『グリムノーツ Repage』シナリオ集。自由への旅路~カーリーのフォルテム学院創設秘話

そみん
公開日時

 スクウェア・エニックスの『グリムノーツ Repage(リ・ページ)』で、期間限定で行われたキャラクターイベント“自由への旅路”のシナリオ集をお届けします。

 このイベントでは、ヒーローとなったフォルテム教団時代のカーリー(本人ではなく、別の想区でヒーローとなった存在)がエクスやレヴォルたちと出会い、フォルテム学院の創設秘話が語られました。

 本人ではないのでエクスやシェインと面識はないものの、やはり何か通じるものがあるのが、イベント中に見せる息の合ったかけあいは、まるで本人さながらに感じる場面も。
(以前にコミケで頒布された『グリムノーツワールドガイド』に収録された短編小説『箱庭を継ぐ者』(作:大泉貴)で描かれたカーリーとレイナの掛け合いとかも思い出しちゃいますね)

 先日公開された、カーリー(声優:上坂すみれ)による朗読PV“混沌の巫女の語られざる物語”とあわせて読むことをおすすめします!

※本記事内には物語のネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。

霧の彼方の軌跡 開幕

――謎の場所

●????(カーリー)
最近、昔のことばかり、思い出します。
みなさまと、旅をしていたあの日々を、
思い出します。

いろんな事がありましたね。
辛いことも、悲しいこともありました。

でも……楽しかった。

もう一度、エクス様やレイナ様と、
一緒に旅をしたかった。

いろんなものを見て、いろんなことを感じて、
みなさまとおしゃべりして。
そして…レイナ様と、口喧嘩とかしちゃったりして。

でも、それももう叶わないみたいです。

ならばせめて、と…願って、しまいます。

私の命が終わった後、この身が滅びた後、
それでも残るものがあるのなら。

それが“魂”と呼ばれるものだけでも、
もう一度、あなたたちと――

――沈黙の霧

●レヴォル
さて、この霧の向こうはどんな想区に
続いているのだろうか…。

●アリシア
ルイーサ、大丈夫?
私たちが付いてるから、何かあったとしても
慌てないようにね。

●レヴォル
アリシアの言う通りだ。
もしもの時はいくらでも力になるから。

●ティム
…って、みんな言ってくれてるぞ。
良かったな、ルイーサ。

●ルイーサ
あ、そう。
まあ、死なない程度に頑張って。

●シェイン
ふーん。
ずいぶん厚かましい態度じゃないですか、
ルイーサさん。

●ルイーサ
それがどうしたっていうの?
放っておいてくれるかしら。

●シェイン
…そうですか、失礼しました。
では、これ以上は何も言いませんので。

●ルイーサ
ありがと、それは大助かりだわ。

●一行
…………。

●エレナ
ね、ねえ、エクスさん。
なんか、やたらと空気が重いよぉ…。
ど、どうにかならないのかな?

●エクス
う、うーん…。
とは言っても、どうすればいいのか…。

●アリシア
オホン!
ティムくん、パーン先生!
突然だけど、フォルテム学院校歌を歌いましょう!

●ティム&パーン
えっ?

●アリシア
我ら、自由を信じる鳥なり。
さだめの檻を破り、霧の彼方へ飛び立たん――

●アリシア&パーン
うちなる心に輝く太陽を道標に、
空白の大地に我らの軌跡を描きゆく。

●三人(アリシア&ティム&パーン)
自由の殿堂、ここに在り。
フォルテムよ、鳥たちを導きたまえ…。

●アリシア
――うん!
あらためて実感したけど、本当にいい歌よね!

●パーン
うん、そうだね。

●ティム
ったく、藪から棒にも程があるだろ…。

●アリシア
あははっ!
そんなこと言ってるけど、一応は
歌ってくれたじゃない。

●ティム
そりゃ、俺だけ知らんぷりってわけにも
いかないだろうがよ。

●ルイーサ
…クスッ。
ホント、突拍子もないのね、
お兄ちゃんの仲間たちって。

●ティム
ま、そういうこった。
どうだ、俺の苦労がわかってもらえたか?

●レヴォル
(…そうか。気まずい空気を無理やり変えるために
 アリシアはこんなことを…)

●シェイン
…………。

●エクス
どうしたの、シェイン?
なんだか遠い目をしてるけど。

●シェイン
ああ、いえ…。
少々、昔のことを思い出してしまったもので。

●エクス
昔のことって?

