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『FF16』はほぼ完成している!? 3人のキーマン、吉田直樹氏/髙井浩氏/前廣和豊氏インタビュー

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 2023年夏の発売が予定されている『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング最新作『ファイナルファンタジーXVI(以下、FF16)』。その最新トレーラー“AMBITION”が先月10月20日に公開された。

 それを受けて、電撃オンラインは本作の開発のキーマンである吉田直樹氏、髙井浩氏、前廣和豊氏(以下、敬称略)の3名にインタビュー。とくに髙井氏と前廣氏が『FF16』のインタビューに登場するのは初ということで、これまでの開発に関する想いを存分に語っていただいた。また、お2人は元『ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)』開発陣ということもあり、『FF14』のエピソードも交えてのインタビューになったので、その点もぜひ注目して読み込んでほしい。


  • ▲吉田直樹氏:『FF16』プロデューサー。スクウェア・エニックス取締役兼執行役員、第三開発事業本部 本部長。『FF14』のプロデューサー兼ディレクターも担う。
  • ▲髙井浩氏:『FF16』ディレクター。『FF14』では『蒼天のイシュガルド』までのアシスタントディレクターを担当。
  • ▲前廣和豊氏:『FF16』クリエイティブディレクター&原作・脚本。『FF14』では『新生エオルゼア』と『蒼天のイシュガルド』のメインシナリオを主に担当。

髙井氏と前廣氏が目指した『ファイナルファンタジー』たりえる作品

――髙井さんと前廣さんは『FF16』でのインタビューが初となりますので、改めて自己紹介をお願いできればと思います。髙井さんはメインディレクター、前廣さんはクリエイティブディレクター&原作・脚本という肩書をおうかがいしていますが、現在の『FF16』でのより詳しい担当業務について教えてください。

髙井:ディレクションという意味では、自分と前廣のふたりとも全体について目を通しています。そのうえで私の役割としては、“こんな感じのゲームにしよう”というゲームの大枠を作る係です。その後、前廣がその内容を詳細化して開発チームに伝えて形にしていく、という流れで開発は進みました。

前廣:正直、やっていることが多すぎてコレと言い切るのは難しいですね。ゲームデザイン全般の統括と世界設定&脚本全般、チームのディレクションと……なんか、もうよくわからないので“雑用全般”ということにしてください(笑)。

――6月に取材させていただいた吉田プロデューサーへのインタビューでは、すでに本作の開発経緯をお聞きしていますが、改めておふたりからも『FF16』のお話を初めてうかがったとき、どのような感想を抱いたかを教えてください。

髙井:正直、だいぶ前のことなので覚えていなくて……(苦笑)。

前廣:吉田に焼肉をおごってもらったことは覚えているので、今思えばそれがギャラだったのかなと(笑)。

髙井:そもそもの発端としては、吉田が松田(松田洋祐氏/株式会社スクウェア・エニックス代表取締役社長)から、「『ファイナルファンタジー』の最新ナンバリング作品を第三開発事業本部で開発できないか」と相談されたのが始まりと聞きました。そこで、吉田が『FF16』を作るメンバーを検討することになり、我々に白羽の矢が立った形です。たしか、評価面談のときに「髙井さん、『FF16』のディレクターどう?」と聞かれたんですよね。

吉田:これは松田にも最初に話を通していたのですが、僕が『FF14』と同時に『FF16』のディレクターを担当するのは、いずれも疎かになる可能性が高く、『FF14』のお客様にも開発メンバーにも失礼ですので、そもそもナシと言っていました。そこで、プロデューサーはなんとか兼任する形にして、ディレクターについては僕が最も信頼する大先輩の髙井に声をかけたんです。

髙井:その話をされたときは、「自分ももういい歳だし、FFのディレクターをやる機会はそうそうないだろうからお受けしようかな!」と。あと、そのときにはすでに「シナリオは前廣にお願いしようと思う」と話していましたね。

吉田:前廣にお願いしようと思った理由は、まず『FF14』での実績がありますし、なにより彼が作る世界や書き味が僕好みというところが大きいです。また、彼のいわゆる“中二属性”が僕に近しいところも重要なポイントでした(笑)。さらに、「持てる戦力のなかで最大パフォーマンスを出すには……」という考え方でキャスティングしていったので、彼のライティング速度も魅力的でした。そういう理由から、髙井に声をかけたあと前廣に「やる気があるなら書かないか?」とお願いしに行ったわけです。

前廣:もちろんその依頼は引き受けたのですが、そのタイミングは『FF14』のパッチ3.1(2015年11月実装)のシナリオを書くので手一杯でした。さらに、『ドラゴンクエストビルダーズ』のバランスチェックも並行してやっていて……振り返るとムチャクチャなスケジュールでしたね。

