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『公女殿下の家庭教師』七野りくインタビュー。最新13巻&新作『双星の天剣使い』が11/18同時発売!

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 11月18日にファンタジア文庫から『公女殿下の家庭教師』13巻、および『双星の天剣使い』1巻が発売されます。

 『双星の天剣使い』は、小説投稿サイト“カクヨム”で作品を投稿している七野りく先生の作品。1000年前に不敗の英雄として名を馳せた主人公が、転生して再び戦乱の世に身を投じる戦乱ソードファンタジーです。カクヨムでは既にWEB版が公開されています。

 今回は、著者である七野りく先生にインタビューを実施。前半は先生の小説家デビューの裏側や執筆スタイルについてお伺いしました。

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小説を書き始めたのは、本当に“なんとなく”だった!?

――小説を書き始めたきっかけはどのようなものなのでしょうか?

 カクヨムに投稿するまで小説は書いていませんでした。初めて書き始めたのはとある年のお盆の頃で、何気なくパソコンを見ていたらカクヨムというサイトがあり、そこで投稿をするようになりました。

 最初の1ヶ月は星ゼロでしたが、次第に書き方がわかってくるようになり、作品も読んでもらえるようになりました。

――“小説家になろう”は読んだり利用されたりしていたのでしょうか?

 Web小説は個人サイトを含めて色々と読んでいたので、“小説家になろう”も読者としては利用していましたが、自分で書く機会はありませんでした。

 最初に書いたのはカクヨムの初投稿で、その後『公女殿下の家庭教師』を含む作品を並行で連載していきました。

――どのような出来事がきっかけで執筆をはじめたのでしょうか?

 何となく書きたいことは頭の中にあったものの、それを形にすることがないまま生きていました。そんな中、丁度時間の余裕ができたので、書いてみようかなと。

 その頃はもう“小説家になろう”の敷居が大分高くなった頃で、それであれば他のサイトで書いて、できるだけ多くの人に見てもらおうと思ったんです。

 なので、本当に“なんとなく書き始めた”という言い方が正しいですね。その後まもなくして、『公女殿下の家庭教師』で第3回カクヨムWeb小説コンテストの大賞を受賞、作家としてデビューし今に至るわけですが……今でも自分の本が本屋に並んでいるのを見ると「これは夢なんじゃないか?」と思うことがあります。

書籍化にあたって原稿を100ページ以上削ることも

――作家として活動が本格化したのは、やはり賞の受賞が大きなきっかけでしたか?

 受賞を報せるメールが届いた日は覚えていますが、その時の自分は戸惑いが大きかったですね。書籍化を目指して書いている人なら大歓喜すると思うんですが……「まさか、自分が」と。

 作家になるという明確な目標をもって小説を書いていたわけではなく、「書きたいことを書いて、それを読んでもらえればいい」という感覚でしたので。

――書籍化が始まってから、生活や執筆活動に変化はありましたか?

 書籍化作業に入ると、複数作品を同時に回すのは難しいですね。カクヨムの連載までは手が回らない状態になってしまいました。

 自分は初稿と書籍版のページ差があるタイプで、100頁くらい毎巻削り、刊行時には自分的にベストであると決めた320頁くらいに絞った状態にしています。

 あくまで持論ですが、それ以上の頁数だと読んでいて長く感じてしまう部分もあると思いますので。

――『公女殿下の家庭教師』とあわせて、今年7月に完結した『辺境都市の育成者』なども展開し、今回新たに『双星の天剣使い』という新シリーズが発売されます。複数のタイトルを同時進行されていますが、どのようなスタイルで執筆をされているのでしょうか?

 書籍になっているものに関しては、まず1つの作品を進めて、編集さんから戻ってくる間に別の原稿作業やweb連載を進める形が多いです。『辺境都市の育成者』と『公女殿下の家庭教師』は同時に刊行した月もあったので、その時はスケジュールに追われながら進めていましたね。


――並行して作業をすると大変な部分も多いのではないでしょうか?

 自分は、「単なるモブキャラを作りたくない」という信条を持って作品を書いていて、一見すると脇役に見えても、名前を持つ登場人物1人1人にバックグラウンドを持たせています。必ずしも作品内でその設定を明かすわけではありませんけど。

 そんな経緯もあり、集中して書かないと、キャラクターが混ざってしまいそうになりますね。『双星の天剣使い』はまだそこまでキャラ数は多くありませんが、『公女殿下の家庭教師』はどんどん人物が増えていることもあり、執筆中に「あれ、この子はこんな喋り方だっけ?」というのは往々にしてあります。

 それでも、人間って不思議なもので、一晩置いたりクールダウンの期間を設けたりすると、頭の中が整理されて「あ、こう書き直そう」と思えるんです。なので、同時刊行の際には1作品を書いて、少し間を置いてまた書くというスタイルが良い物語を作りやすいと思います。

――ご自身の執筆スタイルで特徴的な点はありますか?