●ルイーサ
あっ!
向こうに何か見えてきたわよ。

――森の中

●エレナ
新しい想区に着いたみたいだね。
アリシアちゃん、感知計の様子はどう?

●アリシア
…ピクリとも反応しないわ。
ここにはカオステラーがいないみたいよ。

●パーン
ふむ、そうか。
であれば、特に長居をする必要はないな。
早めにここを抜けるとしよう。

●レヴォル
はい、そうですね。
今はデウス・プロメテウスを追うことが
最優先事項ですから。

――別の場所

●怒号
でやああああーっ!

●剣を交える音
キィンキィンキィンキィィン!!

――森の中

●エレナ
こ、この音って…!

●シェイン
あっちから聞こえてきますよ!
行ってみましょう!

●レヴォル
は…はい!

――別の場所(森の中)

●黒装束の男
カーリーよ!
その命、もらい受ける!

●カーリー
残念ですが、私にはやるべきことがあります。
この場で倒れるわけにはいきません!

●鬼姫
カーリーよ、私の後ろに下がっていろ!
この狼藉者どもは私がすべて叩き斬る!

●エクス
えっ…、カーリー!?
カーリー、君なのか!?

●シェイン
そっちのあなたは、鬼姫さんじゃないですか!

●カーリー
あなたたちは…?

●黒装束の男
隙あり!
その命、もらい受ける!

●刀で攻撃を弾く音
ガキィン!!

●鬼姫
カーリーよ、今はこっちに集中するんだ!

●カーリー
わ、わかりました!

●エクス
僕たちも加勢するよ!
行こう、みんな!

●エレナ
えっ、えっ??
なにがどうなってるの??

●黒装束の男
我らの邪魔をするのであれば容赦はせん!
覚悟するがいい!

●レヴォル
と、とりあえず、今はエクスさんたちの
言う通りにしよう!
みんな、コネクトの準備を急ぐんだ!

霧の彼方の軌跡 終幕

――森の中

●エクス
よし、片づいたね。

●レヴォル
ええ、これでとりあえずは大丈夫なはずです。

●シェイン
お二人とも、ケガはありませんか?

●カーリー
え、ええ、はい…。
お陰様で…。

●鬼姫
驚いた…。
まさか、あのような術を使いこなすとは。

●カーリー
助けて下さり、ありがとうございます。
…あらためて伺いますが、あなたたちは何者ですか?
何故私たちのことをご存じなのでしょう?

●エクス
あ、ええと、それは…。

●シェイン
その前に、わたしから質問させて下さい。
以前、どこかでお会いしたことがありませんか?

●カーリー
…………。
ええと…鬼姫様はいかがでしょう?
こちらの方々をご存じでしょうか?

●鬼姫
いいや、まったく心当たりがない。
完全に初対面だと言い切れる。
カーリーの方こそどうなのだ?

●カーリー
え、ええ、私も同じなのですけど…。

●パーン
…………。

●シェイン
おや、そうでしたか。
すみません、どうもわたしの勘違いだったようです。

●鬼姫
い、いやいや、カーリーの質問に対する
答えになっていないぞ!
なぜ私たちを知っているのだ?

●エクス
ええと…、だってその子は、
フォルテム教団の巫女でしょ?

僕たち、フォルテム教団の集会に何度か
行ったことがあって、それで知ってるんだ。

●鬼姫
…ふーむ、本当か?

●シェイン
ええ、エクスさんの言う通りです。
フォルテム教団の集会でお見かけしたんでした。
すっかり忘れていました。

●カーリー
なるほど、そういうことだったんですね。
鬼姫様も、私の護衛をして信者のみなさまの前に
出たことが何度もありますし。

●鬼姫
確かに…。

●シェイン
………。
鬼姫さんは、今もカーリーさんの
護衛をされているのですか?

●鬼姫
フォルテムには世話になっている…。
これぐらいのことはしなければな。

●シェイン
…………。
かつてのわたしと同じです。
この鬼姫さんは、ひょっとして…。

●鬼姫
ん、何か言ったか?

●シェイン
ああ…いえいえ。何でもありません。

●ルイーサ
ねえ。そろそろ私たちを蚊帳の外に置くのはやめて、
事情を説明してくれない?

