『ガンダム EXVS.2 XB』開発内部に迫る特別企画。こだわりの機体モデルの秘訣は……まさかの3Dプリンター?
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- たく坊
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稼働中のアーケード用アクションゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』の開発者インタビューをお届けします。
本作は、幅広いユーザーに人気の『エクストリームバーサス(以下EXVS.)』シリーズ最新作。前作『エクストリームバーサス2』からEXバーストクロスをはじめとした追加要素に加えて、新規参戦機体を含め、合計200機以上のMSが登場します。
ゲーム内のさまざまな要素を構築、開発するスタッフへのインタビューを掲載。シリーズを遊ぶプレイヤーが少し気になるような質問を投げかけています。
今回はモデルチームに、登場する機体のグラフィック表現やモデルリファインの苦労、容量への対応などを質問しました。
なお、インタビュー中は敬称略。
『SEED』リファインの制作段階は苦労の連続だった!?
小和田:バンダイナムコスタジオの第1スタジオで、本シリーズのアートディレクターをしております、小和田大介と申します。よろしくお願いします。
――ビジュアルを担当されているわけですね。いつから開発に参加しているのでしょうか?
小和田:『EXVS.』シリーズで言うと、いわゆる無印と言われる『エクストリームバーサス』から携わっています。当初はステージ制作、背景を担当していました。開発は2009年ごろからだったため、かれこれ10年以上になります。
――10年続いていると技術の進歩も著しいと思います。
小和田:技術的な革新部分で言うと、本シリーズにかかわらず、ゲーム業界全体で「物理ベースレンダリング」を採用するケースが多くなったことにより、現実世界の物理現象を再現してリアルな絵作りをすることはエンジンからのサポートで、非常に作りやすくなりました。
その一方で、『EXVS.』シリーズのようにアニメを原作としたプロジェクトで物理現象をそのまま反映させてしまうと、表現においてアニメとの折り合いがつかなくなり、違和感が覚えるようになってしまうんです。もちろん、機体の表面の表現をはじめ、助けられている部分は多いのですが。
具体的な例で言うと、“ビーム・ライフル”があります。我々の生活の中における物理原理的には、光ったピンクの物体は、昼間はピンクに見えないはずなんです。目立たないピンクになるか、目立つのであれば太陽光に負けないほどの光量が必要なので、発光するようになります。
ただ『ガンダム』作品としては、それだと非常に困るわけです。そのためはっきりピンクならピンク、グリーンならグリーンとわかるようなエフェクトが必要になるところが非常に難しかったですね。
他の開発が楽になっていく中で、うちのチームは難しくなったという印象があります。
――もともとグラフィックには定評があるシリーズですが、最近の作品は特にグラフィックが美麗になりましたね。
小和田:無印に関しては、機体のグラフィックコンセプトは「自動車展示場に置いてあるような車を目標にしよう」となっていました。例えば赤ならフェラーリですね。ユーザーの年代的に、カッコいいと感じやすいモチーフや質感などを表現するようにしていました。
一方で当時から他の『ガンダムゲーム』では、砂の中にいるようなウェザリング(風化させたような表現)がゴリゴリの、リアルな兵器としての表現が求められていることが多かったと思います。特に高年齢層、初代『ガンダム』のファンはそういう描写を好む傾向にあるのです。
しかし、若い世代はスタイリッシュというか、キラキラ光るようなコーティングされた機体を好む傾向にあったんです。そのため、スタイリッシュさを意識して作っています。
――最近で言うと、“RX-93ff ν(ニュー)ガンダム”や『機動戦士ガンダムSEED』機体の表現はかなりこだわっていますよね。ユーザーが喜ぶ表現である一方で、モデル作りは大変だったのでは?
小和田:おっしゃる通りで大変でした。“RX-93ff νガンダム”や『SEED』のリファイン機体は、時代を変えるようなビジュアルに挑戦する形になりました。
シリーズ初期から厳しい容量の中で作ってきましたが、途中でスペックがあがり、わかりやすく言うとPS3世代からPS4世代になったことで、同じ表現でも容量的に楽になりました。そこを今回、容量が厳しくなるようなところまで挑戦してみた、というのが流れとなります。
制作段階では、久しぶりにかなりの処理落ちをしていました。調整の仕方としては、一度、現行ハードのマシンスペック、つまり、PS5やXbox Oneを超えるほどのクオリティで作って、そこから地道にリダクション(削減)をして、解像度を下げて……と時間をかけて調整しています。
特に、ユーザーの方々にインパクトを与えるような機体に関しては、時間ギリギリを攻める形で調整しています。
――開発段階では、実装されているものより高いクオリティだったのですね。
小和田:そうですね。今と比べて4倍くらいの容量がありました。さすがに「これを搭載するのは無理だな」となりましたが(笑)。そこから現実的な解像度に下げて実装した形です。
――容量を収めるための特別な方法、技術などはありましたか?
