『ONE PIECE ODYSSEY』都築克明Pインタビュー。物語に戦闘――意識したすべては“麦わらの一味の冒険”であること【TGS2022】
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バンダイナムコエンターテインメントが2022年に発売予定のPS4/PS5/Xbox SeriesX|S/PS(Steam)用ソフト『ONE PIECE ODYSSEY(ワンピース オデッセイ)』。本作の試遊台が“東京ゲームショウ2022”のバンダイナムコエンターテインメントブースにて出展されます。
今回は本作のプロデューサーである都築克明氏にインタビューを実施。25年という長い期間愛され続けてきた『ONE PIECE』をRPGで描くに至った経緯や、本作だからこそ楽しめるポイント、開発中に試行錯誤した点などについてお話を伺いました。
本作の主役は麦わらの一味のメンバー
――本作の開発の経緯をお聞かせください
『ONE PIECE ODYSSEY』は記念タイトルとして、長期間に渡って力を入れて作っていくことを意識した状態から企画が始まりました。現在の『ONE PIECE』を見てみると、まさに怒涛の展開や、続々と新しいキャラが登場するなど盛り上がりを見せています。
そんな中で25周年の記念タイトルとして遊んでもらうゲームはどんな内容が良いか考えたとき、長く描かれた中での『ONE PIECE』という作品の1つの魅力である“麦わらの一味の冒険”を描こうと思いました。今のタイミングだからこそ、辿り着いた島を冒険して、その島にある秘密を探っていくような体験は、プレイヤーの皆さんにワクワクを提供できるものになるのでは、と思ったからです。
それに、ファンの声を聞いてみると、麦わらの一味の冒険をゲームとして遊んでみたいという声も大きかったんです。そういった声を汲む意味でも、『ONE PIECE』の世界の中で、麦わらの一味の冒険をしっかり体験できるゲームしようと決めたという経緯です。そして、彼らの冒険を描きつつ、それを多くのプレイヤーが楽しめるゲームジャンルとなると、それはやはりRPGだろうなと。
――既存の物語ではなく、オリジナルストーリーを用意しようと思った理由は?
今回のコンセプトである“麦わらの一味の冒険をゲームに落とし込む”ということにおいて、結末がわかっているドラマをモチベーション高く遊び続けられるかと言うと、それは違うかなと思ったんです。何が起こるかわからないワクワクを楽しんでもらうため、今回はオリジナルストーリーを準備しました。
――時系列はどのあたりを想定されているのでしょう?
実はこのタイトル自体が5年くらい前から開発をしています。企画当初から、ゲームを出すまでに原作は進み続けると分かっていたので、その段階で時系列をどこかにしっかり定める必要があると考えていました。
メインストーリーの大枠が固まったタイミングが3年くらい前で、アニメ・原作は“ホールケーキアイランド編”のあたりでした。そのため、ゲームのストーリーもその頃の時系列を想定した物語になっています。そう考えながらプレイしていただければ、違和感なく楽しんでいただけるかと思います。
――ストーリーを組み立てる途中で、原作・アニメの動きを受けて大きな変更などは加えたのでしょうか?
もちろん、影響がある部分は多々ありました。ですがゲーム開発の面で考えた場合、ゲーム、特にRPGというジャンルは、すべて一度作った後のゲーム全体を通しての体験が最も大事なので、バランス調整やゲーム導線の整理、デバッグ作業をはじめ確認・ブラッシュアップの時間を多く確保する必要があります。そのような工程はこのジャンルには必須ですし、ここに時間を掛けることがプレイヤーの体験を向上させることになると想定していたので、時系列自体は先ほどお伝えしたタイミングの話であるという部分をキチンと確定させていました。
中途半端に広げて要素を入れることで、ゲームの中に変に謎を残してしまうと、せっかくお金を払ってプレイしたゲームが完結しない形になってしまいます。そしてRPGとして作る以上、映画を見終わったような完結したスッキリ感を味わってもらえるような構成にすることを念頭に置くべきと思いましたので、1つのゲームとして本作のドラマや冒険をエンディングまでしっかりと楽しんでもらえることを優先しました。
――ゲームで描かれるのは独立した物語というわけですね
はい。今回の冒険の舞台となる“ワフルド”の設定はしっかりと作るために、集英社の皆様にご協力いただき『ONE PIECE』らしい要素を詰め込みました。NPCから植物まで、“ワフルド”で登場するもののデザインは、尾田先生が描いてきた『ONE PIECE』の世界観を分析したうえで「『ONE PIECE』だったらこうだよね」と思ってもらえる要素を取り入れています。
ですので、本作では“ワフルド”での冒険を独立した物語として楽しんでもらえればと思います。
――ゲーム内での物語がしっかりと締めくくりを迎えて終わってくれるのは、確かに嬉しいですね。
僕もRPGはすごく好きなジャンルでよく遊びますが、プレイを終えた後に「やって良かったな」と思えるストーリーは、やはりそこで完結して綺麗に終わるものが多いです。RPGにとってすごく重要な要素だと思っています。
――麦わらの一味以外の既存キャラクターも登場するのでしょうか?