●エクス
ああ、ごめんごめん。
と言っても、何から話せばいいのか…。

●レヴォル
(カーリーさん…。
 『万象の栞』を僕たちに託してくれた
 フォルテム学院の学院長)

(エクスさんやシェインさんとは少しの間だけ
 一緒に旅をしたことがあったとも聞いてる…)

●カーリー
私たちを助けてくれたことといい、
あなたたちは信頼できる方のようです。

………。
もしよろしければ、私たちの旅に
同行しては頂けませんか?

●鬼姫
な、何だってっ!?

●アリシア
おおおーっ!!
カーリーさんにそんなことを言って頂けるなんて!
私たちだったら、全然オッケーですよ!

●パーン
“沈黙の霧”もすぐには出ないようだし、
それぐらいの寄り道ならいいだろう。

●レヴォル
ええ、はい。ですが、カオステラーもいませんし、
想区への介入は必要最小限に留めないと。

●エクス
うん、レヴォルの言う通りだ。
十分に気を付けよう。

●ティム
ルイーサ、お前もそれでいいよな?

●ルイーサ
そうね、それで私の知りたいことを
教えてもらえるんだったら。

●カーリー
ありがとうございます。

詳しい話は、移動しながらでよいですか?
あまりここに長居すると、先ほどの者の仲間が
やって来るかもしれません。

●エクス
ああ、うん。
もちろん構わないよ。

●鬼姫
………。

●シェイン
どうかしましたか、鬼姫さん。

●鬼姫
言っておくが、私は完全にお前たちを
信用したわけではない。
怪しい素振りを見せれば即座に叩き斬るからな。

カーリーの決意 開幕

――草原

●カーリー
鬼姫様、こちらの方角で合っていますか?

●鬼姫
ああ、大丈夫だ。
順調にいけば、二日ほどで到着するだろう。

●アリシア
あ、あのっ、カーリーさん!
その…そろそろ今回の旅の目的を
教えて頂けませんか?

●エクス
うん、僕からもお願いしたいな。

●カーリー
はい、わかりました。
それではお話ししましょう。

あなたたちがご存じのように、私たち
フォルテム教団は、世界を支配する神である
「ザ・ムーン」からの解放を目指していました。

が、教団の先代聖主にして“災厄の魔女”モルガナが
「ザ・ムーン」の力を利用し、世界の支配を
目論んだため、私は仲間達と共に立ち向かいました。

その結果、モルガナを討ち果たすことに
成功したものの、仲間たちは彼女の手によって
散り散りになってしまったのです…。

●エレナ
…………。

●レヴォル
(「お月さま」ならぬ「ザ・ムーン」。
 モリガンならぬモルガナ。やはり、
 僕たちが知っているものとは別物なのか…)

●カーリー
モルガナの死により、聖主の座は空位となり、
今後を巡り、教団は穏健派と過激派に
分裂してしまいました。

過激派は時や場所、手段を選ばず、私たち穏健派に
襲撃を仕掛けてきて、少し前など、
私もあわや一命を落としかけました…。

●シェイン
…………。

●カーリー
このままでは争いは激しくなる一方だと考えた私は、
私自身が聖主になり、教団をひとつに
まとめ直さなければならないと考えたのです。

そして、そのための象徴として
“万象のコード”を欲し、鬼姫様と共に
旅に出たのです。

●アリシア
“万象のコード”、ですか…?

●カーリー
はい。フォルテム教団の古い伝説に語られる、
聖なる加護です。それを身に宿し、歌を唄うことで
大いなる力を行使できるようになるんだそうです。

●シェイン
(あの、パーンさん…)

●パーン
(ああ…。私たちの知るカーリーが
 辿った経緯とは、細部が微妙に違っているね…)

●シェイン
(“万象のコード”については、
 聞いたこともありませんし…)

●パーン
(…待てよ。フォルテムに関係する歌と言えば、
 フォルテム学院校歌はどうだろう?
 何か関係があるのでは?)

●シェイン
(えっ、だってあれはオスカーさんが
 作ったものだって聞いてますよ?
 “万象のコード”とは無関係なのでは?)

●パーン
(おっと、そうだったか。
 うーむ…)

●鬼姫
おい、そこの二人。
さっきから何をコソコソ話しているのだ?

●シェイン
いえ、何でもありません。

●鬼姫
…フン。

●アリシア
なーるほど、そういうことだったんですね!
となると、さっきの暗殺者集団は過激派でしょうか?

