電撃オンライン

己を棄てろ──大義のための礎となれ──【タクティクスオウガ リボーン名言集】

タダツグ
公開日時

 スクウェア・エニックスより発売されたタクティカルRPG『タクティクスオウガ リボーン』の名言企画。第2回目となる今回紹介するのは、主人公デニムの父であるプランシー神父のセリフをピックアップします。

 ヴァレリア島に吹き荒れる戦乱の嵐──その渦中に飛び込んだデニムが己の戦う意義を見定めることができたのは、この言葉があったからこそだと個人的には思って負います。少年が父の言葉を背負って大人になる瞬間が垣間見られる屈指の名シーン、さっそく振り返っていきましょう。

※本記事内には物語のネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。

己を棄てろ──大義のための礎となれ──(プランシー神父)

●CHAPTER4_手をとりあって

 主人公デニムの父親にして、フィラーハ教の神父でもあるプランシー・パウエル。彼は『タクティクスオウガ』の物語スタート時点の1年前、港町ゴリアテが暗黒騎士団によって襲撃された時から姿をくらませており、すでにその命は失われたものと思われていました。

 しかし、実際は暗黒騎士団に囚われていたプランシー。彼はヴァレリア解放戦線、そしてフィラーハ教団の手の者によって救出されるまで、暗黒騎士団から長きに渡って厳しい拷問を受け続けていたのです。救出後もその傷は癒えず、命が風前の灯となったところで息子であるデニムと再会を果たすのですが──。


 久しぶりの親子の再会。プランシーは己の命が燃え尽きるその前に、争いを続けてきたウォルスタ人とガルガスタン人を結束させるほどにまで成長した我が子デニムへある秘密を告げる覚悟を固めます。その秘密とは、彼の姉であるカチュアの出生の真相──。


  • ▲カチュアはある高貴な血筋を引いており、プランシーやデニムと血は繋がっていません。そしてプランシーがカチュアを手放せなかったことから、暗黒騎士団の暗躍を招く結果になった側面も……。

 “ネタバレあり”な記事ではあるものの、カチュアの正体までは明確に明かさないほうがいいのかな……などと、少しだけ配慮しつつスクショをチョイスしてみました。ファンなら周知の事実だとは思いますが、あまりにも無粋な気がして(苦笑)。

 それはさておき。じつはカチュア自身の口からすでに、自分たちに血の繋がりがないことを聞かされていたデニム。父プランシーの言葉で姉の言うことが真実であったことを理解した彼は、大いに悩むことになります。というのもこの時のデニムは、ヴァレリア島に真の平和をもたらすためには、ウォルスタ人とバクラム人の民族紛争を隠れ蓑に不可解な動きを見せる暗黒騎士団と戦う必要があることに気づき始めているんですよね。

 つまり暗黒騎士団と事を構える=彼らが女王として担ぎあげたカチュアとも敵対することを意味しているわけで……そりゃあ簡単には踏ん切りがつかないのも無理からぬことです。

 はたしてどのような選択をとるべきなのか? 深い混迷のなかにある息子の心を察しているであろうプランシーは、なおも言葉を続けます。




 プランシーいわく、カチュアの戴冠というヴァレリアを揺るがす大事件ですら暗黒騎士団にとっては些細なことでしかなく、彼らはカチュアに流れるその血を利用したいだけであること。その本当の目的は、かつてヴァレリア島を統一した覇王ドルガルアの遺産を手中にしようとしていること。




 そして事が成った暁には、カチュアに命の危険が及ぶであろうこと──。姉が暗黒騎士団にとってはただの傀儡でしかないことに、さらなる衝撃を受けるデニム。しかしプランシーは、そんなデニムにしかカチュアを救い出すことはできないと言い聞かせます。


「己を棄てろ──大義のための礎となれ──」

 結果的に、この言葉が父から息子への遺言のようなものになりました……。



 厳しい現実をしっかりと見据えたうえで今この世界に住まう人々のため、そしてのちの世の人々のために己の身を犠牲にするよう諭すその内容はじつに壮絶。つまるところ自らが英雄となって覇道を進むのではなく、カチュアを救い出したうえで彼女を導くことを大義とし、そのために命をまっとうせよってことですからね……。

 まだ若く、理想に燃えて戦ってきたデニムにとって、己を棄てろという言葉は受け入れるのに葛藤があったことでしょう。そしてそれは、じつの息子にこんなにも酷な言葉を告げなければならないプランシーもきっと同様だと思うんです。

 その心情を表しているのが、命を引き取るまさにその瞬間、プランシーが口にした息子への言葉。

 このたったひと言に、万感の想いが込められていたのではないでしょうか。結果、デニムは父の遺言をしっかりと受け止め、以降はウォルスタ人のみならず、ヴァレリア島の未来そのものを切り拓くためにその身を削っていくと、決意を新たにします。

 これまでの彼のなかにもたしかに存在していたものの、まだ朧気でしかなかった“己の生きる意味と戦う意義”が、明確に見い出せた瞬間。デニムの成長は、プランシーのこの言葉があってこそだと思うんですよね。

  • ▲まあ、当のカチュア姉さんはこんなこと言ったりもしてましたけども……(汗)。自分としてはこのセリフ、デニムへの当てつけのようなものであり、彼女の本心の一部ではあるもののすべて言葉どおりってことではないと思っています。

 なお、このイベントはこれだけでは終わらないのが『タクティクスオウガ』のスゴいところ。戦う決意は固まったものの、父を失ってどうしても気落ちしてしまうデニムへ畳み掛けるように、さらなる衝撃の言葉が投げかけられます。



  • ▲続くシーンでこの急展開!

 そう、このタイミングでデニムはウォルスタ人ではなく、じつはバクラム人であるという事実が告げられるんですよね。ウォルスタ解放のためにガルガスタン、そしてバクラムと戦っていたデニムがよもや……この予想外の展開にビックリしたプレイヤーも少なくないのでは?(自分は超ビックリしました)

 デニムにとっては幼なじみともいえるオリビア。フィラーハ教の大神官であるモルーバの娘である彼女との会話のなかで、自身が忘れかけていた幼少期の記憶が蘇ったことをきっかけに、デニムはバクラムの血が流れている事実を受け入れることになります。




 個人的には亡きプランシーの言葉に加え、ここでのオリビアの叱咤があったからこそ、デニムは己の大義をより強固に認識出来たんだと思っています。死んだと思っていた父、そして幼なじみとの運命的な再会が、結果的に時代のうねりすら変えるというじつにドラマティックな名シーン。


 若者が大人になった瞬間を垣間見られた気がして、自分にとっては作中屈指のお気に入りイベントだったりします。

 『タクティクスオウガ リボーン』はフルボイスということで、この一連の会話にはめちゃくちゃ期待していたわけですが……いざ見てみると、声優陣の熱演は僕の期待なんか軽々と飛び越えるものでした。その尊さには感謝しかない……。まだご覧になられていない方は、がんばって辿り着いていただければと切に思います。それでは、今回はこのへんで!


(C)1995, 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら