『タワーオブスカイ(タワスカ)』インタビューで『モンスト』イベントやサウンド制作秘話を直撃! パンドラ、ユグドラシル、ダルタニャンがガンガンしゃべる

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 MIXIのiOS/Android向け積み上げタワーパズルRPG『タワーオブスカイ(TOWER OF SKY)』のインタビューを実施。その内容をお届けします。

 本作は、『モンスターストライク』でおなじみのMIXIが制作する積み上げタワーパズルRPG。物理演算に基づいた、シンプルで奥深いパズルに加え、魅力的なキャラクターが多数登場し、壮大なストーリーが描かれる作品です。

 インタビューでは、『タワスカ』のプロデューサー・寺田康太さんと、『モンスト』サウンドデザインチームのリーダー・戸田章世さんに、『モンスターストライク』とのクロスオーバーイベント“ストライクワールドからの来訪者”、サウンド関連に込められた思いや制作秘話など、興味深い話題を伺ってきました。

  • ▲右が『タワーオブスカイ』プロデューサーの寺田康太さん、左が『モンスト』事業本部サウンドデザインチームのリーダーの戸田章世さん。

『タワーオブスカイ』は、今まであるようでなかった“積み木”のパズル

――まずはお2人の自己紹介からお願いします。

寺田康太さん(以下、寺田):寺田と申します。肩書はプロデューサーですが、『タワスカ』全体の統括をしているので、開発からプロモーションまで幅広く担当しています。

戸田章世さん(以下、戸田):『モンスト』事業本部のサウンドデザインチームのリーダーをしている戸田です。『タワスカ』ではBGM、SE、ボイスなど、すべてのサウンドデザインを担当しています。

――改めて、『タワスカ』の特徴や注目の要素を教えてください。

寺田:昨今のスマホパズルRPGというと、3マッチパズルをイメージする人が多いと思います。そこに一石を投じるべく作った、あるようでなかった積み上げタワーパズルRPGが『タワスカ』です。わかりやすく言うと“積み木”ですね。

 当たり前ですが、本物の積み木ではありません。普通に積むだけだと、100mも積み上げたら、すぐに崩壊してしまいます。そこは、ゲーム的なおもしろさを追求するために、物理部分で崩れにくくなるように手を加えたうえ、「うまく積み上げられましたよ」という指標として“トリック”の要素を採用し、ゲーム的に良いプレイをした時、プレイヤーにわかるようにしています。

 さらに、パズルが苦手な人でも楽しんでもらえるように、キャラクターのスキルやアビリティなどのRPG要素も盛り込みました。あとは、サポート機能も充実しており、タワーを崩し続けていると、ブロックがくっつきやすくなるような救済的なシステムもあります。

  • ▲シンプルなルールで誰でも遊びやすい積み上げタワーパズル。うまく積み上げられると、さまざまなトリックが発生する。

――サービスが開始してからの、ユーザーからの反響はいかがですか?

寺田:ゲーム部分については好意的な評価が多く、特に『タワスカ』ならではの独自のパズル体験を評価していただいています。足りないとご指摘されている部分もあり、そこはプレイヤーの要望を叶えるべく、急ピッチで改修・改善を行っています。

戸田:シンプルで奥が深いという点は、『モンスト』と通ずるところがありますよね。開発段階から、ユーザーさんに受け入れられそうだな、と予感していました。そこにハマっていただける方が多くて良かったです。

4月4日から『モンスト』とのクロスオーバーイベント“ストライクワールドからの来訪者”が開催!

――『タワスカ』は、本家『モンスト』の制作陣も参加し、キャラ、サウンド、シナリオについて、それぞれが培った知見を注ぎ込む“共創”というテーマがあるようですが、これはどのようなものですか?

