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力ずくでは勝てない…だから面白い。戦闘、交渉もカードバトルで行う『GRIFTLANDS』レビュー【電撃インディー#347】

柏又
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Klei Entertainmentより配信中のNintendo Switch/Xbox One/PC(Steam)用ゲーム『GRIFTLANDS(グリフトランド)』のレビューをお届けします。本記事ではSteam版をプレイしています。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

戦闘だけではなく交渉もカードバトルで行うシステムがユニーク!

 本作は、荒廃した世界を舞台に3人のキャラクターから主人公を選んで彼らの物語を楽しむRPGです。ゲーム開始当初に選べるのは賞金稼ぎの“サル”だけですが、サルでゲームを進めると元軍人の“ルーク”が、ルークでゲームを進めると放蕩者の“スミス”が選択可能です。

 ストーリーの骨組みとなる流れはキャラクターごとに固定されていますが、道中で受ける依頼や移動中に発生するイベントなどはプレイごとに変化するので、リプレイ要素もしっかりありますね。

力づくだけではなく交渉も選択肢のひとつ

 ストーリーはマップ上で出会うさまざまな登場人物から依頼を受け、達成することで進んでいきます。ここでポイントとなるのが、依頼の解決法に“戦闘”と“交渉”の2つの選択肢があること。いずれの場合もカードバトルで相手と戦うことになります。

 主人公は戦闘用と交渉用、2つのデッキを持っています。カードバトルでは、戦闘なら体力、交渉なら決断力がゼロになった方の敗北です。主人公の場合、戦闘での敗北は死すなわちゲームオーバーを意味します。対戦相手の場合は、体力が“パニック限界点”を下回ると降伏するので、そこで降伏を認めるかとどめを刺すかを選択できます。

 カードバトルの基本システムは、アクションポイントの範囲内で攻撃、もしくは防御カードをプレイするタイプで、『Slay the Spire』を知っている人なら馴染みやすいと思います。

 画面構成の戦闘ならRPGのパーティバトル風、交渉なら自分の本体である“コア論戦”のまわりに自身と相手に影響を与える“論戦”アイコンが浮遊していてそれっぽい雰囲気がいい感じですね。

選択によって変化する相手の感情がその後に影響する

 本作には選択で戦闘と交渉のどちらを選ぶかで相手が抱く感情が変化する、という要素も存在します。相手の感情は好意と悪意それぞれ2段階あり、好かれた場合は主人公に良い効果が付与されますが、嫌われると悪い効果が付くほか、交渉時に横やりを入れられるなどのペナルティがあるのです。

 例えば戦闘を選ぶと嫌われてしまうが交渉なら平気、という場合なら交渉を選択することで相手の感情を逆なでせずに物語を進めることが可能です。もちろん、交渉で勝てる自信がある場合に限りますが……。

 ちなみに、相手に嫌われて悪い効果を付けられそうな場合は、戦闘で降伏を認めずにとどめを刺してしまうという方法もあります。ただし、戦闘での殺害を繰り返すと悪評が立って悪い効果のカードが強制的に組み込まれるので無傷とはいかないですね。

デッキの構築に加えて成長の要素も!

 カードバトルで勝利すると、バトルのタイプに応じたカードを3枚の選択肢から1枚デッキに加えることができます。さらに、強敵相手の場合には“グラフト”と呼ばれる特殊な効果を持つ装備を入手できることもあります。

 また、カードやグラフトはプレイするごとに経験値を獲得し、レベルアップで効果がアップしたり新たな効果が追加可能。カードの場合、レベルアップ内容は2つから選択できるため、より奥の深いデッキ構築ができるでしょう。

 本作は、マップ上をある程度自由に移動でき、お金に余裕があればショップでカードやグラフトを追加可能。さらにお邪魔カードを組み込まれるペナルティはあるものの、飲食で体力や決断力を回復できる、とRPG的な自由度があるのも興味深いですね。

主人公ごとに異なるストーリーとバトルが楽しめる!