●カーリー
ええ、その通りです。

●過激派の男A
――見つけたぞ、カーリー!
今日という今日こそ、貴様の息の根を止めてやる!

●シェイン
おやおや。
言ってるそばから、お客さんのお出ましですよ。

●鬼姫
飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな。
返り討ちにしてやる!

●過激派の男B
ええい、黙れ黙れ!
我らを甘く見るなよ!

●レヴォル
みんな、迎え撃つぞ!

カーリーの決意 終幕

――草原

●アリシア
ふぅ、何とか片づいたわね!

●エクス
カーリー、鬼姫、大丈夫だった?

●カーリー
は、はい。
すみません、またしても助けて頂いて…。

●鬼姫
…さすがに、認めざるを得ないな。
お前たちの実力を。

●ティム
へえ、そうかい。
ちょっと遅すぎる気もするが、そりゃあ何よりだ。

●アリシア
こら、ティムくん!
そういうこと言わないの!

●ティム
へいへい。

●カーリー
さっきから感じていたんですけど…。
あなたたちは、むかし私と共に戦ってくれた、
仲間たちにそっくりなんです。

●パーン
えっ…?

●カーリー
あ、その、見た目のお話ではなく、
何と言いますか、雰囲気のお話なんですけど…。

ですから、昔のことをいろいろ思い出して、
楽しい気分になっています…。

●シェイン
…そう、ですか。

●カーリー
勿論、雰囲気が似ているだけで、
本人ではないことはわかっています。
それでも、嬉しくて…。

すみません…。
変なことを言ってしまって。

●シェイン
…いえ、お気になさらず。

●パーン
…………。

●鬼姫
あと少し歩いたところに、宿場町がある。
そこで宿を取り、準備を整えるとしよう。

●エレナ
うん、さんせい!

――宿屋の食堂(夜)

●エレナ
こぢんまりしてるけど、きれいな町だし、
この宿屋もきれいだね!

●カーリー
ええ、そうですね。
おまけに、こんな手広い食堂も併設されていますし。

●宿屋の女将
はい、おまちどお!
うちの特製の夕食、たんと召しあがれ!

●料理を並べる音
コトッ、コトッ、コトッ…。

●アリシア
わぁーっ、おいしそう!

●鬼姫
今日は比較的よいものを腹に入れられるな。
明日の旅に弾みが付けられそうだ。

●ルイーサ
…………。

●ティム
おいルイーサ、どこへ行くんだ?

●ルイーサ
あまり気分が良くないから、部屋で休んでくるわ。
心配しないで、後でひとりで食べるから。

●ティム
お、おい!
――あっ、カーリーさん…!

――宿屋の廊下

●カーリー
あの、待って下さい。詳しい事情は知りませんが、
そういうのはあなた自身のためにならないと
思います。

●ルイーサ
余計なお世話よ、放っておいてくれる?

●カーリー
そうやって頑なな態度を取れば取るほど、
仲間たちはどう接していいかわからなくなり、
ひいては自分の首を絞めることになるのですよ?

あなたがこの先、彼らと旅を続けるつもりなら、
あなたの方からも歩み寄った方が、
あなた自身の居心地もよくなるはずです。

●ルイーサ
…そ、そんなこと言われても…。
どう接していいのかわからないんだもの…。

●カーリー
難しいことはありません。ただ、あなたの方から
避けるのをやめればいいというだけです。

今回で言えば、ただそこに座って、
みなさまと一緒に食事をすればいいだけ。
どうです、簡単でしょう?

●ルイーサ
…………。

――宿屋の食堂

●ティム
あれ、ルイーサ。考え直したのか?

●ルイーサ
そうよ、急に気分の悪さが引いたの。
何か問題がある?

●ティム
いや…、別に。

●レヴォル
だな、何も問題ない。

●カーリー
それでは、食事にしましょう。

●アリシア
ええ、はい!

●ルイーサ
…フン。

――宿屋の食堂

●エレナ
うーん、おいひー!

●シェイン
ええ、いくらでもおかわりできちゃいそうです。

●カーリー
…………。

●パーン
どうした、カーリー。
急に顔をしかめたりして。

●カーリー
ああ、すみません。
別にみなさまがどうというのではなく、個人的に
あまり虫の好かない、とある女性を思い出しまして。

その女性は、食べることが大好きで、
本当に、それしか考えていないのではと
思うことが何度もあったものですから。

●シェイン
ええっ…!?