寺田:一般的なコラボは、一方的に力を借りることが多いですよね。『タワスカ』と『モンスト』の関係は、シリーズタイトルの一環でもあるので、一方的ではなく『モンスト』でやっていないことを『タワスカ』でお届けできれば良いなと思っています。具体的には、キャラ、サウンド、シナリオなど、『モンスト』で積み上げてきた文化とは違うものを、『タワスカ』では楽しめます。

 『モンスト』のキャラクターを借りる場合は、ボイスの内容、シナリオなどすべて、『モンスト』チームにチェックしてもらっています。“このキャラクターはこうじゃない”、“こういう性能だったらおもしろいのでは”など、いろいろ見ていただいたうえでアドバイスをもらい、いい感じに“共創”ができているのではないかと思っています。

――4月4日から開催される『モンスト』とのクロスオーバーイベント“ストライクワールドからの来訪者”の概要を教えてください。

寺田:『モンスト』とのクロスオーバーイベントということで、『モンスト』から、“禁忌の守り人 パンドラ”、“世界樹 ユグドラシル”、“大志を抱く新風 ダルタニャン”の3体が中心となったイベントを展開しています。当然、ガチャでキャラクターを入手するだけのイベントではありません。3体のキャラクターが活躍するシナリオを用意していますので、キャラクターを愛でながらプレイしていただければなと思います。

 パンドラはアニメや映画でどのようなキャラクターなのか補完されている方もいると思いますが、ユグドラシルやダルタニャンがどのようなキャラクターなのかは今までフィーチャーされていません。その2人が“こんな風にしゃべるんだ”といった発見も楽しみにしてください。

 先ほどの“共創”というテーマは、クロスオーバーイベントで如実に出ていると思います。もともと、『モンスト』を表に出してユーザーを集めるのではなく、あくまで『タワスカ』を遊んでもらい、ある程度地盤を固めつつ、『モンスト』好きの方にも遊んでもらうと計画していました。

  • ▲クロスオーバーイベント登場キャラ・禁忌の守り人 パンドラ。
  • ▲クロスオーバーイベント登場キャラ・世界樹 ユグドラシル。
  • ▲クロスオーバーイベント登場キャラ・大志を抱く新風 ダルタニャン。

――“ストライクワールドからの来訪者”で、お2人はどういった部分を担当したのでしょうか?

寺田:私はプロデュースで、『モンスト』とのクロスオーバーイベント全体の設計をしています。イベントの立て付け、キャラクター、シナリオと、細かいところを含めて、自分がチェックしています。

戸田:『モンスト』とのクロスオーバーイベントでは、BGMの選曲と提案、ボイスデータの実装と調整をしています。もともと『タワスカ』のサウンド開発も担当しているので、『モンスト』サウンドのどの部分を取り入れるか、どの部分をオリジナルで作るのか、というのも自分が考えています。自分は『モンスト』のヘビーユーザーなので、“BGMはこれらの曲の中から選ぶのがおすすめ”と提案させていただきました。

寺田:僕も『モンスト』をプレイしていますが、戸田はそれ以上に遊んでいます。なので、『モンスト』ユーザーにはどういうBGMが刺さるか、どれなら『モンスト』感が出るか、『タワスカ』との親和性はどうか、なるべく世界観に合って認知度も高くノレる曲はないか、と相談させていただきました。

戸田:『モンスト』の中でも、サウンドデザインのフィロソフィ(考え方)みたいなものがあり、それはプレイしている側から感じるところです。遊んでいてどこが盛り上がるのか、プレイ体験は遊んでみないとわかりませんからね。『タワスカ』においては、“これだけトリックポイントが溜まっているんだからそろそろドカンと!”と願ってスキルを打つ、そういう気持ちよさは遊ばないとわからないんです。

――かなりゲーム性が違うと思いますが、なぜ『タワスカ』は『モンスト』シリーズなのでしょうか?

