アニメ『ぼくらの7日間戦争』を実写映画と地続きにした理由。村野佑太監督&大河内一楼さんインタビュー

ライターM
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 2019年12月13日より全国公開となる新作アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』。村野佑太監督と脚本を手がけられた大河内一楼さんのインタビューをお届けします。

 本作は、角川つばさ文庫刊、宗田理先生によるベストセラー小説『ぼくらの七日間戦争』が、装いも新たに長編アニメ映画となって公開されます。

 物語の舞台となるのは、原作小説&実写映画から約30年後――2020年の北海道。令和に生きる新たな“ぼくら”が、7日間にわたる戦いを繰り広げます。

 この記事でお届けするのは、10月初旬にお時間をいただいた村野佑太監督&大河内一楼さんへのインタビューとなります。話題を集めた宮沢りえさんのキャスティングなどについても話していただいたので、ぜひご一読ください。

  • ▲村野佑太監督(写真左)と大河内一楼さん(写真右)。

――お2人にとって、『ぼくら』シリーズとはどんな作品なのでしょうか?

村野監督:それこそ小説が発表されたのが私が生まれた年くらいなので、今こういう作品が流行っているよねという関わり方ではなくて、意識した時から名作としてそこにあるものでした。まさか今回このようなお話をいただけるとは夢にも思っていなかったですし、本当にすごいタイトルだなという印象です。

大河内さん:僕はわりと大人になっていたので、映画も当時子どもたちの間で流行していた作品という印象です。主題歌の『SEVEN DAYS WAR』もそうですし、宮沢りえさんについてもこんなスター性がある人がいるんだなと。鮮度が高いというか、キラキラした感じがありましたね。

  • ▲1988年公開の映画『ぼくらの七日間戦争』より。

――制作におけるこだわりについて伺います。1988年に公開された実写映画『ぼくらの七日間戦争』と関わりを持たせた点については、どのような狙いが?

村野監督:今の時代からすると、『ぼくらの七日間戦争』を単純にリブートするのはあまりにも難しいだろうなというのはありました。原作をそのままアニメ化することが、30年経った今、この映画にとって幸せになるのかな? と。

 当然守らなければいけないところもありながら、全部を原作そのままというのは、『ぼくらの七日間戦争』という作品が当時の世相に切り込んでいったのとは違うことをしてしまうのではないか? 同じような挑戦心であったり、時代を映すことだったりを今の時代に合わせて僕たちも挑まなければいけないのでは? という思いはありました。『ぼくら』シリーズの映像かであるならば、まずは“今の子どもたち”に捧げるべきだろうと思うんです。

 その上で、『ぼくらの七日間戦争』というタイトルを預かっていることを受けて、ちゃんと30年前の物語と地続きの時間軸にしています。映画が発表されてから30年、我々が過ごしたのと同じ時間が作品の中で流れた時に、登場人物たちはどのように動くのか? そこに過去作のキャラクターが絡んでくるのかというのは描くべきだろうな、それが原作や映画に対するリスペクトだろうなと考えたわけです。

――大河内さんは脚本を描くにあたって、そのあたりはいかがでしたでしょうか?

大河内さん:僕は原作にリスペクトがない作品は愛されないと思っているので、まずはリスペクトが絶対的に必要だろうと。どのようにリスペクトするのかは悩みどころですが、手法として“原作や映画で描かれた世界をなかったことにしない”というのはそのひとつだと思うんです。

 物語の舞台を現代にすることは決まっていました。そこで、登場人物を同じにしようとすると、40代になったかつての子供たちが立てこもる話になってしまう。それはちょっと違うかなと。

村野監督:そういう方法が絶対になしとは思いませんが(笑)。

大河内さん:過去に“ぼくら”がやった七日間戦争をなかったことにはしない。そして、あの時のおもしろさとか、あの時の鮮度とか、エッセンスは再現したい。もちろん現代はインターネットがあったり、大きく時代背景が変わってしまっているけど、立てこもるおもしろさは、現代でも再現できるだとろうと思いました。

