イラストのようなグラフィックが印象的な『Sable』をレビュー。過酷ながらも美しい世界をホバーバイクで探索するのが楽しい!【電撃インディー#388】
- 文
- 柏又
- 公開日時
電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Raw Furyより配信中のPS5/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)用アクションアドベンチャー『Sable(セーブル)』のレビューをSteam版をもとにお届けします。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
まるでアートのような世界観をホバーバイクで駆け抜ける!
本作の魅力の第一は、もちろん一枚のアートのようなグラフィックでしょう。トレーラーを見ればわかる通り、この絵柄がそのままゲーム画面として3Dグラフィックで動作します。海外のコミックのような世界をそのまま冒険できるのが『Sable』なのです。
独特の色づかいと陰影で構成された映像もさることながら、大小の砂丘の連なりに点在する世界観も素晴らしいのひとことにつきます。
本作は、見渡す限り砂漠な砂の惑星を舞台としているのですが、厳しい自然のなかに埋もれるようにして存在する建造物やそのなかで暮らす人々の姿は、ばっちり絵になっていて美しいですね。
また、主人公がこの世界の旅に使うホバーバイク“シムーン”もゲームを語るうえで欠かせない要素のひとつ。このバイクはフロントとウイング、エンジンの3パーツで構成されていて、空中に浮いた状態で地面スレスレを飛行します。
走行中はウイングから風を切ったり砂埃を盛大に巻き上げたり、砂丘を飛び越えた後に空中で失速して落下したりするなど、その浮遊感とスピード感が非常に気持ちいいのです。
プレイヤーはフィールドのほとんどをホバーバイクに乗って移動しますが、それが苦にならずにむしろいろいろな角度から走行している姿を眺めたくなってしまう魅力があります。
所持金や現在時刻といった画面表示も最低限で、プレイヤーに世界を楽しませたい仕様になっているところも好感が持てます。
なお、主人公のコスチュームやホバーバイクのパーツは、ゲーム内で入手したパーツでカスタマイズ可能。バイクはパーツの変更で性能も変化するので、外見ではなく走行性能にこだわれます。
ハードな展開はなく、全体的に優しい雰囲気のなかで進むゲーム内容がステキ
ゲームの目的は、故郷のアイベクス族から巣立ち“グライドの旅”に出た主人公“セーブル”として、外の世界のさまざま職業を知りそのマスクを手に入れること。ですが、ゲームの本来の目的はエンディングを迎えることではなく、それまでにどれだけの冒険を重ねられるかにあると筆者は感じました。
廃墟と遺跡と砂漠で構成された、わりと荒廃した感じの世界ですが、危険な存在との戦闘など、ハードな展開やシーンはありません。
住人たちの願いごとを聞いてクエストをクリアすることがメインのゲーム進行で、神秘的ではあるものの、どちらかというとまったりと優しい感じの内容に仕上がっていると思いました。
筆者的には、主人公のモノローグとほかのキャラクターの話し言葉でフォントを変えてあるところが凝っているなと感じました。
セリフも強い言葉を使うのではなく、じっくりとプレイヤーに読み込ませる感じの味わいのある文章になっていますね。
フィールドはそこそこ広めのオープンワールドですが、ファストトラベル機能もあり遊びやすく作られています。
地形の高低やギミックを利用したパズル要素が秀逸!
本作のクエストは、険しい地形の踏破やギミックを解くことでクリアできるように作られています。
主人公はスタミナの尽きる範囲内ですが、ほとんどの壁をよじ登って高所へ行けます。また、旅立つ際に託された“グライド石”の力で高所から滑空することが可能です。
これらのアクションを駆使して地形をすみずみまで探索することでクエスト目的をクリアします。
現在のスタミナが許す範囲でどこまで登れるか? 登った先からどこへグライドするのか? など、プレイヤーに求められる思考の幅はそれなりにあり、適度に頭を悩ませてくれるでしょう。
また、古代の遺跡や過去に墜落した宇宙船の残骸は、旧い装置がまだ機能していてスイッチを入れたりバッテリーを付けたりすることで仕掛けが作動します。
仕掛けを起動することで扉が開き先に進めるわけですが、装置は完全ではないので1つのバッテリーを使いまわしたりとプレイヤー側の工夫が必要です。
仕掛けを解く過程は一種のパズルのようになっていて考えることが楽しく、無事解けた時の達成感もしっかりとあります。
また、特定の虫や植物を採集するときは、対象の習性を詳しい人に聞いてからプレイヤーが実践する必要もあって、単純なお使いになっていないおもしろさがあると感じました。
クエストの数もかなりあり、価格帯のわりにはかなり長く遊べると思います。
雰囲気が気になったら手に取って損はなし! アクションが苦手な人も入門用にどうぞ!
ここまで紹介してきた『Sable』。ゲームの発売自体は2019年ですが、正式に日本語で遊べるようになったのは昨年の11月と最近。それでも、グラフィックなどのアート部分に見劣りを感じないのは、独特の世界観ゆえでしょうか。
ゲーム自体にハードな部分はほぼ存在しませんが、広大な砂漠の情景とみるからに厳しいと感じられる環境と、それなりの日常を送っている人々のなかで、主人公がこの世界の形を体験していく優しい雰囲気に仕上がっていると筆者は感じました。
また、内容に特徴的な部分はほとんどありませんが、だからこそ幅広い人におすすめできるとも思いました。スクリーンショットやトレーラーを見て、世界観が気にいった人なら即買いしても後悔しないと思います!
また、アクションゲームがちょっと苦手な人でも、基本主人公が死ぬことのない本作はおすすめできるのではと考えています。
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