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『ガンダム EXVS.2 XB』開発内部に迫る特別企画。サウンド班の歴代物量はセリフ数12万、オリジナル楽曲150以上

たく坊
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 稼働中のアーケード用アクションゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』の開発者インタビューをお届けします。

 本作は、幅広いユーザーに人気の『エクストリームバーサス(以下EXVS.)』シリーズ最新作。前作『エクストリームバーサス2』からEXバーストクロスをはじめとした追加要素に加えて、新規参戦機体を含め、合計200機以上のMSが登場します。

 ゲーム内のさまざまな要素を構築、開発するスタッフへのインタビューを掲載。シリーズを遊ぶプレイヤーが少し気になるような質問を投げかけています。

 今回はサウンドチームに、制作されるオリジナル楽曲やSEなどのこだわりについて質問しました。

 なお、インタビュー中は敬称略。

原作曲に負けない壮大な演奏にこだわった100を超えるBGM

藤田:バンダイナムコスタジオでサウンドディレクターをしております、藤田裕行と申します。私も小和田と一緒で、無印の『エクストリームバーサス』から開発に参加しています。

――先ほどの流れでお聞きしますが、好きなガンダム作品は?

藤田:私は『機動戦士ガンダムUC』ですね。いろいろな部分がカッコいいと思います。

――サウンドチームは、具体的にどんなことをされているのでしょうか。

 ゲームで鳴る音に関することすべてを任され制作しております。効果音、セリフ、楽曲のデータを制作し、これらをゲーム内で流れるように加工します。音がゲーム内で聞けるようになったら、音の最終チェックを各機体、各シーンごとに行います。

 機体数が多いので大変なのですが、クオリティに関わる重要な部分なので、毎回徹底的にチェックしております。

 また稼働後もアップデート機体がありますので、定期的にゲームセンターに出向いて出音の確認(効果音、セリフ、楽曲がバランスよく聞こえるか)のチェックを行い都度日調整を行っています。

――原作にある楽曲とオリジナル楽曲をどちらも使用するため、他タイトルとは異なる部分があると思いますが、どういう意識で作られているのか、お話ください。

藤田:『ガンダム』という壮大な世界観があって、作曲者や歌っている方が大御所の方ばかり。それをゲーム内の曲として取り入れているので、オリジナル楽曲もそれに負けないくらいのクオリティを出す必要があります。

 本シリーズでは、オーケストラ……弦楽器やシンセサイザーを合わせた壮大さを感じる曲が多いですが、当初プロデューサーに言われた「他の曲に負けないくらいのクオリティの高い曲にしてほしい」というコンセプトに関係しています。

――楽曲制作の風景が公開されたことがありましたが、あのようなイメージで作られているのでしょうか?


藤田:そうですね。最近は新型コロナウイルスの影響で行けていませんが、海外に足を運んでレコーディングしたこともありました。“N-EXTREME”は国内のビクタースタジオというところにオーケストラを呼んで、生楽器で録音しています。

 基本的に、シンセサイザーを使わないようにしています。シリーズの初期から「10年後も聴ける曲を作ってくれ」という要望があったので、機械に頼らず、生楽器の力を組み合わせているのです。つねに10年後を想像しつつ、その時にも聴ける曲作りを意識しています。

――「10年後も聴ける曲」という要望は簡単ですけど、それを実現するのは大変そうです。当時、どのようなことに気を付けてましたか?

藤田:演奏者の想いを入れることですね。生楽器で成立する曲を作って、ドラムも機械の打ち込みではなく、演奏者を呼び、ギターもベースも演奏者も呼び収録する、ということを毎回しています。

 エネルギッシュで、動きのある楽曲を制作できていると思います。

――10年の楽曲制作の中で、印象的だった曲は?

藤田:10年の中でも“Project N-EXTREME”は特に印象的でした。4機体実装されることになったのですが、楽曲が全部違うジャンルだったんですよ。「10年続いた今になって、このボリュームかよ!」と思いました(笑)。

 今までにないテイストで作ることを依頼されたため、どうしようか悩みました。いろいろと試行錯誤して、演奏家さんの力も借りたことで制作してこれたと思います。

――4機体それぞれは、どんなコンセプトで制作したのでしょうか?

藤田:1つはカワイらしい感じだったため、K-POP調にしました。1つはカッコいいということでちょい悪なラッパーっぽいものに。1つは、大人っぽいためにジャズっぽくしました。1つは民族音楽的にしてほしいと、全部違うんですよ。

 これらを同時期に収録することが、大変でした。その反面、「10年続いてきて、久々に冷や汗をかいたな」と結構おもしろかったです。頑張って作ったおかげかユーザーの反応がよかったので、そこはとてもうれしかったです。

――テイストの違う楽曲制作について、開発内部の反応はいかがでしたか?

藤田:今までと違うテイストだったので、どちらの反応が来るか、ドキドキしていましたが、「すごくいい」という反応でした。ただ、このような幅がある曲も受け入れてくれるんだと感じました。

 つねに新しいものを求められるので、斬新さが受け入れられてよかったです。

――10年という年月を経て、変わったと感じる部分はありますか?

