電撃オンライン

やさしくて尊い『けもフレ3』ストーリーレビュー。テレビCMに隠された謎とは……?

原常樹
公開日時

 セガゲームスから配信中のスマートフォン用アプリ『けものフレンズ3(けもフレ3)』。本作のストーリーレビューをお届けします。

 どうもこんにちは、フリーライターの原常樹です。

 唐突ですが、僕にはお気に入りの場所があります。どこかというと、それは池袋にあるサンシャイン水族館。魚やクラゲをボーッと眺めたり、上空にある水槽を悠々と泳ぐペンギンのお腹を下から覗き込んでモフモフ感を堪能していると、デスクワークや取材の疲れが吹っ飛ぶんです。

 無垢な動物たちの持つ癒しのパワーは侮れません。とはいえ、時間に追われる毎日の中ではそこまで頻繁に水族館に足を運ぶわけにはいきませんよね……。もっと身近なところに清涼剤はないものか……そう思っているときにピッタリのゲームがリリースされました。

 それが、セガゲームスからリリースされたアプリ版『けもフレ3』! 言わずもがな、動物たちがヒトの姿に変身した“フレンズ”たちが大活躍するゲームですね。アプリと並行してアーケード版『けものフレンズ3 プラネットツアーズ』も展開されており、こちらも現在ゲームセンターで人気を集めています。

 改めてアプリ版『けもフレ3』の世界観を説明しましょう。

 『けものフレンズ』の舞台はこの世界のどこかに造られた超巨大総合動物園“ジャパリパーク”。ここでは世界中の動物が集められ、研究・飼育が行われていましたが、あるとき、神秘の物質“サンドスター”の影響で、動物たちが次々とヒトの姿をした“アニマルガール”へと変身! いつしか彼女たちは“フレンズ”と呼ばれるようになり、にぎやかに暮らすようになった──というのが大まかな設定です。

 『けもフレ3』の物語は、これからオープンする予定のジャパリパークに“セルリアン”が大量発生したというところからスタート。プレイヤーはジャパリパークの“保安調査隊(探検隊)”の隊長候補生として、ドールやミーアキャットといったフレンズたちとともに探検を繰り広げていきます。

 ここで注目してほしいのは時系列が“オープン前のジャパリパーク”であるということ。『けものフレンズ』のアニメやゲーム、ガイドブックでは、なぜフレンズたちが誕生したのか、なぜジャパリパークからはヒトがいなくなったのか、敵となるセルリアンはどうして生まれたのか、フレンズたちは世代交代するのか……といった数々の謎へのヒントが断片的に示されてはいましたが、それらも完全に解明されているわけではありません。そして、こういった不可思議な世界観に対する考察がファンの間で活性化したことが『けものフレンズ』ブームの一因ともなりました。

 そういう意味では、本作は格好の考察材料にもなるでしょうし、オープン前のジャパリパークの様子を他の作品で描かれたジャパリパークと照らし合わせることで世界観につながるいろいろな発見もあるはず。ファンの中には、新たな遺跡を発掘した歴史学者のようなワクワク感を持っている方もいらっしゃることでしょう。

 また、そんな期待を煽るように先日放送されたテレビCMも意味深な内容に仕上がっています。

『けものフレンズ3』テレビCM動画

 こちらの映像の主役はシリーズでもおなじみの“サーバル”です。サーバルといえばポジティブで明るいイメージを持つ方も多いかと思いますが、今回はそれとはまったく違うシリアスな雰囲気なんですよね……。

 雨の中、ずぶ濡れになりながらも佇む彼女がつぶやいた言葉は“ここはどこ?”。そして、フラッシュバックするように画面に浮かび上がるアライさんやフェネックたちとの楽しい思い出。“行かなきゃ……私、行かなきゃ!”と前を向く彼女の頬をそっと雫がつたいます。

