『FF14』14時間生放送インタビュー②:個での活動が中心だったシナリオ班はチーム全体での取り組みに!

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 毎年恒例となっているスクウェア・エニックスのMMORPG『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』の14時間生放送。そんな長時間イベントの合間に敢行した、さまざまなセクションのスタッフへのインタビュー企画。第2弾では『FFXIV』シナリオ班・廣井大地氏、石川夏子氏、織田万里氏への熱い想いをお伝えします。

 なお読みやすさを高めるため、お三方のコメントに若干の編集を加えています。開発者の方々の発言が、そのまま記事に掲載されているわけではないので、あらかじめご了承ください。また、記事中は『漆黒のヴィランズ』のロールクエストや、パッチ6.2のメインストーリーに関する若干のネタバレを含んでいます。未クリアの人はご注意ください。

  • ▲左から織田万里氏(シニアストーリーデザイナー)、廣井大地氏(リードストーリーデザイナー)、石川夏子氏(シニアストーリーデザイナー)。

◆インタビュー企画のリンクはコチラ!
インタビュー①/吉田直樹氏&室内俊夫氏

"ハイデリン・ゾディアーク編"のすべが詰まった世界設定本の第3巻

──シナリオ班のお仕事をガッツリと紹介するという面で、かなり内容の濃い放送だったと思います。そのうえで、まずは出演を終えられたいまの感想からお聞かせください。

廣井大地氏(以下敬称略):何とかやり切ったな、というのがいちばんの感想です(笑)。無事に終わってよかったなと。織田と石川のふたりがメインシナリオを中心に作業してきたこともあり、いままではメインシナリオや世界設定などについてポイントを絞って紹介することがほとんどでした。ですが今回のプロデューサーレターLIVEは、「シナリオ班がふだんどのような仕事をしているのか」という面で、メインシナリオ以外の部分を語れるいい機会だったと思っています。

──織田さんはいかがですか?

織田万里氏(以下敬称略):>CEDEC 2018の講演では、実装班のリーダーだった工藤さん(工藤貴志氏。リードクエストデザイナー)といっしょに『紅蓮のリベレーター』のサブクエスト制作の流れを説明したことがありましたが、そのときは(CEDECという催しの性格上)どうしても業界向けの内容になるので、膨大な量の仕事をいかにこなすか……のような方法論が中心でしたからね。

 一方で今回はシナリオが中心だったので、そうしたあたりをお話しできる機会が得られたのはすごいよかったなと思います。何より、(開発スタッフの)募集を告知できたのもよかったなと(笑)。

──石川さんはいかがでしたか?

石川夏子氏(以下敬称略):私もシナリオ制作の講演をよくさせていただくのですが、これまでは基本的に海外のイベントが中心でした。日本で"作りかた"に関するお話をしたのはひさびさで、たぶん『蒼天のイシュガルド』の時代に私がプロデューサーレターLIVEに初出演したとき以来だと思います。モーグリの友好部族クエストが実装されたころだから……?

廣井:6~7年ほど前かと思います。

石川:そうそう、いわゆる3.Xシリーズの時代です。そのときにお話しした内容を現在と比較すると、当時とは体制がだいぶ変わっていますね。このタイミングであらためて現在の開発体制をお話しできて、非常によかったなと思います。

──これまでは、それぞれの担当の方が分担してシナリオを手掛けていたこともあり、どちらかと言えば個人ごとにセパレートされた形で作られているようなイメージでした。でも今日のお話を聞いて、いまはチーム全体で取り組まれていることを知って驚きました。ところで、廣井さんは演劇の世界から『FFXIV』のシナリオ班に入られたとのことですが、演劇の脚本とゲームのシナリオはどのような部分が異なりますか?