●エクス
そ、それってまさか…!?

●カーリー
ええと…?
もしかすると、私の仲間だった魔女シェリー様を
ご存じなのでしょうか?

●エクス
シェ、リー…?

●シェイン
…ああ、失礼しました。
すみません、わたしたちの勘違いのようです。

●エクス
そ、そうそう。
僕たちがむかし一緒に旅をした仲間にも食べ物に
目がないって子がいてさ、つい。

●カーリー
ああ、そういうことだったのですね。

●シェイン
(この想区だと、カーリーさんの仲間は、
 わたしたち以外の誰かに置き換えられている
 みたいですね…)

●エクス
(うん、らしいね)

●カーリー
シェリー様は、食いしん坊なだけでなく
方向音痴だったりと、いろいろポンコツで、
私とはあまり波長が合わなかったんですよね…。

――フィーマンの想区

●レイナ
ハ、ハ…、ハックション!!

●タオ
おう、でっかいクシャミだな。

●レイナ
あっ、タオ。
そうね、誰か私の噂でもしてるんじゃないのかしら。

●タオ
夜は冷えるぞ、もう中に入れよ。

●レイナ
ああ、うん。
もう少ししたらそうするわ…。

●タオ
どうしたんだよ、心ここにあらずって感じだな。
さてはあれか、エクスのことを考えてたってとこか?

●レイナ
ち、違うわよ!
今…、カーリーのことを思い出していたの。
それで、少ししんみりしちゃって…。

●タオ
おっと、そうだったか。
すまん、茶化しちまって。

●レイナ
あら、あなたにしては珍しく殊勝な態度ね。

●タオ
だってよぉ。結局、オレたちはみんな揃って、
あいつともロキとも、万象の想区で
別れたっきりになっちまったしな…。

あの二人がもうとっくの昔にこの世を
去っただなんて、なんか実感が湧かねーよ…。

●レイナ
…そうね。
ところでタオも、これ食べる?

●タオ
おっ、フォカッチオじゃねえか!
頂くぜ――はむっ。

…思い出すなあ。オレ、カーリーに
このパンをおごってやったことがあったっけ。

●レイナ
へえ、そうだったのね。

●タオ
…もしかすると、カーリーたちが生きてる想区も
あるのかねぇ。

●レイナ
…さあ、どうなのかしらね。
エクスたちが戻ってきたら聞いてみましょうか。

●タオ
ああ、そうだな。

強襲の峠道 開幕

――峠道

●エレナ
ふぅ、ふぅ…。

●レヴォル
大丈夫か、エレナ?

●エレナ
う、うん…。

●鬼姫
我らが目指すものは、この山頂にある。
まだ道半ばというところなのだ、
今からへばられては困るぞ。

●アリシア
うへぇ…。
じゃあ、まだ半分もあるんですね。

●カーリー
お待ち下さい、鬼姫様。
みなさまお疲れのようですし、
いったんここで休憩してはどうでしょうか?

●シェイン
ええ、わたしも賛成です。
こういうところでは、一番体力のない人に
合わせて進むのが原則ですので。

●鬼姫
…やれやれ、仕方あるまいな。
では、少し休憩を――

――霧の中

●エレナ
あれ、あれあれ?
急に霧が出てきたよ??

●ルイーサ
な、なに、なんなの!?

●アリシア
ルイーサ、落ち着いて。
大丈夫よ、私たちが付いてるから。

●ルイーサ
…………。

●レヴォル
“沈黙の霧”…では、なさそうだが。
それにしても、なんの前触れもなく、
急にこんな濃い霧が出るなんて…。

●パーン
みんな、迂闊に動くな。
ひとかたまりになって、霧が晴れるのを待とう。

●シェイン
ええ、わかりました。
カーリーさん、鬼姫さん、それでいいですね?

●霧が流れる音
ショオオオオ…。

●エクス
カーリー、鬼姫!

●霧が流れる音
ショオオオオ…。

●ティム
なあ、そこにいるあんた。
これ、あんたの仕業だろ?

●謎の男(ロキ)
…おっと。
このまま皆殺しにしようと思っていたのですが。
さすがにそう簡単にはいかないようですね。

――峠道

●エクス
ああっ!?

●シェイン
ロ、ロキさん!?
あなたなのですか!?