吉田:『FF14』の開発としては拡張パッケージ『蒼天のイシュガルド』(2015年6月発売)がリリースされるかどうかというタイミングだったので、そこから1年以上かけて業務の引き継ぎを行う必要がありました。ですから、最初に『FF16』の話をしてから1年以上は『FF14』をきれいに引き継げるようにする準備期間にあてたため、『FF16』としては動けていません。本格的に動けるようになったのは『FF14』のパッチ3.4(2016年9月実装)ぐらいからでしょうか。そういう背景があるので、ふたりにとっても“オファーをされたときの記憶”は曖昧なんじゃないかと。

――本格始動はその引き継ぎが終わったあとからなのですね。

吉田:ふたりはパッチ4.0となる拡張パッケージ『紅蓮のリベレーター』にはほとんどタッチしていないはずです。

前廣:ロンチトレーラーに関わったくらいですね。

髙井:あとは開発者ではなく、ずっと普通のヒカセン(※)をしていました(笑)。

※ヒカセン:『ファイナルファンタジー』によく登場する用語でもある、“光の戦士”の略。ここでは『FF14』プレイヤーのことを指す。

――髙井さんは、過去に数多くの『FF』シリーズのナンバリングタイトルにかかわってきており、ついに最新作のディレクターを務めることになりましたが、最新ナンバリングタイトルである『FF16』を「どういう『ファイナルファンタジー』にしよう」と考えていましたか?

髙井:大まかにいうと、「オープンワールドにはしたくない」「ストーリーでプレイヤーを引っ張っていくゲームにしたい」「“アクション風のRPG”ではなく、“手触りのいいアクションRPG”にしたい」といったことを考えていました。また、「これまで『FF14』などでは“15才以上”が対象であったレーティングを上げたい」という思いもありました。

――レーティングを上げたいというのは、“大人の物語を描きたい”という意味でしょうか?

髙井:もちろん、ストーリーに関して言えば、ある程度の年齢・趣向の人でも耐えられる話にしたいという意図から、「ジュブナイルにはしたくない」という考えはありました。ですが、それよりも“表現の幅を広くする”ことがレーティングを上げる目的ですね。

 昨今のゲームグラフィックの進化は目覚ましく、我々もそれに見合ったものを作っていくことになります。加えて、『ファイナルファンタジー』である以上、キャラクターたちの戦いは避けられません。そう考えたときに、“切った張った”の演出をするうえで血の一滴も表現できないのは、現代のゲーム観的にも無理だろうと。そういった理由から、レーティングを上げたいと考えていました。

吉田:現在のレーティングによる表現の制限はかなり多く、新生『FF14』開発時はかなりショックを受けました。具体的には、『新生エオルゼア』のトレーラーでガレマール帝国とエオルゼア同盟軍というふたつの勢力が激突するシーンがあるのですが、戦争を描いているのに「矢が体に刺さるのは本来NG。刺さった瞬間のアップが無く、カメラ外ならギリギリOK」と言われてしまいまして……。よく見るとカット割りされていたり、傷口は見えないようにしたりと、とにかく制限が非常に多い。ですから“ファンタジーでありながらリアリティを感じられる『ファイナルファンタジー』”を作ろうとするうえで、レーティングの壁が問題になる部分が多かったのです。

髙井:眼の前で人が斬られているのに、返り血を表現するだけでレーティング的にOKかの確認が必要という時点で、もういろいろ無理があるだろうと。

――なるほど。

吉田:ですので、勘違いされる方もいるかもしれませんが、レーティングが上がる=大人向けや残酷描写のため、という方向ではなく、当たり前の戦乱を描くには、どうしても避けられない、ということなのです。

――それだけ、すでに『FF14』で苦労されていたのですね。

前廣:そのレーティング制限の中で、なんとか実現できたのが“テレジ・アデレジのイベントシーン(※)”なんですよ。あれが精一杯でした。

※テレジ・アデレジのイベントシーン:『FF14』のパッチ2.55のクライマックスで起こる衝撃的なイベントシーンのこと。テレジ・アデレジはその事件の中心となる豪商の名前。

――たしかに、あのイベントでは決定的な瞬間こそ表現されませんが、結果はしっかり伝わるようになっていました。

吉田:そのシーンも、プレイヤーが直接的に行動していないからこそ許されているのです。あれをプレイヤーキャラクターがやったら完全NGです。そのため、自ら手を下したかったプレイヤーもいたでしょうが、そこは別の人物に代わりを務めてもらうしかありませんでした。こうやって、脚本そのものにも影響するわけです。

――続いて、前廣さんにも同様の質問をさせていただきます。『FF16』のシナリオを執筆するにあたって、髙井さんの意向と合わせ、どのような物語にしていこうと考えていましたか?