 たった15秒間という短い尺でありながら、幻想的なBGMとサーバルの覚悟がにじむようなモノローグがクロスしたCMは映像作品としても詩的であり衝撃的。筆者も映像を眺めているだけで泣きそうになってしまいました……。でも、ここでグッとこらえて映像を眺めてみるといろいろな発見が。

 まず注目すべきは映像内のサーバルの耳や尾がキラキラと透けていること。『けもフレ3』オープニング映像にも同カットが含まれていたり、『ちょこっとアニメけものフレンズ3』#10で同じく透けたサーバルの尾っぽが出てきたりと現在のサーバルの状態を知る上でも大きなポイントになってきそうです。

『ちょこっとアニメけものフレンズ3』#10

 ちなみにサーバルの声は、過去『けものフレンズ』シリーズでは野中藍さん(ゲーム版など)、尾崎由香さん(アニメ版など)のおふたりが演じていらっしゃいました。アプリの公式ホームページではサーバル役として野中藍さんがクレジットされていますが、こちらのCMでは……。そのあたりも注目してみるとおもしろいかもしれません。

 そして、こちらのサーバルの物語はアプリ『けもフレ3』で展開されていくとのこと。現在公開中のストーリーの時点でもかなり興味深い展開になっているので、ぜひともチェックしていただきたいです!

 さて、ここまで『けものフレンズ』ファンの方にはぜひアプリを遊んでほしいという記事を展開してまいりましたが、逆に『けものフレンズ』の予備知識がない人は物語についていけないんじゃないか……そんな疑問も出てくるかと思います。

 いやいやとんでもない。むしろ、このアプリは『けものフレンズ』を知らないという方にこそオススメできる作りなんです!

 かくいう僕もアニメ第一期で『けものフレンズ』を知ったというライトなファン。正直、このレビューのお仕事の依頼を受けたときも不安な気持ちはぬぐえませんでしたが、いざ本作を遊んでみたら“あれ、これ何も考えずに楽しいな!”と仕事であることを忘れてハマってしまって。

 まず、このアプリのストーリーのポイントはとにかくわかりやすいこと。そして、安心感のある優しい物語であること。さらにときおり少年マンガばりに熱くなるということ。これらがうまくかみ合うことでどっしりとしたストーリーに仕上がっています。ここからはその魅力を紹介していきましょう。

 プレイヤーの敵となるのは、フレンズたちから“輝き”を奪うセルリアン。この輝きというのが具体的に何かというのはストーリーで少しずつ明らかになっていきますが、フレンズたちにとってセルリアンが害をなす存在であるということは冒頭から明示されています。実際、副隊長を務めていたサーバルもいきなり“輝き”を奪われてしまいましたし……。

 探検隊のメンバーは“巨大セルリアン”の痕跡を追って、アンインチホー、キュウシュウチホー、リウキウチホーと各地を転々としながらさまざまなフレンズと出会っていきます。非常にシンプルなストーリー構成ですね。

 セルリアンという敵が出てくる以上、バトルもあります。ただ、その内容はどこかほんわかとしていて画面が真っ赤に染まることもなければ、音楽もやわらかい。セルリアンを撃破することですら“パッカ~ンする”と表現するぐらいです。

 また、少なくとも現時点ではフレンズ同士が生身で傷つけあうこともありません。本作には“ちからくらべ”といういわゆるPvPの要素があるものの、こちらはあくまで力を比べる遊び。終わったあとはジャパまんを食べながらノーサイドの精神でお互いをねぎらって交流を深めるというシーンがセットになります。なんて優しい世界なんでしょう。

  • ▲生身の肉体ではなく“泡状の防御壁”を攻撃しあうのでフレンズたちに痛みは伝わらない様子。割るのも割れるのも楽しそうです。我々の世界でいえば、バブルサッカーに近い感覚なんでしょうか……?
  • ▲すでにやられてしまったフレンズが体育座りで残っているメンバーを応援する姿がこれまたキュートなんですよ! 中にはこっちに向けて手を振ってくれるフレンズも。