――そういったお約束の部分があると紛れもなく『ぼくらの七日間戦争』なんだなと感じさせられますね。

大河内さん:立てこもる以外にも戦争の仕方ってあると思うけど、でも、子どもの秘密基地感とか、普段は一緒にいない連中との共同生活とか、そういうおもしろさは確実に『七日間戦争』で大事な部分だと思ったので。

村野監督:高校生へのヒアリングで原作のどこが好きなのと聞いた時に、正直、学生運動の部分などはなにもわからなかったって。そういうワードも知らないし、なぜ彼らの親とかがそれにこだわっているのか、空気感が全然わからない。ただ、一カ所にみんなでとどまって、それこそ学園祭前日みたいな雰囲気でワイワイ何かをやり遂げるというのがすごくおもしろいと言っていたんですよね。

 時代性を表す難しくて馴染みのないワードに縛られるよりも、高校生たちが一カ所にとどまって、そこでみんなで何か楽しいことをやる。そのワクワク感を大事にしたいなというのはあったので、工場はぜひぜひ……という感じですね。でも大変なんですよ、アニメで工場を描くのは、本当に(笑)。

――コレを外したら『ぼくらの七日間戦争』ではなくなるというポイントは?

大河内さん:僕はこの映画を、『七日間戦争』を知らない人にも見てもらいたいと思っています。そのためにはまずタイトルと違う作品にはしたくない。戦争は七日間であるべきだし、戦争をするのは“ぼくら”であってほしい。

村野監督:原作で描かれている“ぼくら”らしさって宗田先生ご自身の体験談とかもあると思うんですけど、子どもたちのタフさ、明るさというのを絶対的に信じているところなんですよね。実は『ぼくらの七日間戦争』を今風に作るとなった時に、もっと暗い要素だとか陰湿なところを描いたほうがリアルな現代人の戦争なんだろうなという意見もあったんです。

 でも映画全体の印象として、キャラクターの根底にある明るさやタフさを外してしまうと『ぼくらの七日間戦争』である意味がなくなるだろうなと。それぞれのキャラクターが背負っているものが違えど、そこは外さないで描いていきたいなと思いました。

――実写映画『ぼくらの七日間戦争』といえば学生運動といったように当時の世相が取り込まれていますが、本作にはそういったエッセンスはあるのでしょうか?

村野監督:学生運動とかワードに捕らわれるのはやめたいなと思っていました。この映画を見せなければいけない相手が、それに対して興味があるのかどうかというところでもあると思うんですよね。

 引っ張ってくるべきワードとそうではないものみたいなところは結構悩みつつも、“解放区”というのは持ってきたかったんですよね。解放区という単語自体も今どき使うようなものでもないので、あまりそれは推さないほうがいいのではという話もありました。

 ただ、解放区というのがただの場所ではなく、何かを表現するものとしてであれば意外とストンと入り込めるのではないかなと。

 劇中、玉すだれさんの「青春時代は人生の解放区よ」という言葉もありますが、彼らが何を守って何を得なければいけないのかを考えた時に、本当の自分を出せる場所、解放できる場所、関係性を得られるかどうかって、今の子どもたちの興味の対象ともリンクするだろうなと思ったんです。それについては原作にある重要なワードとつなげられたのでうれしかったですね。

大河内さん:この原作が書かれた時点では、学生運動って身近なものだったけど、今はそうではありませんよね。管理教育なんかもなくて、学校の在り方が大きく違う。この映画を作る時に行った高校生へのヒアリングでは、「自分たちのコミュニティ内での問題が大きくて、あまり大人には興味が無い」という答えが上がってきていて、やっぱり違うんだなあ、と。

村野監督:今の子どもたちにとって、大人はそんな巨大じゃないですよね。敵じゃないって言ってくれる分にはまだしも、味方って言われちゃったので……。じゃあ立ち向かう必要まったくないじゃん! ってなっちゃいますよね(笑)。当然敵として捉えている子もいるかもしれないけれど、「大人は敵だ!」と言っている子のほうが圧倒的に少数派なんだろうなと。もちろん、ご家庭によるとは思いますけど。

――宮沢りえさんが演じられた中山ひとみについて、手応えはいかがでしたか?

