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映画『ぼくらの7日間戦争』の舞台を北海道にしたのはなぜ? 村野佑太監督&大河内一楼さんが語る

ライターM
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 2019年12月13日より全国公開中の新作アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』。村野佑太監督と脚本を手がけられた大河内一楼さんが語る制作秘話や見どころをお届けします。

 本作は、角川つばさ文庫刊、宗田理先生によるベストセラー小説『ぼくらの七日間戦争』が、装いも新たに長編アニメ映画となって公開されます。

 物語の舞台となるのは、原作小説&実写映画から約30年後――2020年の北海道。令和に生きる新たな“ぼくら”が、7日間にわたる戦いを繰り広げます。

 この記事でお届けする村野佑太監督&大河内一楼さんのインタビューには、少しネタバレ要素も含んでいますので、これから映画を見る人はご注意ください。なお、11月に公開したインタビューでは、公開前でもネタバレの心配がなく読めるようになっています。お2人がどんな思いで制作に携わったのか知りたい人は、11月のインタビューをご覧ください。

――物語の舞台を北海道に選んだ理由を教えていただけますか?

村野監督:実は場所ありきではなかったんですね。彼らがまず、どういう工場を舞台にして戦うのかから入ったんですよ。それが何の工場かというところで、例えば自動車工場に立てこもって彼らがいったい何を出来るのかとか、工場の設備が扱っておもしろいものになるのか、高校生たちが扱ってギリギリ説得力が持てるかどうかですね。

 最先端、もしくは日常のすぐそばにあるような工場ではなくて、今の大多数の中高生からすると、ちょっと自分たちの時代とは違うもの。ある種の遺跡じゃないですけど前時代的なところに入ったほうが、非現実的な七日間を過ごすには楽しいだろうなと。今の彼らからすると馴染みはないけれど、ギミック的な目に見えて魅力的なものは何だろうと思った時に、炭鉱がおもしろいだろうなというのがあったんですね。

 どうやら石炭というものが最後の脱出に関わるものになりそうだと。今の子どもたちが古いものを使って戦う図がおもしろいだろうなと考えた時に、国内で大きくて魅力的な炭鉱のある場所だったのが九州と北海道だったんですね。

 九州の三池炭鉱なども調べたりしました。ただ、全体的なフィールドとして見た時に圧倒されるような存在感としては、赤平や奔別の炭鉱が印象に残ったので北海道に決めさせていだだいて。夕張の炭鉱施設なんかも参考にしています。そうしていくうちに、なにかこう日々生活しながら、悶々と抱えている都会に対するジェラシーみたいなものだったりという設定が自然とキャラクターにくっついてきたというところですね。

――なるほど。特に映画で大きく時間を割いた工場については、描き方にもこだわりがあると伺ったのですが?

村野監督:背景さんや撮影さんにお願いしたのが、「錆を汚いものではなく、綺麗なものとして描いてください」ということです。チラチラと舞う埃も、日光が当たった時にキラキラと見えるように考えながら処理をしてもらいました。登場人物メインは7人なんですけど工場を8人目のキャラクターとして、朝陽の差し込み方とか夕陽の照り返しとかで感情を持っているように描いてくださいとお願いしました。


――『ぼくらの七日間戦争』らしさという点で、イタズラで大人を倒すという構図やバトル演出などはいかがでしたか?

村野監督:そこはすごく難しくて、本作に登場するトロッコのように、動力や仕組みがアナログでわかりやすいもので派手に戦うというのは、それはそれで魅力でもあります。ですが、ファンタジー的な作品と比べると、華々しさというところで制約が多くなるところでもあって……。

 タイムスリップとか超常現象とかを扱っていれば、アニメ映像的にも派手になるのですが、それはもう『ぼくらの七日間戦争』とはまったく違ったものですし、制約がある中でどれだけ楽しんでもらえるかというところは苦心しました。

 大河内さんも一緒にロケに行っていただいて工場を見ましたけど、絵コンテを描く段階ではまたシナリオからさらに考えないといけないんですよね。平面図を見て、“どこからどう攻め込むか?”――それこそあの工場をひとつの城に見立てて、コッチからなら入れるんじゃないか? ここからはどうだろう? とか、そういうのをスタッフと一緒に考えるのは大変でしたけど楽しかったですね。

大河内さん:この工場でサバイバルゲームをやったら、亜細亜堂チーム(※本作を手がけたアニメ制作スタジオ)はめっちゃ強いですよ(笑)。

村野監督:もうありとあらゆるところで、この道を塞げば止められるみたいなのをみんな網羅して、マップが完全に頭の中に入っているので(笑)。

――お2人の話しぶりからも、工場という舞台にかけた意気込みや、実際に話し合っている時に楽しかったんだろうなあということが存分に伝わってきました。では最後に、すでにご覧になっている人も多いと思いますが、そうした皆さんに何かメッセージはありますか?

大河内さん:いろいろと仕込んでいますよね? 守が読んでいる本とか。

村野監督:はい。アニメには宮沢りえさん演じる中山ひとみが登場しますが、彼女に関連するちょっとしたネタを仕込んでいます。舞台が映画とも原作とも違うので、じゃあ彼女は今どこに住んでいるんだろうという問題があるんですよ。

 彼女が乗っている自動車のナンバープレートに地名を書かなければいけなかったのですが、ちょっとしたジョークを入れています。繰り返しご覧になる際はそういった細部にも注目していただけるとクスッと笑っていただけるかも知れません。

  • ▲村野佑太監督(写真左)と大河内一楼さん(写真右)。

『ぼくらの7日間戦争』作品情報

スタッフ(敬称略)
原作:宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川つばさ文庫・角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:村野佑太
脚本:大河内一楼
キャラクター原案:けーしん
キャラクターデザイン・総作画監督:清水洋
総作画監督:西岡夕樹
場面設計:関根昌之
美術監督:栗林大貴
色彩設計:広瀬いづみ
撮影監督:木村俊也
音響監督:菊田浩巳
音楽:市川淳
制作:亜細亜堂
配給:ギャガ KADOKAWA
ぼくらの7日間戦争製作委員会:KADOKAWA ギャガ 電通 ソニー・ミュージックソリューションズ グローバル・ソリューションズ 亜細亜堂 GYAO TBSラジオ ユニバーサル ミュージック 読売新聞社

キャスト(敬称略)
鈴原守:北村匠海
千代野綾:芳根京子

中山ひとみ:宮沢りえ(特別出演)
山咲香織:潘めぐみ
緒形壮馬:鈴木達央
本庄博人:大塚剛央
阿久津紗希:道井悠
マレット:小市眞琴
本多政彦:櫻井孝宏

©2019 宗田理・KADOKAWA/ぼくらの7日間戦争製作委員会

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