前廣:第一に“『ファイナルファンタジー』として成立する話を書こう”と意識していました。その取っ掛かりとして、最初期に吉田や髙井と打ち合わせをした段階で「召喚獣を中心に据えよう」ということも決めていきました。

――召喚獣をメインに据えるのは、本当に最初期から決まっていたのですね。

前廣:そして召喚獣をメインにするならば、それがしっかりと世界観やストーリーに絡んでくるようにしなければ意味がありません。人間にとって召喚獣は怪獣に等しい存在だと思うので、まずは「召喚獣が実在している場合、世界にとってどういう影響があるだろうか……」というところを深掘りしていきました。こんな感じで、ほかにもテーマやコンセプトを決める前に、“いかにして『ファイナルファンタジー』の最新作として成り立つ話を創るか”というところを突き詰めて考えていったわけです。

――以前、吉田さんは「『蒼天のイシュガルド』の物語が好きだった人には、『FF16』の物語も刺さるのではないか」とお話されていました。自分の印象としては、『蒼天のイシュガルド』はダークファンタジーであり、さらに“仲間との旅”がフィーチャーされていた物語だったと思います。そのあたりのエッセンスは期待してもよいのでしょうか?

前廣:これは『蒼天のイシュガルド』に限らずですが、僕は主人公をちゃんと立てることを大事にしています。『FF16』も同様で、主人公がしっかりと物語の中心にいるので、必然的に周りとのかかわりも多くなっていく感じですね。主人公がいるから仲間が集まる。そして“見知らぬ土地での冒険”がある。そういったところは期待していただいてよいかと思います。

『FF16』のバトルの裏テーマは『ファイナルファンタジーV』だった!?

――ここまで、おふたりから『FF16』の初期構想をお聞きしましたが、そのときに決めた核となる部分は、現在でも変わっていないのでしょうか?

髙井:それ自体は変わっていないのですが、その最終的な形に行き着くための道筋は順調ではなかったです。今の形に落ち着くまで二転三転していますから、スタッフにも苦労をかけたと思っています。

前廣:アクション部分は手触りも含めてかなり試行錯誤しました。ただし根っこの思想に関しては変わっていないと思います。

吉田:じつはクライヴ対ガルーダ戦のアルファ版は、相当早い段階で作られていました。これが不思議なもので、その後に紆余曲折を経て作られた現行版と比べても、表現しようとしていたことはほとんど変わりがないんです。たしかに『FF16』はプロジェクト全体を見れば二転三転していましたが、それは根底のテーマがゆらいでいたわけではなく、“そのテーマをどうやって実現させるか”という答えにたどり着くまでが遠い道のりだったと思います。

髙井:コツをつかむまでは、とにかく時間がかかりましたね。

――完成形のイメージは変わらないものの、そこにたどり着くことが困難を極めたと。

吉田:今振り返ると、そういう感じがしますね。

前廣:根底の遊びのテーマと言えば、じつはここまでお話したこと以外にも「『ファイナルファンタジーV(以下、FF5)』をアクションでやろう」というコンセプトもありました。

――なんと! 『FF5』というと、真っ先に思い浮かぶのはジョブチェンジシステムですが……?

前廣:ジョブシステムというよりは、アビリティカスタマイズの部分をイメージしてもらえれば。『FF5』のアビリティは、最終的には全部覚えることができますが、その過程では育てるジョブの優先順位を決めてアビリティをカスタマイズし、キャラクターの役割を固めていきますよね。

――アビリティのカスタマイズと言えば “魔法剣二刀流みだれうち”みたいな感じですよね。

前廣:それです(笑)。あのような「こんな組み合わせがあるのか!」という驚きのあるゲーム性を、アクションゲームとしてリアルタイムで操作できるようにしたいと考えました。

髙井:その要素を、ジョブではなく召喚獣をベースに取り入れていったイメージです。今の時代は、プレイヤーによるゲーム配信も盛んですので、それぞれの配信者が違うアクションを組み合わせていたら、視聴者側も「おお!こんな組み合わせもあるのか」となると思うんですよ。このように、“プレイする人によって違いが出るゲーム”になればと開発していました。

――ということは、『FF5』のアビリティと同じような位置づけとなる能力は、ゲーム中に自由に付け替えられるイメージですか?

