『ストリートファイター』シリーズ35周年記念ライブレポート。バックグラウンドから表舞台に飛び出した楽曲の力強さよ
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1月29日に行われた『ストリートファイター』シリーズ35周年を記念したライブ“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY LIVE”のレポートをお届けします。
■“STREET FIGHTER 35th Anniversary Live”PV
始まりから感じた主役になったBGMのパワー
『ストリートファイター II』のオープニングからスタート。アーケード版かスーパーファミコン版かを問わず幾度となく聞いた曲だけに「始まりは、やっぱりこれ!」という説得力がたまりません。
続けて『ストII』のリュウステージとケンステージのテーマを連続で披露。このあたりで生演奏であることを抜きにしても、ふだん聞いているもしくはこれまで聞いてきたテーマ曲とはまるで違うものが聞けるという実感が強くなってきました。
BGM(バックグラウンドミュージック)と呼ばれるように、ゲーム内の楽曲は通常、背景に徹するのが役割です。
さらにRPGなどの場合はイベントなどで音が主役になるシーンが生まれるものの、対戦格闘では「波動拳!」などのキャラクターが発するボイスがプレイヤーが得る重要な情報。そういったボイスをかき消さないために、あえてわき役に留まっていると考えます。
ですが、このライブでは間違いなくBGMたちが主役! 120%の力で観客の耳に届けられます。主役となった楽曲は、生演奏ということもあり圧が違う、パワーが違う。このライブはどの曲もより一層好きになれるものになるだろうという印象を強く抱きました。
オープニングの演奏が終わると、本ライブのMCを務めたニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんとカプコンの浦沢賀奈さんにより、この日のために結成された“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”が紹介。
“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”は幡宮航太さんや鈴木栄奈さんといったメンバーにより、この日のためだけに結成されたバンド。赤いハチマキを身に着けていたり、顔に隈取風のペイントを施していたりと気合の入ったコーディネートも見られました。
この特別バンドの紹介を挟んで、『ストリートファイター V』から中国ステージBGM、ラシードのテーマ、“Ring of Destiny -Ring Stage-”の3曲が演奏。
“Theme of Rashid”では、おなじみの「ラーシードー」という歌詞(?)も入り、『ストII』から一足飛びに現行最新タイトルの楽曲を満喫できました。
“Ring of Destiny -Ring Stage-”までの演奏が終わると、“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”からカプコン社員によるオフィシャルバンド“カプチューン”に交代。
“カプチューン”のメンバーはカプコンタイトルのサウンド開発を本業とする面々。『ロックマンX』シリーズの楽曲を数多く手がけた岡田信弥氏や『ストV』シーズン5のサウンドディレクター・辻野泰之氏など、そうそうたるメンバーで構成されています。
ちなみに、カプチューンは海外では“CAP-JAMS”という名称で呼ばれており、MCの浦沢さんいわく「豪鬼が海外ではAKUMAと呼ばれるようなもの」だそうです。……わかるようなわからないような。
そんなカプコンサウンド界の豪鬼でありAKUMAでもあるメンバーの演奏は、ダッドリーステージ、ヒューゴーステージ、そしてステージリザルトを1曲にまとめた“ストリートファイターIIIステージメドレー”からスタート。
元々両キャラクターのステージBGMは、ダッドリーの紳士的な雰囲気のなかにある力強さや、ヒューゴーの荒々しさが表現されているものですが、生演奏となるとそのパワーは段違い! ダッドリーとヒューゴーのテーマは海外で人気が高いとのことでしたが、本ライブでその理由を改めて実感できました。
そして、ステージリザルトから続けて演奏されたのは『ストリートファイターIII 3rd Strike』のQのテーマ。
対戦を主軸に見るとQは単純に『3rd Strike』で追加された新キャラクターですが、設定面ではすべてが謎に包まれ、そもそも人かロボットかさえわからない。COM戦では条件を満たさないと登場せず、CIAやギルたちも正体をつかめていません。
演奏はそんな不気味さが際立って表現されている印象で、改めて謎めいた存在としてのQに思いをはせることとなりました。
『ストII』『ストV』『ストIII』ときたらもちろん…ということで、続けて奏でられたのは『ストリートファイターIV』からクリムゾン・ヴァイパー、ユン、キャミィのテーマ。
クリムゾン・ヴァイパーのテーマを聞いて“サンダーナックル”を中断するシーンが脳裏に浮かび、ユンのテーマを聞いて画面端で“幻影陣”を発動された記憶がよみがえる。ゲームのテーマ曲を聞いてプレイシーンを思い出すのは普通のことですが“幻影陣”を発動したか発動されたかどちらの記憶がより強いかは、聞き手しだい。プレイヤーによって同じ曲から思い起こされるシーンに違いがあるのは、対戦格闘ならではの体験でしょう。
そんな2曲に続いて『ストIV』のキャミィのテーマから『スーパーストリートファイターII』のキャミィを思い返すなどしていると、続く楽曲は一気に最新作品へ。『ストリートファイターVI』からジェイミーのテーマとルークのテーマが間に『ストV』のダンのテーマを交えつつ奏でられました。
『ストVI』からの2曲は、まだ聞く機会自体の少ない貴重なもの。また、今回のライブはカプチューンをはじめとした面々のトークも交えて行われ、そのトーク内容によるとルークのテーマは実は『ストVI』のものが先に完成しており、それをアレンジしたのが『ストV』のルークのテーマだそうです。
また、ルークのテーマは『ストV』では荒々しいフレーズを盛り込んでいますが、『ストVI』では少し落ち着いた雰囲気に仕上げているとのこと。これは両作品でのルークの立場やスタンスの変化が曲にも盛り込まれているものになります。
さらに、『ストVI』の“バトルハブ”は、ロビーに一定数の人がいるときだけ曲が盛り上がるなどBGMに仕掛けがあるとのお話も。本ライブは『ストリートファイター』シリーズを振り返る意味合いの強いものと感じましたが、楽曲とトークの両方で『ストVI』に触れられると6月2日の発売への期待が高まります!