小和田:基本的に容量を下げる特別な方法はありません。削減をして、実際にプレイしてみて、ユーザーが気づきにくい部分のうち、処理的にリターンの大きい部分を抽出して調整……という作業を行っていました。個人的には「近道はない」と思っています。
――基本的なことになるのですが、各機体ごとに使用できるポリゴン数が決まっていて、全機体の容量と、ステージ背景やサウンドなどの容量を合わせて、調整していくのでしょうか?
小和田:そうです。無印だと2~3,000くらいの頂点数で、1kテクスチャくらいでした。それが今や頂点数が10倍くらいで、解像度が4倍くらいになっています。今回は、それをさらに超えた内容に挑戦したわけです。
――その容量にはアシストや武装も入ってくるのでしょうか?
小和田:アシスト機体も容量に入っています。ただ、武装のエフェクトに関しては、最後にトータルでの画面に重なってくるものなので、別の扱いになります。
容量の調整する際には、もっとも解像度や頂点数の多い機体を4機体集め、一番重いエフェクトを可能な限り出し、処理落ちしないかを確認するやり方をしています。
――機体のモデリングは、TVアニメやプラモデルなど多岐にわたって素材があります。モデリングする際にはどのようなことを意識しているのでしょう。
小和田:基本的にはアニメの設定画に準拠しています。
アニメの中で描かれているもので3D的に問題があるもの……例えば曲げた時にめり込んでしまう可動部分は、プラモデルが先に解析しているものもあるので、プラモデルを参考に、部分的にアレンジして取り入れることがあります。
また、プラモデルオリジナルや、設定オリジナルの武装もあるので、そういう場合は、実際に発売前のプラモデルのテストショットを借りて作業させていただくケースもあります。
情報漏洩や破損に十分に気を付けながらの作業になりますので、キャラクターモデラーはかなり慎重に作業していますね。
――“N-EXTREME”シリーズのようなオリジナル機体で、モデルがないケースはいかがでしょうか。
小和田:社内に機体のデザインをするスタッフがいます。キャラモデラー出身ということもあり、3Dもがっつり触れるんです。そのため、デザインと同時に、ラフの3Dをすでにあげてくるスタイルでデザインを行っています。
3Dプリンターを自前で持っていて、可動部を作って「こんなギミックがあるんです」と見せながらデザインをしてくれることもあるくらいです。
設定画的にも、3Dデータ的にも、プラモデル的にも、すべて破綻がない状態でデザインワークを行っているので、ある意味やりやすいのです。そのため、オリジナル機体の開発だから特別苦労していることは少ないと感じます。
――こだわりを持ったメンバーが揃っているんですね。
小和田:こだわりの強いメンバーはもちろんいます! メンバーの話で個人的におもしろかったのは、自己紹介です。プロジェクトに新メンバーが配属することになると、定例会のような場所で自己紹介をするのですが、名前や経歴を話すと同時に、好きなMSを聞いていました。ちなみに、自分は“ケンプファー”と答えました(笑)。
――最近の開発で、印象的だったことを教えてください。
小和田:先ほど言った、『SEED』機体のリファインは「祭りが来たな」と思いました。開発としても、直前まで挑戦していたのでお祭り状態。制作が大変だったことも含めて、ユーザーの反応が大きかったため印象に残っています。
――人気のシリーズですが、開発時にプレッシャーは感じていますか?
小和田:当然、プレッシャーはあります。でも、プレッシャーを感じながらお仕事をさせていただくのは、ゲーム開発者冥利に尽きるので、ある意味幸せな立場だと思っています。それを楽しみながら、スタッフ一同、頑張っております。
反応が返ってくることがうれしいので、いい反応だけでなく厳しい意見も刺激になりますね。
――ちなみに、『機動戦士ガンダムSEED』のステージ“アフリカ砂漠”で、タンクに書かれている文字をつなげると“THANK YOU FOR PLAYING”になりますが、あれはどのような流れで作られたのでしょうか。
小和田:ステージは、デザインや仕組みの部分を1人で担当し、制作しています。あのステージを手掛けたメンバーが「読んでもらえるかな」とちょっとした遊び心、いたずら心で仕掛けを入れていたのが経緯です。
並べるとそのように読めはしますが、世界観的に意味があるわけではなく、並んでいる文字がたまたまそう見えると認識していただけると幸いです。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
小和田:『EXVS.』シリーズのビジュアル表現に関しまして、リアルさやハイクオリティはもちろん、ゲームプレイを重視して、気持ちよく遊べることを念頭に置いて調整しています。細かいところですが、リアルさやクオリティを上げられるけど、ゲームプレイ上のわかりやすさや戦いやすさを優先して、あえてシンプルにすることもあります。
画像で見るよりも、ゲームをプレイしている時が一番カッコよく見えるような絵作りをしています。
ぜひたくさん遊んでいただき、ビジュアルのよさを感じてもらえると、制作者として幸せです。
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『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』記事まとめ(電撃オンライン)
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機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト
- メーカー: バンダイナムコアミューズメント
- 対応機種: AC
- ジャンル: アクション
- 稼動日: 2021年3月10日
- 料金: オープン