映画『ぼくらの7日間戦争』で監督が描きたかったものは?

電撃オンライン
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 12月13日より全国公開となる『ぼくらの7日間戦争』の監督を務めた村野祐太さんの作品に対するコメントと共に新規場面写真が公開されました。

 本作は、ベストセラー小説『ぼくらの七日間戦争』を原作としたアニメ映画です。

 中山ひとみが廃工場に立てこもり大人たちをやっつけた少年少女たちの“七日間戦争”から30年ほどの時が流れた2020年の北海道が舞台で、原作のスピリットを受け継いだ新たなストーリーがアニメーション映像によって展開されます。

「“頑固な意志で大人に立ち向かう子ども達”の姿を描きたい」

 全てのはじまりは2016年冬。児童書レーベル“つばさ文庫”10周年をきっかけに、累計2,000万部突破シリーズの大ベストセラー作品であり“つばさ文庫”の創刊タイトルでもある『ぼくらの七日間戦争』のアニメ映画化企画が始動しました。

 『ぼくら』シリーズ のスピリットは、“子どもたちが悪い大人をいたずらでやっつける、爽快なストーリー”。

 作品を任された村野監督は、「今もずっと読まれている原作。長く読まれていることには意味があるのだから、その要素をすくい上げることに意義があると思いました。

 原作が多くの読者に支持されたのは、ちゃんとその時代の子どもたちに訴えるものがあったから。原作をただなぞるのではなく、今の子どもたちに向けて再構築するのが難しかった」と、シリーズのスピリットを継承しつつ、現代の作品としてどう打ち出していくかを悩んだと語ります。

 そんな迷いの中で制作陣は実際の高校にインタビューに赴き、リアルな子どもたちの声を聞くなど労を惜しみませんでした。

 しかし監督は「今の子供たちって、大人に対して過度なストレスを感じているわけではないんです。わざわざ反抗しなくても、何不自由なくすごす為のツールが手元にある。興味があるのは自分とその人間関係ばかりで、そもそも大人にそこまで関心がない」と語り、原作にあるような“子どもVS悪い大人”という明確な構図を見つけ出すことはできませんでした。

 ですが、子どもたちを教える教師との会話の中で思わぬヒントが見つかります。

 監督は「本当に今の子たちは器用だし、なんでもある程度上手くこなすことは出来る。ただ、頑固さ、粘り強さに欠けている。大体のこと、言われたことはその通りに器用にこなせるけど、トラブルが合った時に対処できる子がいないと先生方から伺いました。

 それを聞いた時、なるほどなと思いつつも、そう決めてかかる大人の鼻を明かしてやりたくなったんです。機会さえあれば今の子どもたちにもきっとできる。頑固な意志で大人に立ち向かう子どもたちを描きたいと思いました」と語り、現代の子どもたちが立ち向かうべき大人の姿が、先生たちとの会話から図らずも見出されていきました。

 さらに、学校でのインタビューやシナリオ会議を経て、子どもたちの敵は大人だけで無く、相対する人間毎、扱うSNSやアカウント毎に異なる“自分自身”も敵として設定されました。

 監督は今作の制作発表時に「原作の発表された時代ほど大人は物分かりの悪い人間ばかりではないし、生まれた時から当たり前にあるネット環境は大人に内緒で冒険することを容易くさせました。

 しかしどうやら、自分たちの自由な居場所を獲得しやすくなったと同時に、その居場所を守る為にはまた別の不自由さが生まれているみたいです」とコメントを発表しましたが、正にこれこそが今“7日間戦争”を制作する理由であり、現代の子どもたちが戦う理由だったのです。

ベテラン声優3人の参加も判明!

 監督のコメントとともに、新規場面写真が公開されました。

 また、映画公開に向けて益々期待が高まる中、ベテラン声優3人の参加も判明しました。

 潘めぐみさん演じる香織の父役を宮本充さん、主人公たちが立てこもる廃工場に突入しようとする入国管理官役を関智一さん、権力を笠に着た大物政治家役を中尾隆聖さんが演じます。

 数々の名キャラクターを演じてきた彼らが、その卓越した演技力を遺憾なく発揮し、酸いも甘いも噛み分けた大人として主人公たちの前に立ちはだかります。

 第1作の刊行から34年、初映像化から31年、日本を代表する青春エンターテインメントの金字塔として愛されてきた原作が、アニメーション映画としてどの様に、現代の子どもたちに向けた作品として生まれ変わったのか。この冬ぜひ、劇場で確かめましょう。










『ぼくらの7日間戦争』作品情報

スタッフ(敬称略)
原作:宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫・角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:村野佑太
脚本:大河内一楼
キャラクター原案:けーしん
キャラクターデザイン・総作画監督:清水洋
総作画監督:西岡夕樹
場面設計:関根昌之
美術監督:栗林大貴
色彩設計:広瀬いづみ
撮影監督:木村俊也
音響監督:菊田浩巳
音楽:市川淳
制作:亜細亜堂
配給:ギャガ KADOKAWA
ぼくらの7日間戦争製作委員会:KADOKAWA ギャガ 電通 ソニー・ミュージックソリューションズ グローバル・ソリューションズ 亜細亜堂 GYAO TBSラジオ ユニバーサル ミュージック 読売新聞社

キャスト(敬称略)
鈴原守:北村匠海
千代野綾:芳根京子
山咲香織:潘めぐみ
緒形壮馬:鈴木達央
本庄博人:大塚剛央
阿久津紗希:道井悠
マレット:小市眞琴
本多政彦:櫻井孝宏
宮沢りえ(特別出演)

©2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会

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