「toi8先生はこう来たか、なら自分はこうしよう」。小説『サマナーズウォー』榊一郎先生インタビュー
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11月10日に発売された小説『サマナーズウォー／召喚士大戦1 喚び出されしもの』（著者：榊一郎、イラスト：toi8、執筆協力：木尾寿久（Elephante Ltd.））。
ゲーム『サマナーズウォー』を原案としたノベライズ作品である本作について、著者の榊一郎さんにお話を伺ったので、本記事ではその内容をお届けします。
なお、今回のインタビューではたっぷりとお話を聞くことができたので、3本の記事に分けて掲載していきます。この記事は2つ目の記事で、続く3つ目の記事も近日中に公開予定のため、ぜひそちらもあわせてチェックしてみてください。
また、この記事には『サマナーズウォー／召喚士大戦1 喚び出されしもの』のネタバレが含まれるので小説を未読の方はご注意ください。
小説『サマナーズウォー』榊一郎氏インタビュー記事
■『サマナーズウォー／召喚士大戦1 喚び出されしもの』
『サマナーズウォー／召喚士大戦1 喚び出されしもの』インタビュー
本作は、2014年6月から配信されている、ターン制戦略MMO『サマナーズウォー：Sky Arena』を原案として、オリジナルの物語を紡ぐノベライズ作品です。
世界観を踏襲しつつ、人気の召喚獣を使役している主人公やヒロインといったオリジナルキャラクターが多数登場する、正統派ファンタジーストーリーを楽しめます。
そこで電撃オンラインでは、『ドラゴンズ・ウィル』をはじめ、数々の著書を世に送り出している榊一郎さんにインタビューを実施。本作がどういった物語なのか、注目のポイントをお届けしていきます。
なお、インタビューの文中は敬称略。また、インタビューには榊氏に加えて、執筆協力の株式会社エレファンテ 木尾寿久氏も同席しています。
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▲榊一郎氏
イラストを見て原稿を変える、影響し合う関係
榊一郎（以下、榊）：最初に書いていた時点では原案であるゲームのデザインを意識していたので、ヴァルキリーの“カミラ”のイメージが三頭身くらいなんですよね。お姉ちゃんのイメージないなと思っていました。
木尾寿久（以下、木尾）：デザインに関しては、イラストレーターさんとの兼ね合いもあって、自由にやらせていただきました。イラストがあがってきた時に、榊先生ご自身は「そうなんだ」と納得していましたね。
榊：toi8先生のイラストを見て、腑に落ちた部分はいっぱいありましたね。
木尾：もちろん榊先生の方で外見設定とかは提案したいただいたのですが、「美人さんだね」と。
榊：原稿の段階では、直接書いてはいませんが“カミラ”の表現は“かわいい”に寄っていると思うんです。実際にイラストを見ると、むしろ姉ポジじゃない？ と感じますよね。
――イラストから見ると、凛々しさを感じるデザインですね。
榊：“カミラ”のかわいい部分はイラストがあがってきた段階で削った記憶があります。
木尾：ユウゴが弟っぽく見えますよね。絵は偉大です。
榊：本当にそうですよね。toi8先生の絵が私のイメージからずれたとかそういう話ではなくて、良くも悪くも、物語の必要性としての部分からキャラクターを組んでいるので、物語に接触しない部分は、結構曖昧に残していたんですよ。
そこを埋めてもらった形で、「toi8先生はこう来たか、なら自分はこうしよう」みたいな流れがあります。
――榊先生のイメージだけではなく、toi8先生のイメージも原稿に反映されているのですね。
榊：そうじゃない作家さんもたくさんいらっしゃいますが、私はわりとそういうやり方を取ることが多いです。昔、「あなたの思い通りの絵を描いてくれる人は、ありがたいし優秀だけど、あなたのイメージから広がらないよ」と言われたことがあります。それは本当にその通りで、イメージからずれているからこそ、最終的な面積は広がるんだよと。すごく納得した言葉です。
ビジュアルの説得力なんてものは、どう考えてもイラストレーターさんの方が優秀なんですから。
木尾：戦闘シーンも、先生の表現がこうなっているから、じゃあこうだよねとイラストも影響を受けています。例えば、斬撃のエフェクトが点だったものが、表現的にクロスだから十字になった。というような感じです。
榊：私なんかは、イラストレーターさんがいいと思うやり方でいいじゃん、と思っちゃいますよね。編集さんが私とイラストレーターさんとは違う第三者視点でチェックを入れているので、最終的にいいところに落ちているのはありますね。
――お互いに影響し合っているいい関係ですね。
榊：そこまで気にするんだ！ と思いますよね（笑）。特に、こちら側が注文していなかった部分で、こういう想定で描いているんだ、というのがあって。
ユウゴとリゼルが背中合わせで座っている口絵ポスターのイラストなんですが、リゼルがユウゴと色は違うけど基本的なデザインが同じコートを着ているんですよ。
おそらくtoi8先生が、魔術師組合のコートの女性版みたいな、十字のラインが入っている外套を旅の間借りて着ているんだ。というイメージをされたと思うんです。
リゼルの旅に出てからの衣装についてはなにも描写していなかったんですが、それならと、ユウゴとリゼルの外見の記述を付け加えています。なので、ユウゴの外套も最初の段階では暗色の外套と書いていたものが、金色のラインが映えていたので、金糸銀糸を使って、魔術師組合の人間だとわかる外套に調整しています。
もっと言うと、物語序盤で川におぼれているエミリアを発見するシーンについても、その外套を着ていたから見えた、という表現に変えています。この弄り回しはやっている側もおもしろくて、話の解像度が上がるんです。すごく考えて書いてくださっていることはラフの段階でわかったので、合わせたくなりましたね。
toi8先生側も、描写に合わせますとおっしゃっていたみたいで（笑）。お互いにすり合わせていましたね。
木尾：口絵ポスターのイラストは作中に存在しない時系列が未定のイメージイラストなので、toi8先生の頭の中のイメージを起こしていただいている感じです。本当にいい関係で、原案という形で先生の自由にしていいと言われているんですが、榊先生がかなり原作をリスペクトしていて、なるべく原作ファンに喜んでもらおうということで、いい感じの中間になったな、と思っています。
――表紙も、ユウゴが一歩引いていて、ぱっと見で召喚士と召喚獣の関係がわかるいいイラストですよね。
榊：パースが付いていて、身長差がわかりませんが、印象としてはユウゴが小柄に見えますよね。もう20数年物書きをやってきていますが、いいイラストレーターさんは、キャラクターの配置や構図などで、単純な情報以上のものを表現してくるので非常に驚かされますよね。
■『サマナーズウォー／召喚士大戦1 喚び出されしもの』
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