●ロキ
…なるほど。さすがに過激派の連中には
私の顔は完全に割れているようですね。
まあ、仕方のないことではありますが。

●ルイーサ
ふうん。魔法を使って霧を発生させ、
私たちとあの二人を分断したのね。

●ロキ
ええ、そうです。カーリー様に
血なまぐさい場面を見せるのは、
はばかられますので。

カーリー様と鬼姫様をたぶらかし、まんまと
仲間として同行するとは。
本当に、狡猾極まりない。

●パーン
ま、待ってくれ。
どうも何か誤解があるようだが、私たちは――

●ロキ
この期に及んでなお、詭弁を弄する気ですか?
あいにくですが、この私は騙されませんよ!

“万象のコード”を手に入れるつもりで
カーリー様を泳がせているのでしょうが、
この私の目が黒いうちは、そんな真似はさせません!

●レヴォル
で、ですから、あなたは誤解しています!
どうかその槍を引いて下さい!

●アリシア
そ、そうですよ!
あなたがあのロキさんってことでしたら、
私、お伺いしたいことが山ほどありますし!

●ロキ
そんなに対話を求めるというのなら、
私を打ち負かしてからにして頂きましょう!
もっとも、そんなことは不可能ですが!

●シェイン
そうですかね、わたしはそうは思いませんけど。
論より証拠です、あなた自身の目で
しっかりわたしたちの実力を見届けて下さい!

強襲の峠道 終幕

――峠道

●ロキ
ぐぉぉぉっ…!?

●エクス
勝負あり、だね。

●シェイン
さて、これでいい加減、
わたしたちの実力を認めて頂けましたかね?

●ロキ
ぬ、ぬううう…!
ま、まだだ…、まだ私は戦えるッ…!

ここで、私が倒れてしまえば…。
誰が…、カーリー様をお守りするというのだッ!
この命に替えてでも、貴様らを討ち滅ぼさねばッ…!

●アリシア
ですから、ロキさん!
重大な誤解があるんですってば!
お願いですから、私たちの話を聞いて下さい!

●カーリー
その通りですよ、ロキ。
どうかこれ以上、この方々に迷惑を及ぼすのは
やめて下さい。

●ロキ
カ、カーリー様…、騙されてはなりません!
彼らはカーリー様が“万象のコード”を手にして
油断したところを襲うつもりでいるのです!

●カーリー
いいえ。この方々は、あなたの言うような
人たちではありません。

●鬼姫
その通りだ。それに、問答無用でカーリーの命を
奪おうとするのが、過激派のやり口だぞ。

●ロキ
…………。
言われてみると、確かに…。

●ティム
じゃあ、俺たちへの疑いは解いてもらえるってことで
いいんスかね?

●ロキ
…ゴホン。
まあ、その…今回は、不幸な誤解による、
痛ましい出来事でしたね。

●ルイーサ
私に言わせれば、間抜けな誤解による、
傍迷惑な出来事でしかなかったけれど。

●鬼姫
ロキよ。お前は確かに頭が切れるが、
たまに切れ過ぎて空回りしていることがある。

ましてや今回は、カーリーにも彼らにも
迷惑を及ぼしてしまったのだぞ。
反省するがいい。

●ロキ
…ふぅ。わかりました、
今後は改めさせてもらいますよ。

●カーリー
みなさま。この者はロキと言い、私の従者です。
仲間の不始末は私の不始末です、
みなさまに深くお詫び致します。

●ロキ
…私からも、非礼をお詫び致します。
お許し下さい。

●エレナ
だいじょぶだよ!ちゃんと謝ってもらえたし、
もう気にしないでいいからさ!

●アリシア
ええ、その通りですよ!
ロキさんにお手合わせ頂けただなんて、私、
もう感激で胸がいっぱいですっ!

●ロキ
そういえば…できるだけ表舞台には立たず、
存在を隠していたつもりなのですが。
いつ、どこで、私のことを知ったのです?

●アリシア
あ、ええと、それは…。

●カーリー
この方々は、フォルテムの集会に参加された
ことがあるそうです。あなたのことも、
そこで見知ったのでしょう。

●エクス
ええ、はい。まさしくそんな感じです!

●ロキ
ふむ…。

●カーリー
それより、ロキ。
今までいったいどこに行っていたのです?
私、心配したのですよ。

●ロキ
ああ、いえ。
ちょっとした交渉事をこなしていただけですので、
どうかお気になさらず。

●カーリー
「ちょっとした交渉事」?
何のことですか?

