小高さんが『レインコード』でアピールしたいことは? “死に神ちゃん”デザインや謎迷宮、組織情報などを質問

kbj
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 2023年春に発売予定の『超探偵事件簿 レインコード』を手がける、小高和剛さんへのインタビューを掲載します。

 『超探偵事件簿 レインコード』は、記憶喪失の探偵見習い“ユーマ”と、ある契約に基づきユーマに取り憑く“死に神ちゃん”の2人が、雨が降り続く奇妙な街で未解決事件に挑む、ダークファンタジー推理アクションです。

 インタビューでは先日公開されたプロモーション映像内の情報などを含め、世界観やキャラ情報、ゲームサイクルなどについてお伺いしました。

Nintendo Direct

雨が降り続ける街で探偵と巨大企業が対決!

――本作のタイトルの由来をお話ください。

 「探偵ものをやりたい」ということが一番最初にあり、探偵に似合う街を考えた時に、ロンドンっぽい霧がかったイメージがありました。オリジナリティを出そうとした際に、雨が似合う街になり、探偵がレインコートをかぶっているのは絵になるだろうと。小松崎にイメージイラストを描いてもらったら、ピッタリだったのでそれをもとに企画書を書きあげました。

 着ている“レインコート”と探偵っぽい“コード”をかけて『レインコード』という仮タイトルにしていましたが、どこかで変わると思ったんです。が、しっくり来ていて他にいいタイトルが出てこず……ただ『レインコード』のままだと内容がわからないので、頭に“超探偵事件簿”をつけました。

――超探偵とは、どういった人になるのでしょうか?

 世界の未解決事件の撲滅を掲げる特殊な組織があり、そこに属する探偵が超探偵です。『ダンガンロンパ』でいうところの“超高校級の〇〇”のような二つ名を皆が持っており、事件解決に特化した異能力を持っています。

 ゲームに出てこない能力で例えると、“物を透過してみることができる”とか……それを使って捜査を進めていきます。

――PVでも探偵のようなキャラクターが見られますが、どれくらいいるのですか?

 超探偵の数は結構います。その一方で、街を支配している巨大な企業があり、そこに属するキャラもいる。登場するキャラはかなりいますね。

――探偵vs企業ということですが、探偵と企業の対立はどういった図式になるのでしょうか?

 この雨が降り続ける街は、超巨大企業に支配された結果、政治が腐敗しているので事件が起きても隠ぺいされてしまうわけです。探偵たちが、いくら謎を解いても隠ぺいされてしまうため、対立しているのです。

――主人公は探偵見習いということですが、組織には属していないのでしょうか?

 属しているのですが、見習いなので超探偵のような能力を持っていません。どういう経緯があったのかは覚えていないのですが“死に神ちゃん”と契約しており、その力を借りて、事件を解き明かしていきます。

――“死に神ちゃん”はユーマ以外にも見えているのでしょうか。

 ユーマにしか見えていません。この世界には超探偵の異能力が存在しているのですが、死神の存在はあり得ないものとしてとらえられています。

――“死に神ちゃん”は霊体と人間で2つの姿を持っているようですが、どのような違いがあるのですか?

 現実では人魂として、ユーマにくっついて街を探索します。“死に神ちゃん”がパワーを発揮して、真実につながる空間“謎迷宮”を作りだした時には、人型になります。

――“死に神ちゃん”は具体的にどういった力を持っているのでしょうか?

 説明をしても理解されにくいのですが……“謎迷宮”を作り出す能力があります。“謎迷宮”は現実の“殺人事件の謎を具現化した迷宮”です。死に神ちゃんはそこに干渉できるため、ユーマをそこに連れていきます。

 迷宮を踏破すると現実世界の謎が解けて、それによって犯人に何かが起きます。例え現実世界で企業が謎を隠ぺいしても、謎迷宮で謎を解決することで事件が解決に向かうわけです。

 死に神ちゃんの力で解決するのですが、ユーマはそれを言えないので、周りからはなぜか事件が解決していくように見えます。

“謎迷宮”では謎怪人とバトルを

――ゲームの遊び方、サイクルについてお教えいただけますか?