寺田:“なぜ『タワスカ』は『モンスト』シリーズなの?”と聞かれた時は、“IPとしての『モンスト』ではなく、“みんなでワイワイ”という概念として『モンスト』シリーズである”と考えています。

 『タワスカ』はシリーズタイトルでも変わった立ち位置です。他のシリーズタイトルは、『モンスト』のキャラクターやIPを強く押し出しているのに対し、『タワスカ』は独自の世界観で、そこに『モンスト』のキャラクターが関わってくる設計になっています。

戸田:サウンド観点で言うと、わかりやすく『モンスト』のメロディを引用するのではなく、『モンスト』で培ったサウンドの考え方を、『タワスカ』に転用しています。例えば、『モンスト』のBGM、SE、ボイスは、どういうバランスで聞こえるべきか、BGMはどういうタイミングで切り替わると盛り上がるのか。

 『モンスト』で言うと、あとひといきBGMでは“もうすぐ勝てる!”というワクワク感を味わえるようにしています。また、ホーム画面やクエスト中BGMも、展開に合わせて音量を変化させています。こういう体験デザインのフィロソフィみたいなものを、『タワスカ』でも活用しています。今回の『モンスト』クロスオーバーイベント“ストライクワールドからの来訪者”では、それがすごくわかりやすく聞こえると思います。

――クロスオーバーイベントでは、『モンスト』のボス戦のBGMが使われています。こちらを選んだ理由は?

寺田:『モンスト』ヘビーユーザーの戸田にお願いして選んでもらいました。そこで、認知度がありつつ、『タワスカ』のプレイを盛り上げてくれるBGMとして、『モンスト』のボス戦のBGMを使うことにしました。

戸田:今回のイベントでは、原曲をあえてそのまま使用しています。なぜかと言うと、『タワスカ』用ににアレンジすることで曲がぼやけてしまい、遊んだ人が『モンスト』の曲だとわからなくなってしまう可能性があるからです。

 それだと、クロスオーバーイベントとしての目的を果たせていませんよね。原曲をそのまま使う方が、『モンスト』の記憶を引き出す効果があると感じました。逆にそれを見越して、『タワスカ』のBGMにはある程度『モンスト』要素を忍ばせています。これによってBGMからも両作品の地続き感を聞き取ってもらい、違和感が出ないようにしています。

  • ▲『モンスト』のボス戦。力強く壮大なBGMが流れ、強敵を相手にしていることを感じさせる。

――もともと『モンスト』のBGMを『タワスカ』に散りばめていたんですね。

戸田:とはいえ、『モンスト』のメロディをわかりやすく引用するようなことはしていません。『タワスカ』の世界観を醸成するのが優先するべきで、そこに『モンスト』のメロディラインを積極的に取り入れると、意味合いとしてノイズになってしまう恐れがあります。

 クロスオーバーイベントのようなものがあるので、そっちで『モンスト』感を全振りする構成にすればいいんです。ただ、わかりやすく使っていないだけで、違和感なく『モンスト』サウンドのフィロソフィを忍ばせているものもあります。

 例えば、アドベンチャーパートで流れるメロディは、『タワスカ』に登場する国ごとに同じメロディをアレンジバージョンとして作っています。そういう考え方を『モンスト』から引っ張ってきているという感じです。あと実は、1カ所だけ隠し味として『モンスト』のメロディを『タワスカ』BGMにも入れてたりしますよ。

寺田:そういう隠し味みたいなものはBGMだけでなく、ゲーム部分も『モンスト』で培ったエッセンス的なものを散りばめています。タイトル自体は別タイトルではありますが、『モンスト』シリーズとして微妙に近い雰囲気を目指しています。

――今回のイベントでは、『モンスト』のホーム画面のBGMも使われるんですよね。

戸田:『モンスト』というと、あれがスタート地点みたいな感じですよね。“モンストニュース”でも流れていますし。ホーム画面に当たる部分は、プレイヤーが帰ってくる場所なので、聞き疲れせずに機能するだろうという目論見で使わせていただいています。

寺田:『タワスカ』の世界観の中で、イベントがはじまるとこの曲が流れるので、“あ、『モンスト』だ!”と感じていただけると嬉しいです。

  • ▲『モンスト』のホーム画面。落ち着いたBGMでありながら、サビでクエスト前に気持ちを高揚させる。

――クロスオーバーイベントに合わせて、SEの変化はありますか?