髙井:物語が進んでいけば付けられる能力も増えていくので、それに合わせて自由に付け替え可能です。もちろん「コレが正解!」というものはできるだけなくしていて、その人の好みが反映できるような形にしています。

前廣:実際、我々がプレイしていても、スタッフごとに組み合わせはバラバラですね。

髙井:おもしろいぐらい割れていますね(笑)。

前廣:ですから“『FF5』の主人公であるバッツをリアルタイムアクションで操れる”というノリがわかりやすいかもしれません。

――それぐらい能力のバリエーションも豊かということですね。

髙井:もちろん、最終的に理論値を突き詰めていけばこの組み合わせに行き着く……というものも出てくるかもしれませんが、通常のプレイであれば自由に付け替えて遊べるものになっていると思います。

吉田:それを聞いて、「組み合わせが難しそう」と考える人もいるかもしれませんが、初プレイ時はあまり小難しく考えなくてもよいかと思います。能力はメインストーリーに合わせて少しずつ増えていく形になっており、逆に言えば、「最初から使える能力が手に馴染みすぎて外せない」なんて人も少なくないのではないでしょうか。そして、それで充分クリアできるように難易度設定しています。ですので、このシステムが真価を発揮するのは、2周目にもう一段階上の難易度が出てきてからかなと。そこで、“引き継いだ能力からどれを選べば攻略がスムーズになるか”などを考えていくと、よりおもしろくなっていくと思います。

――細かい質問なのですが、“召喚獣”と“属性”は、設定としては切り離せない要素だと思います。そのうえで、属性の仕組みはバトルにも影響するのでしょうか?

髙井:属性がバトルに影響することはなく、“氷の敵だから火弱点・氷無効”といったことはありません。属性というよりは、それぞれの召喚獣ごとに“使う意味”や“用途”が変わってくる感じですね。

吉田: “召喚獣アビリティを使い込んだ人のためのコンテンツ”という位置づけで、特定の召喚獣の能力のみで挑む、やり込みバトルも用意してあります。バトルや召喚獣アビリティにこだわる方は、ぜひチャレンジしてみてください。

――それはサブのコンテンツとなるのでしょうか。

髙井:そうですね。それをクリアしないと物語が進まないということは一切ありません。

――サブコンテンツについては、まだ情報がほとんど出ていないので、どれぐらい用意されているのかが気になります。

髙井:今言えることとしては、“とにかく具だくさんのゲーム”だと思いますよ(笑)。

――では流れのまま、さらにバトルシステムについてお聞きします。さきほどの“能力の付け替え”以外で、バトルで注目してほしい要素はありますか?

髙井:注目してほしい要素のひとつとしては、やはりクライヴと一緒に戦ってくれる“パーティメンバー”でしょうか。物語上では、入れ代わり立ち代わりさまざまな仲間が登場してクライヴと同行してくれます。彼らは、システム的には完全オートでバトルに参加してくれます。本作では「クライヴ以外のキャラクター管理はプレイヤーの手をわずらわせないようにしよう」と決めていたので、細かく行動を設定するような要素は一切排除して、AIが最適な行動をしてくれるようになっています。

 またそれ以外にも、常にクライヴとともに戦ってくれるトルガルというバディがいますが、これは今後の情報公開でより詳しく解説できるかと思います。

吉田:そのバディについては、完全オート行動にするか、ある程度の手動命令できるか、切り替えが可能です。手動の場合には、「幾つかの攻撃行動から選択する」か、「回復する」といった、指示が可能になります。そのキャラクターだけが特殊なためバディと呼んでいます。それ以外はフルオートのパーティメンバーという感じです。

――ゲームのモードとして、比較的ストーリー中心で楽しみたい方用の“ストーリーフォーカスモード”と、アクションをバリバリ楽しみたい方用の“アクションフォーカスモード”があると、前回吉田さんにうかがいました。これは、どれぐらい差があるものなのでしょうか?

髙井:すごく差があるように感じるかもしれませんが、基本的にはどちらを選んでも得られるゲーム体験に差はないと思ってください。では何が違うのかというと、『FF16』にはサポートアクセサリというものが存在していて、装備すると“攻撃ボタンを連打するだけでカッコイイコンボをビシバシ決めてくれるオートアタック”が可能になったり、“適宜回避を行ってくれるオートドッジ”が作動するようになります。このようなサポートアクセサリは、半オートなど好みが選べるように複数種類あります。

 そしてストーリーフォーカスモードの場合は、最初から“オートアタックリング”と“オートスローリング”のふたつのアクセサリを装備した状態でスタートします。前者は先ほど説明したオートアクションモードになるもので、後者は“敵の攻撃が当たる直前にゲーム時間がスローになって避けやすくなる”というものです。もちろんこれらは、外したくなったらいつでも外すことができます。

