なぜ学生クリエイターが『サカつくRTW』のPR動画を作ることになったのか。プロ顔負け、ガールズユニットによる個性が爆発!
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東京コミュニケーションアート専門学校(以下、TCA)による教育カリキュラムの一環として、ゲーム企業であるセガと連携した取り組みに注目。
現在サービス中のスマートフォン用アプリ『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド(以下、サカつくRTW)』をプロモーションするというコンペティション企画において見事採用され、動画制作を手がけた学生クリエイターユニット“じゃじゃ馬ガールズ”の遠藤さん、束田さん、友田さん、そして主に撮影を担当された平賀さんにお話を伺いました。
なお、インタビューではTCA教育顧問の入江洋平先生とセガの片寄氏にも同席いただきました。(※インタビュー中は敬称略)
“じゃじゃ馬ガールズ”インタビュー
――まずはおひとりずつ自己紹介をお願いします。
遠藤:遠藤と申します。クリエイティブディレクターと現場監督などをやらせていただきました。
束田:束田です。役職としてはいろいろな補佐と動画内の脚本などを担当しました。
友田:友田と申します。役割担当としては遠藤の補佐と、絵コンテやオリジナルのBGMを作成しました。
平賀:平賀です。自分はTCAの系列校にあたる東京俳優・映画&放送専門学校(以下、FC)の学生で、撮影から参加して、照明技師とオフライン編集、カラリストを担当しました。
――“じゃじゃ馬ガールズ”というのは、遠藤さん、束田さん、友田さんが活動される際のグループネームですか?
遠藤:そうですね。今回のプロモーションプランを制作するにあたって他にも“じゃじゃ馬ガールズ”という架空のサッカーチームが登場する企画も提案させていただいたんですが、これがセガ様の印象に残ったみたいで私たちがその名前で呼ばれはじめたので、そのまま使っています(笑)。
――他にもメンバーがいるのでしょうか?
遠藤:去年までは先輩が1人いたので実質4名でした。あとは映像制作で関わってくれている子がいっぱいいるので人数は把握し切れていないんですが、メインは私たち3名です。
――今回、セガの作品プロモーションという企画に参加されることになった経緯をお教えください。
片寄:セガと滋慶学園グループ様で産学連携、企業と学校がジョイントすることで何か新しいモノを創り出そうというクリエイティブな取り組みが10年ほど前から続いておりまして、これまではイラストとかグラフィック作品が多かったのですが、“クリエイティブ”ってイラストやグラフィックばかりではないよね、“プロモーションプランを創る”ということもクリエイティブだよねと。それならばと、『サカつくRTW』のプロモーションプランのオーディションをやってみようという取り組みが始まりました。
――ちなみに応募総数はどれくらいあったのですか?
入江:今回のプロモーションに関してはTCAで3チーム、それ以外にも大阪、名古屋、福岡、仙台と姉妹校からの応募も合わせると9作品ありますね。学生に声かけをし、やりたい学生が集まったという形になります。
片寄:中にはボクらでは考えつかないような、いい意味で「バカだよね~、コレ!!」という企画もありましたね。たとえば、サッカースタジアムを借り切って、巨大な『サカつく』スゴロクを作って、サッカーボールを模したデザインの巨大サイコロを蹴ってマスを進んでいきます!! とか(笑)。
最初、これはなんのプロモーションなんだ?と思いつつも、楽しそうなことは伝わる。印象に残ったし、楽しさを訴えるという機能をちゃんと持っているんだなと。ボクら企業側の人間は、それをやってどれだけ勝算があるの?とか、費用対効果とか、どんなメリットがあるかを優先的に考えてしまいがちなんですが、ド直球で「とにかく楽しさを伝えたいんですっ!!」といった企画を色々と見れて楽しかったですね。
キャストのオーディションから撮影ロケまで、プロ顔負けの本格的な映像制作
――プロモーション動画の制作にはどれくらいの期間がかかりましたか?
遠藤:企画自体は去年の今頃から進めてきたので、ちょうど1年くらいだと思います。
――制作された動画は5種類で、それぞれが番組の合間に流されるCMのような30秒前後の短い尺になっているのは意図的な仕様ですか?
遠藤:あまりそういうことは考えずに進めていたんですが、テンポ感などをそろえていくにあたって結果的にTV-CMくらいの長さになりました。
友田:完全に私たちの自由な感じでやらせてもらいました。
片寄:TV-CMの放送フォーマットに縛られる必要はないから、本当に作りたいものを自由に作っていきましょうと。
――ともすると、長編になる可能性もあったわけですね?
