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『ダンガンロンパ』の世界観をアートで表現! “we are TCA 2023”レポ(榊原昌平氏のコメントあり)

カワチ
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 千葉・幕張メッセにて2月10日と11日に東京コミュニケーションアート専門学校の卒業進級制作展“we are TCA 2023”が開催。2月10日にはスパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』の世界観をモチーフとした、コンセプトアートイラスト制作で優秀作に選出された3名の学生が自身の作品をプレゼンテーションする制作展が行われました。ここでは、その制作展の模様をお届けします。

『ダンガンロンパ』のコンセプトアートが100作以上!

 “『ダンガンロンパ』シリーズの世界観を用いたコンセプトアート”をテーマに、東京コミュニケーションアート専門学校のゲームグラフィック&キャラクター専攻および、ゲームコンセプトアート専攻、ゲームグラフィック&イラストレーションマスターコースの学生約100名が作品を制作しました。



 スパイク・チュンソフトから「ファンアートではなく、自由な発想・解釈でコンセプトアートを制作してほしい」という要望もあったことで、イラスト投稿サイトなどとは違う独自の作家性をおおいに感じる作品が多かったです。




 今回の取り組みを行った東京コミュニケーションアート専門学校のeエンターテインメント科の川島雅宏さんにお話を聞いたところ、世界観を理解するためには、ゲームを実際にプレイすることが重要と考えました。『ダンガンロンパ』をプレイしていない学生さんもいるため、学校側でもシリーズのソフトや設定資料集を購入し、ゲームをプレイする時間も含めて〆切を長めにしたとのこと。もとから作品のファンだった学生はもちろん、この制作展を機会にゲームをプレイし、イラストの制作に臨んだ学生もいたそうです。










 そのため、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』だけでなく、『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』、『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』をコンセプトに用いたものなど、幅広い作品が展示されていました。ゲームをしっかりプレイしているだけに、世界観から逸脱することなく、それぞれの個性が発揮されたイラストはどれも見応えがありました。











学生によるプレゼンテーションの模様

2月10日には、優秀作に選出された3名の学生が自身の作品についてプレゼンテーションし、『ダンガンロンパ』シリーズの現プロデューサーである榊原昌平さんが講評を述べました。

 ゲームグラフィック&イラストレーションマスターコース 2年のオスンフンさんは、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』のとあるシーンを見て、ゲーム本編の舞台裏を見ているようだと思ったそうです。

 そこで、“映画『ダンガンロンパ』の収録現場”というコンセプトで作品制作に臨んだとのこと。そのコンセプトをより生かすため、作品を手掛ける小高和剛さんを映画監督として、生徒たちに演技指導をしている姿を描いたそうです。

 榊原氏は「非常に完成された作品」と絶賛。小高さんがキャラクターたちに指示を出しているところを中心に、映画の収録現場を思わせる小ネタが散りばめられていて素晴らしいとコメントしました。

 続いてはゲームグラフィック&キャラクター専攻 2年の曽根原美緒さんで、『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』に登場する超高校級のアイドル舞園さやかを描いたイラストを紹介。

 ゲーム内のふたつの発言から舞園さやかがアイドルという立場に執着していると考えた曽根原さん。ひとつは「夢を叶えるために、なんでもしてきた。嫌なことも含めて、なんでも」という発言。

 傷ついている心を表現するためにひび割れた鏡を描いたり、嫌なことのなかには握手会も含まれていたのではないかと解釈して手形を描いたそうです。

 ふたつめの発言は「私には、ここに閉じ込められている時間はない!! こんなことをしている間に、どんどん私たちが消えていく!!」。曽根原さんは舞園さやかが“アイドルであり続けなければならない”という強迫観念や夢を失うことへの恐怖を抱いているのではないかと強く感じ、イラストの右側には舞園さやかの夢の象徴であるアイドル姿の影を入れたと説明しました。

 榊原氏はこの作品について、舞園さやかの発言から内面を解釈しており、今回の課題に沿ったものとなっているとコメント。素晴らしい作品に仕上がっていると評価しました。

 最後はゲームグラフィック&イラストレーションマスターコース 2年の呉 暁偲さん。“自分の弱さに必死に抗う姿の逞しさや美しさ”をテーマに『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』の苗木こまると腐川冬子を描いたイラストを紹介しました。

