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劉禅(阿斗)の残念な逸話3選。【三国志 英傑群像出張版#15-2】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 三国志の物語で最後の方で気になる人物といえば劉備の息子で幼名・阿斗(あと)こと蜀の二代目皇帝「劉禅(りゅうぜん)」ではないでしょうか? 父・劉備の立身出世の物語に終止符をうつことになってしまいました。

 無能扱いされ、阿斗(あと)から転じて「阿保(あほ)、阿呆(あほう)」の語源ではないかといわれるほどのひどい扱い。

 しかしながら、有能ではないとしても、無能な人物が40年も在位を保てるとは思えません。結果、晋(しん)に国を奪われた事から、かなり評価を下げている気もします。

 「楽不思蜀(らくふししょく)……今が楽しく、蜀のことを忘れてしまった。」といった事で司馬炎(しばえん)が警戒を解き、延命した事は処世術だったと思われます。

 とフォローをしましたが、当然ながら民間伝承ではひどい扱いをされることが多いです。いくつか紹介します。

劉禅、頭を何度もうつ

 曹操が自ら率いて劉備と戦ったとき、劉備は兵と民を率いて逃げ出し、当陽の長坂(ちょうはん)で人馬ともに多くが散っていった【長坂の戦い】。

 劉備は息子の阿斗の叔父である糜芳(びほう)に家族を守るように頼んだが、彼は曹操軍が来るのを見て、自分の命を優先して阿斗を担いで包囲網から抜け出そうとしなかった。

 彼は阿斗を野の中に投げ捨てた。この時、阿斗は頭をうった【1回目】。その後、趙雲は単身で再び包囲網に突入し阿斗を見つけだして包囲網から脱出した。

 趙雲は劉備に合流したが、劉備は人心を買うために阿斗を地面に投げ捨て趙雲の無事を喜んだ。阿斗はまた頭をうった【2回目】。

 その後、川辺に退却して船に乗り込むと、趙雲が船の舳先で阿斗を抱いているのを糜芳が目撃した。彼は趙雲が泳げないことを知っていた。

 舵のそばに立っていたが舵を船頭が振ったことで趙雲の体が激しく揺れ、思わず阿斗を川に落としてしまった。糜芳は喜んだ。最初に阿斗を投げた罪を避ける事ができる。何か言おうとした時、張飛が糜芳を見つめるのが見えた。糜芳は怖がった。

 そこで糜芳はしかたなく川に飛び込み、川から阿斗を救い出した。張飛は、糜芳が阿斗の命を救ったことを見て何もいわなかった。阿斗は川に落ち、川の中の岩礁に頭をぶつけた【3回目】。

 三度も頭を打ったことで、阿斗は脳に損傷を負う(能力が低下した)ことになったとされる。

劉禅、龍潭池に落ちる

 劉禅は遊び好きな少年だった。彼は書物を2ページ読んだだけで城を抜け出した。大きな梅の木にたくさん実っているのを見て、登って梅を採って食べた。

 お付きの宦官は、何か起こるといけないと、降りてくるように頼んだが、劉禅は聞き入れなかった。

 すると突然、宦官は説得を辞めて、ひざまずいてお辞儀をした。見ると、木の下に立っているのは“諸葛亮”であった。

 劉禅はいつも諸葛亮を恐れていたので、彼が来るのを見ると慌てて木からころげ落ちた。幸いにも木の近くに池がありその中に落ちてしまった。

 宦官たちは、彼を救うために苦労したが生死に関わることはなかった。池だからよかったが、もし地上にあったっていたら、劉禅は転落死していただろう。

 この池は、皇帝(龍は皇帝のシンボル)が入った池として「龍潭池」と名づけられた。いまも成都市に存在する。
※別の逸話では、暑い時期に劉禅がこの池で水浴びをしたことからついたともいわれる

阿斗、魚を捕まえる

 成都の龍泉山のふもとに「八角井戸」があった。この井戸は龍宮に通じているといわれており、井戸の中には東海からやって来た魚がいて、それを食べると長生きすることが出来るという。

 そのうわさを聞いた劉禅は魚を食べたがり、ある日、宦臣を何人か連れて魚を捕まえにやってきた。宦臣が井戸の中に飛び込み、魚が泳いでいるのを見つける事は出来たが捕まえることが出来ない。

