レビュー:『Contraband Police』国境警備は過酷な仕事! 主観視点で入国審査から犯罪組織との戦いまでこなします【電撃インディー#436】
- 文
- 柏又
- 公開日時
電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はCrazy Rocks開発、PlayWay S.A発売の国境検査官ゲーム『Contraband Police』のレビューをお届けします。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
国境警備に関係する業務をひととおり(?)体験できるバリエーション豊かなゲーム内容
プレイヤーは、1980年代の架空の共産主義国家“アカルイスタン”で国境警備隊の検査官となり、周辺からの入国希望者を審査します。入国審査ゲームといえば、『Papers,Please』が有名ですが、『Contraband Police』は、FPSのように主観視点で主人公を操作、書類の審査から密輸品の捜索まであらゆる業務を行います。
基本はやはり書類審査から。審査が完璧に近いほど報酬アップ!
主人公が配属された前哨基地は山岳地帯にあり、すべての入国者は車でやってきてこの基地の検問を通過します。その際に彼らが見せる必要書類をチェックし、不備がないかを確認して入国の可否を決めるのが主人公の仕事です。
最初にチェックするのはパスポートと入国許可証や市民IDのみですが、日が経つにつれて必要な書類が増えていきます。ひとつでも不備があった場合は入国を拒否するのはもちろん、どこに不備があったのかを“検査報告書”に記入する必要があります。基本的に入国の可否と密輸業者であるか否かを間違えなければ、報酬はもらえるので安心ですね。
ただし審査内容はランクで判定されていて、書類の不備やのちに必要となる車の破損個所のチェック漏れがあると、ランクが下がって報酬を減額されてしまいます。たとえ入国できないとわかっても必要なチェックをすべて終える必要がある、なかなか興味深いシステムだと筆者は思いました。
また、入国規則は一定期間ごとに変更され、たとえば“オリンピック期間中にみすぼらしい車は見せたくないから入国禁止”とか、“危険な伝染病が再流行したので有効なワクチン接種証明がないと入国禁止”といった感じで、チェック内容が変わっていくのもおもしろいですね。
わずかな手がかりから密輸犯を見つけ出し、禁制品を押収せよ!
入国者のなかには、アカルイスタンへ持ち込みが禁じられているアルコールやタバコ、さらには麻薬や武器を持ち込む密輸業者が紛れ込んでいます。入国の可否だけではなく、こういった密輸業者を摘発し、隠された物資を押収するのも主人公の役目です。
密輸業者の特徴は、車のナンバーの一部や破損個所、ドライバーの年齢などの形で掲示板に情報が貼られています。密輸業者の情報と一致する入国者を見つけたら、プレイヤーはドライバーに下車を命じて密輸品の捜索を行います。
密輸業者は、紫外線灯を当てると浮かび上がるエンブレムで、密輸品の隠し場所の目印を書いていることが多いです。エンブレムを発見したら、車のシートであれば刃物で切り裂き、バンパーなどのパーツであれば棒状の道具で破壊することで、隠されていた密輸品が見つかるはずです。
密輸品を見つけたらドライバーを逮捕して留置所に入れ、残りの密輸品を捜索します。密輸品は車のシートやタイヤの中のほか、座席のすき間やエンジンルームなど、注意深くのぞき込まないと見つからない場所にも隠されているので、見つけ出す楽しさがありますね。
密輸業者の摘発は、一種の推理ゲームのような趣があってなかなか楽しいです。なお、検査報告書のチェック漏れや密輸品の見逃しは、審査終了時にレボートで指摘してくれるのもいいシステムだと思います。
検問を強引に突破する車はカーチェイスで追いかける!
入国希望者のなかには、検問で止まらずに振り切ったり、密輸品が見つかった瞬間に車で逃走したりする者がいます。彼らを取り逃がせばもちろん罰金です。ちなみに、本作は前哨基地のまわりがちょっとしたオープンワールドになっていて、逃亡犯はそのなかを走り回って逃げ切ろうとします。
警備隊基地には駐車スペースがあってパトカーが待機しています。プレイヤーはこれに乗り込んで逃亡犯を追いかけ、相手のドライバーが死なない程度に体当たりなどで停車させます。本作の車の操作法は独特で最初は戸惑うかもしれませんが、逃亡犯を追いかけるスリルはなかなかのもので、捕まえた時の達成感もあります。
ちなみに、追跡時にパトカーのサイレンを鳴らすと、近くの一般車両が路肩に寄ってこちらに道を譲ってくれるあたり凝っていますね。
アップグレードに犯人の護送まで、前哨基地の管理もプレイヤーのお仕事!