戸田:今回のイベント用に新しいSEは作っていません。ただ、これは寺田にも内緒にしていたんですが、もともと『タワスカ』のSEの中には『モンスト』のものを引用したりしています。どの部分なのかは、ぜひ探してみてください。無意識的にも“似通っているところはあるんだな”と感じてもらえるように設計しています。

クロスオーバーイベントで『モンスト』キャラのボイスを堪能

――ボイス周りについては、どのようなところに違いを付けましたか?

寺田:『モンスト』では、ストライクショットの時くらいしかキャラクターがしゃべりません。パンドラは映画をはじめ、他の媒体で補完されていますが、他のキャラクターはそもそも性格などが補完されていません。

 謎めいているところがある中で、『タワスカ』ではホーム画面などでもしゃべるようにしています。『タワスカ』独自のものとして、『モンスト』キャラが他の『モンスト』キャラに対してどう思っているのか、みたいなところも楽しめます。

 『モンスト』のキャラクターは数がかなり多いので、『タワスカ』だからこそできる遊びです。基本的には、他のキャラクターと同等のボイスを収録しているので、『モンスト』キャラだけしゃべらないということはありません。主人公に語り掛けてくるセリフも、『モンスト』ではなかったことです。

  • ▲クロスオーバーイベントでは『モンスト』のキャラのセリフが豊富に用意されている。

――『タワスカ』の主人公は、他のキャラクターとの距離感が近いですよね。

寺田:近いです。あくまで建塔士は自分であるスタンスなので、主人公に対してパンドラやダルダニャンが話しかけてくれて、どう思っているのかを伝えてくれます。

  • ▲ホーム画面では、編成中のキャラクターとボイス付きの会話が可能。ここでしか聞けないエピソードばかり。

――パンドラ、ユグドラシル、ダルタニャンのセリフで、注目して欲しいところはありますか?

寺田:キャラクター間の会話や、『モンスト』では味わえなかった『モンスト』キャラが自分に対して話しかけてくれるようなところですね。ゲーム中でも、いろいろな場面でしゃべらせるようにしています。自分を応援してくれる要素もあるので、うまくトリックを決めてみてください。

――ボイスの収録方法は『モンスト』と同じですか?

寺田:同じスタジオ、同じメンバーで収録しています。『モンスト』の収録は長くならないのですが、今回のクロスオーバーイベントでは1時間くらいかかっています。

――プレイヤーにボイスを聞かせるためにこだわった部分はありますか?

戸田:『モンスト』の秘伝のタレのようなものをそのまま使っています(笑)。基本的に、収録した音声をそのままゲームで使うと、何をしゃべっているのかわかりにくいんです。そのため、『モンスト』では処理というか、下ごしらえをしたうえでゲームに実装しています。『タワスカ』でも、その方法を活用しています。

 『タワスカ』はボイス数が多く、全部手作業でやると大変なので、いったんすべて秘伝のタレで下ごしらえをした後に聞き直し、全体調整をかけています。処理の仕組みが同じなので、『モンスト』と聞こえ方は似ているのではないでしょうか。

 それでも、ボイスの聞こえやすさについては一番最後まで調整してたところです。開発段階では、大きめの音量でボイスが入っていて、聞こえはするけどバランスが取れていない、粗さみたいなものが残っているように感じていました。

 どこかで見直したいとずっと思っていたのですが、最後にそのチャンスが舞い降りて、ここぞとばかりにすべて仕上げました。最終的にカチっとハマり、いい感じにボイスを落とし込めたのではないかと思います。

  • ▲バトル中は、攻撃時、スキル発動時、ダメージを食らった時、タワーが特定の高さに達した時など、さまざまな場面でキャラクターがボイス付きでしゃべる。

――サウンドの専門ではない寺田さん的には、最後の調整で変わったところはわかりましたか?

