インクで戦うユニークバトルがおもしろすぎた。『Inkulinati』は想像以上に奥深さを感じるストラテジーゲーム【電撃インディー#339】

電撃オンライン
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Daedalic Entertainmentが今冬Steamで配信予定の『Inkulinati(インクナリティ)』のレビューをお届けします。

 なお、電撃オンラインでは尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

兵士の絵を描いて進攻させよう! インクで戦うユニークなバトル!

 本作では、“Inkulinatiマスター”と呼ばれる特殊な力を持った者たちが、“中世の写本の余白”を舞台にバトルを繰り広げます。

 Inkulinatiマスターが羊皮紙のような、いかにも古めかしい紙の上に兵士のイラストを描くと、その兵士たちはまるで生きているかのように動き出し、敵と戦ってくれるのです。

 プレイヤーは彼らの指揮官となって、時にはイラストを描いて兵士を増員したり、または彼らに指示を出して敵を攻撃させたりと、“紙の上での戦い”に身を投じていくことになります。

 本作のバトルでは、紙にイラストを描くという性質上、インクが重要なアイテムとなります。この世界では“命のインク”と呼ばれている、特殊なインクで描くことにより、はじめて兵士たちは動き回ることができるのです。

 そのためバトル中は、命のインクの量に常に気を配らなければなりません。これがなければ、新たな兵士を生み出すことはできないからです。

 兵士たちはみな動物の姿をしており、それぞれの兵種にあわせた装備品を身につけているなど、見た目もユニーク。兵士の姿を描くときには、羽ペンを持った主人公の手が大きく映し出され、なかなか迫力があります。

土俵際の戦術がカギ!? 画期的な“押し出し”システム

 兵士たちの見た目だけでなく、バトルシステムも個性的で面白いのが本作のおすすめポイント。というわけで、さっそく紙の上でのバトルをはじめてみます。

 バトルをはじめた時点ですでにフィールドに座っているのは、主人公の分身である“Tiny Inkulinati”です。

 フィールドは1マスずつ区切られており、兵士を生み出すことができるのはTiny Inkulinatiの近くのマスだけになります。いきなり遠くに兵士を描き出すことはできません。有効な範囲は緑色、無効な範囲は紫色で表示されるようになっています。

 また、兵士たちは描かれてすぐに行動することはできず、必ずその場で昼寝が必要になります。なんとものんびりしていて可愛らしいですね。

  • ▲武器で攻撃する場合は右側にダメージのルーレットのようなものが表示されます。与えたいダメージのところで上手くストップさせましょう。

 Tiny Inkulinatiだけでなく、兵士たちもそれぞれアクション範囲が決まっています。また、武器種によっても攻撃範囲が大きく変わり、剣に比べると弓は攻撃の届く距離が長くなっています。

 Inkulinatiマスターたちの戦いは交互に行動していく、いわゆるターン制バトル。そのため兵士を召喚し、移動させ、攻撃させる、というのが1つのターンの基本的な流れになります。先に相手のTiny Inkulinatiの体力をゼロにしたほうが勝ちです。

 兵士たちは自分の足で歩いて移動できますが、Tiny Inkulinatiは自分で移動することはできません。でも安心してください、そのために画期的なシステムが用意されているのです。

 先ほどTiny Inkulinatiは主人公の分身であると説明しましたが、それ以外には当然、主人公の本体も存在しているわけです。そう、兵士を描くときに出てきた、あの大きな手の持ち主です。

 彼が手を使うのは、なにもイラストを描くときだけではありません。なんと、この作品では“描いた絵を手で触って動かす”なんてこともできちゃうのです。もちろん使用できる回数は1ターンごとに決められていますが、それでも強力な1手には違いありません。

 主人公は自分の手を使って、自分の分身や兵士の絵を動かすことができる。これで、分身が動けずその場にとどまったまま、敵に囲まれるような危険性はなくなりました。

 さらに、この手は味方だけでなく、敵の兵士も動かすことができるのです。ここが本作の特に面白いところ。

 フィールドの左右の端は奈落という扱いになっており、ここから落ちると兵士やTiny Inkulinatiは即死してしまいます。

 では、先述の手を使って、敵の兵士を端から突き落としたらどうでしょう? かなり有効な戦術と言えるのではないでしょうか。

 これを戦略として成り立たせているのが、“押し出し”というシステムです。

 たとえば、手を使って1人の兵士を動かすとします。本作では、同じマスに2人以上の兵士やオブジェクトが同時に存在することはできません。

 1つのマスには必ず、1人の兵士か1つのオブジェクトという法則があるのです。そのため、動かした兵士もしくはオブジェクトは、次の空きマスに到達するまで、スライドし続けるのです。

  • ▲奈落へ突き落とせる場合は赤い矢印で表示されます。

 もちろん、すぐ隣のマスが空いていれば、兵士は1マス移動するだけです。では、もし左右の端まですべてのマスが埋まっていたらどうでしょう? 兵士はスライドし続けて奈落へ真っ逆さま。苦もなく倒せるというわけです。

 あえて兵士が並んだ状態を生み出し、まるでベルトコンベアのように敵の兵士を崖から落とし続ける。上手くいけば、そんな状況を作り出すことも可能なこのシステム。単なる武器での殴り合いだけでなく、戦略に奥深さをプラスしてくれているのです。

 さらにこの“押し出す”という行動は、兵士も行うことが可能。まるで相撲の土俵際での読み合いのように、バトルの幅を広げてくれます。ただし、敵のInkulinatiも同じことができるということを、忘れてはいけません。でないと、奈落に落ちるのは自分になるかもしれませんからね。

 一見シンプルかと思いきや、想像以上に奥深さを感じたバトルシステムを、ぜひ体験してみてください。『Inkulinati』は今冬にSteamにて配信予定です。


©Yaza Games
Published by Daedalic Entertainment

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら