麦わらの青年との出会いで、さらに華佗が成長した!? 【三国志 英傑群像出張版#11-2】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。


 今回も名医・華佗(かだ)についての民間伝承を紹介していきます。

 今も日本でも使われている薬に「華佗膏(かだこう)」というものがあります。皮膚の塗り薬です。由来は民間伝承かもしれませんが私は知りません(苦笑)

 以外と身近なところにも華佗の影響があるということでしょうか? 華佗にまつわる民間伝承は多いです。そのなかからまたいくつか紹介していきます。

母を救う少女

 徐州城の北東50里、徐田の西門にある「敬母殿」がある。ここにまつわるお話。

 ある日、沈俊娥(ちんしゅんが)の義理の母である王氏が突然体調を崩し、血を吐いて気絶した。沈俊娥は急いで医者を探して治療してもらった。医師が相次いでやってきたが、母の状態は改善されなかった。

 彼女は、夫が戦争に行っていてしばらく帰ってず不安な日々を送っていた。そこで、彼女はあちこちに名医を尋ねて回った。

 しかし、半月経っても母の病状は良くならず、ますます悪くなるばかりである。仕方なく焼香を焚いて祈り、「母さえ治ってくれれば、喜んで私は死にます」と神に祈った。

 同じ日、華佗は曹操について許田で兵士の訓練を見に来たが、これを聞いた沈俊娥は許田に行き、華佗に母の治療を懇願した。華佗は、彼女が母のために昼夜走り回ったことを知り、感激してすぐに診察した。

 沈俊娥から母の状態を聞き、脈を取った。そして「あなたのお義母さんは、人間の肝臓から出る胆汁を使って治さないといけない。」と診断した。

 これを聞いた彼女は、迷わず華佗に言った。「嫁として、母に孝行したいので、私の肝臓の胆汁を使ってください」と。

 姑を救おうとする彼女の熱意と誠意を見て、華佗は持参した“麻沸散”を彼女に使った。彼女が意識を失うと、華佗は素早く腹腔を開き、肝臓から胆汁を取り出した。しばらくして、切開部分を縫い終えた。

 そして、その胆汁でスープを作り母に飲ませた。そのスープを飲んだ母は2日で完治した。親孝行な嫁、沈俊娥は肝臓の胆汁を取り除く手術を受けたものの、相変わらず元気であった。

 それ以来、この地の人々は華佗を「神医」と呼び、沈俊娥が母親の為に身を切り救出した話を広めた。人々は彼女の親孝行を称え、廟を建てるために寄付をした。

 このうわさが曹操の陣営に届くと、曹操は感動し自ら兵士を率いて許田“射鹿台”に赴き、建設資金を寄付した。廟の扉に掲げられている「敬母殿」の額は、曹操自身が草書体で刻んだものだといわれている。

麦わらの青年

 華佗が医術を始めた当初は、彼もあまり医術が得意ではなかったそう。人から学び、良いところを参考にしながら、ついに名医となった。

 ある日、一人の青年がやってきて、華佗に治療を依頼した。華佗は脈を取るや否や患者に「あなたは頭痛に苦しんでいますな。薬はあるが、私は持ってはいない」と言った。

 青年は「どんな薬が必要なんですか?」と聞いたが、華佗に「人の脳だ。」と言われ、青年はそれを聞いてショックを受け、「探しようがない」と諦めて、家に帰った。

 数日後、その青年は今度は老医師を見つけ診察を受けた。老医師は彼に、「この頭痛について、誰かに診てもらったか?」と尋ねた。

 青年は、「華佗先生に診てもらったが、人の脳を薬として使いたいと言われたので、仕方なく治療をやめた」と言った。

 老医師は笑いながら、「人の脳を探さなくても、古い麦わら帽子を10個見つけて煎じ薬にして飲めばいいんだ。長年かぶっている麦わら帽子を探すことを忘れるな。」と言う。青年はその通りに古い麦わら帽子を探して煎じて飲むと、病が治った。

 ある日、華佗は青年と再会し、彼がもう病気の様子もなく元気で生きているのを見た華佗は、「頭痛は治ったのですか?」と尋ねた。青年は微笑みながら、「はい、老医師のおかげですっかりよくなりました」と答えた。

