『ヴァルキリーエリュシオン』インタビュー! テーマは“この世界の不条理に対して何を選択するか”

タダツグ
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 神と人との物語が描かれる『ヴァルキリー』シリーズの、14年ぶりのコンシューマタイトルとして期待を集めるスクウェア・エニックスのPS5/PS4/PC(Steam)用ソフト『ヴァルキリーエリュシオン』。

 今回は、本作のプロデューサー兼ディレクターを務める近藤貴浩氏にインタビューを敢行。発売日が迫って来たこのタイミングだからこそ語れる本作の開発エピソードについておうかがいした。

4年の時を経て語られる新しい“ヴァルキリーとエインフェリアの物語”

──『ヴァルキリーエリュシオン』の発売日が近づいてきました。まずは今のお気持ちを教えてください。

近藤貴浩氏(以下、敬称略):本作は『ヴァルキリー』シリーズとしては初の“アクションRPG”というジャンルに挑戦するタイトルとなりました。シリーズの要素をいかに取り入れつつ、新たに何を追加するのか時間を掛けて検討し、結果として想定していたものと大きく変わらず完成させられたことを嬉しく思っています。

──『ヴァルキリー』シリーズのコンシューマタイトルとして14年ぶりの新作となりますが、企画が始動した経緯や本作で表現しようと試みたものはなんでしょう?

近藤:社内で過去に愛していただいたIPを復活させるという動きがあり、そのなかで本作の企画が始動しました。リブートするにあたって『ヴァルキリー』というIPが愛されている理由とはなんなのか、そしてそれを現代に蘇らせるにあたり何を表現すべきなのかを、プロジェクトチーム内で検討を重ね、そのうえでシナリオは“ヴァルキリー自身とエインフェリアたちの物語”に主眼を置き、ゲームとしては“エインフェリアと協力するバトル”を表現するべく動き出しました。

──過去シリーズである『ヴァルキリープロファイル』や『ヴァルキリーアナトミア』とは物語的に何らかの関連性はあるのでしょうか?

近藤:『ヴァルキリー』シリーズとしての関連性はありますが、物語としては完全に別世界のものになりますね。

  • ▲新しいヴァルキリー(CV:鬼頭明里)のキャラクタービジュアル。彼女はオーディンの命を受け、地上界に降り立つ。

──開発チームがお考えになる『ヴァルキリー』シリーズの根幹や基軸となるもの、いわゆる『ヴァルキリー』らしさとはなんでしょう?

近藤:『ヴァルキリー』シリーズが描いてきたのは“夢のある冒険物語”ではなく、“生きるうえでの理不尽や不幸”が一貫したテーマであると捉えています。本作ではそれをさらに発展させ、“この世界の不条理に対して何を選択するか”をテーマとしました。シナリオは原点回帰を軸に、ヴァルキリーとエインフェリアの物語を深堀りしていく内容となっております。

──アクションRPGとして生み出された経緯についてもおうかがいできますか?

近藤:コンシューマタイトルとしては14年ぶりとなる本タイトルを開発するにあたり、当時とはマーケットの状況が大きく変わっていることを熟考した結果です。『ヴァルキリー』というIPをワールドワイドに打ち出していくことも考え、アクションRPGというジャンルを選択しました。

近藤:ゲームシステムをデザインする際は、シリーズおなじみの要素である“エインフェリアとの共闘”と“コンボを積み上げることで発動できるディバインアーツ(必殺技)”を基軸とし、バトル部分に落とし込むことに注力しています。

──本作の物語の舞台となるのは人間界になるのでしょうか?

近藤:本作の世界は“神界”、“地上界”、“冥界”の三層界で構成されています。そのうち、物語のメイン舞台となるのは“地上界”です。すでにラグナロク禍のため、ヴァルキリーは荒廃した世界を魂の浄化を行いながら旅していき、そのなかでエインフェリアをはじめとするさまざまな人物と出会うことになります。彼らとの出会いがヴァルキリー自身にどのような影響を及ぼすのかに、ぜひ注目してほしいですね。

──物語は基本的に一本道になるのでしょうか? それとも複数のエンディングが用意されているのでしょうか?