寺田:開発当初のROMと比べると、全然違いますね。『タワスカ』は、BGMが強く、SEも特殊、ボイスもよくしゃべります。そのため、無調整だとすべてがぶつかり、がなっているように音が聞こえました。そこを、戸田をはじめとしたサウンドデザインチームが、ゲームの流れや音量のバランスを調整してくれました。

――サウンド全体としては、最終的にBGM、SE、ボイスをどう合わせるのかが大変そうですね。

戸田:個々の音を作り込むのも大事ですが、最後に同じくらい時間をかけて最終調整をしないと、製品としてのクオリティに届きません。それはユーザーさんにも感じ取られてしまうでしょう。最終調整はサウンドデザインチーム内でも重視しているため、メンバーで分担をして行いました。自分はボイスの最終調整を担当し、他のメンバーがバランスを取ったBGMやSEと、全体で統一を取れるような調整として仕上げています。

『タワスカ』のサウンドは『モンスト』と地続きでつながっている

――『モンスト』と『タワスカ』のBGMの違いはどこでしょうか?

寺田:発注時点で言うと、『タワスカ』は“基本はなんでもアリだけど、統一感があって聞いていて飽きないもの”を戸田にお願いしました。すごくむちゃくちゃなことを言っている自覚もあります(汗)。

戸田:それを聞いたときは、そうですね……あの……いったん持ち帰ります、という感じでした(笑)。

寺田:『タワスカ』は『モンスト』シリーズの一環であるため、『モンスト』のBGMを流用してもおかしくないものという前提があります。『タワスカ』では、当初から個性豊かな6つの国を主人公たちが冒険するシナリオを考えており、各国の雰囲気に合わせてBGMの雰囲気をガラッと変えて、冒険している感じを出そうとしておりました 。

  • ▲風、雷、水、火、木、土の6属性ごとに国が存在。ストーリーで各国を回ることになる。

――パズル中のBGMは国ごとによって曲のジャンルが変わり、プレイしていて冒険している感じを体験できました。

寺田:『モンスト』でもいろいろなステージがあって、ステージによってBGMが変わりますよね。普通に考えたら難しいですが、あの雰囲気を自分もやりたかったんです。例えば風の国はファンタジー風のポップな曲調ですが、火の国はバリバリのロック、木の国はケルト音楽、水の国はパイレーツ風といった感じです。

 無茶なお願いでしたが、トーン&マナー的なところで、楽器やメロディの組み方などで統一感を出してもらい、ジャンルとしては全然違うBGMなのに、どれも『タワスカ』だなと感じていただける曲に仕上がりました。その統一性があるからこそ、『モンスト』のBGMが入っても、シリーズの1つとして聴けますし、今後どんな音楽が来ても、『タワスカ』風に聞ける世界観が作れたのではないかと思います。

戸田:『タワスカ』では、風の国からスタートして各国を巡っていくことになります。軸足となる風の国は、ライトでポップなファンタジー感をわかりやすく提示するのが大事だと考えました。そこから要素を展開するようなイメージで、ケルティックな管楽器、弦楽器など、他のジャンルで作った曲にも取り入れていきました。それら重要な要素の楽器は、スタジオで生収録することにしていて、曲に生の躍動感を与えることで、統一感が出せると思ったんですね。

 他にも、口ずさみやすく覚えやすい、キャッチーなメロディを意識してBGMを作りました。これらの要素について寺田とイメージをすり合わせた時、“最初のスタート地点はここだよね”と思っていたところが噛みあっていましたね。だからこそ、これはうまくいくと確信めいたものを感じました。

――風の国の曲を最初に作り、そこからイメージが作られたのでしょうか?

戸田:むしろスタート地点は、キービジュアルのラフスケッチが最初です。青空の中、塔を見上げるようなイメージだったので、風の国のBGMはまさにこの方向性を具現化するように、最初に制作しています。そこから他の曲を制作していく上で、明るさやポップ感のようなものと、冒険感は貫いた方がいいだろうなと思いました。

寺田:冒険感は特に重視しています。バトル中はパズルに集中するじゃないですか? その中で、BGMはパズルの記憶とセットで伝えたい部分なんです。ゲームで記憶に残る部分は、BGMとゲームの場面の両方で覚えているものなんです。ゲーム中はパズルに夢中になっていると思いますが、耳の方で、どこの国でどんなシーンかというのを想像して、記憶に残るような設計にしています。