廣井:演劇の脚本などでは、作る人間のエゴを前面に押し出す形で書くことが多く、そうしたところが作品や劇団の色になってくるのですが、そこがいちばんの違いでしょうか。本作のシナリオは、まず『FFXIV』という大きな看板があって、その先にいらっしゃる既存のプレイヤーさんに向けたモノを作っていく形になっており、考えかたのスタート地点が大きく違う感じがします。

──観客やプレイヤーに向けて描くという点では同じでも、根本が異なると。

廣井:『FFXIV』のプレイヤーに対して"こういう要素があれば喜んでもらえたり心に残ってもらえたりするのではないか"といったところを追究するのが、たぶんゲームとしての物語の作りかたなのだろうなと。

 先ほどもお話しした通り、演劇は脚本家や演出家や主役のエゴともいうべき部分が集まりがちです。だからこそ、「こういうものを作りましたよ!」や「これを見てくれ!」といった劇団側の強い思いが伝わる面もあるかと思います。たぶん、作り手側の発信を重視するのか、お客さま(プレイヤー)がどう受け取るかを重視するのか……演劇とゲームは、ここが大きく違うのかなと。

──ちなみに、いまの廣井さんの仕事ぶりを石川さんと織田さんはどう見ていますか?

織田:今日のプロデューサーレターLIVEでも言いましたが、管理業務の担当に名乗りを上げてくれる人はシナリオ班にはなかなかいません。やはりストーリーを書くのが好きで入社してきた人が多いので、"自分が何を書くのか"といったところに集中しがちです。

 ほかのスタッフ(の仕事ぶり)を見たり、全体のスケジュールやコストを管理したりする業務は、どちらかと言えば裏方的なイメージを持たれることが多いですよね。ですが、スケジュール通りにパッチをリリースするには、そこがいちばん重要になってきます。そうした役回りにみずから手を挙げてくれるのは、本当にありがたいことだなと。

石川:さきほどの放送で見た通りの人柄です。

織田:マジメです(笑)。

石川:そう(笑)。マジメで誠実でみんなの仲を取り持てる人柄なので、すごくがんばってくれています。

──そんな廣井さんが『FFXIV』でいちばん手掛けてみたい物語は、どのようなものでしょうか?

廣井:登場人物がさまざまな感情の流れを経て悲しんだり奮い立ったりするところに、プレイヤーがいかに関わってくるのか。そして、キャラクターがプレイヤーと関わることで感情がどう変化するのか、そのさまをクエストで表現できたらいいなと思っています。私はそうしたあたりを演劇でやってきたので、これから先もとくに重要なポイントとしてがんばっていきたいなと。

──プレイヤーの感情を揺さぶるキャラクター作りを……(笑)。

石川:もう、グチャグチャに(笑)。

廣井:キャラクターたちに「申し訳ない」と思いながら書いています(笑)。

──現在廣井さんがご担当されているコンテンツの中では、"万魔殿パンデモニウム"の続きがすごく気になります。

廣井:"煉獄編"については、皆さんが知っているラハブレアのイメージがもともとあるので、本音を言えば、最初は「どこまでやっていいのだろう」という不安がありました。ですが、制作の途中で「遠慮しても仕方ないな」と割り切ることができたので、"煉獄編"では「自分の思うラハブレアを思い通りに動かしたらどうなるだろう」といったところをテーマに、突き抜けて描くことにしました。

 その結果、意外なほどチェックで弾かれることもなく、私の意図がわりとそのまま残った感じです。チェックしてくださった方々が、(その意図を尊重してあえて)残してくださったのだろうなと。であれば、これから先もその方向性を続けていきたいなと思っています。

──どのようなエンディングを迎えるのか、楽しみにしています。

廣井:いままさにプロットを作っているところです。どこにたどり着くのかは、私自身まだ見通せていません(笑)。

──ちなみに"煉獄編"では、池田秀一さんのカッコイイボイスをたくさん聞けたこともうれしかったです。

廣井:じつは、ラハブレアにボイスを付ける方針は、吉田さん(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)が言いだしたことでして(笑)。いわゆるシナリオ合宿のときに、吉田さんが「あれ、これって声を付けないの?」とふつうにスルッと言われて……。実際に検討はしていたので「考えてはいます」と答え、結果的に声が付くことになりました。

──そういうことであれば、ぜひほかの登場人物にも声が欲しいですね。

石川:費用などの兼ね合いはありますが、私たちも希望としてはテミスにも声を付けてあげたいですね!