●ロキ
フォルテムの教えに帰依する者たちをつつがなく
お導き頂くため、各方面と話をしたというだけの
ことです。

●カーリー
…………そう、でしたか。
であれば、別にいいのですが。

●ロキ
恐れ入ります。
さて…それよりも、例の神殿まではあと僅かです。
参りましょう、カーリー様。

●カーリー
はい、わかりました。
ではみなさま、出発しましょう。

●アリシア
はい、了解ですっ!

●シェイン
(…あの、パーンさん。ロキさんが言う
 「ちょっとした交渉事」って…)

●パーン
(ああ…まず間違いなく、過激派の粛清だろうな。
 カーリーには一切語らず、ひたすら
 汚れ仕事をこなしていたのだろう)

●シェイン
(やはり…)

●ロキ
…………。

翼を広げて 開幕

――万象の神殿・正面入口

●カーリー
やっと、辿り着きました。
ここが…。

●ロキ
はい。“万象のコード”が眠るとされる、
「万象の神殿」です。

●鬼姫
“万象のコード”を身に宿すことで、
カーリーは名実ともに、フォルテム教団の
次代聖主となるわけだな。

●カーリー
はい。
“万象のコード”の入手は、私にとって
不可避の試練だと考えています。

●シェイン
うーん、そういうものなんでしょうか。
“万象のコード”がどういうものなのか、
想像できませんけど。

過激派の意気を挫き、
教団をひとつにまとめ直せるのなら…。

●エクス
うん、そうだね。
僕たちはその入手を後押しさせてもらうまでだよ。

●カーリー
ありがとうございます、みなさま。

●エレナ
ねえねえ!
いつまでも立ち話してないでさ、
中に入ってみようよ!

●アリシア
うんうん!
私、“万象のコード”を早く見たいです!

●ロキ
それではカーリー様、参りましょう。

●カーリー
はい…。

――万象の神殿・祭壇前

●パーン
ここが、最奥部か。
あそこに見えるのは…祭壇だな。

●カーリー
…感じます。
人智を越えた存在の意志を。

●レヴォル
えっ、そうですか?
僕は何も感じませんが…。

●ルイーサ
王子さん、しっ!
こういう時は空気を読んで、口を閉じてなさいよ。

●レヴォル
あ…、ごめん。

●カーリー
お聞き下さい、“万象のコード”よ。
私は、あなたのお力を身に宿すことを願って
罷り越しました、カーリーと申します。

得た力は私利私欲のためではなく、人々の自由と
平和を守るためにのみ行使すると誓約いたします。
どうか、私にお力をお授け下さい…!

●威厳ある声
我は“万象のコード”の守護者である。
“万象のコード”を欲す者、カーリーよ。
汝の意思はわかった。

が、心に惑いややましさがある者は、
“万象のコード”を身に宿すことは決して叶わぬ。

●カーリー
恐れながら…私には惑いややましさなど、
まったくありません!
どうか、お力を――

●威厳ある声
“万象のコード”を欲す者、カーリーよ。
我の目はごまかせぬぞ。
汝の心には、いくつもの罪の意識が巣くっている。

汝は世界の解放を目指し、結果として
他人に犠牲を強いてきた。

●カーリー
そ…、それは…。

●シェイン
(あ…)

●エクス
(そうか…この想区のカーリーも、僕たちが知る
 カーリー同様、混沌を振りまいてきたんだね)

●カーリー
…………。

●エレナ
…………。

●カーリー
…はい、すべて認めます。
私には“万象のコード”を身に宿す資格が
ないのかもしれません。

ですが、私がそれをあきらめてしまえば、
これから先、より多くの犠牲が出ることでしょう。

私は、私の犯した過ちから逃げません。
今後、それと真摯に向き合い、罪を贖い続けます。

ですから!
どうか、“万象のコード”を私にお授け下さい!
お願い、いたします…!

●威厳ある声
…ふむ、わかった。
ならば、汝に試練を与えよう。

●空間が歪む音
ヴゥン…!

●風車の巨人
ウォォォォォォ…!!

●フェアリー・ゴッドマザー
叶えましょう、叶えましょう。
醜いものは美しく、清いものはおぞましく、
退屈な秩序は、刺激的な混沌に…!