村野監督:背筋が伸びる思いで本当にスゴイなと思ったのが、マイクの前に立たれた時に、スッと中山ひとみの三十年後の芝居になっていたんですよ。

 本当にものすごい存在感でして、お願いしたことなんてマイクの前に立たれた時の、画面の中のキャラクター同士の距離感とかその程度のことだけです。感情の込め方もくど過ぎず浅過ぎず、すごく魅力的なお芝居をされて、私も音響監督さんも脱帽という感じでした。

 逆に『いや、ひとみってこうなんですよ」と言ってしまうと、それは僕たちが勝手に作ったひとみになってしまう。誰よりもひとみをご存じな方なので、出していただいたものをそのまま使わせていただければいいのかなと思いました。

――宗田先生もアフレコ現場にいらっしゃったとうかがいましたが、宮沢りえさんの演技を見てのご感想などはありましたか?

村野監督:お2人はそういう意識はないんでしょうけど、僕たちが入ってはいけないなという雰囲気がなんとなくあって、実写映画以来の再会だったらしいんですよね。

 30年ぶりなのについ先週会いましたみたいなさらっと感で話されていて、それが端から見ていてすごく幸せそうに見えて。そこに僕たちが入ってはいけないというか、むしろ見ていたいという尊さのある時間でした。

――今回の作品では“七日間”ではなく“7日間”と算用数字が使われていますが、これにはどのような意味が?

村野監督:変なサブタイトルはつけたくなかったんですよ。『ぼくらの七日間戦争 ~七人の子どもたち~』などというのは避けたくて、それってすごく蛇足感があるじゃないですか。やはりタイトルは『ぼくらの七日間戦争』であってほしいと。

 ただ、漢数字でまったく同じにしてしまうのは、もとの実写映画に対してやるべきではない。まったく同じタイトルで名作があるので、敬意を表してうちは違いますよと言う意味で数字の7を使わせていただきたいなと。また、数字にすることでちょっとした柔らかさも出てくるだろうなというのもあったので変えさせていただいた次第です。

 ちょうど7人の子どもたちの物語でもありますし、タイトルの中央で“7”を印象付けたかったんですね。

――最後にメッセージをお願いします。

村野監督:原作や実写映画とは違うキャラクターたちによって新たな物語が展開しますが、作品の精神性に対して最大限の敬意をもって作らせていただいています。今までの作品が好きな方もそうではない方も楽しめるのではないかなと思うので、ぜひ劇場まで足を運んでいただけるとうれしいです。

大河内さん:立てこもって大人たちと戦うって、僕の人生にはなかった青春で、たぶんほとんどの人にもない青春だと思うんですよ。でも、自分の人生にそんな青春もほしかったなと感じてもらえるような楽しさを込められたらと思って書きました。よかったら映画館まで、今の人生とは違う青春を体験しにきてください。

『ぼくらの7日間戦争』作品情報

スタッフ(敬称略)
原作:宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫・角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:村野佑太
脚本:大河内一楼
キャラクター原案:けーしん
キャラクターデザイン・総作画監督:清水洋
総作画監督:西岡夕樹
場面設計:関根昌之
美術監督:栗林大貴
色彩設計:広瀬いづみ
撮影監督:木村俊也
音響監督:菊田浩巳
音楽:市川淳
制作:亜細亜堂
配給:ギャガ KADOKAWA
ぼくらの7日間戦争製作委員会:KADOKAWA ギャガ 電通 ソニー・ミュージックソリューションズ グローバル・ソリューションズ 亜細亜堂 GYAO TBSラジオ ユニバーサル ミュージック 読売新聞社

キャスト(敬称略)
鈴原守:北村匠海
千代野綾:芳根京子

中山ひとみ:宮沢りえ(特別出演)
山咲香織:潘めぐみ
緒形壮馬:鈴木達央
本庄博人:大塚剛央
阿久津紗希:道井悠
マレット:小市眞琴
本多政彦:櫻井孝宏

©KADOKAWA 1988, 1991
©2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会