『機動戦士ガンダム 水星の魔女』9話はすごい。戦闘・ドラマともに見ごたえある濃密過ぎる回【感想&考察】
- 文
- てけおん
- 公開日時
12月4日に放送&配信されたアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第9話“あと一歩、キミに踏み出せたなら”の感想や考察をお届けします。
今回は思わずイスから立ってしまうほどアツい、濃密な回でした。
【注意】キービジュアルより先のテキストでは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第9話の物語に関する記述が多々あります。そのため本編をご覧になってから読むことを強くオススメします。
9話はモビルスーツ戦、シャディクにまつわるドラマ、プロスペラの涙など本当にさまざまなものが詰め込まれていて本当に濃密。7話から、いやプロローグから積み上げてきたものが結実したかのような回でした。
まずはモビルスーツ戦について触れたいと思います。
第9話では、作中で初の集団戦が描かれました。スナイパーを担当するチュチュをシャディクが、そしてスレッタとイリーシャをサビーナが足止め。ここはグラスレー寮が集団戦に慣れていること示されていたように感じました。
地球寮はスレッタとチュチュをのぞけばメカニック科で戦闘には不慣れ。チュチュの援護がなく、スレッタも身動きができない状況……。グラスレー寮3機に対して地球寮4機ではありますが、パイロット科成績上位の3人の前には、4人とはいえメカニック科の学生では相手にはなりませんでした。
次々と堕とされていく地球寮のメンバーたち。追い詰められたチュチュがライフルで殴りかかろうとするのはなんとも彼女らしいなと思いましたが、そんなチュチュも倒され、スレッタは対GUNDフォーマット用の装備――アンチドートを持つ6機を相手に戦わなくてはいけない状況に!
決闘を見ていたエランがアンチドートに対して「まだ持っていたんだ。しつこいねえ、グラスレーは」と言いましたが、いまだにアンチドートを持っていたことは、サリウスの思想とまったく無関係ではないでしょう。
スレッタ大ピンチ! しかし……
アンチドート発動時に筆者が気になっていたのは「スレッタがやられる!!」というのではなく、「ここからスレッタはどう巻き返すんだろう? それをどう描くんだろう?」という点でした。
追い詰められたエアリアルでしたが、普段と違いシェルユニットが青く輝きます。この時、スレッタが独り言のようにエアリアルに語り掛けていましたが、その声に反応するかのようでした。そしてガンビットもこれまで見せたことのない、青色のフィールドを作り出し、アンチドートを無効化していきます。
この時エナオが「オーバーライド……?」と言いますが、システムが乗っ取られたという理解でいいのでしょうか? この辺りは筆者もよくわからないところですが、アンチドートを仕込んでいると思われるベギルペンデのシールドや背部ユニットが格納状態に戻っていく描写があるんですよね。こうした動作でエナオはオーバーライド――乗っ取られたと判断したのかもしれませんね。
そして流れは一変。エアリアルがグラスレー寮の6機を圧倒します。この時、スレッタの目線がとても気になったんですよね。エアリアルは全天周モニターではありますが、敵を見ていたという感じではないような気がしました。むしろ、目線の先には“エアリアルの意識”がいるような……。そんな雰囲気がありました。
エナオを撃墜する前も「次は? こっち?」とスレッタは言います。エアリアルに敵の位置を教えてもらっているような、そんな描写に思えました。この時の動きは普通のものとは違ったのでしょう。撃墜される直前、その動きを見たエナオは「なんなのあなた? ……気持ち悪い」と表現していました。それだけパイロットの常識を超えた挙動だったのでしょう。