そういった要素を求められていることも理解していますので、違和感のない範囲で他のキャラクターも登場させるようにしています。そこに関しては、今後情報を出していく予定なのでご期待ください。ファンの方にとってワクワクするような要素は用意しています!
――本作はバトルの技など演出面でもこだわりを感じる部分が多くありました。
RPGというジャンルはバトルでの演出の自由度が高いと思っていて、アクションゲームでは表現しにくいものも表現できると思っています。例えは、ナミやウソップの技は、ゲームジャンルによっては表現しにくいものもあると思います。たとえば「ウソップ輪ごーむ」などは中々アクションゲームには落とし込みにくいですが、RPGであれば演出を重視しつつ戦いの中で意味のあるものにすることも可能だったりします。
特に、本作は最新の『ONE PIECE』のRPGゲームとして相応しいものになるように、演出面の細かい部分までこだわって作りました。開発チームで「もう少しこうしたほうがいい!」などかなりアツいやりとりを重ねて作り上げた演出ばかりです。
――ターン制コマンドバトルだからこそ実現できた演出というわけですね。
ターン制で自分の出したいタイミングで出せるゲームだからこそ、自由度を活かして技の演出や効果にこだわりを組み込めました。もちろん攻撃するだけじゃない技も多くありますので、技のバリエーションも楽しんでいただけると思います。
――試遊ではバトル後には仲間同士での掛け合いが挿入されました。さまざまな組み合わせの掛け合いがありそうだなと思いましたがいかがでしょう?
そこは充実させようと思った部分ですね。RPGで『ONE PIECE』のゲームを作るとなった際に、やはり一番に考えたのは「麦わらの一味の冒険を楽しんでもらいたい!」ということです。彼らの会話もそうした要素のひとつですから。
『ONE PIECE』らしさを目指したバトルの形
バトルのシステム面にも関連して話すと、キャラクターを単一で操作して戦うのではなく彼らの協力を描くという意味で、複数のキャラクターが同時に戦える感覚を強く感じられるターン制バトルと相性がいいと考えました。
とはいえ、キャラクターたちが全員一同に横並びで戦う様子が『ONE PIECE』らしいかと言えばそんなことはなく、『ONE PIECE』らしいバトルの形については議論を重ねてきました。
――そこで出てきたのがエリアがわかれる“スクランブルエリアバトル”というわけですね。
はい。改めて原作やアニメを見返すと、彼らの戦いは仲間同士で一緒にいるのではなく、それぞれが戦う場所を担当しているシチュエーションが多くありました。それをゲームに落としむため、エリアをわけて戦うバトルシステムを採用しました。
本作の4つのエリアもキャラクターが配置されるパターンはランダムになっていて、複数のキャラクターが同じエリアにいることもあれば、バラバラで始まることもあります。もしエリアが違っていても、ウソップのような遠距離攻撃が得意なキャラは他のエリアにも攻撃できる。
そういった要素をバトルに組み込めば、バトルがすごく『ONE PIECE』らしくなると思いました。本作のコンセプトである麦わらの一味の冒険として、彼らの戦いをより体験してもらえると思っています。
また、エリアがわけられていると言っても、ターン行動権を消費せずに移動できるので、配置を自由に組み替えることができます。そうすることで、より彼らの個性を活かしたバトルを味わってもらえると思います。
――実際にプレイをしてみましたが、エリアの移動を使いこなすことでバトルの幅がより広がりそうな印象を受けました。
TGSで用意した体験版は物語の最初のほうを切り取っているので、相性のみを考えて攻撃を当てればクリアできる難易度になっています。もちろん、先に進むにつれて敵も強くなり、複雑なシチュエーションが生まれてきます。そうなると、仲間の特徴を活かした戦いが必要になってきます。そのようにプレイヤーの成長に応じて少しずつ考える必要が出てくるバランス調整を意識しています。
――バトル開始状況が変化する“ドラマティックシーン”はどういった意図で取り入れたのでしょうか?