 華佗は、「どんな薬を飲んでどんな治療法だったのですか?」と質問した。青年は、「麦わら帽子から作った煎じ薬だ」と言った。

 それを聞いた華佗は驚いた。「老医師はどこに住んでいるのか?」と尋ね青年は華佗に教えてくれた。

 誰かが長年の経験を積んで手に入れた秘伝の方法を、どうやって聞けばいいだろうか。そこで、華佗は普通の人のフリをして、老医師に弟子入りすることにした。

 3年が過ぎたある日、老医師は患者を治療するために出かけた。華佗は兄弟弟子と一緒に家の中で薬を作っていた。

 その時、お腹の大きな患者が玄関にやってきた。患者は、老医師に治療してもらいに来たと言った。

 師匠が留守のため、兄弟弟子は気軽に迎える勇気もなく、患者に日を改めて来るようにと言った。患者は「先生、助けてください! 自宅が遠いので、なかなか来られないんです。」と懇願した。

 その時、華佗が出て来て、患者が確かに重病で、遅らせることができないのを見て、「私が治療しましょう」と言って薬を出した。

 それにはヒ素が含まれていた。当時も劇薬である。患者は薬を飲み、礼を言って去っていった。

 患者が帰った後、兄弟弟子は華佗にこう訴えた。「この薬は毒であることを知っているのか?死んだらどうするのだ?」

 華佗は「この人は腫れ物の病気だから毒で攻めなければならないのです。」と返す。兄弟弟子は「治ったら死んでもいいのか?」と言った。

 華佗は微笑みながら、「いいえ、そんなことはないです。何かあれば私が責任を取ります。」と言った。

 患者が薬を飲んで村の外に出ると、偶然にも帰ってきた老医師に出会った。老医師は患者を一目見て、薬について指示をした。患者はさきほどの弟子(華佗)に同じ事をいわれて薬をもらったという。老医師が薬を受け取って見てみると、確かに同じであった。

 老医師は、「私のこの処方を知っているのは、国寺の老道士と華佗以外にいないだろう」と考えた。まだ弟子たちにはそれを伝えていなかったため、彼は家に帰ると、二人の弟子を叱った。

 老医師は「今、患者に薬を配ったのは誰だ?」と。兄弟弟子は華佗を指差して、「彼です。薬は毒だと言ったのですが、聞く耳を持ちませんでした。」と言う。

 華佗「先生。この患者は水腫、腹部は毒、砒素も毒、毒で毒で攻めるので患者には有益で無害です。」と説明した。

 老医師は「誰から聞いたのだ?」と問う。華佗「国寺の老道士です。そこで数年間勉強しました。」と返答した。

 その時初めて、老医師は彼が華佗であることを理解した。老医師「お前は華佗なのか?」と呼びかけた。そして「なぜ、私のところに医学を学びに来たのだ?」と聞く。

 この時、華佗はそれを認め自分が勉強しに来た理由を老医師に話した。

 老医師は華佗の話を聞くと、彼の手を掴んで言った。「あなたはもう有名人なのに、この貧しい田舎にまで来て学んでいたのか」

 華佗は「先生、人の才能は様々ですが、皆それぞれに長所があり、私にないものは人から学ぶべきでしょう。医療を行う者も同じです」と言った。老医師は感激して涙を流し、すぐに華佗に頭痛の秘伝を伝えた。

 いかがだったでしょうか? この2つの話。なんだか似ている気がしたので紹介しました。

 1つ目の手術、もしかして2つ目の老医師からしたら大した手術をしなくても治すことができたのではないか? という疑問が浮かびました。

 2つ目の話、華佗は名医となった後も、医療仲間からアドバイスを求めることを忘れず、情報収集し、謙虚に学問を追及した話ではなかったかと思います。たいへん頭がさがるお話でした。

 前回もそうですがやはり天才というよりは、努力の成果での成功者だということがよくわかるお話でした。努力と探求心については見習いたいものです。

 それにしてもこの技術を奪った曹操が憎い。

 次回も民間伝承のお話を続けていきたいと思います。

横山光輝三国志の交流会開催

 毎回、横山三国志の決めた登場人物にテーマをおいてシーンを見ながら交流します! その武将について語り合いましょう!

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開催:毎月第3日曜日、要予約
第2回:12月18日(日)、曹操
時間:17時~18時頃
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場所利用料:1000円(ペットボトルのお茶付、マスク必須、食事禁止)
予約締切:前日まで。こちらの予約フォームよりお送りいただくか、直接お電話で(TEL:078-641-3594)
場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー

※検温実施:37.5度以上は参加お断りいたします。
※お一人から参加いただけます。小学生もご参加頂けます。
※お子さんの付き添いの場青、別室で待機いただけます(入館料は必要)
※Google meetでオンライン参加可能です(有料クレジット先払い)


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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