『ガンダム EXVS.2 XB』開発内部に迫る特別企画。機体ごとの差別化やモーションはどうやって作っている?
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- たく坊
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稼働中のアーケード用アクションゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』の開発者インタビューをお届けします。
本作は、幅広いユーザーに人気の『エクストリームバーサス(以下EXVS.)』シリーズ最新作。前作『エクストリームバーサス2』からEXバーストクロスをはじめとした追加要素に加えて、新規参戦機体を含め、合計200機以上のMSが登場します。
ゲーム内のさまざまな要素を構築、開発するスタッフへのインタビューを掲載。シリーズを遊ぶプレイヤーが少し気になるような質問を投げかけています。
今回はバトル/ゲームデザインチームに、機体ごとの特徴の付け方、モーションのこだわり、バランス調整などについて質問しました。
原作らしさとアクションゲームとしてのよさを大事に!
――新要素“EXバーストクロス”のこだわりポイントはどちらでしょう。
“対戦の流れの中に新たな盛り上がりの波を起こす”点を意識して作成しました。EXバーストクロス成立時の攻撃ヒット時追加効果はもちろんのこと、発動時の演出や、クロス覚醒時のエフェクト、特に終了時のエフェクトについては対戦的に視認ができないと勝敗に影響を及ぼしかねないため、かなり強めのエフェクトを表示するようにしました。
開発スタッフの努力の甲斐もあって、お客様から好評を得られることができたのではないかと思います。
――新機体の長所、短所はどのようにして決めるのですか?
『クロスブースト』には、現時点で既に200機体以上が参戦しており、そのすべての機体をプレイアブルとして操作することが可能です。この200以上という数は、アクションゲームの中では類を見ないもので、それが『エクストリームバーサス』シリーズの強みの1つであるととらえております。
ただ、強みとはいえその数を増やすのを目的にしてしまうとゲームとしてのおもしろ味に欠けてしまうので、それぞれに個性付けを行うことを意識しております。
そして新機体は、既存の200機体が個性を持った中に追加することになるので、個性が被らないように注意しながら作成しております。
前置きが長くなってしまいましたが、個性とは何かを考えるにあたって重要なのが長所と短所だとして機体作成を進めております。
例えば“ガンダム”と“ガンダム試作3号機”の2機体は共にビーム・ライフルとバズーカを装備として持つ機体であり、どちらにも“ビーム・ライフルとバズーカで戦う射撃が強い機体”という長所を与えることができます。
しかし、同じ長所を与えてしまうと、似たような短所が必要とことが多く(この場合格闘は弱いなどが挙げられます)、どちらかを解禁機体とする場合に新機体のはずなのに既存の機体と被ったものができ上がってしまいます。
これだと同じような個性を持つ機体を提供してしまう、遊んでいてつまらない、新鮮味やおもしろ味のない“ただ数を増やすだけの新機体追加”となってしまいます。
そのため、先述の例の場合は“コストを変える”や“メイン射撃を変える”、“得意距離を変える”などの調整を行い、それぞれを別の個性を持った状態にすることを意識しております。
つまり長所と短所は既存の200機体以上と被らない個性は何かを考えた際に、それに紐づいて決まっていくものとなっています。特に長所については、個性を彩る、新鮮味やおもしろ味に繋がる部分ですので重点的に考えるようにしています。
――モーションについてのこだわりは?