●シルバー
ヒャハハハハ!
ぶった斬ってやるぜェ!

●一行
あああっ!?

●カーリー
あ、あなたたちは…!

●威厳ある声
彼らは、汝の罪の象徴である。
彼らを打破し、罪を乗り越えて歩いて行くという
汝自身の意思を体現してみせよ!

●カーリー
はい、望むところです!
存分に見届けて下さい!

翼を広げて 終幕

――万象の神殿・祭壇前

●カーリー
はぁ、はぁ、はぁ…。
いかがでしょう。これで、口先だけではないことは
証明できたのではないでしょうか。

●一行
っ…!

●威厳ある声
…………。
“万象のコード”を欲す者、カーリーよ。
汝の意思を見届けた。

汝を認め、“万象のコード”をその身に授けよう…。

●光が満ちる音
パァァァッ…!

●カーリー
わ…わあああっ!
す、すごい…、体が、熱いです…!

♪…

●ロキ
カ、カーリー様…!

●鬼姫
おお…、なんと美しい歌だろう!

●アリシア
ティ、ティムくん、パーン先生!
これって…!

●ティム
あ、ああ…!
歌詞こそ付いていないが、こいつぁ紛れもなく…!

●パーン
フォルテム学院の、校歌だ…!

●カーリー
…ふうっ。
いかがでしたか?

●威厳ある声
…今、確信した。汝であれば“万象のコード”を
世のため人のために使ってくれることであろうと。

輝かしき若人たちよ、もうここには用はないはずだ。
立ち去るがいい。

●カーリー
はい…。
本当にありがとうございました!

――万象の神殿・正面入口

●アリシア
あの…カーリーさん。
これからはどうなさるおつもりなんですか?

●カーリー
教団本部に戻ります…と言いたいところですが、
そういうことをご質問されてるわけでは
ありませんよね。

私の次の使命は、フォルテム教団を生まれ変わらせる
ことです。そう…教団という組織ではなく、
完全に別の形態に。

●鬼姫
何っ?

●ロキ
と、おっしゃいますと…?

●カーリー
教団とは、ひとつの教えを拠り所にした
結びつきです。今の形態のままひとつに
束ね直しても、いずれ対立が生まれるでしょう。

そして、今の私は知っています。
価値観、出自…そういったものが異なる者がお互いを
信頼した時、どれほどの力を生み出せるかを。

だから、フォルテムは生まれ変わらなければ
ならないのです。様々な鳥たちが集い、
学びあう場所として。

●アリシア
あ、ああああっ…!
そ、それって、もしかして…!

●カーリー
そう、ですね…。自由を求める者たちの殿堂、
フォルテム学院…というのはなかなか
良いかもしれない、と思っております。

●ティム
お、おおおっ…!?
マ、マジっすか…!

●カーリー
はい。この先、散り散りになった仲間たちが
戻ってきた時、私がこの世にいない事態があったと
しても力になれる環境を作っておきたいのです。

●シェイン
(…なんとなんと。かつてわたしが
 カーリーさんから直接聞いた言葉と、
 寸分違わぬ内容ではありませんか…)

●エクス
(カーリー…)

――草原

●シェイン
どうか、良き学び舎を作って下さい。
陰ながら応援させていただきますので。

●カーリー
ありがとうございます、みなさま。
名残は尽きませんが…。
いつか、またどこかでお目にかかれたらいいですね。

それでは、失礼いたします。

●鬼姫
さらばだ。

●ロキ
ご機嫌よう、みなさま。

●エレナ
…行っちゃったね。

●アリシア
うん…。

●シェイン
さようなら、カーリーさん…。

●エクス
ありがとう、カーリー…。

●ルイーサ
我ら、自由を信じる鳥なり。
さだめの檻を破り、霧の彼方へ飛び立たん――

●ルイーサ&ティム
うちなる心に輝く太陽を道標に、
空白の大地に我らの軌跡を描きゆく。

●一行
自由の殿堂、ここに在り。
フォルテムよ、鳥たちを導きたまえ…。

●エレナ
…ふふふっ。とってもステキな校歌だよね。

●ルイーサ
ええ、そうね。私もそう思うわ。

●レヴォル
…それじゃ、僕たちもそろそろ出発しようか。

●シェイン
ええ、そうですね。
翼を広げて羽ばたく鳥のように。

“沈黙の霧”の彼方へ――

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