『タクティクスオウガ リボーン』先行レビュー! まさに“完全版”といえる高難度バランスの妙に一喜一憂
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- タダツグ
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来たる11月11日にPS5/PS4/Nintendo Switch/Steamで発売される、スクウェア・エニックスのシミュレーションRPG『タクティクスオウガ リボーン』。その先行プレイレビューをお届けします。
原典ともいえるオリジナル版『タクティクスオウガ』がスーパーファミコン(SFC)で発売されたのが1995年のこと。そのリメイク版であるプレイステーション・ポータブル(PSP)の『タクティクスオウガ 運命の輪』の発売は、今から12年前となる2010年でした。そこから干支が一周し、2022年に満を持してリリースされる今回の『リボーン』は、前述したPSP版『運命の輪』のシステムをベースとしつつ演出の強化やシステムの調整などが細部に至るまで施されています。
今回、発売に先駆けてこの『リボーン』をプレイさせていただくことができましたので、ここでは遊んで感じた所感を綴ってまいります。もちろん、初めてこのゲームを触るから情報が知りたい方でもわかりやすいように書くつもりですが、どちらかというとかつて『タクティクスオウガ』に触れている人に向けて、プレイの触感がどのように変化しているかを述べていく形になりそうです。物語や演出面についても触れないわけにはいきませんので、一部ネタバレが含まれています。気になる方はご注意ください。
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(PS4版)
クリア時のゲーム内カウンターは35時間! バトルはシリーズ屈指の骨太バランスに
『タクティクスオウガ』が12年ぶりに帰ってくるということで、SFC版、セガサターン版、PSP版とプレイしてきた自分としては、本記事の仕事があろうがなかろうが購入する気満々でした。ガチプレイヤーさんには遠く及ばないものの、過去作をしっかり遊んできている“シリーズのゆるファン”である自分のクリア時間は、ゲーム内カウントで35時間超。1日と12時間ほどで複数あるエンディングの1つに到達できた形です。ハッキリ言って、遊んでみての手ごたえや受けた印象は過去作から大きく変化していましたね。
恥ずかしながら、何度もゲームオーバーになってはロードしてやり直したりもしているので、実際の時間はもっとかかっているのは間違いないです。連戦マップ突入前のデータまで戻って再プレイした局面も何度かありましたからね。いや~、やっぱりめちゃくちゃ楽しい。そしてすごく難しい。そう、今回のゲームバランスは“シリーズ屈指”の難易度だと感じています……少なくとも自分にとっては。
過去作も“簡単”と言い切れるほどヌルゲーだったとは言いませんが、やろうと思えば「俺TUEEEEEE」を体感できる作品だった記憶があるんですよね。対して今回は、さまざまなバランス調整が施されたことにより、シミュレーションゲームとしての手ごたえはガッツリ増していました。自分がとくに印象に残った点をいくつか抜粋してみましょう。
レベルアップ方式の変更で各キャラの能力に個性が反映
真っ先に感じたのは、ユニットのレベル管理方法の変更によって生じた、キャラ育成の手ごたえ変化です。PSP版ではジョブごとにレベルが設定されていましたが、本作ではキャラごとにレベルが設定されることになりました(これは原点回帰ともいえますね)。PSP版では1つのジョブでレベル1からMAXまで育成したキャラが、別のジョブでまた1からレベルを上げることが可能だったため、比較的簡単に“パラメータを盛る”ことができましたが、本作ではそうもいきません。
今回、ここがしっかり調整されたことで全体的に難易度が変化したのは当然だと思うのですが、自分としてはキャラに明確な個性が出た気もしていて印象的です。物理攻撃が得意なキャラもいれば、魔法が得意なキャラもいる。すべてが高次元というある意味無個性なキャラは育てにくいこの環境、やっぱりこっちのバランスのほうが自分としては好きですね。