──つぎに、放送では世界設定本(Encyclopaedia Eorzea ~The World of FINAL FANTASY XIV~)の第3巻の制作が進んでいるという発表がありました。こちらは『漆黒のヴィランズ』から『暁月のフィナーレ』までが広くカバーされるのでしょうか?

織田:"ハイデリン・ゾディアーク編"と名付けた物語が『暁月のフィナーレ』で一度終わりを迎えたので、そこまでを総決算するというコンセプトで作っています。

──まさに"ハイデリン・ゾディアーク編"の集大成的な内容になりそうです。

織田:じつは『漆黒のヴィランズ』のリリース時にも一度「作ろうか」という話があったのですが、核心部分は『暁月のフィナーレ』のメインクエスト用に取っておかなければならないので、そのタイミングでリリースすると結論部分がどうしても曖昧になってしまいます。せっかく世界設定の本を買ったのに、結末や核心部分が抜けているのはダメだろうということで、「後ろに引っ張ろう」という話になりました。

 ですので、今回は出し惜しみすることなく、「ここはこうでしたよ」という部分をつまびらかにしたいなと。具体的には、『FFXIV』の世界の人たちがそれをどう受け取ったのかという形で書いていくつもりです。

──いままで以上に執筆もたいへんそうですね。

織田:第1巻のときは、表には出していないものの、すでに翻訳まで終わっているテキストが存在していました。ですからそれらを流用する形で制作を進められたのですが、今回はすべて書き起こしです。流用できるものがほとんどないので、ローカライズ担当の皆さんにもウン10万文字にも及ぶテキストの翻訳をお願いしました。日本語で書いただけでは作業が完結したことにならないので、そのぶん発売までお時間をいただくことになってしまいます。申し訳ありません。

──こちらも楽しみに待っています。つぎに、"次元の狭間オメガ番外編"のストーリーがとてもすばらしかったのですが、もし番外編の物語をほかに作れるとしたら、どのテーマを扱ってみたいですか?

石川:じつがパッチ6.3向けに書いているものが、ちょうど「機会があれば触れてみたい」と私自身が思っていたものだったりします。ほかの人から「それを書いてください」と依頼されたわけではなく、まず関連するコンテンツが先にあって、「であればこれも乗せられるよね」と便乗した形です。

 以前から「これをもっと掘り下げたいな」と思っていたけれど触れられなかった部分を、パッチ6.3で書くことができました。次回パッチのことなので何も言えませんが、そこはよかったなと思っています。

──いままで展開されていたいずれかのお話の続きなのでしょうか……?

石川:たぶん、そのコンテンツが発表された瞬間に「これのことか!」とすぐにわかると思います。悩むことはないはずです(笑)。

織田:個人的には、かなりハマっているなと。「なるほど、この人はここに来るよね」みたいな。スポッと収まった感じです(笑)。

廣井:このあたりは石川さんしか書けないと思います(笑)。

──まだまったく想像がつきませんが、ものすごく気になります。

石川:見ればすぐにわかると思います。皆さん、次回のプロデューサーレターLIVEをぜひお楽しみに(笑)。

──"シナリオ班のお仕事紹介"で説明されていたロールクエストに関連して、サイエラとウヌクアルハイについても少し質問させてください。パッチ6.1と6.2のメインシナリオで扱っているヴォイドに、このふたりは深い関りを持ちますが、今後、両名の動向が新しいストーリーで語られる可能性はあるのでしょうか?