――『タワスカ』はパズルの組み立てを考えながらプレイするので、どのタイミングにBGMのサビを持ってくるのかが難しそうですね。

戸田:とても難しいところでした。BGMはフォーマットとしては歌もののように、キャッチーでわかりやすく、Aメロ、Bメロ、サビなどの分かりやすい構成がある流れで制作しました。イントロやAメロに当たる部分で世界観を感じてもらい、サビで盛り上げるといったように、1つの流れに2つくらい盛り上がりの山が来るような作りになっています。

寺田:発注する際、ゲームプレイの実時間と合わせて、“大体これくらいの時にサビが来るようにしてください”とお願いしています。普通にテンポよく積んでいった時、ちょうど100mくらいのタイミングでサビが来ることが多いイメージです。

  • ▲ランクマッチ対戦では100mに達したタイミングぐらいで勝負が一気に動き始める。そのタイミングにBGMのサビが来やすいように調整されている。

――バトル中のBGMやSEは、パズルの集中を妨げず、プレイが気持ちよくなるように作られていると感じました。

戸田:そこも狙ってデザインしています。BGM、SE、ボイスをすべて同じ音量にすると、実はすごく不自然に聞こえるんです。スキルの発動、トリックの成功、ダメージを与えた時のSEやボイスなど、メリハリを持たせることでプレイヤーが自然に聞き取れるように調整しています。

――プレイしていると、BGMに焦らされている感じはありませんでしたね。

寺田:どのくらいのテンポのBGMにするとプレイヤーが焦ってしまうのかも、開発段階で実験しました。

戸田:タイムストレッチをかけて、同じBGMでもテンポを変えて試したりしましたね。

寺田:ほんの数BPM変えるだけで、体感とテンポの噛みあいはすごく違いました。テストでビートが効いた速いテンポの曲を使ってみましたが、これだとすごく焦ってしまうんですよ。

 『モンスト』は一手ごとに気持ちのいい設計なのに対し、『タワスカ』は少し気持ちよさの“溜め”があってから盛り上がる設計になっています。戸田にお願いする前、開発段階で適当なBGMを差し込んだんですが、それが寂しかったこと……。そのため、BGM、SE、ボイスが気持ちいいものになるよう、戸田に気をつかってもらいました。

――トリックが成功した時の音は気持ちがいいですよね。

戸田:あれは何パターンか作りました。ブロック落下の“カチャン!”からのトリック成功“チリンチリン~!”という一連の音だけで、重量感、質感、“うまくいった!”感というのようなものがわかる、よくできたSEだと思います。

寺田:崩れてしまった時の音も含めて、SEありきの『タワスカ』ですよね。移動中に遊ぶ際は音を聞くのは難しいと思うので、家で遊ぶ時はぜひ音を出してプレイして欲しいです。

  • ▲ジャストフィットやバランスなど、トリック成功時は気持ちのいいSEが鳴る。

――対戦をしていてもBGMで焦ったり、邪魔になったりしませんでした。

戸田:そこのさじ加減は、かなり気にしました。ゲームを邪魔しないBGMを作ろうとすると、メロディを取っ払ってしまえばいいという乱暴な考え方もあります。ただ、“メロディがキャッチーで記憶に残る”というキーワードで作っているので、そこは外さず守ろうと決めています。

寺田:私は過去に対戦ゲームを作っていましたが、対戦ゲームのBGMは、ものすごく重要なんです。自分が勝った時のBGMは覚えているもので、“このBGMが流れたら自分の勝ちだな”みたいな、そういう気持ちになってもらえるといいなと。

 対戦だと、どうしても勝ち負けが発生してしまいますが、自分の中でお気に入りのBGMが流れれば気合が入るということもありますからね。BGMセレクトも、ユーザーの要望が高ければ導入してみたいです。音楽に合わせて勝ったという勝利体験が、セットで記憶に残りますから。

――さまざまなジャンルの曲を作られたと思いますが、苦労したBGMはどれでしょうか?