そんななかに混じったダンのテーマがまた印象的。ダンと言えば、実戦的な面はともかく物語上は弱く、ちょっと情けないキャラクターですよね。ですが、迫力ある生演奏は、この音楽をバックにすればサガットへの敵討ちも余裕で果たし、我道拳も超余裕で遠くまで飛んでいくのでは? という謎の説得力のようなものを感じました。
下村陽子さんのトークには意外な裏話も
と、最新の3曲が流れたと思ったら、『ストII』でおなじみの乱入時のジングルとともにリーサルウェポンズが参戦。ちょっとしたコントのようなやり取りを挟みつつ『昇竜拳が出ない feat.カプチューン』の演奏へ。「昇竜拳が出ない!」「ソニックブームが怖い!」「バイソンはリーチが長い!」……『ストII』あるあるが詰まった歌詞はほんのり笑みがこぼれると同時に、このライブが決してお高く止まったものではないゲームセンターや家のテレビの前で楽しんだユーザー目線のライブだという実感を強めてくれました。
そんなリーサルウェポンズの楽曲で“Yoko Shimomura”とうたわれている、下村陽子さんが本ライブのスペシャルトークゲスト。
下村さんが作った楽曲が数多く奏でられた本ライブですが、『ストII』当時のBGM開発環境で聞けたのは生音とは程遠いものだったそう。そんな楽曲の数々をバンドによる生演奏で聞けたことで、「私意外とカッコいい曲書いてたんだ」と感想を口にされていました。
さらに、MCの浦沢さんやカプチューンのみなさんから下村さんに質問が投げかけられるシーンも。
「楽曲制作当時に出されたオーダーなどの思い出は?」という質問には「試しに制作したものを提出したらOKが出るような感じで、結構自由に書かせてもらった」とのこと。
また、ダルシムステージの象の鳴き声や春麗ステージの自転車のベルといったバックで流れるSEも下村さんの提案だったそうですが、当時の下村さんに海外渡航経験はなし。雑誌などから得た情報をもとに鳴らす音を決めたそうです。
ただ、SE制作は必ずしも常に順調だったわけではなかったようで「打撃などのヒット音の作成にどれだけかかりましたか?」という質問には「作ったものが一度全部ボツになった」と回答。
当然絶望はしたものの、それと同時に“この野郎”という気持ちでいっぱいになった下村さんは、通常はさまざまな音を1枚のROMに入れてチェックしてもらうところをROM1枚丸ごと多彩なパンチとキックのSEだけを詰め込んでチェックしてもらったそうです。
そのほか、“竹の子族”御用達のお店で1人4000円の予算で“Alph-Lyla”の舞台衣装を用意した、ネットがなかった時代なので自分の作った楽曲やワールドワイドで聞かれている実感がなかった、仕事をしていたらビルがセキュリティ上閉まる時間になっていたので、仕方ないから朝まで仕事をしたこともあるなど貴重なお話を聞くこともできました。
この下村さんを中心としたトークを挟んで、演奏は再び“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”にバトンタッチ。
『ストII』からガイル、春麗、エドモンド・本田のステージBGMのメドレーが演奏されました。ここからメドレーでの演奏を含めて7曲分の『ストII』のBGMが連続で生演奏されたのですが、この7曲はあえて主旋律を奏でる楽器を変えていた印象です。
ガイルステージはサキソフォン、春麗ステージとエドモンド・本田ステージではフルートで主旋律が奏でられておりいずれも新鮮。
聞きなれた……言葉を選ばなければ聞き飽きたと言っていいほど何度も聞いた楽曲に、まだこんな顔が隠れていたのか! と嬉しさ、感動、驚きがないまぜになった不思議な感覚を抱きました。
ラストを飾る歴代ボスたち。そして……
続くボーナスステージのBGMの主旋律はトランペット。さらに、バイソンステージはキーボード、バルログステージはエレキギター、サガットステージはトランペットで主旋律が奏でられ、いずれもやはり旧知のBGMたちの知らない顔ばかりです。