 そのほかには、ストーリーフォーカスモードのほうが敵の耐久力や攻撃頻度が若干低くなっています。ただ、このパラメータ調整は本当に体感レベルで、少しラクになる程度なので、基本的にはサポートアクセサリの装備の有無が最も大きな差だと思ってください。

――ということは、アクションフォーカスモードがいわゆるハードモードである、というわけではないのですね。

髙井:ボス戦などで何度も戦闘不能になってやり直す、といった難易度ではないですね。

――そういった歯ごたえの部分については、さきほど吉田さんがおっしゃられていた“2周目の高難易度モード”が担うわけですね。

吉田:そうです。当たり前ですが、“何度も死んで覚えていく”ような難易度は、もともとそういうコンセプトのゲームだからこそ求められるわけで、『ファイナルファンタジー』には求められていないのではないかと考えています。

 ボスと戦うたびにCONTINUEの文字を見なくちゃいけないのは、さすがにツライですよね。とくに今回は「物語を最後までしっかり楽しんでほしい」という想いがあるので、“1周目はみんながクリアできるアクションRPG”であることを担保したかったんです。もちろん、それでもまだ「難しい」と言う人はいると思うので、さらに物語に集中できるよう、前述のストーリーフォーカスモードが用意されているわけです。

 僕の感覚としては、アクションフォーカスモードだったとしても「1周目は簡単だったぞ」と言われるぐらいでいいと思っています。その先にゴリゴリの追加難易度を用意しているので、アクションが得意な方はそこに挑んでほしいです。我々の難易度に関する本領発揮はそちらから……(笑)。

――アクションがそれほど得意ではない自分としては安心しました(笑)。

吉田:ちなみに開発チームは、やり込んで慣れているので感覚が麻痺して、どんどんゲームが難しくなっていくんですよ。ですから開発チームを説得して、1周目の難易度は下げています。

髙井:正直、そのあたりは麻痺していましたね(笑)。

吉田:現在はすでにフィールドの配置物の調整も細かく行っていて、ポーションなどのアイテム配置もちょうどいい感じになっていると思います。最後の調整でもけっこう議論していて、「ラスボスの体力をあと1割減らしてくれ」とお願いしました。アクションゲームだからこそ、プレイヤーの手腕によって差が出ます。でも1周目はなるべく多くの方に気持ちよく遊んで、物語の結末をしっかり確かめていただきたい。だからこそ、サポートアクセサリも多くのコストをかけて用意しました。

 さらに、せっかくのサポートアクセサリの存在を知らないまま進めてしまう人もいるかもしれないので、最初から強力なものを装備しているストーリーフォーカスモードも用意した次第です。物語を楽しむという点では、「1周目はストーリーフォーカスモードだけでもいいかも」というくらいよくできています。そのうえで、「俺は数多のアクションゲームをクリアしてきた猛者だ!」という人は、ぜひアクションフォーカスモードで遊んでもらえればと思います。

新トレーラーで伝えたかったもの――それは『FF16』のコアな世界観

――10月20日に新トレーラーが公開されましたが、このトレーラーで今回アピールしたいポイントをお聞かせください。

吉田:本作は、いわゆるゴシックファンタジーであり、“かつての栄光が失われた黄昏の時代”が舞台となっています。“黒の一帯”という脅威に毒されていく世界の中で、ギリギリで保たれていた国々の均衡が崩れていき……といったところから物語がスタートします。

 これまでの情報では、「なんだかよくわからないけれど、すごい召喚獣たちが暴れている」というのが皆さんの主な反応だったと思います。今回のトレーラーは、いよいよそれらを踏まえて、物語のベースであるヴァリスゼアの世界観にフォーカスしている形ですね。また、“ドミナント(※)が召喚獣を通じて魔法を使うこと自体にリスクが伴う”といった要素も含めて、おおまかな世界設定を理解してもらうのが目的でした。

 今回のトレーラーは、とくに『FF16』を楽しみにしているコアな方に向け、世界観などを知っていただくことを目的としました。そういった人たちが、これからさまざまな情報公開をしていくなかで、盛り上がりの中心になってくださると嬉しいです。

※ドミナント:『FF16』の舞台となるヴァリスゼアの世界において、召喚獣を身に宿し、喚び降ろすことができる者。


――重要なワードとして“黒の一帯”という言葉が出てきましたが、これについて詳しくうかがってもよろしいでしょうか?

