郭嘉、満寵、許褚。三者三様、魏の忠臣たちの逸話を紹介【三国志 英傑群像出張版#10-2】
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三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。
三国志のあまり知られていない逸話を紹介しております。今回も全開に続き、【魏の人物】にスポットをあてて紹介していきます。
今回は郭嘉(かくか)と満寵(まんちょう)と許褚(きょちょ)のお話。
孫武(孫子)に学ぶ郭嘉
郭嘉は貧しい家庭に生まれ、幼い頃から両親の重労働を手伝っていた。それでも彼はよく仕事と勉強を両立させていた。
草を刈り、薪を集めるために、郭嘉はしばしば家に帰ることや食事をすることを忘れてしまった。豚が食べる以上の草を刈り、豚が燃やす以上の薪を切って、読書の時間を確保することもよくあった。郭嘉は学問に没頭するあまり、空腹や喉の渇き、疲れがいつ来るのかわからない状態だった。
ある時、夜明け前に郭嘉は起きて、狼嵖崗(ろうさこう)の持ち場に直行して薪を切りに行った。着くと、勢いよく2時間足らずで大きな薪の束を2本切った。
そして「これなら家族全員が2日間使うのに、十分な薪の量になった。残りの時間は勉強に充てられる。」と考えた。そこで郭嘉は大木に寄りかかって『孫子兵法』を研究した。
一語一語、その真意を理解しようと頭を悩ませ、単語や文章の意味を正確に理解しようとし、重要だと思うところには常にしるしを付け足した。
そのまま郭嘉は勉強を続けていたが、正午に近づいたころ一陣の風が吹き、南東から黒い雲が山を包み込み、郭嘉は夢の世界に迷い込んだ。
一生懸命集中して勉強していた郭嘉の耳には剣や槍がカタカタと音を立てて、ある時は嵐の風雨のように、ある時は平原を歩く馬のように、ある時は遅く、ある時は速く、聞こえるだけでした。
母は郭嘉が帰って来ずそうこうしてると暗くなった。彼女は落ち着かず、一晩中眠れなかった。翌朝、母は食事を作り息子を探した。彼女はまず濂江の岸辺に行ったが、息子の姿はなかった。
そして、そのまま狼嵖崗に向かい、叫びながら探すと、彼女の声は狼嶺山にこだました。すると目を閉じ、眉をひそめ、青ざめた顔で、大きな木のそばに横たわっている郭嘉少年を見つけた。
母は「こんな重労働を頼むんじゃなかった」と郭嘉を抱き上げた。「起きて家に帰ろう」と母は何度も呼びかけたが、郭嘉は目を覚まさない。
不安になった母は、手で息子の呼吸を確かめたが息をしてない。「私の息子が死んでしまった。奉孝!」。
その時だ! 郭嘉が大きく息を吸い復活したのだった。母は慌てて「戻ってきて!」と叫んだ。
暗闇で集中していた郭嘉だがそのつぶやきが聞こえた。「戦いに永久の形はなく、水に永久の形はない。敵を変わっても勝てる者を神と呼ぶ。」「奇正相生(正攻法をもって対し、奇策をもって勝つ)」と言っているのを聞いて、母はまったく理解できなかった。
疾風に渦巻く暗雲は、若き日の郭嘉が高い志を持ち、国のために尽くすことを決意したことを聞いた孫武(孫子)の霊が、郭嘉に兵法を教えるために雲を呼んだのだった。
『孫子兵法』全13章を短期間で学び、自分の形を練習することができ事で彼は能力をあげた。その後、郭嘉は曹操を補佐するために数々の作戦を立てるが、それはこの10数年にわたる熱心な研究とは切り離せないものであった。
法を執行する鉄仮面
曹操は若い官吏である満寵を許県の県令に任命した。当初、古参の廷臣たちは「許県は都の重要な場所で仕事も多く、満寵は若すぎて職務を果たせない」と反対した。
曹操は「年齢は官吏の良し悪しを判断する基準にはならない。仕事ができ、断固として法律を執行できる人を探している。彼は両方持っているのだから、彼を使うのだ」と返した。
就任後、満寵は曹操の言ったことを実行に移し、朝廷や世間から称賛されるようになった。その頃、曹操の従兄・曹洪の家には客人がいて、主人の権力に頼って許県を運営し、民を虐げ、女性や民の金を略奪しており、その罪は重かった。
満寵は彼を逮捕し法律に従って処罰しようとした。曹洪は満寵本人に手紙を出し、客人に対する許しを請うた。
満寵は、「この男は何度も禁止令を破っており、民衆の怒りは大きく、法律が許さない。」と返事を書いた。
曹洪は仕方なく曹操の元へ行き訴えた。曹操も折れた。介入せざるを得なかったのは、曹洪への兄弟愛と、彼が戦功の高い将軍であったからだ。
これを知った満寵は「刑の執行を遅らせれば、犯人は免れるだろう」と考え、すぐに犯人を尋問して有罪にし、牢屋の担当官が報告する前に首をはねた。
曹操はこの人が斬首されたと聞くと、「満寵は鉄の顔で法を執行する男だ!」と感慨深げに言った。そして「我々全員がそれに倣うべきだ。」とも。
その後、満寵の処罰の話はあちこちで聞かれるようになり、人々は満寵の若さと法の執行能力を賞賛するようになった。結果、許都の法令がうまく運用され、社会情勢が改善された。
許褚の稽古
曹操は許褚という虎将軍を部下に置いていた。この男は最強で、人は“虎痴(力が虎のようであるが頭の回転が鈍い)”と呼ぶ。
12歳の時、家族は彼を茅山で高い技術を持つ師匠に武術を習わせた。師匠はすぐに勉強させるのではなく、まず裏庭に案内した。
地面にある太いナツメの木の切り株を指差して、「まずここから練習しよう。このナツメの木の切り株を割りなさい」と言った。
許褚「剣はどうするのですか?」
師匠「小剣は必要ない。」
許褚「斧を一人で使うのですか?」
師匠「斧もダメだ、使うのは両手だけだ」
許褚は仕方なく命令に従い、素手でなつめの木を割ろうとした。しかしナツメの木は特に硬く、素手や拳でどうやったら割れるのか?