 自分は多分Web出の作家としては珍しいと思いますが、カクヨムで出している作品はあくまでも「原案」として捉えています。

 読んでいただければわかると思いますが、作品によっては書籍で刊行される際に9割近く変わっているものもあります。そこが他の作家さんと違うところかなと思います。

唯一の趣味は読書。その延長線上に執筆がある

――執筆リズムはいかがでしょう? 書き溜めなどもされるのでしょうか?

 カクヨムの連載に関しては、書き溜めたことは1回もないですね。もっと言ってしまうと、カクヨムでの連載時はプロットすらなくて、全て頭の中で構成をしています。さすがに書籍版に関しては編集者さんと意思疎通が必要になるのでプロットを作っていますが、用意するケースはそれぐらいです。

 執筆する時間帯は基本的に夜で、気分が良ければ長時間書き続けることもあります。執筆速度も速い方なのかな? と思っています。店舗特典のショートショートなどは、ちょっとした空き時間に書き終えてしまうこともありますね。

――刊行ペースを見ても、かなり執筆にかける時間が多いのではないかと思います。

 典型的な無趣味人間なんですよね。唯一の趣味が読書で、最近は書くことが加わっている感じです。他に何かやるかといえば、やる趣味が……(苦笑)。

 ただ、ずっとこのペースで書いていることもあり『公女殿下の家庭教師』は5巻以外すべて4か月単位で出すことができています。

温めているアイデアは多数。いつかは歴史・史実系も?

――新たな作品のアイデアも考えているのでしょうか?

 温めているネタは多くありまして、何なら今日インタビューに向かう途中でも1つ案が浮かんできたくらいです。

――それは楽しみですね! 今後執筆したいジャンルや作品はあるのでしょうか?

 書きたいことは山ほどありますが、時間が足りないのが悩みです。Webの読者さんって移り変わりがすごく激しいので、その時期に何がどれくらい反応あるかも気になるところです。

 話が途中の状態で新しいものを始めると、皆さんから「最後まで書けよ!」って怒られそうなのですが、書きたい物が多いので許してほしいかなと。

――先生のイメージはファンタジー系でしたが、『双星の天剣使い』は中華ソードファンタジーで、軍記的な側面もあります。先生の作品を追いかけていれば、さまざまな系統の作品も楽しめそうですね。

 カクヨムで書いている作品の中だと、『篠原君ちのおうちごはん!』はホッとする物語で、多くの人が楽しみやすいお話かと思います。

 歴史系では、明治や幕末系のネタもあるのですが、これをどうやって作品に昇華させるか……。自分は歴史物語を読むのも勉強するのも好きで、それなりに詳しいほうだと思います。

 だからこそ、実際に自分で史実をもとにした歴史物語を書こうとすると、資料を読み込みすぎているが故に書きにくい面もありまして……。最近だと、かつて常識だと思われたことがどんどん崩れかかっている部分もあるんですよね。

――鎌倉幕府の成立年代なんかは有名ですよね。かつては1192年でしたが、今は1185年という。最近では、どういった発見があったのでしょうか?

 最近の大きい話題だと、鉄砲に関する発掘が進んで、それに伴って研究も進んでいます。特に、鉄砲玉の質の問題ですね。

 戦国時代の織田家や中央政権が強くなったのは、鉄砲玉に使える良質な鉛を独占していたからで、他の大名は威力が下がる金属を代用していたという説が出てきています。

 そうなると、鉄砲という武器1つの背景描写が大きく変わってしまし、そもそも、多くの大名は天下を取るのが難しい前提条件なんかも出てきてしまいます。

 そういった部分をどう作品に落とし込んでいくかが悩みどころの1つとなっています。うまい解決方法や描き方が見えてくれば、筆が進み始めるかもしれませんので、そこはお楽しみにということで。

 後述する『双星の天剣使い』は過去の中国をモチーフにした文化設定で執筆していますが、現実に根差したものを書こうとすると考証や下調べが本当に大変で……。

 そういった世界設定はファンタジー世界が舞台でもちゃんと考えながら書いてはいますが、史実をもとにするとなると、時代考証はより大事になりますからね。


 前編はここまでとなります。新刊の魅力をお聞きした後編に続きますので、そちらもお見逃しなく!

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