個人的にとくに魅力的に聞こえたのがエレキギターで奏でられるバルログステージのテーマ。原曲が持つスペインやフラメンコ、パソドブレなどの華やかなイメージはそのままにエレキギターの持つ荒々しさが加わったことで、より戦うキャラクターとしてのバルログが際立っているかのように感じました。
どの曲を聞いても生演奏に圧倒され、そのために次の曲は? 次の曲は? と待ち遠しさが連続していた本ライブ。ですが、対戦格闘にせよライブにせよどこかでタイムアップは訪れるもの。サガットステージまでの演奏が終わると、この日最後の演奏が始まりました。
『ストIV』のセスのテーマから『ストIII』のユリアンステージにつながるメドレーから始まった演奏は、続いて『ストII』のベガステージのテーマへ。ベガステージのテーマが持つ、ミステリアスでどこか荘厳な雰囲気を崩すことなく、ドラムの効いたテンションの上がる生演奏が印象的でした。
そしてベガステージのテーマの演奏が終わると、幾度もの打撃音ととともに『ストリートファイター III』の豪鬼ステージの楽曲へ。名言はされていませんが、打撃音とともにベガの曲から豪鬼の曲に移れば誰もが地面に倒れたベガを想像しますよね(笑)。
曲は『ストIII』のものでありながら、脳裏には『ストII』のベガが倒れているビジュアルがうっすらと浮かぶ。ここまでレポートを読んでいる人にとっては当たり前のように共感できる話でしょうが、ゲームのBGMを聞きながら別のゲームのキャラクターを想像するというのは、少し不思議な体験でした。
ライブのラストを飾るにふさわしいボスラッシュに大満足! 『ストリートファイター』シリーズの歴史をたどり、ベガと豪鬼のテーマで締めくくる。『ストリートファイター』シリーズのライブとしてこれ以上はないと思っていたのですが、観客の拍手が手拍子へと変わり、一度は舞台を去った“STREET FIGHTER 35TH ANNIVERSARY ORIGINAL BAND”が再び現れて奏でられたのは……。
『恋しさと切なさと心強さと』!
正直なところベガと豪鬼のテーマのあとでは、どんな曲がアンコールで演奏されても霞んでしまうのでは? と思っていたので「この曲があったか!」と嬉しさとともにしてやられたかのような気分になりました。
しかも、『ストリートファイター ZERO』のドラマチックバトルが背景に流れるという演出もまたズルい! 対戦格闘でCOM相手に2対1のバトルが楽しめる驚きと嬉しさ、当時リアルタイムで体験した人ならきっと同意してくれますよね。
さらに“スペシャルメドレー”と題した『ストII』のキャラクターセレクト時のBGM、リュウステージのBGM、勝敗が決定したときのジングルを1曲にした楽曲も演奏。
対戦格闘はキャラクターを選んで、バトルして、そして勝ったり負けたりする。この行程の連続です。そして自分にとって初めて遊んだ対戦格闘は間違いなく『ストII』。長時間のライブを通していろいろな楽曲を聞いたあとに、「あなたの原体験はこれですよね」とおいしいところをギュッと詰めて聞く体験は本当にたまりませんでした。
このライブを通して感じたのは、楽曲や生演奏がすばらしいのはもちろんのこと、1曲聞くたびにいくつもの思い出が掘り起こされる感覚。COM戦に対人戦、ファストフード店で感想を語り合ったことなどなど……。人によって思い起こされる記憶は異なるでしょうが、誰もがなにかしらの思い出とともにライブを楽しんだことは確信できます。
そんな“PERFECT!”な体験ができるのは『ストリートファイター』シリーズが35年という長い歴史を積み重ねてきたタイトルだからこそ。
オンラインチケットを購入すれば、2月12日まで視聴できるのでこの空前のライブを思い出とともに楽しんでみませんか?
“ストリートファイター35周年記念ライブ”チケット概要
価格:¥3,500(税込)
販売終了日:2月12日21時
アーカイブ終了日時(最大):2月12日23:59
公演内容の詳細は公式サイトをご確認ください。
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