1ヶ月が過ぎたが、全力を尽くして叩いたが割れない。しかし、ナツメの樹皮は剥がれ落ち、切株は地面に丸く転がっている。
そして3年連続でナツメヤシの切り株を切り刻みピカピカになった。木は割れないし、師匠も他の技を教えないので、許褚は退屈し、ある夜、荷物を丸めて茅山を出て家に帰った。
許褚は家に帰ると、何も言わず、椅子に向かってすねていると父は彼を見て尋ねた。「仲康よ、武術は極めたか?」
許褚は恥ずかしさと怒りで机を叩くと、「ド~ン」という音とともに机が粉々になり、家族は呆然とした。それを見た父は、「まさか3年でこんなに凄い武術を身につけたとは!」と驚いた。
これを聞いた許褚はさらに怒った。そして家族に山での出来事を最初から最後まで話した。それを聞いていた父親は、笑って「師が教えないのではなく、お前が師の意図を理解していないのだ。第一歩は基本的な技術を練習するというのが師の意思だ。」と諭したのだった。
許褚は理解して茅山に戻った。そして師匠に自分の過ちを謝罪し、その後、師匠から3年間、再び学び続けた。
まず3年間の基礎練習を行っていたので武器がうまく使えるようになっていた。特に、百八十斤の刀はより快適に使いこなせた。
その後、彼は曹操陣営に入り曹操の中原平定に力を尽くした。
1つ目の郭嘉の話。やはり改めて努力なくして天才にはなれないなあと思うお話でした。
山に芝刈りに出ながら勉強する姿は“二宮金次郎”みたいな感じに思えました。軍事の天才、郭嘉の話
郭嘉ファンならうれしい逸話ではないでしょうか?
2つ目の満寵という人物、三国志演義では徐晃を説得し味方に取り入れ、樊城の戦いでは曹仁の参謀として彼を励ます人物です。内政も軍事もすぐれた隠れた名将といえると思います。
個人的な話を一つ。わたしが満寵に興味を持ったのは“合肥新城”という場所へ行ったことでした。
合肥といえば、張遼が有名ですが、“合肥城”のほかに“合肥新城”という城がありそれを作ったのは満寵だというのです。
しかも戦うためだけに作られた砦的なお城。住民が場内に住んでいないという点で日本のお城に似ています。素晴らしい城跡は今も残っており公園として整備されています。
難攻不落で落ちたことがない。彼がすごい人だったんだなあと思わされた瞬間でした。
3つ目の許褚の話。3年も切り株を叩き続けた許褚の根気には頭がさがります。
しかし許褚ならすぐにでも切り株を割っててもおかしくはないと思ったのは私だけでしょうか(笑)
いかがだったでしょうか? 三者三様、魏の武将たちの逸話を紹介しました。
いまに生かせる見習うべき点があったのではないでしょうか? 次も魏の人物を続けます。
三国志祭 ゲーム『くにおくんの三国志だよ 全員集合!』開発ディレクターインタビュー実施!
日時:11月6日(日)13時30分~14時
場所:三国志祭会場 KOBE鉄人三国志ギャラリー
料金:観覧無料(先着順)※施設外でも映像を閲覧できます。
オンライントーク。佐藤ディレクターに色々質問していきます。制作秘話などを聴けるチャンスです! 遊んだことがある方もない方もぜひこの機会にご参加ください。
三国志祭 当夜祭開催!
今年の三国志祭の当夜祭は造形&プチ講座イベントです。
簡単な三国志的造形を5つほど作り、それに関するプチ講座などを含めて実施します! 小学生から参加可能。三国志気分で楽しみましょう!
人数:限定20名、要事前予約(三国志ギャラリーまで)
料金:2,000円(材料費含、コスプレ参加OK)
※造形を作らない付き添いの方:500円、1名まで
日時:11月6日(日)17時~20時
★ゲスト予定 (一部オンライン参加)
龍谷大学 竹内真彦教授
ナレーター 樹リューリさん
俳優 鎌倉太郎さん
研究家 一条さん
協力:暗唱空域
進行:KOBE鉄人三国志ギャラリー館長岡本
主な内容(予定)
・三国志的冠作り&プチ講座
・竹簡メモ帳で詩作りゲーム
・プラモデルで三国志風
・プチ木牛流馬つくり&プチ講座
・1人1枚三国志紙芝居作り
岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!
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