シャディクも「ガンダムなのか? お前は……?」と言っていました。5話でベルメリアはエアリアルの動きを分析し、エアリアルをGUNDフォーマット搭載機であると見抜いていましたが、シャディクもおそらくはガンダムが取りうる動きを知っていたのでしょう。エアリアルの動きはそれをはるかに超えていた。加えてアンチドートが無効化されてしまったこともあるかもしれません。それゆえに出たセリフだったのだと思います。
それでもエアリアルをあと一撃! のところまで追い込んだシャディクでしたが、最後はティルが指揮したと思われる長距離狙撃がミカエリスの頭部を撃ち抜き、地球寮が勝利します。ここもしびれましたね! 撃墜されたからといってスレッタにすべてを預けてしまうのではなく、勝利のために最善を尽くすところに、地球寮の面々の強さを感じました。
プロスペラの涙に驚いた
9話で大きく印象に残ったシーンのひとつ。それはプロスペラが笑いとともに涙を流したところです。
エアリアルのシェルユニットが青く輝いてアンチドートを制御不能にした時、プロスペラの頬を伝った涙と笑い。あれを見た多くの人が驚いたのではないでしょうか? もちろん筆者も驚きました。いつもすべてを見通したような超然とした態度だったプロスペラが見せた感情の揺らぎ。それがあの涙と笑みに出ているように思いました。
劇中で語られている“21年前の出来事”がフォールクバングのヴァナディース襲撃――プロローグで描かれている事件――のことであるとするのなら、ガンダム・ルブリス 量産試作モデルを無力化したアンチドートを打ち破ったこと、それはプロスペラにとって大きな意味を持っていたのでしょう。
ただ……望みを達成した喜びを表すのであれば、単に笑うだけでも十分だったのではないでしょうか? あの涙は喜びとは別の感情も存在しているがゆえの描写だったのではないか。そんな風に思えました。
シャディクについて思ったこと
9話を見ると、シャディクは本当にミオリネのことを好きだったんだろうなと思います。いろいろな立ち回りも彼なりにミオリネのことを思ってのことだったんでしょう。気が回り過ぎるがゆえにその思いは届きませんでしたが。
ミオリネに有利に見える取引について、ミオリネはトロフィーとしての自分を欲しがったと解釈し、シャディクは「おれはガンダム事業に一枚かめればそれでいい」と言っていましたが、きっとそれだけではないでしょう。
これまで劇中で描かれてきたサリウス・ゼネリの態度――そしてアンチドート装備をいまだに備えているほどのGUNDフォーマットに対する警戒っぷり――を鑑みるに、株式会社ガンダムの存在を許すとはとうてい思えません。となるとむしろ、この提案にはミオリネの盾になるため……という意味もあったのでは? と思えました。
決闘が決まった後。ミオリネの温室の前、ミオリネに「入るな。アンタは信用できない」と言われた時のシャディクの顔といったら……。そしてスレッタに改めて宣戦布告するシャディクの鋭い眼光。これまで劇中では描かれなかった戦う意志にあふれていましたね。
9話の最後、ミオリネが温室で青いトマトを剪定するシーンがありました。あれは“シャディクとの関係を断ち切った”と見ることももちろんできますが、どちらかというと“子ども時代との決別”というように見ることもできます。剪定は良い実を育てるための作業です。彼らの未来がよりよいものになるといいなと思わずにいられません。
なんかシャディクよりの解釈になってしまったな~というきらいはありますが、見ているうちに憎めなくなっちゃったんですよね。ということで。
振り返ってみても、やはりおもしろかった第9話。すでに配信が始まっているプラットフォームもありますし、木曜にも配信が始まるところもたくさんあります。もう一度、といわず2度3度とご覧になってみてはいかがでしょうか?