藤田:機材の性能が変わることはわかっていたので、逆に変わらないものに対して気を付けています。10年続いていくものを作りたいが、そこに新しいエッセンスをちょっとずつ入れていくという形でいつも制作しています。

 シリーズ初期から脈々とつながっている曲もありますから、新しい要素が大事になるんですね。

――ちなみに今まで作られた楽曲は、どれくらいあるのでしょう。

藤田:150は優に超えていると思います。基本的に僕が1から作っているので、大体わかりますが、いかんせん曲数が多いので、あやふやな部分があります(笑)。

 数で言うと、セリフ数もすごいですよ。以前、数えてみたのですが、総セリフ数が12万前後もあります。1キャラ平均で400前後のセリフを収録しており、すべて本作のために毎回録っています。

 『ガンダム』シリーズは大御所の声優さんも多く、複数キャラを担当していることもあるので、同じ時間に違う場所でボイスを収録して、立ち合うメンバーを分散させたこともあります。原作セリフだけでなく、「このキャラはこう言うだろう」という創作セリフも入っているので、注目してほしいポイントです。

――新機体の掛け合いセリフは、いつごろに録られるのでしょうか?

藤田:同時期に出る機体とのセリフなどを最初に録りますが、新しい機体が出る際に追加で録ることもあります。どちらのパターンもありますね。

――楽曲制作について戻るのですが、初期は苦労していた感じでしょうか。

藤田:ゲームを作っていく段階で、音楽も同時に作っていくわけです。開発初期はベースが何もできあがっていないので、どうしようか悩みました。作品のコンセプトが変わると曲も変わるので、一番多かったリテイクでは、25回とかありましたね。25回、楽曲を作り直したんですよ!(笑)

 でも、無印が組みあがっていった時、「開発メンバーはこれを作りたかったのか」と理解でき、そこでやっと一体になった感覚がありました。そこから2作目3作目となるにつれて、雰囲気を掴めるようになっていきました。

 『EXVS.』っぽいか『EXVS.』っぽくないか、みたいなところで考えるんですけど、徐々に『EXVS.』らしさがわかってきたという感覚がありました。

――言語化は難しいと思いますが“『EXVS.』らしい曲”というのは、どのようなイメージでしょうか?

藤田:難しいですが、曲の規模感としては壮大なイメージ。その中に、いろいろな楽曲が祭りのように遊んでいる……みたいな。あとはスタイリッシュでカッコいい感じもありますね。

――シリーズ自体がさまざまな作品が参戦するオールスタータイトルなので、楽曲もいろいろな楽器が参加しているのは、コンセプトにマッチしていておもしろいところですね。

藤田:オールスター感はありますね。演奏者の数が毎回すごいんですよ。弦楽器も50人ほどの規模で、ほぼフルオーケストラです。

 大きいもので言うと、チェコのドヴォルザーク・ホールに行って、ボスの曲を録ったことがありました。ドヴォルザーク・ホールを2日間貸し切って、1体のボス曲を収録した。「一番いい曲を出してほしい」と毎回言われるので、大変ですよ(笑)。

――対戦マッチング時や機体選択時のBGMなどは、ゲーム中に聞く回数がもっとも多いと思います。これらを制作する際に意識したことは?

 何回も聞くので飽きないように工夫してます。ゲームのキモとなる曲なので毎回試行錯誤して作っております。曲の展開を早くしたり、楽器を他の楽曲よりかなり多めに使っていたりするなどです。メロディーを色々な楽器で演奏しています。

 ただ複雑になりすぎて親しみやすさを失わないようにバランスを気をつけつつ慎重に制作しています。

――サウンド面で、苦労したタイトルはどれでしょうか?

藤田:先ほどあげた『クロスブースト』と悩みますが、やはり無印ですね。シリーズ1作目なので、新譜の曲数が一番多かったんですよ。タイトルが続いていくと、そのまま使ったり、編曲をしたりということがありますが、無印は新作なので曲数がとにかく多かったですね。

 無印の曲はオーストラリアで録りました。稼働時間で言うと、8時半スタートの、27時終わりというのが3日間あり、あれは結構しびれましたね。プレッシャーもありましたが、アドレナリンが出ていて不思議と疲れなかったです。

――プレッシャーは毎作あると思いますが、どのように向き合っているのでしょうか?

藤田:プレッシャーがあるからこそ、また新しいものを作れる……原動力になっていると感じます。前作の時、その時の全力を出しているんですが、その自分をさらに超えるという感じ。まさに“極限進化”ですよね。

 ただ、自分だけでなく、開発メンバー皆が毎回極限進化しているのを感じていて、毎回楽しいです。

 サウンドチームですが、他のタイトルと比べても仲がいいと感じます。いいところはほめますし、違うところは違うと言い合います。さらにこのプロジェクトだと、あまり言葉を交わさずとも伝わるというか、10年以上やってきていて阿吽の呼吸ができていることを、感じますね。

――最後に読者へメッセージをお願いします。

藤田:『ガンダム』の世界観はもちろん、『EXVS.』シリーズの世界観も崩さないように楽曲作りを行っています。曲のループを組む時も「ここまでがサビだから、この部分までもっていきたい、だから曲を短めにしよう」など、細かな調整を行っているので、サウンド面でも楽しんでほしいです。

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(C)創通・サンライズ

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機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト

  • メーカー: バンダイナムコアミューズメント
  • 対応機種: AC
  • ジャンル: アクション
  • 稼動日: 2021年3月10日
  • 料金: オープン

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