『呪われて、純愛。』二丸修一先生が語るキャラの名前に込められた三角関係の秘密。それは…

　電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『呪われて、純愛。』を執筆した二丸修一先生のインタビューを掲載します。

　記憶喪失の“湖西廻”の前に現れた、2人の恋人“丹沢白雪”と“才川魔子”。真実がわからないまま、廻は秘密の三角関係を受け入れていくのですが……。

　密かに令和のトレンディードラマを目指しているという二丸修一先生に、本作の裏話をたっぷりと語っていただきました。

──この作品を書いたキッカケを教えてください。

　元々私は、作品を考えるうえで、過去感動した作品を今風に落とし込むことによって、自分の感じた感動を令和の世の中に広めたいという希望を持っています。

　その中には恋愛の光に焦点を当てたものだけではなく、闇の面に注目した作品もあります。そんなドロドロの話で面白い名作が数多くあり、流行した時期があります。

　私はその流れを継ぎ、それらを読んだことない人に面白さを伝え、また過去の流れを知る方たちにはその感動を思い返してもらいたいと思い、今作『呪われて、純愛。』を執筆しました。そしてその流れを知らない方には、こんな面白い恋愛物語のジャンルがあるのかと、伝えることができれば幸いだと感じています。

──作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

　まずはキャラクター性の魅力、そして「全員が純愛でありながら、胃が痛くなるストーリー」がセールスポイントです。胃が痛くなるストーリーの楽しさを伝えたい！というのが今作の自分のモチベーションであり、密かに「令和のトレンディードラマ」を目指していたりします。

──作品を書くうえで悩んだところは？

　重い三角関係は、スタートに時間がかかることが多いです。しかしスタートが遅いのは、現在の流行に合いません。なので何か改善案がないか…と考えたあげく、主人公を記憶喪失にすることで、3000文字で三角関係ができ、しかも謎解き要素という楽しさも作ることができました。これは悩み、思いつけてよかったと考えている点です。

──執筆にかかった期間はどれくらいですか？

　プロットに1か月、執筆に1か月くらいだと思います。

──執筆中のエピソードはありますか？

　こうした重い三角関係のお話って、ゲーム系で名作がたくさんあるイメージがあります。

　そのためと言えるかわかりませんが、他の作品に比べて、小説のシーンに合わせた音楽を聴きながら執筆していました。

　やっぱり音楽って強い力を持っていて、切ない曲を聞きながら読み直したりしていると、面白さが増すように感じたり、勢いがついたりしました。そのとき聞いていた曲の例は、2巻のあとがきに書いていますので、よければ見てください。

──本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

　三角関係がメインということが最初から決めていたので、名字から決めました。

　メイン3キャラはsin（才川）、cos（湖西）、tan（丹沢）から来ていまして、3人揃ってしまうと延々廻ってしまうというひどい構造となっています。

　廻は3人の中でぐるぐるめぐることから廻という名前がしっくりきて、最初に決まりました。魔子は何となくのイメージでぴったり来て、白雪は当初『天音』という名前だったのですが、書いていくうちにもっとモチーフを何か入れる必要があると思い、魔子の名前から白雪姫をモチーフにすると面白いと思い、最終的に白雪となりました。

　キャラクターについて思うところとしては、「魔子」が自分の中ではあまり書いたことないタイプなのですが、その分だけ魅力的に感じており、書いているシーンが楽しくて仕方がなかったりします。

──特にお気に入りのシーンはどこですか？

　後半の廻と魔子のやり取りですね。狭い隙間に潜り込み、キスをねだりながらそれ以上を求められない魔子、魔子をおもんばかって一緒に地獄へ堕ちていこうとする廻…これは二人とも望んだわけではないんですけど、必然だと思うんです。

　こうした「傷の舐め合い」ってずっと描きたいと思っていて、それを理想的な形で描くことができたことに喜びを感じています。ぜひ読んでもらいたい部分です。

──今後の予定について簡単に教えてください。

　12月に発売される新作『君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか？』 が発表されました。3か月で4冊出版させていただくことになったのですが、正直すべてが全力で、最高にお気に入りの作品なんですよ。なのでぜひ『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』『呪われて、純愛』と合わせて、手に取ってもらえると嬉しいです…！

　またさらに様々な媒体、展開に絡ませていただいているので、来年以降もご期待いただければ幸いです。

──小説を書く時に、特にこだわっているところは？

　自分の「好き」を全力で書くことです。

　今回は「胃が痛くなるような恋愛は面白いぞ」を全力で書き、売れるための努力もできる限りしたつもりですが、それは自分の好きだからこそできたことです。

　私にとっては好きなものの仲間を増やす感じで書いており、一人でも多く読んでもらい、仲間を増やしたいと考えて書いています。

──アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは？

　体力を鍛えることが大事だと思っており、ランニングしながらアイデアを練っていたりします。

　また飲み会に積極的に参加することで人脈を増やし、自分にはない意見、視野を得ていく努力をしています。

──学生時代に影響を受けた人物・作品は？

　はっきりと言えるのは二作品です。

　田中芳樹『銀河英雄伝説』、小野不由美『十二国記』。

　この二つは今も心が乱れたとき、読み直すことで心の平常心を取り戻す、心のよりどころになっている名作です。

　なお、漫画とゲームは好きな作品がありすぎてあげられないです。

──今現在注目している作家・作品は？

　今は自分のベストを尽くすしかないと思っているので、特にないです。

──その他に今熱中しているものはありますか？

　進撃の巨人が好きなんですが、海外の反応が好きすぎて、英語がわからないのについYoutubeで海外の反応動画を見るのが止められないんですよね…。

　あとRTAの動画を見るのが好きです。

──最近熱中しているゲームはありますか？

　昔からファイアーエムブレムが大好きでして（おさまけのキャラクター名もファイアーエムブレムから取ってる）、今は風化雪月無双をやっているんですが、忙しすぎてなかなか進まないというのが現状です…。

──それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

　誰に言われなくても作者自身が気に入って読み返して、悦に浸っていることがあるような作品なので、ぜひ読んで！！！！！としか言いようがないです。

　もし手に取っていただければ幸いです。

　また実は10年以上前、デビュー作のギフテッドを書いたとき、確か電撃オンラインさんのインタビューで、将来の書きたいものとして「数日胃が痛くなるもの」と書いた気がします。

　10年の時を経て、この作品…「呪われた、純愛。」が、かつての自分の憧れを実現させてくれた作品になります。

　もし一人でも多くの人が読んでいただければ幸いです。