 そんな優しい世界観は各章のメインストーリーでも堅持されています。

 たとえば、第1章のアンインチホーで出会うのは、ミナミコアリクイ、マレーバク、ブラックジャガー。彼女たちを取り巻く物語は非常に愛らしい。

 怖がりなミナミコアリクイとマレーバクをそっと陰から眺めるブラックジャガー。ワイルドな見た目のブラックジャガーに一同は怯えますが、ブラックジャガーの真意はミナミコアリクイたちと友だちになりたくて機会をうかがっていただけ……。なんなんでしょう、このかわいい生き物は。

 ちなみに期間限定イベントでは、ミナミコアリクイとマレーバクに「普段は何をして遊んでいるの?」と聞かれた際に勢いで、「ブラックジャガーパーク」と答えてしまったブラックジャガーが「言ってしまったからには作るしかない」と全力で建設に励むという、さらなるほっこりストーリーが展開されていました。

 勢いでないことを言ってしまったブラックジャガーですが、友だちのためにけなげにがんばる姿は非常に愛らしいですし、ブラックジャガーパークの内容よりも“ブラックジャガーと一緒にいたい”と本心から思うミナミコアリクイやマレーバクとの想いの通じ合い方もまた素敵。ほんとなんなんでしょうか、このかわいいフレンズたちは……。

  • ▲バトルでも頼りになるブラックジャガー。みんなで放つ“けもコーラス”にこっそり紛れ込んで自動で攻撃してくれるというスキルを持っています。寂しがり屋だからなのか……はわかりませんが、性能的にはメチャクチャ強力です。

 第一章はやさしさにあふれているお話でしたが、『けもフレ3』のストーリーの魅力はそれだけではありません。第二章、第三章ではフレンズたちの成長も鮮明に描かれていきます。それぞれのフレンズたちが単なる動物の象徴ではなく、悩みながらも前に進んでいくという姿にグッと来た方は多いでしょう。

 そして、彼女たちは手を取り合うことも忘れません。第三章では“まだアプリに登場していないフレンズたち”も含め、みんなで助け合って未曽有の危機に立ち向かうというシーンが登場しますが、もはやこのあたりは“努力・友情・勝利”といった少年マンガの三原則にのっとるような熱い展開。筆者も手に汗握りながら一気に読み進めてしまいました。

 ついつい時間を忘れてプレイしてしまう没入感と、読み終わったあとに登場したフレンズたちに自然と愛着が湧いている──それが『けもフレ3』のストーリーの魅力だと筆者は捉えています。

  • ▲第三章の中心になるのはマイルカ。フリーダムな性格で周囲に心配をかけることもある彼女が、精神的に強くなっていく過程は親心を持って見守ってしまいます。こういう成長譚っていいですよね……。

 さらに拠点にしょうたい(ガチャ)することができたフレンズには、個別にストーリー(フレンズストーリー)が用意されています。しかも、こちらではフレンズの掘り下げがガッツリとなされているので非常にボリューミー。

 この記事を書いている時点でしょうたいできるのは34種類のフレンズですが、そこに含まれないフレンズたちもストーリー上では少しずつ顔を見せてくれています。彼女たちを拠点にしょうたいできる日が否が応でも待ち遠しくなりますね……。

 さて、ここまでバトルについてはまったく触れてきませんでしたが、こちらもかなり練り込まれたシステムになっています。とくに“ちからくらべ”はシステム上先行(プレイヤー)が有利ではあるものの、“属性相性”や“たいきスキル”を考えてフレンズたちに指示を出さないと格上のプレイヤーにはコロッと負けてしまうという……。

 筆者は初手にオーダーフラッグでBEAT!!!を集めて、高レベルもしくは属性的に苦手なフレンズに集中攻撃して“敵の火力を削ぐ”という手で安定して勝ててはいますが、“毒”や“くらくら”といった状態異常攻撃が得意なフレンズが出てきたらまた環境も変わりそう。いろいろと編成を考える楽しみもありますね。

 あっ、バトルといえば、フレンズたちのモデリングやモーションへのこだわりも見過ごせません!