近藤:本作は“不条理なこの世界で、君は何を選ぶか?”をキーメッセージとしており、プレイヤーが何を選ぶかでエンディングが変化していきます。いわゆるマルチエンディングですね。

──オーディン、ヴァルキリー、フェンリルなど、シリーズファンにとっては特別な名前のキャラたちも登場しますが、彼らの役どころはどうなっているのでしょう? イメージビジュアルやPVにも登場している、黒い鎧をまとったヴァルキリーのような人物にも注目しています。

近藤:本作でもヴァルキリーは主神オーディンの命のもと、世界を救うために地上界で魂の浄化を遂行していきます。オーディン自身は先の闘いで傷ついており、ヴァルハラから動く事ができないため、ヴァルキリーが代行して地上界を旅する形です。そのなかでフェンリルや黒い鎧のヴァルキリーが現れるのですが、彼らにもそれぞれの目的があり、独自の動きをとっています。とくにフェンリルはオーディンに激しい憎悪と復讐心を燃やしており、この辺りも物語のキーの一つとなってきます。

  • ▲強者のオーラを立ち昇らせるフェンリル(CV:中尾隆聖)。オーディンに牙を剝く理由とは?
  • ▲ヴァルキリーの前に幾度となく立ちはだかる黒い鎧の女性。お話を聞く限りでは、もう1人の戦乙女のようだが……。

仲間に加わるエインフェリアは4人──それぞれのバックボーンが濃密に深堀りされる

──過去の『ヴァルキリー』シリーズの大きな特徴として、戦乙女とエインフェリアの関係性や、エインフェリアたちが背負う重たい過去も人気の秘訣だったと思っています。今回、エインフェリアの人物背景にはどれくらいスポットが当てられるのでしょうか?

近藤:本作ではヴァルキリーとエインフェリアの関わりや、彼らが背負う過去の深堀り要素がさまざまな形で登場します。今回登場するエインフェリアは4人ですが、彼らはいったいどのような人物なのか? その過去に何があったのか? など、ゲームをとおして深く知っていくことが出来ると思います。


──4人と聞くと少なく感じる部分もありますが、そのぶんエインフェリア1人1人にしっかりスポットが当てられバックボーンが深堀りされていくのだとしたら、とても楽しみですね。

近藤:彼らと旅をしていくなかで、ヴァルキリー自身にも様々な変化が起きていきます。このあたりはぜひプレイしていただき、ご自身の目で確認してもらいたいですね。

──ちなみに、エインフェリアたちはどのような形で仲間になるのでしょう?

近藤:強い魂を持つエインフェリアたちは、異形化して“不死獣(ナグルファル)”となり、ヴァルキリーの行く手を阻みます。彼らを浄化することで仲間に加わってくれるのですが……ただ倒すだけで仲間にはなるのかといえば、そういうわけではありません。こちらも実際にプレイして確認してみてほしい部分です。

──アルマンはエインフェリアというわけではなさそうですが、彼の役どころはなんなのでしょう?

近藤:アルマンはラグナロク禍の地上界を旅している青年です。物語のさまざまな場面でヴァルキリーたちと遭遇し、時には役立ってくれたりもします。

  • ▲ヴァルキリーが地上界で出会う人間・アルマン(CV:花江夏樹)。何かを探して放浪しているようだが……。

──バトルはアクション要素バリバリのようですが、難易度としてはどれくらいの手ごたえになるのでしょうか? 難易度設定の有無なども知りたいところです。

近藤:本作は“ハイスピードアクションRPG”と銘打ち、手触りの良いアクションを楽しんでいただくことを目指しました。難易度は3種類用意していますので、アクションが苦手な方から本格的なアクションを楽しみたい方にまでプレイしていただけると思います。

──ヴァルキリーはソウルゲージを貯めることでエインフェリアを召喚して戦うとのことですが、このエインフェリアとの共闘はどれくらいの塩梅になるのでしょう? ほぼ常時共闘することになるのか、それともボス戦など大事な局面で召喚するイメージなのかが気になります。

近藤:ヴァルキリーがエインフェリアを呼び出す方法は2つあります。1つは、プレイヤーが任意のタイミングで召喚するというもの。この際、ヴァルキリーには“レインフォース(属性付与)”が発動し、エインフェリアたちは召喚した際に設定した通常技や“エインフェリアアタック』”を使用して一定時間オートで戦ってくれます。

──プレイヤーがヴァルキリーを操作し、エインフェリアたちはオート操作で戦ってくれるわけですね。エインフェリアに切り替えて操作することは可能なのでしょうか?

近藤:エインフェリアを操作することはできないのですが、プレイヤーが敵に対してロックオンをすることで攻撃相手を指示することは可能です。ロックオンがない場合は、AIの判断で行動してくれます。ちなみに、召喚に必要となるソウルは敵を倒した際に出現するブルーソウルやアイテムのソウル・エリクサーなどで回復できます。ソウルが枯渇する局面は少ないので、基本的には常時エインフェリアと共闘できると思いますよ。

──エインフェリアを呼び出す手段は2つあるとのことでしたが、残るもう1つも教えていただけますか?

近藤:はい。もう1つの手段は、ヴァルキリーを成長させることで可能になる“サポート召喚”です。これはプレイヤーが設定したタイミングで自動召喚されるシステムで、たとえばコンボの最後に追撃を繰り出してもらうなど、さまざまな場面での設定が可能です。

──複数のエインフェリアを同時に召喚することは可能なのでしょうか?