遠藤:そうですね。最初は短編数本と長編を1本というプランもあったんですが、最終的に残ったのが短編5本という感じですね。本当はすごく爽やかな青春ラブストーリーみたいなモノも作りたかったんですけれども、私たちにそういう引き出しが無さ過ぎて、ちょっと重ための内容しかできなかったというのはあります(笑)。
友田:ちょっとね。
束田:青春とはほど遠いからね(笑)。
入江:世代的にはJKでもなければOLでもないけれど、女子高生の気持ちに戻ってガールズトークを考えてみればというのと、もう一歩踏み込んでOLになった気持ちで考えてみればといった感じですね。
アディショナルタイム篇
オフサイド篇
ゴールキーパー篇
センターフォワード篇
ミッドフィールダー篇
――動画を拝見させていただく限り、内容がわりと大人びた印象を受けたのですが、ストーリーの発想、元ネタなどはどのようなところから?
遠藤:ガールズトークにサッカー用語を織り交ぜてストーリーを作ろうという話になっていたので、あるあるネタを頑張って捻り出しました。
束田:共感できるモノを引っ張ってきた感じだよね。
遠藤:まずは共感して、親しみやすさを前面に出したかったので。
――出演キャストのオーディションを行ったと伺ったのですが、出演されているのはTCAの学生さんだったりするのでしょうか?
遠藤:いえ、先ほどお話しした系列校のFCからですね。
平賀:FCには俳優科があるんですよ。
遠藤:そこの学生さんからオーディションをして決めていったという感じです。TCAには役者さんがいないので、系列校からお借りして。
入江:企画オーディションの時点では、(じゃじゃ馬ガールズの)彼女たち自身が頑張って演じてビデオコンテ、イメージコンテみたいなのを作っていたんですけどね。
遠藤:そうなんです。大根役者として……。
友田:やらざるを得なかったというか……。
束田:人材が不足していたので(笑)。
――動画内で登場するサッカー用語はどのような基準で選ばれたのですか?
遠藤:『サカつくRTW』をプレイしていただくとわかるんですが、最初の選択肢でミッドフィールダーとか出てくるんですね。ゲームをプレイするにあたって、そもそも私たちがサッカー用語がわからないからそこでつまずいてしまって。
その選択肢に登場する用語を調べていく中で、ストーリーができそうだなという単語をつまみつつ選びました。用語や知識監修についてはサッカーに詳しい後輩男子の手も借りつつ「こんな感じであってる?」と答え合わせをしながら。本当に助けられました。
――動画を拝見させていただくと、「アディショナルタイム篇」でオフィス内のノートPCにしっかりと在庫リストとかリアルな画面が表示されていますよね?
遠藤:作り込みました(笑)。あれも美術班の子たちが頑張ってくれて、何もない画面が映り込んでしまうと仕事している感がないよねと思って、細部までこだわりつつ進めてもらいました。
入江:舞台となったオフィスは本校6階の教室をそれっぽくアレンジしてもらったんですよ。
――てっきりオフィス風のスタジオを借りて撮影したのかと。
遠藤:いえいえ(笑)。「ゴールキーパー編」とか「ミッドフィールダー編」では実際に学校の教室をお借りしたんですが、「オフサイド編」に登場する給湯室なんかはすぐそこの本校の給湯室を使いました。
束田:あとは、地元の西葛西にあるカフェも借りたりしましたね。
――そういった場所を借りる交渉もみなさんが行ったのですか?
遠藤:はい、そうです。
友田:日程の確保とか大変だったよね。
遠藤:あと金銭面も(笑)。あまり予算を出せないので安めのロケーションを選んだりと、その辺は大変でした。
――片寄さんも撮影現場にはよく足を運ばれたのですか?
片寄:そうですね、度々お邪魔させていただきました。
遠藤:ほぼ来ていただきました。
友田:すごく足を運んでくださって。
片寄:コンテの段階から参加させていただいたのですが、僕らのほうから具体的な指示を出すことはなくて、ボクはチームの皆さんが何をやりたいのかを理解したかったので、意識的に「教えて?」という感じで参加したつもりです。いつも始まる時間ギリギリまで皆さん頑張っているんですよ。
遠藤:スミマセン。
片寄:いや、悪い意味ではなくてね(笑)。「じゃあまた次回」といって次に会った時には、前回相談していたモノとは別にもうひとつ「つくっている過程で浮かんで来たんですけど、コレどう思います?」と出してくれて、しかも大概もうひとつのほうがおもしろいんですよ。ボク自分だったら時間ギリギリまで、言われたモノひとつしか出さないのに、すごいなって。
――それはクリエイター系の就職活動をされている学生さんにとって、プラス評価になるエピソードですね。
友田:武器になったらうれしいですね。
――5を投げたら10返ってくるというのがうれしいと、そう感じる方は多いと思いますよ。
片寄:本当にそのとおりですね。受けている側としてはこんなに意欲を持ってやってくれているというのが一番うれしいです。
遠藤:就活、頑張ります(笑)。
恐怖感を意識した「オフサイド篇」に注目!