また、ユニオンレベルという実質的なレベルキャップ(※自軍に所属する各キャラのレベル上限。ストーリーの進行度で変化)が設定されたことも、非常に大きな変更点。これにより、レベルを上げて力づくで解決するという手法はとりづらくなりました。要所で立ちはだかるボスたちのレベルは総じて自軍ユニオンの上限レベルより高めなうえ、出撃するユニットの総数、高度や地理的なものまで含めると、スタート時点では自軍のほうが不利という戦いが多めです。
本作には“イージー”や”ノーマル”といった戦闘の難易度変更も存在しないため、正直、このレベルキャップ導入はかなり勇気ある変更だと思いました。ある意味RPGとしての成長要素に制限を加えてでも、開発陣が考える難易度バランスをプレイヤーに味わってほしいという意志を感じましたね。
個人的には仲間キャラが揃って戦力が充実する終盤より、やりくりが大変な序盤から中盤にかけてが一番苦労したかもしれません……いや、終盤もかなり厳しい戦いだらけなんですけどね(笑)。
タクティカルRPGの特性上、終盤がどうしてもヌルゲー化していくことが多いと思うのですが、今回はレベルキャップによるRPG部分の制限で、最後まで緊張感の高いバトルを楽しめると思います。
もしかしたらこのバランスこそが『タクティクスオウガ』の生みの親であり、本作でもゲームデザイン総指揮・脚本・監修を務める松野泰己氏をはじめとしたコアメンバーが思い描いた理想形なのではなかろうかと。そういう意味では、本作はまさしく『タクティクスオウガ リボーン』であり、“タクティクスオウガ コンプリート”でもあるといえるのかもしれません。
ぶっちゃけた話、本作の初報を見たときは「リメイク版をさらにリメイクするってどゆこと?」と思ってしまった自分がいるのですが(苦笑)。フタを開けてみると、このバランス変更だけでリメイクの価値はあったと手のひらをクルーっとしてしまいました。個人的にはリメイクというより、満を持しての完全版って印象です。
もしかすると、初見では「どうやってクリアすればいいんだ……」と悩むシチュエーションもあるかもしれません(自分は何度かありました)。ただ、出撃させるキャラのジョブや持ち込むアイテムを変更したり、勇気を出してボスに特攻して集中攻撃を浴びせたり、逆に相手が近寄ってくるまで待ちに徹してみたりと、色々な挑戦を試していけば、おのずと道は開けます。戦略を模索すればしっかり勝利を手に出来るバランスなのは間違いありません。なにせ、この僕がクリアまで到達しているわけですし。自分の戦略通りに事を進め、見事強敵を倒した時の快感たるや……ちょっと筆舌に尽くしがたいですね。
場合によっては通常攻撃では1しかダメージを与えられない……なんてシチュエーションもありえます。相手のコンディションを確認し、相手のエレメントや切断、打撃、貫通に対する防御力などを確認することも肝要でしたよ。
ちなみに、とくにレベリングせずともストーリーを進めて行くだけで自然とレベルキャップに到達するバランスでした。レベルキャップでせっかくの経験値がムダになることも少なくありません(涙)。まあ、自分が出撃キャラを絞るタイプだからかもしれませんけど。ある程度仲間が増えてきたら、レベルキャップに到達したキャラは低レベルキャラと入れ替え、自軍を全体的に底上げ強化していくのもアリかも。
自軍・敵軍ともにHPが増加! 必殺技の使いどころや武器・防具の合成などが勝敗のカギを握る
ゲームも後半まで進んでいくと、敵軍も自軍もHPは4桁に到達します。PSP版などはせいぜい3桁でしたので、これにはちょっと面食らいました。スクショは自重しますが、ラスボスのHPを見たら多分みんな驚くんじゃないですかね。僕はたまげましたよ。「マジで?」って口にしたほど。
当然一回で与えるダメージの打点も上昇していますが、HP量が増えたことで敵・味方ともによくも悪くも行動不能になりにくいなと感じました。それとも昔もこうだったかな……。なんにせよ、1回の戦闘はどうしても長くなりがちです。連戦マップなんかは攻略までに1時間以上かかることもザラでした。忙しい社会人の方などは、連戦マップに挑戦するのはある程度まとまった時間がとれるときにしたほうがいいかも?