前廣:この世界には、エーテルというエネルギーが存在しており、それが生命を生かしているという設定があります。黒の一帯とは、そのエーテルが完全に失われて周辺が黒く染まり、草木も生えず生物も活動できない死の大地のことです。また、この知識はヴァリスゼアに住む人びとの常識として知られています。その黒の一帯がヴァリスゼア全土を覆い尽くそうとしていることに対し、各国が対応に追われている状況がゲーム本編になりますね。

――その侵攻を抑えているのがマザークリスタルなのでしょうか?

吉田:いえ、違います。その黒の一帯が広がっている理由自体は、物語開始時点ではまだ原因不明という感じです。ただ、マザークリスタルにはまだ多くのエーテルが残っているので、人間はその周囲に集まって暮らしているのです。

――世界でエーテルが満ちているのがマザークリスタル周辺のみで、そこを中心に国家が形成されていると。では、その国家や所属する人物について踏み込んでいきます。まず、新たに発表された新キャラクターのディオンとバルナバスについて、それぞれどのような人物なのかを教えてください。

前廣:ディオンはザンブレク皇国の皇子で、バルナバスはウォールード王国の国王です。双方が国の重要人物かつ、ディオンは召喚獣バハムートのドミナント、バルナバスは召喚獣オーディンのドミナントであり、ふたりともクライヴと深く関わっていくことになります。

――ザンブレク皇国は、主人公クライヴが所属するロザリア公国に攻め入る側ですから、両者に確執が生まれるであろうところは予想がつきます。一方でバルナバスは、クライヴとどのように関わっていくのでしょうか。

前廣:物語には、クライヴと直接絡む国、間接的に絡む国がありまして、前者がザンブレク皇国、後者がウォールード王国です。さらにウォールード王国は、物語の重要な部分を担うことになりますが……まだ詳しくは秘密です。

 また、各国それぞれが“マザークリスタルを奪う”という国の思惑で動いているため、ロザリアとザンブレクだけでなく、ザンブレクとウォールードも戦争状態にあります。

髙井:6月に公開したトレーラーでは、バハムートとオーディンが戦っているシーンがありましたが、それはまさしくザンブレグ皇国とウォールード王国が戦争をしているシーンです。

――ディオンは幾多の戦場で武勲を上げてきたそうですが、ドミナントとしてバハムートを何度も喚び降ろしてきたという認識でよいのでしょうか?

前廣:それもありますし、本人も竜騎士として卓越したポテンシャルを持っています。武人ですね。

吉田:ディオンは、民草に優しい皇子であり、イケメンであり、卓越した力を持つ竜騎士であり、バハムートでもあるという完璧超人です。

髙井:しかもイケボですね(笑)。

  • ▲召喚獣バハムートのドミナントにしてザンブレク皇国の皇子、ディオン・ルサージュ。

――主人公クライヴにとって最大のライバルキャラになりそうですが……?

前廣:そこはプレイしていただいて見ていただければ(笑)。

――一方でバルナバスが所属するウォールード王国ですが、こちらはすでにガルーダのドミナントであるベネディクタが紹介されています。このように、ふたり以上のドミナントを抱える国はほかにも存在するのでしょうか?

前廣:それは深い問題なので詳しくは言いにくいのですが、ひとつの国に複数のドミナントがいること自体はおかしいことではありません。

  • ▲召喚獣オーディンのドミナントであり、ウォールード王国の国王、バルナバス・ザルム。

――前回のトレーラーでベネディクタとベッドで寄り添っていたのがバルナバスでしょうか?

前廣:そうです。

――さらに今回のトレーラーでは、バルナバスが青い剣を振るっているシーンがあります。彼がオーディンのドミナントであることを考えると、あれは斬鉄剣なのでしょうか。

前廣:斬鉄剣です! やはりオーディンですからね。召喚獣を象徴する要素は、けっこうストレートに表現しています。

――現在、キャラクターの詳細や所属国が公開されていないドミナントとしては、シヴァとラムウを宿す人物も存在する模様ですが、彼らも何らかの国に所属して物語に絡んでくるという認識でよいのでしょうか?

  • ▲トレーラーには氷の力を操る女性剣士の姿も。

吉田:はい。本来は国や地域の習わしによりドミナントは“一国にひとり”なのですが、ドミナントもひとりの人間ですので、本人の意思で所属を変えることもあります。シヴァとラムウのドミナントは今後の情報で徐々に明らかになっていくと思いますが、今回のトレーラーについてはまず、表立って目立つ行動を起こすザンブレク皇国所属と、世界の裏で暗躍するウォールード王国所属といったように、対象的なドミナントとしてディオンとバルナバスを紹介させていただきました。宿している召喚獣も、光属性のバハムートと闇属性のオーディンなので、まさに“光と闇の対立”というイメージですね。

――そのドミナントですが、トレーラー内のセリフで“召喚獣の力を使っていくとやがて石になる”という新情報が提示されました。これは、どのドミナントにも等しく待ち受ける宿痾なのでしょうか?

