『LISA:the Painful』はおじさん×女の子だけどハートフルじゃない? 心が強い人向けRPG【東城咲耶子のおすすめインディーゲーム】
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電撃オンラインユーザーのみなさん、こんにちは!
今日も今日とてインディーゲームを語りたくて仕方ない、東城咲耶子です。お邪魔します。
前回は、チーム・サルバトの『ドキドキ文芸部』について書かせていただきました。
いかがでしたか? プレイしてみました? 誰推し?
こうした執筆は初めてなので右も左も分かっておりませんが、ちょっとした暇つぶしに、インディーゲームって面白いものいっぱいあるんだな~と思ってもらえたら嬉しいです。
では、私のネタが尽きるまで、ひたすらおすすめインディーゲームをゆるく紹介していくコラム、二作目はこちらです!
『LISA:the Painful』
ちょっと古いゲームで、2014年にDingaling Productionsから発売された作品です。
前回のコラムに続き、今回も最高で最悪でプレイヤーへの攻撃性が高いゲームなんですが、ぜひ紹介させてください。
大好物なんです。考察が捗る“こういうの”が……。
可愛いドット絵で描かれた横スクロールRPGで、ファミコンゲームを思い出すレトロなシステムですが、世界観は可愛げからはほど遠く、暴力! ドラッグ! 犯罪! 自由!! そして、おじさん、おじさん、無限におじさん。
下品で殺伐とした世紀末な世界で生きる、無気力なおじさん・ブラッドが、赤ん坊を拾うところから物語は始まります。
仲間たちに赤ん坊を見せると、口々に「これがどういう意味か分かるかい? これはきっと女の子がその辺にいるってことだよ!」と慌て出し、赤ちゃんが女の子であると判明するとさらに大混乱!
なぜなら、この『LISA the painful』の世界には男性しかいないのです。
とある出来事で女性だけが絶滅してしまい、ゆっくりと滅びていくだけの世界で、ブラッドは仲間たちと赤ん坊をこっそり育てます。
バディと名付け、仮面を被せ、女の子であることを隠し生活させますが、こんな危険だらけの世界で隠し通すことは出来ず……。
世界中を敵に回しても、女の子を救い出そうと奮闘するブラッド。
ブラッドには、小さな命を何がなんでも守りたい理由があるのですが、そのエゴがまた、切なくて胸にぐっと来るものがあります。
なのですが! もちろん、そんなあらすじから想像出来る、心温まるハートフルな展開にはなりません!
ひたすら、二転三転と転がりまくる、想像を絶するハチャメチャさが襲ってきます。
ストーリーそのものの重さや展開も振り切れているのですが、表情が読めない小さなドット絵でも伝わる哀愁、グロテスクな表現、精神的にしっかりダメージを与えてくるのが天才的です。
嫌すぎる。嫌すぎるけど、続きが気になってプレイしてしまう~……。
どこを見ても多種多様なおじさんしか登場しないのに、それぞれ訳の分からないぶっ飛んだ魅力があって好きになってしまうのも面白いです。
私のお気に入りのおじさんは、アヒルの頭をした『バリー』だったんですが、改めて詳しく調べてみたら連続殺人鬼でした。可愛い顔してめちゃくちゃ悪い人だった……ええ……。
さらに、たまらんポイントがほかにもありまして、ストーリーの途中でブラッドの過去や深層心理として差し込まれる、幻覚? 白昼夢? の抽象的な映像です。
心をザワザワさせるサイケデリックなものだったり、詩的で不思議な印象だったり、分かるような分からないようなはっきりと明言されない映像を見て、どう解釈するのも自由なところが考察大好きな人間には“たまらん”です。
これだけ読むと、エモい雰囲気も多いのかな? と思うかもしれませんが、物語前半は9割が下品で最低なシーンです(笑)
シュールな笑いとドン引きも盛りだくさん。その中でも特に独特で好きなのが、敵を倒すと捨てゼリフや辞世のポエムを読むところです。
例えば「俺は沈まない。タイタニックのようにな!」とか。いや沈んでるが……(笑)
ほかにも、通貨はえっちな本、何が言いたいのか分からない仲間たちのセリフ、ヒャッハーな肩パッドの敵たち、ランダムに発生するイベントで仲間が死ぬ理不尽さ、あらゆることが狂気的です。
しかも、良心のある人間ほど酷い目に遭います。作者、人の心がないのか???
そして、後半、段々と明らかになってくる世界の仕組みや、蔓延しているドラッグの秘密、ずっと守りたいと思っていた女の子『バディ』の感情。
驚くくらいライトに、大人にも子供にも平等に理不尽が襲いますが「これくらいの命の軽さが『LISA』の世界では普通です」と一貫して表現されることで、命懸けでバディを探し求めるブラッドの愛の重さや執着が強調されます。
ブラッドを動かしてずっと一緒にいるから、私は彼の人生に同情しちゃいました……。
ちなみに『LISA』はシリーズ三部作でして、今回紹介したPainfulは二作目に当たります。
単体でも楽しめる作りになっていますが、ブラッドの過去や罪悪感の正体を詳しく知りたければ、一作目の『LISA:the first』を。
その後の世界を知りたければ、三作目の『LISA:the Joyful』をプレイすると、さらに深掘りできて楽しむことができます! 考察も捗るぞ!
ものすごく人を選ぶえげつないゲームですが、ダメージ耐性のある心が強い人にはぜひプレイしてもらいたいです!
一緒に苦しもう!(笑)
仲間を守るか見捨てるか、ドラッグを使うか使わないか、他人を信用するかしないか、現実と同じようにランダムな結果がたくさん用意されているので、心のままにあらゆる選択をしてみてください。
荒廃した世界での正しさを取るか、自分の倫理観を取るか、いろんな悲惨な結果を楽しみながら、最後までなんとか『LISA』の世界、生き切って欲しいです。
楽しいインディーゲームライフを!
それでは、また~。
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