 軸となる大きなストーリーがあります。それを進めていくと途中で殺人事件が起きて、それを調査し、その後“謎迷宮”で解決します。物語は章仕立てになっているので、事件が解決すると次の章に進め、また物語を進めていきます。

 『ダンガンロンパ』に近いゲームサイクルを意識していただければいいかなと。

――街はどれくらいの大きさでしょう。

 設定では、東京プラスアルファくらいの大きさです。かなり広い場所を組織が牛耳っています。

 ただ、オープンワールドタイトルのようにすべてを移動できるわけではありません。街の中は繁華街、スラム街、ビジネス街などいくつかのエリアがあり、そのエリア内を自由に動けます。

――進行具合に応じて、行く場所が増えたり、変わったりすると。

 そうですね。各エリアはまったく違う雰囲気になっているのですが、街全体を作ると各エリアのつなぎの部分も作ることになり、移動が退屈になりがち。そのストレスを感じずに楽しめるように、快適に移動できる作りにしています。

 プレイヤーとしては、違う景色が目に入ってくるので、飽きずに探索できると思います。まったく違う街のように感じられるほどのバリエーションがあります。推理アドベンチャーでここまでの物量を用意しているものは少ないのではないでしょうか。

――“謎迷宮”では謎怪人とバトルを行い、矛盾を切るということですが、調査の結果によってバトルが楽になる、難しくなるなどの違いはありますか?

 そこは変わりません。調査では、超探偵の力を借りて、必要な証拠を集める必要があります。事件によって異なる探偵の能力を使うため、調査のバリエーションも豊富です。

 ただし、証拠が揃ったとしてもそこからは隠蔽されてしまうので、“謎迷宮”に向かい、謎を解くことになります。異世界は謎を具現化しているので、謎を隠蔽したがっている人が謎怪人として現れます。アクションゲームのようなシステムを使い、謎怪人の主張を打ち砕くように対決していきます。

――キャラクターの頭身が下がったことで、広い層を意識しているように思えるのですが、ゲームの難易度はどれくらいを想定されているのでしょうか。

 謎を解く部分をテキストアドベンチャーではなく、3Dアクションで表現しています。その解き明かすおもしろさを3Dで味わっていただきたいというのが作品の根っこにあるため、アクションが難しくて詰まるようにしない……ために調整している最中です。

 なお、調査の部分で詰まることはおそらくないと思います。

――周回プレイなど、やり込み要素はあるのでしょうか?

 ミニゲームのようなおまけ要素はありませんが、街を自由に探索できますし、困っている人から依頼を受ける要素があったり、超探偵と仲よくなるイベントを設けていたりします。サブクエストのやり込みは結構あると思います。

――街の人とふれあって交流していくのは探偵っぽいですね。

 3Dゲームとしてそういう要素を入れたいと。これによって探偵の雰囲気がかなり出てきます。

キャラデザやサウンドについてお願いしたことは?

――キャラデザの小松崎さん、サウンドの高田さんとは長い関係になります。本作ではどのようなことを話されました?

 小松崎とはこの企画が立ち上がる時から一緒にやっているので、イメージを共有しつつデザインをお願いしています。超探偵は、制服を基調にするけど自由に着崩す人もいるとか、レインコートを着ているとか。

 頭身については少しカワイらしく、初代『ダンガンロンパ』くらいの路線にしています。探偵ものはダークな雰囲気になりがちですが、頭身が高いキャラではなく、少し小さめのキャラにするほうが雰囲気とのギャップが出ていいだろうと考えて、相談しました。

――メインキャラのデザインで小高さんからお願いしたことはありますか?

