『シアトリズム ファイナルバーライン』でなぜタッチ操作がなくなったのか聞きに行ったら…その理由が深すぎた
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- スズタク
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スクウェア・エニックスから2月16日に発売予定のNintendo Switch/PlayStation 4用シアターリズムアクション『シアトリズム ファイナルバーライン(シアトリズム FBL)』。そのインタビュー前編をお届けします。
本作は、3DS用『シアトリズム ファイナルファンタジー(シアトリズム FF)』から続く、『シアトリズム』シリーズ最新作。『FF』シリーズの歴代楽曲を使った、爽快なリズムアクションが楽しめます。
インタビューのお相手は、スクウェア・エニックスの間一朗プロデューサーとインディーズゼロの鈴井匡伸ディレクター。体験版が配信されて期待が高まる本作のインタビューを、2回に分けて掲載していきます!
もう一度コンシューマで『シアトリズム』を届けたい
――3DS版やアーケード版をへて再び家庭用に戻ってきた『シアトリズム』新作ですが、開発はいつ頃から進めていたのでしょうか?
鈴井匡伸氏(以下、敬称略):『KH メロディ オブ メモリー』のEpic Games Store版の開発終了前後からプロジェクトがスタートしまして、具体的には2021年の春ごろになります。
間一朗氏(以下、敬称略):我々が言うのもなんですが、今どき2年ほどで開発して発売できるって珍しいですよね。弊社スクウェア・エニックスの基準で考えると、特に。
鈴井:僕らインディーズゼロの基準で考えると、これくらいが平均ラインかもしれません。とはいえ、今回についてはいろいろと下準備があったからこそできたという部分もありますが。
――2022年9月の発表から、半年足らずで発売されるのも驚きでした。
鈴井:このあたりはプロモーションの都合も関係しています。リズムゲームという性質上、ストーリーや登場人物でユーザーの関心を引っ張るのは難しいので。情報もタイトル発表と体験版前後でギュッと凝縮して出すようにしています。
配信中の体験版は、発売数カ月前とかではなく約2週間前に出すことで、製品版発売まで間延びさせない狙いがあります。今回の体験版はデータ引き継ぎ可能でボリュームもたっぷりなので、実質もう発売されているような感覚で遊んでいただければと!
――もともと携帯機用だった『シアトリズム』を据え置き機向けに作るうえで、心掛けたことやこだわった部分はどこでしょうか?
鈴井:もっとも心掛けたのは、「もう一度コンシューマで『シアトリズム』が遊びたい」というユーザーの声に応えることです。2014年4月に出した『シアトリズム FF カーテンコール』から8年以上経っていますが、いまだにユーザー間では対戦会が開かれていて愛されているのを感じていました。
『FF』シリーズとしてもこの8年で作品が増えていますので、新しい楽曲を含めてもう一度コンシューマで『シアトリズム』を遊んでもらいたいという点をコンセプトに掲げました。
これまでのシリーズの展開状況や開発ノウハウなども踏まえ、メインのターゲット層は『シアトリズム FF カーテンコール』を遊んだお客さんを想定しています。コンシューマで新たに制作するとなると、『シアトリズム FF カーテンコール』のときのバランスや遊びごたえが一番マッチしていると思いましたので。
そのうえで、リズムアクションが得意でない方や、アーケード版を遊んでくれたシアトリズマーの方々も満足できるようなゲーム内容を考えていったという流れです。
個人的には、コンシューマの『シアトリズム』を作れるのは今が最大かつ最後のチャンスだろうと思っていました。『KH メロディ オブ メモリー』とアーケード版『シアトリズム』の開発経験があるスタッフが多くいましたし、Unity(本作のゲームエンジン)を使ったリズムアクションの開発ベースがすでに出来上がっていたというのも大きいですね。
正直なところ、これだけ膨大な楽曲をノウハウなしにゼロから取り組むとなるとかなり難しかったと思います。ですが、開発メンバーも技術もすでに下地ができていたので、このタイミングであればスピード感を持ってコンシューマーの新作を作れると思いました。
間:家庭用でもう一度やりたいという気持ちは、僕もありました。アーケード版でもリズムアクションとしてのおもしろさの本質は変わらなかったのですが、どうしてもRPG要素がゲームデザイン的にハマらず……。
『シアトリズム』といえばリズムアクションとRPGの融合がキモなので、もし次に新作をやる機会があるなら、そこをしっかり体験できるものにしたかったんです。
リズムゲームは苦手だけど『FF』の曲は好き、みたいなお客様でもクリアできるように、キャラクターのレベルを上げればゲームオーバーになりにくくなるといった体験をもう一度お届けしたかった。
鈴井:「アビリティを付け替えたい」「戦略的に遊びたい」というのを、間さんはよく言ってましたよね。アーケード版では4人で共闘しているような体験は得られましたが、アビリティをあれこれカスタマイズして敵を倒すといったRPG部分は実現できませんでした。新作をやるなら、このあたりはしっかり深堀りしようと決めていました。
間:なので、今回の『シアトリズム FBL』はアーケード版の移植みたいな雰囲気はないと思います。
鈴井:そうですね。イメージとしては、アーケード版で得た知見をもとに『シアトリズム FF カーテンコール』を現代風にブラッシュアップしたらどうなるか、というのを突き詰めた感じです。
タッチ操作がなくなった理由が想像以上に深かった!