その他気になったこと
●放送後、「水星女ァ」がTwitterのトレンドに入っていましたね。決闘前、セセリアにも「兄弟愛重すぎィ」と茶化されるラウダ。これまでの描写でもわかっていましたが、本当にグエルのことを尊敬しているんですね。決闘中、追い詰められたスレッタを見て「堕ちろぉ! 水星女ァ!!」と叫ぶラウダを見るセセリアとロウジの「うわぁ……」という顔がとても印象的でした(笑)。
●ニカ姉……シャディクの連絡係だったことが明らかになりました。どういう経緯でミカ姉がシャディクの連絡係になったのかは作中で語られませんでしたが、完全に言いなりになっているというのではなく、ある程度意見を言えるような温度感であることがうかがえました。この後も連絡係としての関係が続くのかも気になります。またこの会話で「悪い。俺ももう少し粘ってみるよ」と言っていたシャディク。本当に決闘したくはなかったのでしょう。
●ケンカを売られるリリッケ。公式サイトにも書かれている“男子生徒によくモテる”というのは伊達じゃない! といったところでしょうか。
●グエルとスレッタの会話がありましたが、そこで筆者は「ひょっとしてスレッタたちに助力してくれる流れになるのかな?」と思っていました。が、そうはならず。
端末越しに決闘を見つめるグエルは「俺はどうして……」とつぶやきます。この言葉に秘められた思い。それこそはグエルの望んでいることだったんだろうな、と思います。それがかなう日は来るんでしょうか?
また今回、スレッタと会話した際に、スレッタが「お父さんは大事……ですよね」と言った時に街灯が点いた演出が少々印象的でした。このタイミングではまだ、父への思いが残っていたということではないのかな、と。父から見切りを付けられてしまったグエル。この後どんな形で物語に絡んでくるのかとても楽しみなところです。
『ガンダム』シリーズですと、なにかしら訳ありで登場する場合はそれこそマスクを着けてたりしますが……もうプロスペラがいますし、それはさすがにないですかね。
●エアリアルがアンチドートをオーバーライドしたわけですが、なぜアンチドートに的を絞った(?)ものだったのか気になりました。それこそプロローグでベギルバウがガンダム・ルブリス 量産試作モデルにやったように、機体のコントロールを封じてしまう、もしくは行動不能にしてしまえないのかなとも思ったわけです。
●……と、上のことを書いて思ったのですが、そもそもMSはそうした乗っ取りができないように作られているのかもしれませんね。上で例に挙げたルブリス 量産試作モデルは、試作なこともあってGUNDフォーマットのみで動かしていたのかなと思いました。また1話でミオリネがエアリアルを動かせたことや、9話でアンチドートの影響下にあってもスレッタがエアリアルを操作していたことなどを考えると、MSの操作周りに関しては、厳重に守られているのかもしれません。
●エアリアルが発揮した不可思議な力というと、6話“鬱陶しい歌”でファラクトのガンビットを封じた時のことが思い出されます。あの時のシェルユニットは輝きこそ強かったものの、その色は赤。今回とは違う事象と見ていいのかなと思っています。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
【スタッフ】※敬称略
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇/富野由悠季
監督:小林寛
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:モグモ
キャラクターデザイン:田頭真理恵/戸井田珠里/高谷浩利
メカニカルデザイン:JNTHED/海老川兼武/稲田航/形部一平/寺岡賢司/柳瀬敬之
チーフメカアニメーター:久壽米木信弥/鈴木勘太/前田清明
副監督:安藤良
設定考証:白土晴一
SF考証:高島雄哉
メカニカルコーディネーター:関西リョウジ
設定協力:HISADAKE
プロップデザイン:絵を描くPETER/えすてぃお
コンセプトアート:林 絢雯
テクニカルディレクター:宮原洋平
美術デザイン:岡田有章/森岡賢一/金平和茂/玉盛順一朗/上津康義
美術監督:佐藤歩
色彩設計:菊地和子
3DCGディレクター:宮風慎一
モニターグラフィックス:関香織
撮影監督:小寺翔太
編集:重村建吾
音響監督:明田川仁
音楽:大間々昂
製作:バンダイナムコフィルムワークス/創通/MBS
【出演声優】※敬称略
スレッタ・マーキュリー:市ノ瀬加那
ミオリネ・レンブラン:Lynn
グエル・ジェターク:阿座上洋平
エラン・ケレス:花江夏樹
シャディク・ゼネリ:古川 慎
ニカ・ナナウラ:宮本侑芽
チュアチュリー・パンランチ:富田美憂
デリング・レンブラン:内田直哉
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