前廣:そうです。

吉田:ドミナントは操るエネルギーが尋常ではないので、個人差はありますが避けられない運命といえます。ドミナント以外にも、クリスタルを使わずに世界が内包するエーテルによって魔法を行使できる“ベアラー”と呼ばれる人たちも存在します。彼らも、ドミナントと同じく、魔法を使い続けると体が石化してしまいます。

――そのベアラーとは“魔法使い”的なイメージなのでしょうか?

吉田:魔法使いというと職能なイメージがあるので、どちらかといえば“超能力者”が近いと思います。

――召喚獣に頼らず、魔法で攻撃などができる人たちなのですね。

前廣:攻撃というと語弊があって、もっと日常生活に紐づいた魔法の使い方をさせられている人たちだと思ってください。例えば料理をするために火をおこす際、一般人はクリスタルを使う必要がありますが、ベアラーは周囲のエーテルを利用してクリスタルなしで着火できます。彼らはその火をおこす役割などのために、街の中で使役されているというような描写が多いですね。

吉田:彼らはどちらかといえばバケモノ扱いで、迫害の対象になりがちなのです……。

髙井:国によって扱いに差はありますが、声を発することすら疎まれる、といった扱いを受けている人たちです。

――それは想像以上に厳しい境遇ですね……。

吉田:「彼らが、どうしてそういうことになっているのか」ということ自体が、『FF16』の大きな謎のひとつです。さらに「そういうものです」で終わらせてしまうのではなく、「その理がなぜ生まれたのか。それこそが壊すべきものではないのか」という問いを物語の根幹に据えています。ここは前廣が丁寧に描いてくれていて、実際にプレイすればハッキリと答えが提示されます。これ以上の深いところは、ゲームを実際にプレイして体感してもらえればと。

――では次に、現在公開されている6つの国がそれぞれどういう国家なのか、改めて前廣さんから教えていただけますでしょうか。

前廣:ロザリア公国は、古くはいろいろな国があった土地ですが、それらがひとつにまとまってできた国です。すごく歴史のある国でもあります、また、貴族が治める国であり、現在の代表者として大公が存在しています。トレーラーで赤い服を着た人ですね。

 ザンブレク皇国は厳格な宗教国家で、すべてが宗教の教えによって動いています。逆にいえば、神のお告げと言い張ればすべてが通ってしまうような国です。そのトップは、こちらもトレーラーに登場していたディオンの父ですね。『FF14』をプレイしたことがある方は、イシュガルドをイメージしてもらえるとしっくりくると思います。

 ウォールード王国は完全な王政国家で、王のバルナバスが実権を掌握しています。また、そもそもの国の成り立ちとして、70ぐらいの部族をバルナバスが武力でまとめた経緯があるので、いわばここは“戦の国”です。まさに騎馬のようにオーディンが戦場を駆け巡り、戦を起こして回っているというような国ですね。

 ダルメキア共和国は国王を持たない共和国制をとっていて、多くの州が集まってひとつの国を成しています。政治も、各州の代表が集まる州議会によって運営されている形です。ここに所属するドミナントのフーゴは、国の代表者ではなく相談役という体をとっていますが、秘めるタイタンの力は強大で、政治に対して強い影響力を持っており、国を意のままに動かせます。

 鉄王国はザンブレク皇国と同じ宗教国家ですが、ザンブレクとは違ってかなり原始的な教義で動いています。ドミナントだけでなく魔法そのものを忌み嫌っており、「魔法の力は神に背く行為だ」といった感じですね。マザークリスタルを御神体として崇めていて、「マザークリスタルからエーテルを吸い出すとは何事だ」といった宗教観を持っています。この部分は、物語本編にも大きく関わってきます。

 最後のクリスタル自治領は、ヴァリスゼアの中心に存在している、特殊な立場の地域です。この自治領もマザークリスタルを持っているのですが、どの国もその恩恵を受けやすい立地になっているがゆえに、各国が共同統治を行っています。各国の代表者が政治を担っており、ドミナントも存在しません。また、各国の緩衝地帯としての役割も担っていて、この自治領があるがゆえに「互いを攻めない」という取り決めがされていました。ですが、その均衡も崩れつつあります。

――基本的にはこの6つの国家が下地になるとは思いますが、ほかの地域も登場するのでしょうか?