 鳥型のフレンズははばたきながらちゃんと空を飛んでいますし、こちらのウィンドウの中にいるフレンズたちも思い思いに戦闘態勢を取っていたりします。うちのスナネコちゃん(写真真ん中)はやたらと横に揺れるので、枠におさめるのもひと苦労だったり……まぁ、そこがかわいいんですが。

 そして、注目すべきは攻撃モーション。フレンズたちは武器を使わないために生身で攻撃する形となりますが、この所作が流れるようで非常に美しい。奇をてらうような攻撃手段のフレンズは少なく、シンプルな動作に彼女たちの魅力が詰め込まれています。

 たとえば草食動物であるチャップマンシマウマは脚力を生かしたキックで攻撃をするんですが、見てください。このオシャレでワイルドな足技を。彼女は比較的しょうたいしやすいフレンズながらもかなりのポテンシャルを秘めているので、育てるついでに美脚も堪能したいところです。

 同じ足技でもツチノコは見事なローキックを繰り出したります。弁慶の泣き所を射抜くような鋭い一撃はかなり痛そう(ほとんどのセルリアンには弁慶の泣き所がない気もしますが)。ちなみに彼女はほかのあらゆる攻撃もすべて足技。

 怖がりながらも強烈な掌底を放つマレーバクの愛らしさは語るに及ばず……。

 個人的にはギンギツネのスマートなオープン・ブローがめちゃくちゃスタイリッシュでツボに入りました。引っかくというよりは貫手に近いイメージの鋭い一撃。どちらかというと頭脳派なイメージが漂う彼女ですが、セルリアンにさらっと肉弾戦で大ダメージを与える姿は野性味があって、そのギャップに惚れ直します。

 ちなみにここまで紹介してきたのはすべて一般的な攻撃モーション。大技である“けものミラクル”はさらに凝った内容に仕上がっています。たとえば、ギンギツネの“かまくらホッコーリG”。こちらはその場で雪を集めてかまくらを作り上げ、みんなを手招きして休息をすすめるという技。ゲーム的な効果だけ見れば味方全体の与ダメージを増加させる、いわゆるバフ系の技ですね。

 伝わりますか、この尊さ……僕は微笑みかけられるたびに浄化されそうになります……。こんな神々しい笑顔を向けられたら、そりゃほかのフレンズたちの火力も上がるってもんですよ! 可能であれば、今すぐにでもカマクラの中でご相伴にあずかりたい。

 もちろん、ほかのフレンズたちのけものミラクルも個性全開。各フレンズのいい部分がこれでもかとばかりに詰め込まれています。

 本作のバトルでも活躍させれば活躍させるほど彼女たちのことが好きになるというのも素敵なポイント。ストーリーでも好きになり、バトルでも好きになったら、どれだけ好きになるのかという話ですが、フレンズたちに愛着が湧いたら彼女たちを拠点でじっくり観察することもできます。いや、これがまたメチャクチャ癒されるんですよ……。筆者も仕事の合間に疲れたときはアプリを起動して彼女たちを眺めてはほっこりするようになりました。

 遊んでいるだけで穏やかな気持ちになれること間違いなし、さらに元から彼女たちが好きだったという方にとっては世界観を補完するという奥深さもある──と、とにかく遊びどころが満載の『けもフレ3』。ぜひともみなさんもこの美しくも優しいフレンズたちの世界を堪能してみてください。

©けものフレンズプロジェクト2G ©SEGA

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

けものフレンズ3

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: フレンズたちと“わくわくどきどき探検”するRPG
  • 配信日: 2019年9月24日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

けものフレンズ3

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: フレンズたちと“わくわくどきどき探検”するRPG
  • 配信日: 2019年9月24日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

けものフレンズ3 プラネットツアーズ

  • メーカー: セガ・インタラクティブ
  • 対応端末: AC
  • ジャンル: カードゲーム
  • 稼動日: 2019年9月26日

関連する記事一覧はこちら