手っ取り早くボスを狙おうにも、ちょっとやそっとのダメージでは周りの敵が回復してしまうことのほうが多いです。自分としてはボスの一点狙いより、全員とはいわないまでもある程度敵の数は減らしておいたほうが、結果的にボスを倒しやすい気がしました。少なくとも、回復魔法の使い手(クレリックやナイトなど)だけはある程度排除しておきたいところ。
ちなみに、各武器スキルを上げれば武器ごとに用意された“必殺技”を習得可能。ボスと戦うとき、必殺技は大きなダメージソースとなるので超便利でした。というか、これがないと勝てない敵ばかり……(笑)。
必殺技は武器スキル10、20、30、40で1つずつ習得し(1つの武器に計4種類)、技ごとに効果が変わってきますので、成長させる武器スキルは各キャラ1つ~2つに絞ったほうが戦いやすい気がします。
武器や防具、アイテムはショップで素材と合成して強化することも可能。自分は店主と顔なじみになった(と自分で思い込んでる)レベルで、めちゃくちゃ利用していましたね。
過去作は弓が強かったと記憶していますが、本作では調整が入ったのか、突出した武器ってほど強くは感じませんでした。もちろん、遠距離から攻撃を加えられるだけで十二分に便利なんですけど。雷神の弓とか手に入れたら印象は変わるのかもしれませんが、現状での参考までに……。
時間を遡れるアンドゥ機能“運命の輪 C.H.A.R.I.O.T.(チャリオット)”は本作でも超絶便利! バフカードは積極的に拾いたい
なお、難しい側面ばかりを強調してしまいましたが、救済策として“運命の輪 C.H.A.R.I.O.T.(チャリオット)”という非常に便利なシステムも盛り込まれています。PSP版をプレイした人にはおなじみでもあるこのチャリオットは、将棋における“待った”のようなアンドゥ機能で、最大50ターン前まで手順を遡ってやり直すことができるというもの。前回とは攻撃対象を変えたり、攻撃よりも回復を優先したりといった戦略変更をなんのリスクもなく行えますので、積極的に活用していくことを推奨します。
戦闘中、フィールドに次々と“バフカード”が湧き出るのも本作ならではの特徴。パラメータカードと異なり、その戦闘でのみ効果が発動するバフカードは各キャラ4枚まで所持可能です。どこになんのカードが湧くかは完全にランダムなので、ある意味、運の要素となるわけですが、これが戦闘に大きな影響を与えるのが面白い部分。アタッカーがうまく“直接攻撃力アップ”のカードを複数枚ゲットできたりすると、バトルがいきなりラクになったりもします。
言い換えると、敵がこのバフカードでバリバリ強化されたら、鬱陶しいことこの上なしです。自軍の強化という側面もありますが、何より相手を強化させないためにも、カードは積極的に拾っていくことをオススメします。
そのほか、細かいながらも見逃せない変更点などはスクリーンショットとともに解説していきましょう。
バトルについての感想は大体こんな感じです。やや攻略じみたことにも踏み込んでしまいましたが、これはあくまで自分の意見。おそらく有効手段は1つではなく、正攻法から邪道まで複数の解法が用意されている気がします。最適解に辿り着き、それを実践するのか。はたまた己の好む戦略を貫くのか。プレイヤーの技量と信念が試されますね。
自分としては居酒屋でお酒を飲みながら『タクティクスオウガ』談議に花を咲かせ、「あのボスどうやって倒した? 俺はこの戦略で行って苦戦したんだけど」「そうなの? 俺はこうしたらサクッと倒せたよ」みたいなトークでワイワイ盛り上がりたいという願望が(笑)。ゲーム発売後に皆さんがどのような戦い方で勝ち抜いていくのかが気になりますし、SNSなどでさまざまな論議が交わされたりするのを眺めるのが今から楽しみです。
重厚で骨太なストーリーは今遊んでなお色褪せない!
主人公(=プレイヤー)の選択で、物語の内容が変化していくストーリーに関しても、本作の大きな魅力のひとつ。ヴァレリア島という小さな島国に根強くはびこる民族間の対立に端を発した紛争が、いつしか持つ者と持たざる者の抗争──権力によって虐げられてきた人々の解放戦争へと発展していく様が、じつにリアルに描かれていきます。
SFC版の発売からすでに27年が経過しているわけですが、その内容はまったく色褪せることなく今なお魅力的。何度もプレイしている自分ですら、辞め時がなくなるほど先が気になってしまうくらいです。これは往年の『タクティクスオウガ』ファンには、もはや説明の必要はありませんよね。
物語の骨格こそPSP版を踏襲していますが(むしろここはそのままで安心とさえいえますが)、松野氏いわく、アゼルスタンという海賊キャラ(PSP版での追加キャラ)の人物像にかんしてを見直して、セリフなどに修正が入っているとのこと。そこまで大きな変化ではないと思いますが、こういった小さな改編があるのは嬉しい部分ですね。
むしろ、これから初めて本作に触れるという方が、ちょっと羨ましいとすら思ってしまいますね。雨の夜、バルマムッサと呼ばれる町で問われる選択肢にあなたはどう応えるのか? 本当の戦いが始まるのはまさにそこから。まだ未プレイだという方は、これを機会に本作の複雑な人間ドラマを体感してみてほしいです。ぜひ。ぜひに!