ターン制コマンドバトルのネックとして、飽きが来やすいという部分があります。そこで変化を加えるために『ONE PIECE』らしいトラブルを再現しました。それが“ドラマティックシーン”です。例えばサンジが因縁を付けられた相手と対決する、ルフィが1vs1を挑む際に仲間がサポートするなど、時折普段のバトルとは異なるシチュエーションがランダムで発生するようにしています。
――なるほど。バトル部分が単調にならないようにしつつも麦わらの一味らしさを感じられるようにしているわけですね。
ええ。本作で“麦わらの一味の冒険を描く”と決めた際に、漫画やアニメではテンポを重視する関係で描かれていないような、ゲームだからこそできる会話ややり取りがあるのではないかと考えました。そこで、移動や戦闘を多く行うことになるRPGというジャンルならではの、本来起きているであろう彼らのやり取りをできるだけ取り入れることを意識しています。
例えばゾロが先頭を歩いていたら、間違いなくサンジは「なんで道に迷いやすいてめェが先に歩いてるんだよ!」みたいな突っ込みを入れると思うんですよね。そういった想像できるようなやり取りをゲームには多く取り入れています。その分、シチュエーションに応じて各キャラクターがどんなことを喋るのかの分析は大変でした。冒険のテンポを重視している個所以外では数多くの掛け合いを用意しているので、ぜひお楽しみください。
――フィールドでは“見聞色の覇気”というものを使用できましたが、試遊ではちょっと使い方がわかりませんでした。あれはどのような使い方をするものなのでしょうか?
簡単に言うと“見聞色の覇気”を使用すると“多く経験値がもらえる強い敵はどれ?”のような周囲のレアエネミーの情報を得ることができます。RPGはレベルが上がっていく瞬間が楽しい一方で、作業感もありますし、飽きてしまう人も多い要素です。しかし、その敵を探して倒すことでより多くの経験値がもらえるのであれば「じゃあ積極的に探していこう」という気になってもらえるのではないかなと思い、このような仕様を入れています。
今回はシンボルエンカウントを採用していることもあり、うまく『ONE PIECE』らしい要素を取り入れつつ、作業プレイ感を減らすための工夫としてフィールドで“見聞色の覇気”を使えるようにしています。
――発売後のDLCの販売などは予定しているのでしょうか?
今回の『ONE PIECE ODYSSEY』はRPGということで、ゲームを買っていただいた段階でしっかりと完結した体験をしていただけることを意識しています。そのため、追加で何かを買わないと結末までを体験できないということはありません。
ただ、プレイヤーの方の中にはもっとこの島での冒険を楽しみたい、やり込みたいと思う方もいらっしゃると思うので、その方々に向けたコンテンツは要望に応じて準備していければ……と考えています。
――最後に発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
『ONE PIECE ODYSSEY』は非常に長い時間開発をしており、原作の連載25周年に相応しいタイトルとして非常に力を入れている作品となります。その意味で、みなさんが体験をしたいと思い続けてきた“麦わらの一味の冒険”を、高い没入感とともに楽しめる内容として作り上げられたと思っています。
現在進行形で『ONE PIECE』を追っている方はもちろん、かつてルフィたちの冒険にワクワクしたことがある人も、本作はしっかりと楽しめるゲームとなっていますので、ぜひ発売を楽しみにしていてください。
※記事内の画面は開発中のもの。
(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
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