――『シアトリズム』といえば、3DS版でタッチペンによるタッチ操作に慣れ親しんだ方が多いと思いますが、今回はコンシューマ向けに操作方法はボタンで一新されているのですね。
鈴井:我々がこれまで手掛けたリズムアクション作品を簡単に振り返りますと、まず初代3DS『シアトリズム FF』はタッチ操作のみでした。iOS版では指によるタッチ操作で、3DSの『シアトリズム FF カーテンコール』と『シアトリズム ドラゴンクエスト』はタッチ操作とボタン操作の両方がありました。
その後に出たアーケード版ではボタン操作のみ、『KH メロディ オブ メモリー』でもボタン操作でリズムアクションを楽しんでもらいました。
これらの過去作を踏まえたうえで、集大成と銘打てる本作でどのような操作感にするかはスタッフ間で何度も議論を重ねました。『シアトリズム FF カーテンコール』を遊んだ方ならタッチ操作に愛着を持っているだろうというのも重々承知で、プロジェクト立ち上げ時にはタッチ操作モードの検討もありました。
ですが、『シアトリズム FF カーテンコール』以後に生まれたトリガーの同時押しや譜面配置の楽しさやバリエーションを生かすなら、ボタン操作に特化したほうがいいだろうと考えました。
ちなみに、3DSのタッチパネルは感圧式ですが、Switchは静電容量式のタッチパネルという違いもあり、『シアトリズム FF カーテンコール』のときのような素早く正確な操作感が出しにくいというのも判断材料のひとつでした。
間:感圧式と静電容量式って何がどう違うんですっけ?
鈴井:あなたがそれ聞くんですか?(笑) ざっくり説明すると、スマホの画面も静電容量式のタッチパネルで、これってちょっと触れるような操作でも画面が反応するんですよ。指で大まかな操作をするのに向いているタッチパネルですね。
対して感圧式は少し硬い感触といいますか、しっかり画面を押すことで反応するタッチパネルです。こちらのほうが、操作を正確に判定するのに適しています。静電容量式のタッチパネルだと、例えばタッチトリガーとスライドトリガーの判定を識別するのが難しくなったりするんですよ。
間:ああ、なるほど。3DSの頃とはタッチパネルの作り自体が違うわけですね。
というわけで、実際に遊んだ際の感覚も含めて、最終的にボタン操作に統一することにしたんです。
鈴井:細かい点では、SwitchだとTVモードではボタン操作が必要なことや、携帯モードでタッチパネルを指で操作する際の認識精度、操作中に画面が指で隠れてしまう点など、課題がたくさんあったのも事実です。
そのうえで最終的な問題として、ボタン操作とタッチ操作のどちらで遊んでも楽しめる譜面を用意することが難しかったんです。3DSの時代よりも特殊なボタン操作が増えた分、その譜面をそのままタッチ操作に流用することは難しいわけで。
なら、1曲についてボタン操作とタッチ操作と異なる譜面を用意しようという案も出たのですが、そもそも1曲について難易度別に異なる譜面が複数種類必要なわけでして……。かつ、収録曲数は500曲以上。
となると、バランス調整を含めて現実的ではなく、最終的にボタン操作のみで1曲1曲をしっかり作り上げる方向に舵を切りました。
――そんなに深い理由があったとは……! 3DS時代からのファンとして残念な気持ちもありましたが、納得がいきました!
“終止線”が意味するとおり本作がシリーズ最終作であり、集大成となる心意気で制作!