マルチエンディングとなっている本作は、ルートごとに物語の内容はもちろん、志を共にする仲間キャラも変化していきます。一度見たイベントは“ウォーレンレポート”で再生可能。さらに、このウォーレンレポートへクリア後に追加される“運命の輪 W.O.R.L.D.(ワールド)”の力を利用すれば、物語上のさまざまなシチュエーションへと舞い戻るも可能です。
アンカーポイントへの時間移動時は、育てた自軍キャラもそっくりそのままついてきてくれるのがポイント。物語の分岐をやり直したとき、本来そのルートでは敵対する人間は自軍から離れてしまう……なんてこともありません(まあ、忠誠度が下がって部隊から抜けてしまう可能性は残されていますけど)。このワールドで、違った選択肢を選んだ別の物語を楽しみつつ、仲間を集めて自軍を充実させていくのがじつに楽しい。ある意味、1周目をクリアしたところから真の『タクティクスオウガ』がスタートするといっても過言ではないかもしれませんね。
本作では、登場人物たちに声がついてフルボイスとなった点についても、触れないわけにはいかない部分。熟練の声優陣たちが声をつけたことで、各キャラの人物像や物語の展開がより浮き彫りにされた印象がありました。
ここは正直に書いておきますが、なまじ熟練の声優陣が起用されていることもあり、登場人物たちが設定年齢よりだいぶ大人に感じられたのは良し悪しありそう。たとえばフォリナー四姉妹など、自分のなかで抱いていたイメージが刷新されたキャラも少なくはなく、これを新たな一面と捉えるまで少し時間がかかったことは明記しておきたいところです。
個人的にはゲームやアニメ的な感覚というより、名作洋画の吹き替え版を楽しんでいるような気分でした。ゲームを遊んでいるのに洋画の吹き替えとはこれいかに……と自分でも不思議な感覚なのですが、これに共感してくれる人もきっといるのではないかな、と。これもまた、ゲーム発売後のプレイヤーさんの反応が気になる部分です。
もちろん、フルボイス化で物語がよりドラマティックになったのは間違いないところ。たとえば物語の終盤で、姉であるカチュアとの関係性に変化を見い出し、より絆を深めるシーンでは、声優陣の熱演もあって目頭が熱くなってしまいました。昔から大好きなシーンなのですが、涙が出そうになったのはこの『リボーン』が初めての経験。本当に素晴らしいシーンとなっていますので、皆さんぜひお楽しみに。
崎元仁氏が手掛けた重厚なBGMも、ストーリーと同様にまったく色褪せない輝きを放っていました。本作では全曲が生演奏によって再レコーディングされているとのことで、楽曲としての素晴らしさを保ちつつ、過去作からより洗練されているようにも感じます。
だいぶ長文になってきてしまったので、ここらへんでシメようかと思いつつ、大事なことなのでもう1回書いておきますが。本作はイマドキのタクティカルRPGのなかでは、難易度は高めな作品だと思います。自分自身、何度もゲームオーバーの憂き目に合い、その都度コントローラを置きたくもなりつつ、悔しくて辞められずに再挑戦しては攻略法を導いていく……この連続でした。高難易度であるがゆえにマップ攻略時に得られる喜びは格別で、進めて行くとこの歯ごたえそのものがクセになってきます。なんて魔性のゲーム性なのか(笑)。
思えば、昔はこんな骨太なゲームバランスも珍しくなかったわけで、若いゲームユーザーにとっては一周回って新鮮に感じられるかも。まだ『タクティクスオウガ』に触れたことがない人は、これを機会にぜひプレイしてみてほしいと思います。
それでは、今回はこのへんで!
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