 3人の主人公はいずれも異なる出自を持ち、まったく異なるストーリーが用意されています。彼らのストーリーはいずれもプレイヤーの選択によっていくつにも分岐していて、それぞれ異なる展開が用意されているので繰り返しプレイして新たな展開を楽しめるのがうれしいところです。

 さらに、選んだキャラクターによって異なるバトルが展開されるのもポイントです。最初に選べだけあってサルはオーソドックスなタイプのキャラクターですが、ルークは交渉でコイントスで出た面が表か裏かでカードの効果が変化する能力を持っています。

 またスミスは、自分のターンに発生した本人へのダメージで蓄積される“精力”でターン終了時に体力を回復する能力があり、カードの組み合わせが重要だったりします。さらに“飲酒”効果のあるカードをプレイしてデッキに“空ボトル”カードを追加し、これを消費して攻撃するなど使っていて楽しいキャラクターでもあります。

繰り返し挑戦できる要素も充実!

 本作のキャラクターにはランクの要素があり、ゲームオーバー、もしくはクリア時に獲得できるスコアでランクアップしていきます。ランクアップするとゲーム開始時に変更できるキャラクターの衣装のほか、新たなカードがアンロックされ、バトルの勝利報酬やショップでの購入が可能に。よりデッキ構築の幅が広がっていきます。

 さらに、ゲーム開始時に“プレステージレベル”が選択可能。プレステージレベルはストーリ難易度ではないゲームをクリアすると次のレベルが選択可能になり、より難易度の高い歯ごたえのある内容に挑戦できます。

 カードバトルゲームと言えばやはり、繰り返しのプレイで自分の腕前とデッキ構築を極めていく楽しさは外せないと筆者は思うのですが、本作はこれらの要素で繰り返し遊んでも飽きないよう作り込まれているのがわかりますね。

ライトユーザーからカードゲームガチ勢まで遊べる難易度設定

 さきほどプレステージで難易度を徐々に上昇させることについて紹介しましたが、本作はカードバトルRPGなので、バトル難易度はそこそこでストーリー展開を楽しみたい人もいるのではと思います。

 シビアなカードバトルに挑戦したい人とは相反するような要望ですが、本作は“ストーリー難易度”でそういったプレイヤーでもバッチリ楽しめるよう仕上がっているのがにくいところです。

 ストーリー難易度は基本となるモードよりもカジュアルな難易度になっているほか、戦闘で死亡してもやり直すことができます。難易度が下がっていると言っても適当なプレイで進めるようにはなっていない、かなり絶妙な設定となっていると筆者は思いました。

 初めてそのキャラクターをプレイする人なら適度な歯ごたえを感じつつ、ゲームクリアまで進めるのではないでしょうか。

 また、本作はゲーム開始時にゲームのカスタマイズ→ミューテーターでプレイ中の内容を細かくカスタマイズ可能。開発側が設定した難易度よりより厳しくも易しくも設定できます。

カードバトルが好きならマストバイ! カードゲームが苦手なRPGファンにもオススメ

 ここまで紹介してきた『GRIFTLANDS』。Windows版が発売されてから1年以上経過していることもあり、『Slay the Spire』系のカードゲームが好きな人はたぶんプレイされているかもしれませんが、このタイプのカードバトルゲームが好きならマストバイと言えるクオリティがあると筆者は感じました。

 ストーリーを1回クリアすると、カードバトルに専念できる“バトルロード”モードがアンロックされますが、それでもワンプレイの時間は長めになるかもしれません。ただし、オートセーブが細かく行われているので少しずつ進めることもできるでしょう。

 また、本はRPGとしても見逃せない魅力を持っています。カートゥーン調のグラフィックで描写されたユニークなキャラクターはもちろん、権力者から労働者にいたるまで荒廃した地にしがみつくようにして生きている人々で構成された世界が非常に魅力的で、その間を主人公として駆け抜けていくプレイ感がとにかくいい感じなのです。

 独特のタッチで描かれたキャラクターが気になったら挑戦してみて後悔しない内容だと思います。


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