――タイトルに“ファイナル”とあるのも気になったポイントですが、本作がシリーズ最後の作品になるのでしょうか……? また、“ファイナルバーライン”というタイトルに込めた思いや意味についても教えてください。
鈴井:まず“ファイナル”に関してですが、お察しのとおり本作が『シアトリズム』シリーズ最終作になります。
間:これはもう明言しちゃいます。『シアトリズム FBL』が、シリーズ最後の作品です。
鈴井:開発当初からそのつもりで進め、後悔がないようすべてを詰め込みました。これで最後じゃなかったら、僕のほうが詐欺にあった気分になっちゃいます(苦笑)。
――そんな!(笑) とはいえ、ファン視点ではシリーズはもっと続いてほしいですし、ファンの声が強ければシリーズは継続されると信じていますが。
間:そうですね。シリーズが続いてきたのはユーザーの皆さんの声があってのことです。そういう意味ではシリーズ最後の作品になるかどうかは、ユーザーの皆さんのお声次第かもしれません。
まあ、意気込みだけでいえば毎回最後のつもりで作りこんでいます。それこそ『シアトリズム FF カーテンコール』も、これで終わりという気持ちで作ってましたから。
あと、タイトルの“ファイナルバーライン”は造語ではなくて、音楽用語の“終止線”を英語で表したものになります。終止線とは、譜面の最後に書かれる曲の終わりを示した2本線のことで、これは野村(哲也)が名付けました。
鈴井:開発立ち上げで野村さんと話したとき、真っ先にそこをツッコまれましたね。「『シアトリズム FF カーテンコール』で終わりのつもりだったんだけど、新作ってどういうこと?」と(笑)。それからあれこれ話し合い、今回が本当に最後であることを伝えるために“終止線”というワードが出てきました。
野村さんに名付けてもらったのはわりと開発序盤だったので、我々のなかでも「今回が最終作だ」という気持ちを常に持ちながら全力で取り組めました。余談ですが、タイトルロゴにも終止線が入っているので、ぜひ見てみてください。
――タイトルから“ファイナルファンタジー”という言葉が消えているのも少し気になりましたが?
鈴井:『シアトリズム ファイナルファンタジー ファイナルバーライン』だとタイトル表記が長くなってしまいます。そして“ファイナル”が2回続いてしまうという懸念点もありました。
野村さんから「“ファイナルファンタジー”は外しても大丈夫では?」と言っていただけて、響きもスッキリして伝わりやすい現在の名称にまとまりました。
間:軸になっているのはもちろん『FF』の曲なんですけど、今回はDLCなどでほかの作品からも多く曲をお借りしています。『FF』という部分を前面に出すより、『シアトリズム』の新作であることを強調するほうが正しいかなと思っています。
鈴井:以前から間さんと「『シアトリズム』自体が大きなIPになるといいね」という話をしていました。これまでに出した作品と応援してくれたユーザーさんのおかげで『シアトリズム』の認知度も高まり、今回のようなタイトルも実現できたのだと感じています。
――すでにさまざまな追加コンテンツが発表されていますが、これらはゲーム発売後も追加されていくのでしょうか? パックの追加発表などもありえたり……?
鈴井:追加コンテンツの計画は発表しているものがすべてです。まだ未公開のパックの内容は追って公開されますので、楽しみにお待ちください!
ただ、『シアトリズム FF カーテンコール』では、お客様の熱量に押されて当初予定にないDLC展開もお届けすることができました。そういう意味では、『シアトリズム FBL』で同じようなことが起きる可能性はゼロではありませんが、少なくとも現時点では考えておりません。
――配信中の体験版の見どころやアピールポイントを教えてください。
鈴井:とにかく製品版に引き継げることです。これは間さんが絶対重視したポイントでした。
間:今のご時世、しっかり遊べてデータを引き継げるのが一番うれしい体験版かなと考えています。体験版とはいえ30曲収録されていて遊びごたえたっぷりなので、実質この2月1日からもうゲームが発売しているようなものです。
鈴井:体験版でキャラクターのレベルを上げられるのは30までと制限がありますが、使えるキャラクター数は30体います。スコアも引き継ぎできますし、細かいコンフィグ機能も利用できますので、ぜひ体験版を遊んでそのまま製品版に乗り込んでいただければと!
※インタビュー後編は近日公開予定です。
スズタク:RPGとアクションをこよなく愛するライター。近年、シミュレーションRPGのおもしろさに気づき始める。
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