近藤:最大で2人のエインフェリアを同時に召喚し、スリーマンセルバトルをすることができます。2人召喚時には、プレイヤーの任意で“レインフォース(属性付与)”の切り替えも可能です。

“ディバインアーツ”を駆使した爽快アクションがゲームのキモ! 過去シリーズに登場した技も多数登場する

──ヴァルキリーは通常攻撃のほか、さまざまな特殊技“ディバインアーツ”を駆使して戦うとのことですが、このディバインアーツの役どころを教えていただけますか?

近藤:ディバインアーツはコンボを積み上げることで蓄積する“アーツゲージ”を消費して使う技です。ディバインアーツでコンボをつなげることでもアーツゲージは回復するので、ディバインアーツを繰り返し使用することも可能です。

──資料のスクリーンショットを拝見した感じでは、属性の概念も重要になってきそうですね。

近藤:はい。本作には無属性を含めて7種の属性が存在し、属性ごとに複数のディバインアーツが存在します。アーツにはレベルの概念もあり、当然ながらレベルが高い方が効果も強力なものの、多くのアーツゲージを消費する形です。なお、ヴァルキリーが“レインフォース(属性付与)”状態の時は、同じ属性のディバインアーツが強化されますよ。

  • ▲“キュアプラムス”のように、回復用のディバインアーツも存在。

──技に属性が存在するということは、敵にも苦手とする属性の概念が存在したりするのでしょうか?

近藤:ええ。敵には弱点属性が設定されているので、それに合わせたアーツを使用すればバトルは有利に展開できます。弱点属性を考慮して攻撃を繰り出すというのは、過去の『ヴァルキリー』シリーズを踏襲している部分です。


  • ▲“バーンストーム”や“ボイドエクストリーム”など、シリーズファンならニヤリとしてしまうものも。

──本作独自のアクションである“ソウルチェイン”ですが、こちらはどのような使い方となるのでしょう?

近藤:ソウルチェインは敵に向かって糸を伸ばし、命中させればその対象に急速移動で近付ける特殊アクションです。うまく使いこなすことで、たとえば打ち上げた敵にさらなる追撃を加えることなんかもできますよ。また、マップ内に設置されたチェインポイントを利用することで、立体的な移動もできます。

──過去作の晶石や光子アクションに代わる新要素ということで、フィールド移動やギミックを解き明かす要となってきそうですね。

近藤:チェインポイントの形状はシリーズファンには見覚えがあるかもしれません。こちらもぜひお楽しみに。

気になるゲームのボリュームはどれくらい? さまざまなやり込み要素も存在!

──本作にはさまざまな武器種が存在するとのことですが、種類自体は公開されている直剣、レイピア、槍、双刃槍以外にも存在するのでしょうか? また武器の入手方法や強化システムについても教えてください。

近藤:現在公開されている武器以外にも、複数の武器が存在します。各武器にはレベルが存在し、これを成長させることで使えるコンボや技が追加されていく仕様となっています。武器はサブクエストをクリアしたりすることで取得が可能です。


──ゲーム自体のボリュームはどれくらいになるのでしょう? もしよろしければ、開発チームが考える想定クリア時間などもお教えください。

近藤:アクションの得意、不得意などあるかとおもいますが、大体すべて遊ぶと20時間程度と考えています。

──隠しダンジョンや隠しボスといったやり込み要素は存在しますか? こちらも可能な範囲で教えてください。

近藤:本作はマルチエンディングとなっているので、これらをすべて見るというのがやり込み要素の一つとなります。それ以外にも
・3種のスキルツリーによるヴァルキリーの強化とアクションの追加
・武器の強化と熟練度アップ
・武器に装備できる“ルーン”の収集
・エインフェリアの強化
・サブクエストクリア
など、様々なやり込み要素がありますよ。

──体験版を配信する予定もあるんですよね?

近藤:はい。9月15日よりPlayStation Storeで体験版が配信されます。少しでも気になっている方はダウンロードしてプレイしていただき、新しい『ヴァルキリー』をぜひ体感してみてください。

──それでは最後に、発売を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。

近藤:『ヴァルキリー』シリーズの最新作である『ヴァルキリーエリュシオン』がついに完成しました。14年ぶりのコンシューマ新作ということで、たいへんお待たせいたしてしまいましたが、このシリーズを今、どう表現すべきかを考え、プロジェクトチーム一丸となって開発いたしましたのでぜひご期待いただければと思います。なお、BGMはシリーズでおなじみの桜庭統さんに全曲担当していただき、戦闘とフィールドがシームレスに変化するインタラクティブBGMとして実装しています。こちらにもぜひ注目ください。

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