やってきた入国希望者の審査が終わってもプレイヤーのすることはまだあります。まずは逮捕した密輸業者と押収品の取り扱いです。
留置所には定員があり、それがオーバーする前に彼らを収容する労働キャンプに送る必要があります。また、押収品は車に積み込んで警察署に持っていくと引き取ってもらえます。密輸業者の摘発とは別に、これらの仕事にも報酬が支払われるので、決定的な審査ミスを何度もしない限り所持金には余裕が出てくるでしょう。
稼いだお金は、日々の必要経費として毎日消費されるほか、前哨基地のアップグレードや道具の購入に使います。とくに重要なのは要員の補充ですね。
主人公の配属された基地には、必要人員の留置所の看守と見張り塔につくスナイパーが欠員しています。とくに看守がいないとせっかく捕まえた密輸業者が逃亡するので、早めに雇っておきたいところです。
また、雇った者も含めて基地の要員は、お金を払って装備や能力を強化できます。強化しておくと後述する襲撃の際に役立ってくれます。
基地施設やパトカーも強化可能。主人公の寝泊まりする部屋を強化すれば体力などの上限が上がって審査の役に立ちますし、留置所を強化すれば収容人数がアップします。
パトカーは最初からあるワンボックスタイプのほかに、スピードに優れるタイプと耐久力に優れるタイプがあり、任務に応じて使い分けができます。普段は逃亡犯用にスピードの速いパトカーを常駐させて、出かけるときは別の車に乗り換える、という運用方法もできて楽しいですね。
なお、密輸品の捜索に使うナイフなどの道具には耐久力があって、使うといずれ壊れてしまいます。道具はマップ内にある“ブラドの道具屋”で調達します。店には道具のほかに各種銃器も販売中。弾も消耗するので買い足したいところです。
道具屋まで行く時間がないときは、お金を払って基地前に開店してもらうことも可能。わりとかゆいところまで手が届く感じになっているのもいい感じです。
ときには敵対勢力との戦闘になることも!
アカルイスタンには組織犯罪集団“オベランコフ一味”と反政府武装勢力“ブラッドフィスト”が存在。いずれも密輸犯の取り締まりを行う主人公たちと敵対しています。
彼らは時折、主人公たちのいる前哨基地へ大規模な襲撃を仕掛けてきます。これに対して主人公のほか、基地にいる要員のすべて応戦。主人公がやられずにすべての敵を倒せば報酬を獲得できますが、味方が負傷して戦闘不能になるとそこから治療費が差し引かれることに。主人公だけでは多勢に無勢なので、なるべく味方を強化しておきたいところです。
さらに、囚人の護送などで前哨基地の外にいると、ときおり敵組織の待ち伏せ攻撃を受けることも。敵の待ち伏せはそのまま逃げてしまってもいいですが、返り討ちにするとささやかな報酬が出ますし、倒した敵から弾薬を奪うことも可能です。
そして、主人公は前哨基地の外の地域で行うミッションを依頼されることも。ミッションには敵の襲撃の撃退や隠匿物資の捜索などがあり、クリアすれば結構な額の報酬がもらえます。
入国審査は書類とにらめっこしての頭脳戦ですが、こういったFPS的なイベント戦闘がときどき挟まるので、単調なゲームプレイにならないところがおもしろいですね。
なお、ゲーム内の時間は基本的にリアルタイムで過ぎていく(一日あたりの経過時間は設定可能)のですが、これらのイベントが発生中は時間経過が止まるのもうれしいところです。
政府側か、それとも反体制側か? プレイヤーがどちら側につくかを選ぶシーンも
本作は経過日数ごとにチャプターで分かれていて、各チャプター内ではストーリーミッションが発生します。
ストーリーミッションは敵対勢力の要人の尾行や、逮捕した人物を乗せた護送車の護衛、はては殺人事件の捜査までさまざま。しかし、いずれのミッションでもプレイヤーは自身の所属する国家のためか、それとも現政府の打倒を目指す反体制派のいずれかに協力すべきか選択を求められます。
本作のストーリーは、この選択によって最終的に分岐します。国境警備隊の一員として国家に尽くすか、それとも現政権を打倒する手助けをするか、悩むところですね。
国境警備の多様な任務を体験できる欲張りなゲーム内容。某審査ゲームの亜流と侮るなかれ
ここまで紹介してきた『Contraband Police』。ちなみに審査を大きく失敗した場合、その日の朝からやり直すことが可能なので、じつはそこまで厳しいゲームではないです。一部のFPSシーンの難易度が高いですが、失敗してもミッション関係は直前のチェックポイントからやり直せるので、繰り返し挑戦すればなんとかなるでしょう。
入国審査ゲームといえば『Papers,Please』が有名ですが、『Contraband Police』は書類審査システムの一部などを同作から踏襲しつつも、主観視点でオープンなエリアを行動できる点を生かして、入国審査以外の国境警備隊の業務をいろいろと体験できるやり応えのある内容に仕上がっています。
『Papers,Please』が好きだった人はもちろん、ゲームとしての入国審査に興味がある人や昔の共産国家の無茶ぶりや東欧圏の雰囲気を味わいたい人にもおすすめです。価格も比較的お手頃だと思うのでぜひ、プレイしてほしいですね。
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