“一切妥協しないこと”がこだわりポイントになっています。
モーションは仕様書を元にモーション班が想像を膨らませながら作成しており、それを開発環境の機体に流し込んで確認作業を開始するのですが、そこから先は本当に地道な根気のみで作り上げていく作業が始まります。
なお、バトル班とモーション班は別のチームです。
まず、機体が動いているだけでエフェクトや装備がない状態から始まります。開発環境向けの初期設定はあるため、雰囲気は確認できるのですが……。
例としてトライバーニングガンダムのバーニングバーストシステム発動中の格闘後格闘派生を挙げさせてください。
このアクションはかかと落としをした後に距離を取り、球状の光に包まれながら待機している間に、どこからともなく現れた大量の半透明のトライバーニングガンダムが次々に攻撃を行い、最後にトライバーニングガンダム自身が追撃を行うものになっています。
これは原作を再現した特殊な攻撃となっていて、特殊がゆえに開発環境用の初期設定でエフェクトなどをつけることができず、モーションだけだと最終的な形が想像できません。開発環境に映されるのはただトライバーニングガンダムがかかと落としをした後に手を構えているだけの状態です。
そんな何もない状態からモーション班、エフェクト班、モデル班などと協力して1個1個足し算をして作り上げていきます。球状の光であったり、半透明のトライバーニングガンダムであったり、最後の追撃部分であったり……など。
「動け!」と念じれば動くわけではないので、半透明のトライバーニングガンダムのモーションとエフェクトとモデルはすべて1個1個作っています。でき上がってきている物をひとつずつ入れていって、完成に近づく度に全体の流れを再確認し、もっとよくできると感じたら作り直して……と、地道な作業を繰り返しています。
そんな「原作で見たシーンを『エクストリームバーサス』で再現するためにはどうしたらいいのか」という疑問点をプロジェクトメンバーで協力しながら手探りで進んでいきます。
妥協しないため、時には“特定のアクションを除いて機体が完成している”状態でも、特定のアクションの作り直しに時間が取られすぎていつまで経っても機体作成が終わらないなんてこともあります。
そういったタイミングは本来であればアクションの内容を妥協してでも機体作成を切り上げるべきなのですが、プロジェクトメンバー全員が高い熱量で作成しているため、例えばその次の機体と並行して作るなど、とにかく一切妥協をしないで作りぬいています。
長くなってしまいましたが、どんなに茨の道でも妥協しないで突き進み、時間が許す限りクオリティを上げるために作り続けるのがこだわりとなっています。
――原作再現の際に心がけているポイントは?
前提になるのですが「原作でやっていることをそのまま『エクストリームバーサス』で行う」のは困難です。
原作は映像作品として最適化するため、さまざまな部分でプロの手による脚色が入っています。これは映像作品として見た時にクオリティがよくなるようにするための手法で、演出の面で学ぶことは非常に多いです。
一方で『エクストリームバーサス』シリーズはプレイヤーがつねに機体を動かすゲームとなっているため、脚色の部分とゲームシステムの相性が悪くなってしまうことがあります。
例えば、原作で“機体がビームサーベルを振りかぶる⇒振り下ろすと同時に画面が暗転⇒次の画面では爆風をバックに機体がカッコいいポーズを取っている”という非常にカッコいい、盛り上がるシーンがあったとします。
そのシーンを『エクストリームバーサス』のゲーム中で再現しようとした際に“大振りの攻撃になってしまい、当たるまでが遅かったりして攻撃性能が低くなってしまう”や“ビームサーベルを振り下ろすだけだと自機と敵機の位置関係が原作通りにならない”、“暗転前後で動きが繋がらない”など、さまざまな問題が生じます。
アクション面に関しては触っておもしろい、カッコいいと感じていただきたいと考えているため、問題を抱えたままリリースすることはしないようにしています。
そこで原作に『エクストリームバーサス』としてはどんな要素が欲しいのかを付け加えた、今回の例だと“大振りの攻撃はさせたいが、その前に小振りの攻撃を挟むようにしよう”、“原作と少し変わってしまうが、一番印象的なのは大振りの部分なので暗転以降のカッコいいポーズを付けるシーンはカットしよう”などといったように、アクション性を担保しつつ原作を追体験していただける形を模索しています。
もちろん、原作があってこその『エクストリームバーサス』なので、可能な限り尊重しつつ、アクションゲームとして見た時におもしろい、カッコいいと感じていただけるようなものにすることを心がけています。
――具体的に、触った際に心地よく遊べるようにするための工夫をお話ください。
『エクストリームバーサス』シリーズは、格闘ゲームにあるような必殺技ヒット時に試合の時間を止めて黒い空間に自分と相手を連れていってじっくり演出を行う表現や、登場などの注目してほしいタイミングで時間を止めてキャラクターをアップする表現などを採用しない、シームレスなアクションゲームとして作成しております。ただ、演出にかける時間の制限が緩いトライアドバトルでは採用されています。
先ほど紹介した各表現をけなしている訳ではなく、シームレスにするためにあえて採用していません。
2on2のアクションゲームなので、自分以外のプレイヤーが3人もいます。その際に、何かあるたびに試合の時間が止まってしまうと時間経過に対する戦局の進み具合が遅く、退屈なものになってしまいます。そうなることを避けられるシームレスな作りが、心地よく遊べる理由の大部分を占めていると考えております。
ただ一方で、この時間を止めないという縛りは、格闘攻撃1つをとっても莫大な労力を必要とします。
例えば、G-セルフのバーストアタック“ビーム・サーベル連続攻撃”は、敵機を殴り飛ばした後に急加速して追い付きながら追撃を行う原作再現アクションです。
先述の時間を止める演出を用いていいのであれば、自機と敵機を黒い空間に連れていって、好きなように攻撃すればよいのですが……。時間を止めないという縛りを実現するため、“一発目の攻撃が当たらなかった場合”や“途中で中断されてしまった場合”、“殴り飛ばした先にステージ上の障害物があった場合”など、ここには書ききれないほどさまざまな状況を想定して対応しないとなりません。特にこのアクションは殴り飛ばした敵機に対して追い付く、といった原作で印象的だったシーンを再現しないとならないので、他の格闘攻撃と比べてかかる労力が莫大でした。
G-セルフの格闘攻撃は1つの例ですが、原作や設定で印象的なアクションを試合の時間を止めずに、ただそれでも見た時の感動は元々のものに近くするためにさまざまな状況を想定して作成を進めております。
――エクストラ機体の変更点が増えてきていますが、こちらの経緯、理由は?