廣井:メインクエストは、"すべてのプレイヤーがいちばん最初に何も気にせず楽しめるコンテンツ"という位置づけなので、ほかのサブストーリーで活躍したキャラクターが深く関わってくるのかといえば、難しい面はあるかと思います。

 ただ、彼らもヴォイドに密接に関係している人物たちなので、すでに実装されているクエストやセリフですとか、いろんなところを見て、それらをつなぎ合わせていただくことで「だからヴォイドはこういう設定になっているんだな」と気づく部分はあるかと思います。

石川:先のことはお話しできませんが(笑)、いずれにしても"メインクエストを進めるには『漆黒のヴィランズ』のロールクエストを最後までクリアーしてください"みたいな要素を混ぜるつもりはないです。

──それでは最後に、パッチ6.25以降のシナリオで期待してほしい点について、おひとりずつ聞かせてください。

廣井:織田と石川がメインシナリオ制作から抜けたことで、不安に思っている方も多くおられたと思います。確かにこのふたりはいろんなクエストを監修する立場になりましたが、逆にそのおかげで、両名が積み上げてきた経験をシナリオ班全体で共有し、そのエッセンスをスタッフひとりひとりが受け取って作業を進められる体制になっています。

 前廣さん(前廣和豊氏。『FFXIV』元メインシナリオ担当、現在は『FFXVI』のメインシナリオを担当)から続く、歴代のシナリオ班が長年培ってきたものを、いまのスタッフたちが受け継ぎ、さらに発展させてくれることでしょう。いまでも心配してくださっている方がもしいるならば、「ふたりはちゃんとまだチームにいるし、リレーのバトンを受け取ったりしているところだよ」と言って安心させてあげたいです。

 また、メインクエストを複数のスタッフで分担する形にした結果、パッチ6.1と6.2の段階でいままでにない展開もすでに見えてきていると思っています。そうした新たな挑戦によって形作られる新しいシナリオにも、ぜひご注目ください。

──6.2といえば、ゼロはすごくいいキャラクターだと思うので、彼女が今後どうなるのかにも期待しています。

廣井:ゼロはまだまだ活躍するキャラクターなので、ぜひご期待ください。

織田:今回のプロデューサーレターLIVEで、初めて廣井さんに名前と顔を出してもらいました。シナリオ班にはもっと多くのスタッフが所属していて、その人たちの中には、当然ですがメインクエストを担当している複数のメンバーもいます。

 また、こんどリリースされるヴァリアントダンジョンはNPCにフォーカスが当たる作りであるため、ゲームコンテンツ班とシナリオ班の各プランナーが密接に関わり合いながら育て上げた初めてのダンジョンです。攻略を楽しむ裏側で「まだ名前を表に出していないけれど彼らもがんばっているよ!」といったところにもご注目いただけるとうれしいです。

石川:さきほどのプロデューサーレターLIVEの中で、吉田さんが「モンスター班やバトルコンテンツ班と呼ばれていたグループが(ひとつにまとまり)ゲームコンテンツ班になった」と話していましたよね。

 これは本当にその通りで、『FFXIV』チーム全体として、世代交代というわけではないのですが、"ハイデリン・ゾディアーク編"が大きな区切りを迎えたからこそ、つぎの10年に向けて開発チーム自体も成り行きや前例で進むのをやめることにしたのです。

 これはシナリオ班も例外ではなく、新しい要素を採り入れたり、既存のやりかたを見直したり、あるいはさらに深掘りしたりと、いろいろチャレンジしながらがんばっていきます。いままで触れてこなかった試みに足を踏み入れたり、あるいは既存の要素を別の人が手掛けたりした場合、それらがどのように描かれるのか……。

 『FFXIV』という看板の中ではありますが、"スタッフそれぞれの思いや色"がいままで以上に反映された仕上がりになるはずです。そうしたところも楽しんでいただければなと。

──そしてその輪の中に、「我こそは!」と思う人はぜひ入ってほしいということですね(笑)。

石川:もちろんです。その一員になっていただけると、たいへんありがたいです!

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