――今回撮影された5種類の動画の中でも、特にこのシーンは絶対見てほしいといったこだわりのカットなどはありますか?
遠藤:マストで見てほしいといえば……やっぱり「オフサイド篇」じゃない?
束田&友田:うんうん。
片寄:同じく「オフサイド篇」ですね。
――結婚願望が先走っているアレですね。
遠藤:そうですそうです。あれは音声も頑張ったので。
平賀:「オフサイド篇」では狂気的な後輩キャラクターが登場するのですが、それを匂わせるべく冒頭ではあえて本人を映さずに、大きめの足音だけで恐怖感を演出しました。
入江:先走って結婚を決めている後輩が自分のペースでワーッと入ってくるという感じなので、その迫り来る恐怖みたいなモノを(笑)。
片寄:給湯室での会話というシチュエーションをわからせるためのカットを残すか、後の恐怖を演出するために足音のシーンを残すのか。みなさんが提案してくれて、ボクもいいなと思ったのが後者の足音のほう。そこからの先輩がどんどん引いていく様とかね。
遠藤:ドン引きしている顔に注目してください。
――33秒の尺でそこまで表現しているのはスゴイですね。
入江:状況がわかる画を入れたほうがいいのではないかと提案したのはボクだったのですが、それを切り捨てる勇気というか、こうしたほうがより恐怖感が増しておもしろくなるのではとプレゼンしてくれて。結果、すごく恐怖感が増したのではないかなと。
遠藤:よく見ると恐怖映像になっています。
――映像の最後に「サカつくしよう!」とコールしているのは、それぞれのキャストさんが?
束田:それぞれ担当してくれたキャストが声をあててくれています。
入江:ゲーム用語を解説する男性の声も学生なんですよ。一緒に授業に出ている学生で、この企画には一切関わっていないのに「お前、声がいいからやれ」って。
一同:(笑)。
――みなさん、将来的に進みたい方向性というのはもう決まっていますか?
遠藤:私は広告を作れるような業界に入りたいと思っているのですが、なかなか難しいので、ゆくゆくは入れたらいいなと。
束田:私もグラフィックデザイナーに進みたいという気持ちとは別に、脚本とか本を読むのが好きなので、文章に携わるお仕事にも挑戦してみたいなという好奇心があります。
友田:まだまだ勉強不足ですが、やっぱりグラフィックデザイナーになりたくて、そこから派生していろいろなこと、VRとか今ある最新のテクノロジーとかもマルチに挑戦して経験を積みたいなと思っています。
平賀:自分はカラリストとして映像の色に関わっていきたいですね。カラリストというのは最初にコレクションで色を整えてグレーディングで演出するんですけれども、オフラインの方がカットを決めてくれて、そのあと色を決めてみたいな。最初にカットを決めて色指定が入ってと、ワークフロー的にはマンガと似ているのかな。
入江:映像編集に加えてカラリストもやっているというね。
平賀:本命はカラリストです。今回の企画では人がいないのでなんでもやりましたけれども(笑)。
遠藤:そもそも私たちTCAの学生とFCの学生とで関わりがなくて、コミュニケーションも取ったことのない者同士だったところ、(彼が)橋渡し役まで務めてくれていたと思います。
――では、今後チャレンジしてみたいことはありますか?
束田:シナリオを作ってみたいという話はしたんですが、どちらかというと私がすべてを担当するのではなく、私が手がけた文章をもとにイラストなり映像なり、協力してもらって何かしらひとつの作品にしてみたいなという願望はあります。
――原案的な立ち位置ですか?
束田:そうですね。
平賀:ボクは今自分の学校で目標にしているのが、すべての部署を学生のうちに経験することです。今はひととおり経験して、残すはキャストと脚本くらいなんですよ。
一同:(笑)。
平賀:でも、キャストはなかなか難しくて。やったほうがいいというのはわかっているんですけれども、ちょっと……。
片寄:そんなに嫌なの?