理由は新機体の項で触れた“既存の200機体以上と被らない個性を持たせるため”が主です。
特に『フルブースト』時代に作成されたエクストラ機体に関しては既存の機体とモーションがまったく同じなことが多く、個性付けが困難でした。どの機体に対しても言えることですが、モーションがまったく同じになってしまうと、操作している時の印象が変わらずアクション性の部分でゲームがおもしろくなくなってしまいます。
そこでまずはモーションを変えたり、またモーションは同じでも見せ方を変えたりなどで、別の個性が付く土台を作成しました。そのうえで、エクストラ機体として解禁した際に、どんな長所があるとユーザーに喜ばれるのかをベースに変更点を考えています。
『ガンダムバーサス』で作成されたエクストラ機体に関しては、そもそも『エクストリームバーサス』とは違うゲームからの参戦となるため、出すにあたって『エクストリームバーサス』として何が必要か、何を求められそうかを想定しながら変更を加えています。
ただ基本的にどのエクストラ機体の変更点に関しても作っていくうえで「もっともっと」が発生してしまい、機体作成に必要な素材を作るスタッフにはいつも負担をかけてしまっています。
――バランス調整で改修する機体を決める際の基準は? またその物量はどうやって決めるのでしょう。
まず、現実的な話をさせていただきたいのですが、開発期間によって改修可能な量が決まってしまいます。
可能であれば作品が切り替わるごとに、アップデートごとに全機体に改修を加えてすべてのお客様により満足していただきたいですが、それは時間が許してくれません。
なので、改修する際には限られた期間で効果の高い作業をすることが求められます。
その際に参考にするのが、オンライン対戦時のデータです。勝率や使用率の他に、与ダメージなどの細かいデータを参考にし、候補を絞り出します。
次に絞り出した候補のうち、改修の必要性が高い機体を割り出していきます。細かい手法はお伝えできませんが、バランス調整として数値を高くすれば満足されるのか、それとも根本的な修正が必要なのかなどで必要性を変えています。
そうして割り出された必要性の高い機体から、改修を加えて行っています。
ここからは理想的な話になりますが、物量に関しては大体の場合において、想定以上の量を作ってしまっています。これは見積もりがシビアすぎるのではなく、現場の熱量によるところが多いです。
開発スタッフはみんな熱意を持って作業に打ち込んでおり、与えられた期間を限界まで振り絞って素材を作成しています。
そんな熱量の高い現場がお客様を喜ばせようとしたからこそ、『エクストリームバーサス2 クロスブースト』という作品のロンチタイミングと、それの改修アップデートでは好評を得られたのではないかなと思います。
――遊んでいる人に一番楽しんでほしいところはどちらでしょうか?
すべてのモードを楽しんでいただければ幸いです。というのは冗談ですが(笑)、200機体以上のプレイアブル機体が持つ全アクションのクオリティに対して自信をもっております。
これだけのプレイアブルキャラクターの数をこれだけのクオリティで動かせるアクションゲームは中々ないと思います。
例えば派手なエフェクトのアクションがあったとして、そのエフェクトは近くで見た時も、遠くから見た時も破綻しないような作り方を心がけています。
上記は一例ですが、エフェクト以外に関しても、細部まで気をつけて作成しております。対戦面がまず注目されがちなゲームですが、アクション面にも注目していただければ幸いです。
『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』はアーケードゲームなので難しいところがあると思いますが、ぜひお時間が許す限りいろいろな機体を遊んでいただけますと開発者冥利に尽きます。
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『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト』記事まとめ(電撃オンライン)
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機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト
- メーカー: バンダイナムコアミューズメント
- 対応機種: AC
- ジャンル: アクション
- 稼動日: 2021年3月10日
- 料金: オープン