『怪物中毒』は“SNSでの相互監視的な空気”への思いが執筆動機のひとつ――三河ごーすと先生インタビュー
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電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『怪物中毒』を執筆した三河ごーすと先生のインタビューを掲載します。
本作は、サプリで誰もが獣人に変身できる街を舞台に、本物の怪物である吸血鬼の少年“零士”と、相棒の人狼“月”が街の掃除屋として、害獣駆除をするアクションストーリーです。
小学館【マンガワン】&【裏サンデー】にて今冬コミカライズ連載スタートが決定しているなど、今後も注目な本作。三河先生には本作が生まれた経緯や執筆中のエピソードなどをお聞きしました!
──この作品を書いたきっかけを教えてください。
コロナ禍における行動制限や閉塞感を肌身で感じたのをきっかけに、昨今のSNSでの相互監視的な空気に対して思うところがあり、テーマとして扱ってみようと決めました。「自由」の1つの在り方と、それが引き起こすさまざまな問題を、独自の世界観をベースに表現してみようという個人的な挑戦の意図が強いです。
──作品の特徴やセールスポイントを教えてください。
刺激的で、アングラで、セクシャルで、バイオレンスな作品です。又、事件の謎を追うちょっとしたミステリ&サスペンスな作品でもあります。誰もが獣になれるという特殊な世界でどんな事件が起こり、人外の主人公たちがどう解決していくのか、彼らの魅力的なキャラ性とともに楽しんでほしいです。
──作品を書くうえで悩んだところは?
「適度にヒネリのあるちょっとした意外性」です。
──執筆にかかった期間はどれくらいですか?
準備期間は1年半。本文に着手してからは1カ月ほどです。
──執筆中のエピソードはありますか?
もともと漫画の原作にしようと思って作っていた物語を急遽ライトノベルとして書き下ろすことになった、という特殊な流れをたどっています。が、そのためか結果的にスピード感のある展開になったので、世の中何が功を奏するかわからないなぁと思いました。
──本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
自由や生き甲斐といったものをテーマに扱う上で、主役はやはりその極地にいる者に務めてほしい。そう思い、怪物であるがゆえに人権を与えられていない少年――霞見零士が生まれました。彼のような本当に社会から弾かれた者ほどではなくとも、多かれ少なかれ自分と社会との間に距離を感じている人は多いのではないでしょうか。私もそうです。
彼の境遇は人間ではないからこそのものなのか、それとも人間であってもそうなり得るのか、どちらなのでしょうね。ヒロイン、と呼べるかはわかりませんが、蛍や命もそれぞれ社会の中での身の置き方、扱われ方に思うところのある存在です。どんな人であっても、彼ら彼女らのうちの誰か1人には共感できるんじゃないかと思います。
──特にお気に入りのシーンはどこですか?
蛍にうどんを奢らされるところです。
──今後の予定について簡単に教えてください。
ひとまず『怪物中毒』の続きを書きつつ、『義妹生活』『友達の妹が俺にだけウザい』『顔さえよければいい教室』などなど……連載中の作品をとにかく書き続けていくつもりです。又、商業小説として発表できない作品アイデアも無限にあるので、何かしらの方法でいろいろな人に披露してみたいなと思っていて、その方法を考えています。
──小説を書く時に、特にこだわっているところは?
ディティールの描写です。よく物語に不要な情報は記述しなくてもよい、といわれることも多いのですが、個人的にはその必ずしも必要でないところにこそ作品の味とか面白味みたいなものが含まれているのだと思います。
──アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
散歩です。最近は散歩に出て、見かけた興味深い風景を写真に撮ったりするのが好きですね。歩いて行ける範囲に美術館があるとわかったので、今度そういったところにも行ってみようかなと考えています。
──学生時代に影響を受けた人物・作品は?
三上延先生の『ダークバイオレッツ』です。初めて読んで登場人物の魅力に引きこまれ、ライトノベルというものを好きになるきっかけになった作品でした。
──今現在注目している作家・作品は?
電撃文庫さんの『竜殺しのブリュンヒルド』です。私も電撃大賞の銀賞受賞者なので(受賞したのはもう10年前ですが……)、最初は同じ銀賞だーと思ってチェックしていただけなのですが。読んでみたらとても骨太で、グッとくる物語で……久しぶりに素敵な読書体験をしたなぁという気持ちになりました。著者の東崎惟子先生が今後どんな物語を生み出すのか、一読者として楽しみにしています。
──その他に今熱中しているものはありますか?
上でもちょっと触れたのですが、風景写真を撮るのにハマっています(といっても本格的なカメラを買ったわけではなく、スマホの機能で撮っているだけですが)。何かを撮るぞ~という気持ちで街を歩くと、意外とこれまで見えてなかった景色が見えたりして新鮮です。
──最近熱中しているゲームはありますか?
『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』です。プレイヤーとしても結構やりこんでいて(と言っても、滅茶苦茶上手いわけではないですが)、観戦勢としてもプロの試合などを観て、eスポーツとして楽しんでいます。
──それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
電撃文庫での5年ぶりの新作、力作なので是非読んでください。ダークで、セクシーで、クールで、バイオレンスな作品を求めている方に届きますように。
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『怪物中毒』
- 発行:電撃文庫(KADOKAWA)
- 発売日:2022年9月9日
- ページ数:360ページ
- 定価:737円(税込)