平賀:授業でキャストをやらなければいけない時があったんですよ。制作課からするといつも俳優課(の生徒)にいろいろと注文つけてるけど、いざ自分がやるとなると台本をいかに自然に読むかというのが難しすぎて。芝居臭くなってしまうんですよね。
片寄:なるほど。
平賀:それをいかに、普通に会話しているように見せるかというのはやはりレベルが高いというか、俳優課ってすごいなって。
友田:私はTCAに入った当初がゲームグラフィック&キャラクター専攻という他の学科にいたんですが、グラフィックを全般的に学べる学科ということでデザインにも挑戦しました。やはり原点となると絵を描くこと、中でも象徴的なのがロゴデザインだと感じたので、今後おもしろいロゴを作って行けたらいいなと思っています。
遠藤:私は結局、広告とかプロモーション制作を……これってチャレンジなのか? 今まで映像制作に携わったことがなくて、監督というのも今回が初めてだったから、またリーダー的なポジションを務めてみたいというのはチャレンジなのかな?
束田:いろいろ判断したり責任もあるからね。
遠藤:優柔不断な私にとって、そこをバシッと決めてみんなに指示を出してというのがチャレンジな気がします。
学生たちの連携がまるで『サカつく』のラインのように繋がって1つのチームに
――入江先生から見て、今回の学生さんの取り組みに対する総評をお願いします。
入江:企業さんとの連携はいろいろ携わってきたのですが、系列他校と一緒に作業をするのは初めてでした。FCの学生さんのことも知らないところから始めて、普通ならボクが務めるディレクションも含めて全部学生がやるということに対して、それ自体はすごく楽しいんだろうなと。
あまりネガティブに考えずに、いろいろ大変だろうけどやっていこうと。途中で多少は口も出しましたけど(笑)。
役者はどうすると言ったら、学生でやるしかない。照明もそうだし編集もそうだと積極的に動く中、すごく成長していってチームができて、仕上がり的にもプロの仕事に見えるようなレベル。その中に学生ならではのアイディアとかも入っていて、すごくよかったなと思います。
――片寄さんからはいかがですか?
片寄:僕も最初は不安のほうが大きかったかな。このタイミングだから言ってしまいますけど、最初の撮影の時は「段取り悪いな~」と見ていたんですよ。
遠藤:えぇ~!?
片寄:でも、それは仕方がないんです。何しろ遠藤さんも初めての監督ということで右も左もわからない。そんな状況から皆さんの連携がまるで『サカつく』の選手の連携ラインのように繋がっていって、それまであまり交流のなかった者同士の集まりだったところから次に会うたびにどんどんチームになっていっている、というね。
今回の取り組みはボク自身にとっても新しい気づきを与えてくれた部分もあるので、本当に参加させていただいてよかったなと思っています。
平賀:実は遠藤さんが映像の監督をやったことがないなんて知らなかったんですよね。経験ある人が監督としてくるのだろうと思っていたら……。
遠藤:ド素人が来るという(笑)。撮影が始まったら何も知らないよって。
片寄:全然しっかりとやっていましたよ。本当に堂々としたもので。
遠藤:やるからにはどうにかまとめようと頑張りました。
片寄:ゲーム業界での仕事はそれなりに長いですけど、学生さんと僕ら社会人で一緒に何かをやるというのは本当に新鮮だし刺激的でしたね。
――では最後に、今回の企画に参加しての感想を、皆さんから一言ずつお願いします。
平賀:初めてのこともあって、やっぱりクライアントワークってなかなかないので大変なこともあったんですけれども、わからないことがあるたびにいろいろと成長できるので、いい機会だったかなと思っています。
友田:絵コンテを作ったり補佐として色の調節に口出しをしたり、BGMを作ったりと本当に全部が初めてで、だからこそ学生のうちにそういう経験ができてよかったなと思います。
束田:私も学生のうちからこのような機会はなかなかないものですから、携われて本当によかったなというのと、映像自体私たちの専門分野ではなかったので貴重なんですよね、そういう体験って。貴重な機会をくださったセガ様と学校にも感謝したいと思っています。本当にありがとうございます。
遠藤:結論から言うと楽しかったです。ただやっぱり初めてのことが多かったので苦労もしたし大変なこともあったけれど、いい経験、勉強になりましたね。この先就職してからもこういった制作はあると思うので、その中でちょっと私のほうが使える人間だぞと、そういう雰囲気を醸し出せたらいいなと思います(笑)。
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