 呉さんは、苗木こまるが普通の少女で、優柔不断に悩んだりしながら腐川冬子の助けを借りて物語を進めていく弱さに魅力を感じたとのこと。人間らしい弱さを持っているからこそ、絶望的な現実に立ち向かい、成長していく姿が美しいということをイラストで表現しようと考えたそうです。

 重視したポイントはふたつで、ひとつは苗木こまるの周囲にある泡や身体に巻き付いて水中に引きずり込もうとする触手などで彼女のネガティブな性格や絶望の精神状態を表現したとのこと。

 もうひとつは苗木こまるの表情やポーズ、つないだ手から発せられる光で、水中でうまく動けない絶望でも、たくましさや美しさがあることを表現しているそう。

 なお、ラフイラストの段階では苗木こまるのみを描いていたそうですが、彼女にとって腐川冬子は欠かせない存在だと考えて、最終的な構図にしたと語りました。

 榊原さんは『絶対絶望少女』までカバーしてくれたことに感謝。呉さんの作品は苗木こまると腐川冬子の関係性までしっかり解釈しているほか、色相やデッサン、構図なども非常に素晴らしいとコメントしました。

 3つの優秀作品が紹介されたあとは、榊原さんが評価を希望する7作品に対してもコメント。改めてプロジェクトに参加した学生たちに感謝をしていました。







 さらに発表会終了後には榊原さんにインタビューする機会を頂きました。

プロデューサー・榊原昌平さんのインタビューをお届け!

――今回の取り組みについて、どのようなきっかけで実現したものなのかお聞かせください。

榊原さん:TCAさん側からお声がけいただいた形になります。TCAさんから授業の一環として企業との取り組みを実施しており、題材に向いている作品があれば使用させてもらいたいというご相談をいただいたので、学生さんの想像をふくらませやすそうな『ダンガンロンパ』シリーズを提案させていただきました。

――漠然としたテーマではなく、ひとつの既存のIPを題材にするというのは珍しく、面白い取り組みだなと思いました。

榊原さん:ありがとうございます。学生さんには“自由な発想と解釈”というテーマで描いてもらいましたが、ひとつも表現が被ることなく、バリエーションも多彩でした。いい取り組みになったなと思います。

――100名以上の生徒が作品を発表しましたが、ご覧になった感想はいかがでしょうか?

榊原さん:若い感性で作られた作品は自分にとっても刺激になりました。また、『ダンガンロンパ』シリーズの新たな可能性も感じることができ、楽しく作品を見させていただきました。

――とくに印象に残った作品はどれですか?

榊原さん:優秀作品にも選ばれたオスンフンさんの作品です。アメコミのような作風で、彼自身の『ダンガンロンパ』の解釈も加えられていて見る人を楽しませてくれます。エンターテイメント作品としても素晴らしいですね。

――コンセプトアートイラスト制作に参加した生徒はゲーム業界を目指している人だと思いますが、会社のデザイナーやグラフィッカーを目指す人にアドバイスをお願いします。

榊原さん:ファンアートにとどまらず、イラストに独自の解釈を加えるのは大事ですが、会社に所属するということはゲームを作ることになるので、なんでも自由に描いていいということではないです。ただし、情熱を持って描くことでクオリティは上がっていくものなので情熱は大事です。ぜひ一緒に作品を作りたいという情熱のある人は弊社にエントリーしてほしいですね。

――『ダンガンロンパ』シリーズは実況が解禁されたこともあり、新たなファンにも広がっていることを感じます。榊原さん自身はどうお考えですか?

榊原さん:『ダンガンロンパ』がユーザーさんから愛されていることは常日頃から感じています。今回の取り組みはもちろん、今後もブランドとして大事に育てていきたいと思っています。また、自分は『超探偵事件簿 レインコード(以下、レインコード)』のプロデューサーも担当しており、こちらも大変素晴らしい作品に仕上がっています。『ダンガンロンパ』のファンになった人は、小高さんの作る新しい作品である『レインコード』にもぜひ注目してほしいです。『ダンガンロンパ』と『レインコード』の両方が盛り上がってくれるとうれしいです。

――最後に『ダンガンロンパ』や『レインコード』に期待するファンに一言お願いします。

榊原さん:コンシューマーのアドベンチャーゲームを作る会社も少なくなってしまったなか、『レインコード』はリッチな作りで世界に通用するようなものを目指していますので、どうぞご期待ください。もちろん、『レインコード』に限らず、今後もさまざまな挑戦をしていくので応援よろしくお願いします。


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