 その時一人の魚釣りの老人がやってきた。彼は釣り竿を伸ばすと、一匹の大きな金の魚を釣りあげた。劉禅は宦臣を老人の所へ行かせ、魚を売ってくれるように頼んだが売ってくれない。そこで宦臣は、権力をかさにきて、魚を奪い取った。

 劉禅は奪い取ってきた魚を手にとり得意そうにしていたが、その時、よろめいて足を滑らし井戸の中に魚と共に落ちてしまった。

 結局魚は、泳いでいってしまい、劉禅は宦臣に引き上げられた。井戸の中に落ちた時、腰につけていた金龍の入った帯が外れて井戸の中に落としてしまった。

 老人を探して、文句をつけようとしたが、すでに姿はなく、地面に一枚の白い手拭いが残されているだけだった。

 手拭いには文字が書かれていた。“事を始める時、自分だけ難を避けるのは無責任だ。自分の帯も落とし、帝の運もついにこれまでだ”と。

 劉禅は怒って、手拭いをくちゃくちゃに丸め、井戸の中に捨てた。この手拭いと玉帯が一緒になり、井戸の中の海に通ずる穴を塞いでしまった。「八角井戸」はこの時から使えなくなった。

 この井戸のそばの小さな村の名を“洛帯古鎮”(※落ちた帯の村)と名付けられた。

 いかがだったでしょうか?

 1つ目のお話、趙雲が阿斗を川に落としてしまった話は初耳ではないでしょうか?

 趙雲は泳げなかったんだ! と別のところが気になりました。劉禅が頭を何度も打ってなかったら、蜀はどうなったのだろうかと想像させられるお話でした。

 2つ目のお話、一話目同様に災難にあう劉禅。これはいまも成都市にあるという池の話でした。そこまで面白味はありませんが、現実的な話だなと思って紹介しました。

 3つ目のお話、結構有名です。知っている人もいるかもしれません。結果、踏んだり蹴ったりの劉禅。これが国を亡ぼす原因になったのかもしれません!

 不思議な魚を食べなくても64歳まで生きたので当時としては長生きだったと思います。老人は仙人だったかもしれませんね。

 3つとも水にかかわる逸話だという所が、【龍が皇帝をイメージ】する存在だからでしょうか。

 劉禅も生まれた時から波乱万丈。劉禅を利口な人物として描く主役の作品が出てくることを望みたいです。

 今月はここまでとなります。

KOBE鉄人三国志ギャラリー【春の三国志会】開催のお知らせ

 3月26日(日)11時~17時、三国志講座やイベントなどいろいろ行います。

 観覧無料。皆さんを無料でご招待します。もう10回目になります。春版のミニ三国志祭です。

第10回「春の三国志会」イベント予定

時間:11時~17時
場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー内外
施設入場料:無料(入場制限有、要マスク)
※当日、先着順 各回定員になり次第締切

■イベント・講座
11時半 三国志の食 研究家・一条氏『三国時代の味について。「豉」を再考する』オンライン 25分
12時:孫子兵法研究家・菅澤博之先生「軍師の思考術解析」 45分
13時:講談師・天神堂梅崙氏 講談『十万本の矢』 20分
13時半:プロナレーター・樹リューリ氏 朗読『木枯らしが吹くように』郝昭 20分
14時:関西大学講師・桜木陽子先生『京劇のなかの曹操』 50分
15時:龍谷大学教授・竹内真彦先生『祁山はどこにあったのか?』50分
16時:横山光輝三国志ビンゴ大会(※売店500円以上購入者にシート配布)20分
16時半:新解釈「三国志」出演俳優・鎌倉太郎氏「入門紙芝居『二人の英雄』」動画上映 30分
17時:終了

■常時上映
・神戸電子専門学校声優タレント学科
 三国志演劇公演初上映「THE RISING 蒼龍天翔」
 第一部上映 1時間(11時、13時、15時)
 第二部上映 1時間(12時、14時、16時)

■出し物(有料)
・三国志プラモデル制作体験
・殷代甲骨ト占(占い師:須藤聡爾先生)
・三国志100問テスト 全7種類  
・三国志アナログゲーム
・三国志クロスワード

■展示
・横山光輝三国志 バイリンガル版発売記念 パネル展示

■景品提供
・ウニコ switchゲーム「神奏三国詩」ティッシュ(先着無料配布)
・LEVEL5「妖怪三国志」(ビンゴ大会)
・コーエーテクモゲームス『Wo Long: Fallen ynasty』(ビンゴ大会)

 スケジュールの詳細などはこちらのページでもご確認いただけます。


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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