 ユーマは死神に取りつかれるということで、最初は目の下にクマがあるようなデザインだったのですが、ユーザーがプレイしていて感情移入しやすいようにカワイさを出してもらいました。

 死に神ちゃんの人型のデザインについては、僕がエロくしたかったんです。小松崎はシブシブでした(笑)。

 人型は3Dモデルになるので、動きを表現できることや、3Dならではのデザインにすることを意識しています。人魂から人型になるメタモルフォーゼ(変身)シーンや、何かする際の動きなどをすべて3Dで描いているので、見ごたえがあるかと。

 人魂のほうはまったく問題がなく、彼の第一稿でオッケーを出しています。

 なお、“死に神ちゃん”という名前ですが、“死神”の間に“に”が入っているのですが、彼女は一般的に考えられるような死神ではなく特殊な存在ということで、“死に神”にしています。

――人魂時の王冠は何を意味しているのですか?

 死の“神”なので王冠をかぶっているんじゃないでしょうか……聞いたことはないのですが(笑)。

 なお、サブキャラが多数いるのですが、その中には小松崎が好きな変わったデザインのキャラもいます。そちらで彼のデザインの幅の広さを感じていただけるかと。

――高田さんへのお願いは?

 僕はもともと探偵系のドラマや映画が好きなので、そのサントラを聞いてもらい、探偵ものっぽい音楽をお願いしました。高田さん的には『ダンガンロンパ』のサウンドには寄せないようにしていると言っていました。ただ、高田さんのテイストや路線は含まれているとは思います。

 絵を見て音楽を作っているので、僕から何か言うことはほぼありませんでした。ただ、曲数が足りなかったので、アレンジバージョンをお願いしたりはありましたね。

 なお、基本的にはスパイク・チュンソフトの方と直でやり取りしてもらって、上がってきた曲を聞いています。

――小高さんのシナリオといえば、意外性に加えて、ブラックユーモアや際どいネタなども特徴ですが、そちらは楽しめるのでしょうか?

 『ダンガンロンパ』ではそのアングラ感で攻めている部分がありました。

 本作も僕が書いているのでそこは内包されているのですが、本作『レインコード』はボリュームがあり、スケールがすごく大きくなっています。そのため、全体から見ると、いろいろな要素があり、間口は広がってアングラ感は薄まっているかもしれません。

 とはいえ、以前から僕のシナリオが好きな人が「なんか、綺麗な小高になったな」とガッカリすることはないと思います。

 もちろん、意外性やどんでん返しはちゃんとあります。

――最近ではアニメを含めて、新規IPで新たな世界を構築されています。シリーズを作るケースと、新作を作るケースではどのような違いがありますか。

 『ダンガンロンパ』は基本的に限られた密室空間での出来事で、キャラは15人前後が出てきます。外の世界については、日本とは言っていないのですが、我々の現実世界に近いイメージでした。それに対して、『アクダマドライブ』にしても『レインコード』にしても完全に架空の街を作っています。

 そうなるとその世界に住んでいる人がいて、交通手段や通貨など、すべての要素について考える必要があるわけです。それがすごく大変で、どちらのタイトルも世に出るまで5~6年かかっています。

 架空の世界を構築するのにとにかく時間がかかると感じました。ただ、いろいろな新しい設定を作るのはおもしろくてやりがいはすごくありますね。

 最終的に、作品には採用されていない小ネタなどもいろいろあります。

――採用されていないものでも構わないので、小ネタについて少しお披露目いただけますか?

 この街は雨がずっと降っています。そうなると植物はどうなっているのか? 雨で枯れているのか? ただ、それだと味気ないので、なにがしかの栄養素で育っているものもあれば、アクリルケースのような中で植物を入れて飾っているセレブの家もある。そんな感じで『レインコード』の世界観にあった設定をたくさん用意しています。

すべての要素のクオリティを高く作っているタイトル!

――今年はアドベンチャーゲームが豊富だと感じるのですが、刺激を受けたものはありますか?

 『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』はプレイして、当然おもしろいと! あと『春ゆきてレトロチカ』もプレイしました。

 アドベンチャーと言えるかは別ですが、ストーリーの印象に残ったのは『Inscryption』です。自分が審査に参加している日本ゲーム大賞(Japan Game Awards)のゲームデザイナーズ大賞でも選ばせていただきました。ゲームにおけるストーリーテリングという意味で驚きましたね。

 あとは個人的に好きだったのは、ゲームデザイナーズ大賞の次点だった『NEEDY GIRL OVERDOSE』です。シミュレーションっぽいのですが、練り込んで作っていると感じましたし、キャラ性もおもしろいですね。

――東京ゲームショウの会場を少しご覧になられたということですが、雰囲気などはいかがでしたか?