吉田:多少は登場しますが、ゲームをプレイするにあたって、まずはこの6カ国のことを覚えていただけると助かります。とくに序盤ではロザリア公国とザンブレク皇国について覚えておくと、物語をスムーズに追えると思います。『FF16』は物語のカテゴリとしては“戦記物”になるので、キャラクターや国名もそうですが、ゲームに馴染むために知っていただきたい情報が多いんです。国も一枚岩ではなかったりして、なかなか混乱することもあるかもしれません。そのあたりは読み物といいますか、世界の歴史を追えるシステムもゲーム内に実装されていますので、それを読みながら遊んでいただけると、より深く楽しめると思います。

次の情報は年末! ゲーム自体もほぼ完成し発売日の発表も間近!?

――気が早い質問になってしまいますが、次の情報公開はいつぐらいを予定していますか?

吉田:年末には次の情報出しを行う計画です。そのときには発売日についても発表できたらと考えていて、発売を待ってくださっている皆さんには、「あれ?思っていたより早いかも?」と感じてもらえるのではないでしょうか。今回は会社に無理を言って、最後の地ならしの時間を多く取らせてもらいましたので、2023年夏よりも発売日が遅れることはないと思います。

――今の開発状況としては、最終的なブラッシュアップの段階でしょうか。

吉田:それも通り過ぎて完成に近づいています。

髙井:自分としては「完成している」と言っていいと思います(笑)。

前廣:僕も山場を越えたので、このインタビューに参加できました(笑)。

吉田:ですので、今一番火の車なのはサウンドチームです。祖堅(コンポーザーの祖堅正慶氏。『FF14』ではサウンドディレクターを務める)は、現在進行系で山場を迎えています。

前廣:この前の『FF14』の14時間生放送(※)で日頃の鬱憤を晴らせたんじゃないでしょうか(笑)。

※14時間生放送:『FF14』の開発チームが、約1年に1回開催している生放送イベント。ゲーム内外問わずさまざまな企画を行い、好評を博している。

――その生放送の際の祖堅さんへのインタビューでも、『FF14』とオーケストラコンサート、『FF16』の並行進行で大変だとおっしゃっていました。

吉田:まさに今が一番大変なときでしょうね。とはいえ『FF16』のサウンド以外の部分は、これ以上の開発期間は蛇足かなと考えています。ですので、発売まで安心して見守っていただければと思います。

――年末の段階で、バトルをはじめとしたシステムの詳細も出てくるのでしょうか?

吉田:あまり情報公開が早すぎても発売まで盛り上がりを維持できないので、情報をドカドカっと出すのは発売の3カ月前ぐらいからだと思います。あとは体験版も配信する予定ですが、これも“出したら即発売”くらいの勢いでやるつもりです。今は娯楽があふれているので、鮮度は大事にしたいですね。そのぶん現時点ではちょっとやきもきするかもしれませんが、発売が近づけば一気に情報を出していくので、気長にお待ち下さい。

――ちなみに来年初期にPlayStation VR2が発売されますが、何かしらの対応の予定はあったりしますか?

吉田:なにもないです! もしもPlayStation VR2用のタイトルを開発することになったとしたら、VRに特化したタイトルになると思いますが、現在はまったく予定がないです。

――では最後に、今回の最新トレーラーを見て期待を膨らませている方々に向けて、それぞれ注目してほしいポイントをひと言ずつお願いします。

前廣:『ファイナルファンタジー』シリーズ最新作として、ストーリー、カットシーン、ゲームデザインすべてで『ファイナルファンタジー』を作れたと思います。ぜひ、今のビジュアルで見る『ファイナルファンタジー』を楽しみにしていてください。

髙井:手前味噌ですが、バトルもストーリーも両方合わせて、とてもおもしろいゲームになったと思います。とくにストーリーは、グッとくるものになったのではないでしょうか。中でもあの……あぶね! ネタバレするところだった(笑)。それくらいスゴイものができようとしているので、それを心待ちにしていただけたら幸いです。

吉田:今回のトレーラーやインタビューでは、『FF16』の世界や空気感、そして重要な国々と自治領のことを知っていただけたと思います。これから出ていく情報のベースとして、ぜひそれらを踏まえていただいたうえでお待ちいただけると幸いです。

 あと髙井と前廣については、ここ何年か開発に専念させていたので、インタビューの受け答えが下手になっていてびっくりしています(笑)。

前廣:やっぱりね、普段からしゃべっていないとダメなんですよ(笑)。

髙井:人前に出ていないとだめですね(笑)。

吉田:開発期間が長いだけあり、ふたりとも想いが詰まりすぎていて、まだ「何を言ったらいいだろう……」という状態かもしれません。きっと発売が近づくにつれて、より濃い内容を話していけるようになると思いますので、ぜひ発売に向けての情報露出を、彼らのトーク力とともに見守ってください(笑)。

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