レビュー:人間の定義、生きている定義とは? Steam版『キミガシネ』はプレイヤーの感情をグチャグチャにする傑作デスゲーム【電撃インディー#439】
- 文
- カワチ
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電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Steam版が2月21日に発売されたトークアクション・レトロホラーゲーム『キミガシネ -多数決デスゲーム-』のレビューをお届けします。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
人狼ゲームがモチーフの騙し合い以外にも多彩なデスゲームが登場
『キミガシネ -多数決デスゲーム-』は閉鎖空間に閉じ込められた複数の男女が脱出を目指すストーリー。
デスゲームである“多数決ゲーム”は役職が配られ、役なしのカードである平民、多数決で選ばれると全滅する鍵番、鍵番が誰なのかを知ることができる賢者、多数決で選ばれると自分のほかのもうひとりと脱出できる身代があります、身代は選ばれなければ処刑されてしまい、投票権が2枚あるのが特徴です。
まず、予選投票で4名を選び、最終的に予選で選ばれたひとりを多数決で選び出すというルールになっています。
人狼ゲームでは狼を探ることが目的ですが、本作は仲間のなかから犠牲者を決めることになります。
これが、めちゃくちゃおもしろい! 生き残るために役をいつわるといったパターンは基本として、議論ではさまざまな思惑が乱れることになります。
自己犠牲だったり、大切な人を守るためだったり……。ギリギリの緊張感のなかで紡がれる人間ドラマは泣けます。犠牲者となったメンバーの想いを後から知ることもあり、どのキャラクターのことも好きになるハズ。
こういった作品では珍しく、キャラクターの行動によって犠牲者が変わるところも特徴。ルート分岐が存在しており、チャプターセレクトでゲームを遊ぶときは“あらまし”から誰を犠牲にしたのかを選ぶことができます。
なお、“多数決ゲーム”ではトリッキー的なキャラクターもいる関係で疑心暗鬼や罵りあいもたっぷり楽しめますが、ミステリーとしてのロジックはしっかりしており、推理モノとしても安心して楽しめます。
“多数決ゲーム”の役職は2回目から事前に交換が可能になるなど、より複雑に。推理の難易度も上がっていくので面白いです。
ゲームのメインとなるのは“多数決ゲーム”ですが、ほかにもサブゲームという試練が登場。第2章に登場する“デス・アトラクション”はダンスゲームやアクションゲームなど多彩な内容で、相棒に選んだキャラクターによって難易度が変わるなどやり込みがいがあります。
なお、イージーチケットでミニゲームを簡単にしたり、クリアチップでゲームをスキップしたりできるので、ゲームが苦手な人でもちゃんとクリアできるようになっています。
連打系に関してはマウスを連打するよりもエンターキーを連打したほうが簡単だと思うので“腕相撲ゲーム”などで勝てない場合は試してみてください。
“デス・アトラクション”を攻略しているときは、誰かと交換したメダルを交換所で景品と変えられる“信頼売買ゲーム”も開催。先述のクリアチップなど以外に各キャラクターの秘密などを入手できます。
誰と交換するか、どの景品と交換するか自分で選ぶことができるため、インタラクティブ性があって楽しいです。
レトロ風の画面が味を出している
本作は“トークアクション・レトロホラーゲーム”と名付けられているだけあり、ストーリーやキャラクターデザインは今どきであるものの、画面は昔ながらのレトロ調になってます。このレトロ調のグラフィックが独特な雰囲気を醸し出していて素晴らしいです。
一方でメインとなる“多数決ゲーム”はコミックのような派手な演出が満載。選択肢から正解を選ぶというオーソドックスなゲーム性ながら迫力ある演出により、ストーリーにのめり込めるようになっています。
生とは? 死とは? 人間の尊厳を考えさせられる深いストーリー
ストーリー部分に関しては実際にプレイして欲しいのですが、どのキャラクターたちも個性的でとても濃いです。トリッキーな部分もありつつ、信念を持っているので好きになります。
物語を進めることで隠されていた真実が明らかになったり、意外な繋がりが分かったりするところも面白い。
「いい人だと思って安心していたら……」、「黒幕だと思っていたら……」そんな驚きがあるのもデスゲームもののおもしろいところ。次々と気になることが明かされるため、ゲームの止めどきが見つかりません。
誘拐犯側にはフロアマスターと呼ばれるキャラクターたちがいますが、デザインも素晴らしくメインキャラクターたちと同じぐらい必見となっています。
また、こういったデスゲームものは、デスゲーム部分の謎以外にもなぜ主人公たちは施設に閉じ込められたのか、閉じ込めた犯人は誰なのか大枠の謎があるのも醍醐味。
本作に関してはかなりスケールの大きい話でインパクトもありつつ、根幹で描かれるのは人間の根幹にあるもの。生きていることとはなんなのか、死ぬこととはなんなのか。どこからが生でどこからが死なのか。深く考えさせられる内容。新しい時代を生きる我々の道徳の教科書にしてほしいぐらい素晴らしいものでした。いや、ホントに!
自分はデスゲームものが好きでさまざまなゲームや映画を観てきましたが、本作はデスゲーム好きのツボを抑えつつも、新しい刺激に満ちあふれている作品でした。
多彩なミニゲームなど、ユーザーを楽しませようという気持ちもヒシヒシと伝わってきました。「これだからインディーゲームをプレイするのは止められない」と思える傑作でした。
デスゲームものが好きな人もデスゲームに食傷気味だったという人にもプレイしてみてほしいタイトル。きっと心に残る1本になるハズです!
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