 少ししか見ていないので映像の力に引っ張られるのですが、カプコンの『エグゾプライマル』は自分が好きな『ディノクライシス』のような雰囲気を感じますし、ロボアクションもよくやっていたので純粋にプレイしたいと思いました。

 そもそも、僕は毎年東京ゲームショウに行っているわけでないので、毎回つねに懐かしい気持ちで見ています。コンパニオンさんがいて、盛り上がっていて「こんな雰囲気だったなあ」と。あとは「みんな、楽しそうでいいな」とも思いますね。

――昨今、日本のタイトルは海外で発売され、大きな反響があります。作るに際して、国外のユーザーを考えているのでしょうか?

 『ダンガンロンパ』でも半分くらいは海外のファンでした。ただ、海外のファンだけを意識して作ることはありません。

 それどころか、日本国内のユーザーを意識しているわけでもないです。あくまで僕がユーザーだったらこういうものが欲しいということを意識して作っています。

 しかし、今回の『レインコード』については推理アドベンチャーをニッチなジャンルから広めたい、普段やらない人にも遊んでほしいという願いがあるので、そういう人を意識しています。

 そのため、PVであれば3Dのよさを生かした映像をこれから用意していきます。

――ゲーム内の要素では、どういうことを意識されているのでしょうか。

 “謎迷宮”がまさにそうです。ずっと同じ場所にいて謎解きをするのではなく、謎を解いていくごとに景色が変わるし、謎を解くこと自体も派手に見える。だからアクション要素が入っています。

 話がおもしろいという推理アドベンチャーのよさがあるのは当然としつつ、後ろから見ている人もおもしろいと感じるゲームにすることを大事にしています。

――これまでと被るところはあると思うのですが、本作でアピールしたい部分はどこでしょうか?

 推理アドベンチャーはその時代時代でエポックメイキングが出てきていると思います。『ポートピア連続殺人事件』しかり、『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』、個人的には『探偵 神宮寺三郎』であったり……2020年以降、アドベンチャータイトルはいろいろ出ているのですが、推理アドベンチャーの柱はまだないと思うので、その柱になりたいと企画を立ち上げる時に考えました。

 そこで今までのタイトルと変えたほうがいいと思ったのは“絵力”の部分です。それを変えれば、皆さんが謎解き体験を楽しめるはずだと思って、どんどん変わる街、どんどん変わる景色を作ろうと思いました。

 しかし、スタッフからは「気が狂っている物量ですよ」と言われました。

――街に加えて、謎迷宮もある。風景が変わるとアセットも変わるわけですからね。

 謎迷宮もいつも同じ迷宮ではなく、殺人事件を具現化しているので、事件ごとに絵も形も毎回違います。スタッフが言うには「ゲーム会社の人が見たら、驚く作り方をしていますよ」とのことです。

――最後に伝えたりないことはありませんか?

 規模が大きなタイトルなので、すべての要素のクオリティを高く作っています。

 僕としてもこれまでのキャリアの中でも一番大きなプロジェクト。「テキストでごまかせばなんとかなる」というのではなく、すべてにこだわってくみ上げています。

 キャラ情報や声優、細かいゲームシステムもまだ出ていないのですが、2023年の春発売に向けて、ここから情報をドンドン伝えていくので続報を楽しみにしてほしいです。

 特に電撃さんは推理アドベンチャーに強くファンもいるので、一緒に盛り上げたいです。あと、“死に神ちゃん”のデザインは頑張ってギリギリを攻めているので、電撃読者に刺さると思います。

 最後に3Dのアクションやモーションについて。『JUMP FORCE(ジャンプフォース)』などに関わったスパイク・チュンソフトの精鋭スタッフが担当しており、かなりカッコいい3D演出が出てくるのでご期待ください!

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