ではちょっとでも無茶をすると苦戦するので、冷静な判断と立ち回りが求められるでしょう。

 また、忘れてはいけないのが“アダプティブトリガー”による触感。リメイク版ではDualSenseの振動機能が存分に生かされており、爆発や銃器のトリガーを引く強さ、微細な振動まで細かい反応が得られます。本当に銃を撃つような感覚が残り、世界への没入感が段違いです。

  • ▲銃のトリガーをカチッと引く時の感覚や、弓を引く重さが手に伝わってくるアダプティブトリガー。特に銃器の反応は、実際に体験してみると驚くと思います。

 なによりも特徴的なのが微細な振動。これまでのPS5タイトルでは、アダプティブトリガーでも大きな感触の違いを押し出す場合が多く、爆発や銃の反動といったわかりやすい手応えが返ってきました。

 本作では、はしごを持ち上げるような細かい動作をした時、わずかに震えるのが手に伝わります。小さな振動の感覚が来ることで、物に触っている錯覚を覚えるのです。意識しないと気が付かないほどにさりげなく震えることもあり、例えばキリンをなでる場面では本当に微かで自然な震えが手に伝わる仕組み。トリガーの重さから、やわらかい毛並みの感触まで、アダプティブトリガーが生みだす臨場感はあるとないとでは別物。

 ここでも、ハードの進化を感じます。

 どれだけ過酷な世界を感じ取れるのか、ジョエルとエリーの旅に感情を持って行かれるか、自分自身が彼らを操作することで得られるナラティブな体験こそが本作の肝。グラフィックの向上とAIの改良、アダプティブトリガーによる触感が合わさることで、体験の質は大幅に上がりました。

 操作できる映画であり、崩壊した世界を自らが体験するものでもあり、疑似的な親子の旅を見守る立場でもある。ゲームでしか味わえない極上の体験がそこにあります。

細かなオプションとアクセシビリティの充実による遊びやすさ

 『アンチャーテッド』シリーズをはじめとするノーティドッグの作品は、業界の中でもいち早くアクセシビリティに着目し、障碍を抱えた人でも同じ体験が出来るように研究を重ねていました。本作でも、『The Last of Us Part II』で培ったアクセシビリティが実装されています。

 音声の読み上げ機能やハイコントラスト表示、音響キューから戦闘のアクセシビリティまで、より多くのユーザーが遊べる細かな設定が可能です。

 大作ゲームでも、ここまでしっかりとアクセシビリティが用意されている作品はまだ少ないですが、名作と呼ばれるゲームを少しでも多くの人に届けたいという配慮があり、こうした面でも本作は紛うことなき名作だと思います。

 また、アクションが苦手な人のための細かいオプションや、3D酔いへの対策、3Dのゲームだと迷いやすいという方のためのナビゲーションまで、アクセシビリティの設定は多岐に渡ります。

 ゲームが得意なプレイヤーだとどうしても忘れがちになりますが、難易度がEASYであってもアクション自体が苦手という人だっているでしょう。そうした方でも、最後まで楽しくゲームを遊べる工夫がなされています。

 プレイヤーの立場に沿った設定で遊べることが当たり前の時代になることが重要ですし、その先駆けとなる作品です。

  • ▲あまりにもリアルすぎるゲームで、迷ってしまうこともある本作。ナビゲーション機能は、こうしたゲームを初めて遊ぶ人にもオススメです。

PS5ならではのタイムアタックモードやオマケも充実!

 本作では、新たに“タイムアタックモード”が追加。これはゲームを一度クリアすると解禁されます。

 タイムアタックモード中は、画面の右上に専用のUIが出現。ムービーの再生時などでは時間がストップするようになっており、純粋にプレイ中の時間を計ることができます。“死亡時のセーブデータ消去”といったより高難易度を求める人のためのオプションもあり、原作を遊んだことがある人もふたたびやり込める内容に。

 もちろん、リマスター版同様に前日譚を描いたダウンロードコンテンツの収録に加えて、キャラクターやコンセプトアートを収録したボーナスコンテンツも収録。リメイク版から新たに描かれたコンセプトアートなどもあります。

 今回は発売前のプレイということでオンラインにつなげることができず確認はできなかったのですが、ゲーム内ヘルプでプラチナトロフィーの獲得に欠かせない収集品の場所を示したヒントが見られたり、チャプターごとに2つのPS5用アクティビティーカードが用意されていたりするとのこと。ヘルプ動画とテキストも収録されているので、進行に詰まった人が参考にできる仕組みも。初心者から上級者まで、幅広く楽しめる作品です。

 過酷な旅を通して紡がれるジョエルとエリーの美しくも残酷な絆と、ポストアポカリプスの荒廃した世界を歩くゲームとしての興奮。リアルで、切なく、心を揺さぶる体験を最高の環境で楽しめるリメイク版。実際に遊んでみれば、本作が名作であることは疑いがなく、心に残る作品になるでしょう。

 今まで遊んだことがない人には文句なしにオススメですし、すでに遊んだことがある人でも再度遊ぶ価値がある。原作の価値を壊さずに、素晴らしい形で生まれ変わった『The Last of Us Part I』は、ゲームを愛する多くの人にオススメできる作品です。

 最近、遊ぶタイトルを探している人は、ぜひプレイしてみてください!

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(C)2022 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog LLC. The Last of Us is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the U.S. and other countries.
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