戸田:作る際に苦労した話で言うと、圧倒的にタイトル画面で流れるBGMが苦労しました。あれは『タワスカ』の顔になる曲で、ゲームの開始時に必ず流れますよね。ゲームがリリースする前に公開されたPVでも流れました。つまり名刺代わりの曲です。

 作家さんに相談して歌ものに近い考え方で作っていたのですが、最初は全リテイクになってしまいました。積み上げたタワーが崩れた気分です(汗)。それでも、結果的にはすごく良い曲になったと思います。

 タイトル画面や風の国のBGMをはじめ、素晴らしいBGMが完成したのは、良い作家さんをおさえられたのが大きかったですね。風の国のBGMはアサノハヤトさんに作っていただきましたが、ドンピシャのイメージでした。タイトル画面のBGMは先ほど申し上げたように、歌もののイメージです。それを考慮して、歌ものとインストの両方に明るい人を探して見つけたのが、Peak A Soul+の長田 直之さんという方でした。

早くも次回の『モンスト』クロスオーバーイベントが予定?

――次に『モンスト』のクロスオーバーイベントを開催する際、どのBGMを追加したいですか?

戸田:今回の『モンスト』イベントで使用したBGMの他にも、いくつか候補はありました。次の『モンスト』イベントの時は、シナリオにフィットするものを選びたいので、その時のシナリオに合った方向性の曲を考えていきたいです。ユーザーさんから“あの曲が聴きたい!”みたいな声があがれば、それも候補として考えていきたいです。

寺田:つい最近も、次のBGMの相談をしていました。いつになるのかはまだ言えませんが、『タワスカ』ではいろいろなことをしようと考えています。

――今後の展開によっては、『モンスト』の原曲以外にアレンジ曲が使われる可能性もありますか?

戸田:明言はしません。ただ、否定もしないです。自分は『モンスト』を作っている側の人間でありつつ、『タワスカ』の中の人であるという立ち位置なので、その両面で作っている感覚が大きいです。『タワスカ』にフィットするかを重視した時に、ユーザーさんから見て素晴らしいと思うのであれば、躊躇する理由はありません。

寺田:プロデューサーとして、ユーザーさんが望むものをお届けするのが基本的なスタイルです。ユーザーさんが望んだものを、自分たちは面白く提供することを目指しています。

戸田:皆さんの期待の上をいくものをお届けしたいですね。それこそユーザーサプライズファーストなので。

――他にもいろいろな『モンスト』キャラのボイスも聞いてみたいです。

寺田:『モンスト』のキャラは膨大にいますからね。今回のクロスオーバーイベントでは、認知度が高いキャラクターとして、昔遊んでいた人も知っていて、現役で使われることもあるキャラクターを登場させました。

 次のクロスオーバーイベントでは、どのキャラクターを選ぼうか考えている最中です。例えば、最近だとネオとかが熱いかな……。ただ、開発側の人気キャラクターと、ユーザーさんの考える人気キャラクターが違うことは往々にしてあると思います。こちらもユーザーさんからのご意見をいただけると嬉しいです。

  • ▲現在『モンスト』で人気のあるネオ。ハローワールド・モードとリバース・モードが存在する。

――最後に、ユーザーさんへのメッセージをお願いします。

寺田:今『タワスカ』をプレイしている皆さま、本当にありがとうございます。『タワスカ』はプレイヤーと一緒に成長していくタイトルにしたいと思っているので、忌憚なき意見と応援をお願いします。

 また、これから『タワスカ』を遊んでいただく方、今回の『モンスト』イベントをきっかけに触っていただける方に関しても、ゲームの面白さに関しては自信をもってご提供していくので、ぜひ一度遊んでいただいて、タワーバランスパズルという新しいジャンルを体験してください。

 サウンドに関しても「早くサントラを出して欲しい!」という声をいただき、ありがとうという気持ちでいっぱいです。パズルゲームでBGMが良いと言われることはあまりないですからね。

戸田:自分は一喜一憂しないようにするタイプで、1人でも2人でもBGMが好きと言ってくれる人がいたら十分嬉しいんですが、サントラを出して欲しいという意見をいただけて嬉しいです。でも、これで安心しないように、引き続き『タワスカ』のサウンドを作っていきます。

©MIXI

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