『FF11』藤戸プロデューサー就任インタビュー。新体制や2023年のヴァナ・ディールの展望は?
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昨年2022年に運営20周年を迎え、その後もストーリー、コンテンツの両面でバージョンアップが行われているオンラインRPG『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。2023年5月には早くも21周年を迎えることになるが、それに先駆けた2023年3月22日、本作のプロデューサー・松井聡彦氏が勇退され、藤戸洋司氏がディレクターも兼任する形でプロデューサーに就任することが発表されました。
そこで今回は、ファミ通ドットコム&電撃オンラインにて、藤戸氏にプロデューサーとして初のインタビューを実施。就任の経緯や現在の開発体制、そして21年目となる2023年の『FFXI』の展望をうかがいました。
藤戸洋司(ふじとようじ):『FFXI』プロデューサー兼ディレクター。初期からの開発メンバーとして、チャットやリンクシェル、ストレージ関連などのシステム周り、チョコボ育成など、生活系コンテンツを中心に幅広く開発に関わる。2016年にディレクターに就任。2023年3月よりプロデューサーも兼任することが発表された。
プロデューサー就任の経緯 そして『FFXI』開発チームは新たな体制へ
――まずは、松井さんから藤戸さんへとプロデューサーが交代されることとなった経緯を、改めてお聞かせください。
藤戸:以前にも公式配信番組『もぎたてヴァナ・ディール』(以下、『もぎヴァナ』)などで、松井からたびたび話が出ていたと思いますが、松井自身の定年まであと数年というタイムリミットの問題です。20周年以降のことを、松井は非常に深く考えておりました。
彼自身、最後までこのプロジェクトに身を置いて最後を見届けたい気持ちも強かったようですが、反面それで本当によいのか、と悩んでもおりました。というのもプロジェクトのこの先の運営を見越した際、お客様にとってどのようにすることが誠実なのか、実行途中に定年を迎え、中途半端に思いが全うできず迷惑を掛けてしまうのではないか、と。
そのようなこともあり、フジトが面倒ごともすべてを引き受けるので、あとは任せてもらえないだろうか、という相談をさせていただき、2023年の春に交代することで気持ちに決着をつけていただいた感じです。そういった流れでフジトがプロデューサーを引き継いで、『FFXI』の運営を継続していくことになりました。
――これまで務められていたディレクターも兼任、という形になるのでしょうか。
藤戸:はい。今回プロデューサーに就任する際に、別のスタッフにつぎのディレクターをお願いする、ということも考えたのですが……。もともと現状の『FFXI』開発チームは少人数体制ということもあり、ここで誰かにディレクターという大きな責務を負わせるよりは、貴重な戦力である開発スタッフのポテンシャルを、このままの形で最大限に引き出せるようにしたほうがいい、という判断を下しました。ですので、いままでと同様にディレクターも自分が兼任することになります。
――その代わり、藤戸さんがプロデューサーとディレクターという、ふたつの重い役職を担う形になりますが……。
藤戸:そうですね。でもやっていること自体は、いままでとほとんど変わらないんですよ。これまでは松井がプロデューサーとして表に立っていましたが、その下準備や交渉などはチームで進めてきました。ですので変わる点としては、“もし何かが起こったときに(プロデューサーとして)責任を取る”という立場の人間が、ディレクターを務める人間といっしょになった、というだけですね。プロデューサーの責任が重いと言っても、これまでも半分くらいは背負っていたことですから、「じゃあ、ついでに全部背負っちゃえ」という感じです。
――精神的には、大きな変化はないと?
藤戸:と、思いたいですね(笑)。実際はいろいろ動き出してみないとわかりませんが。
――奇しくも、初代プロデューサーの田中さん(田中弘道氏)が『FFXI』運営開始より10年目の2012年に勇退、そして2代目プロデューサーとなる松井さんも就任より約10年目の今年に退任する形となりました。
藤戸:それは意識的にそうなったわけではなく、たまたま10年がひとつの区切りになっただけだとは思います。ただ10年という年月は、やはりひとつの世代・時代が変わる目安でもあるので、何かを新しく考えるにはちょうどいい契機だった、ということかもしれません。
――ちなみに今回のプロデューサー交代については、田中さんにもご報告されたのでしょうか。
藤戸:内々にはお話ししました。『FFXI』は田中さんが立ち上げたプロジェクトですので、まったく知らない者がいきなりプロデューサーを引き継ぐとことになったら礼を失するかと思いますし、そこはきちんとご報告させていただきました。
――藤戸さんが新たにプロデューサーに就任したことによって、プロジェクトの体制などに何らかの変更はありますか?
藤戸:現状のスタッフのほとんどは、『FFXI』の開発チームに長期間在籍しています。しかし、彼らのキャリアを伸ばすことを考えた場合、『FFXI』だけに携わり続けていることで機会を失う部分もあると思っているのです。
例えばひとつのゲームタイトルを制作する場合、企画の立ち上げから仕組みの構築、そしてコンテンツやストーリーの量産を経てリリース版に仕上げていく、という一連の流れを最新のテクノロジーのもとで遂行できます。新たなテクノロジーに接しながらも成果物が製品になって出荷されていく様は製作者として大きなモチベーションになりますし、それを積み重ねていくことで開発者としての成長の機会にもなります。
――いわゆるキャリアパス(人材育成の道筋)の問題ですね。
藤戸:はい。一方で現状の『FFXI』では、「新しいコンテンツを実装しました、それによってプレイヤー数がこれだけ増えました」といったように、大きな区切りがない中でしか評価することができません。また、20年も続いている枯れたテクノロジーの中だけでやってきた『FFXI』の開発スタッフが、今後10年、20年とそのままやっていけるのかというと、そんなことは絶対にありません。ですから、スタッフの思考が柔軟なうちに、別の開発現場でもいろいろなものを経験してもらおうと考えています。
そして、そこで吸収したものをまた『FFXI』に還元してもらえるようになれば、それは会社全体としても、『FFXI』自体にとっても望ましいことであると思うのです。結果としては『FFXI』だけをメインで開発するスタッフは少なくなりますが、他部署との兼任だったり、勉強のために別部署に異動にしたりといったスタッフが出ることを見込んでいます。
2022年は復帰プレイヤーが大幅増加 『グラブル』コラボも大反響
――つぎに『FFXI』の今後についてもうかがえればと思いますが、その前に、運営開始20周年を迎えた昨年の動向についてお聞きします。2022年の『FFXI』は、特設サイト“WE ARE VANA'DIEL”のコンテンツ公開や、記念番組の配信など、ゲーム本編以外でもさまざまな展開がありました。
藤戸:確か18周年くらいのタイミングで、松井から「『FFXI』は20周年まで続ける」という旨の発言があったと思います。この発言を受けて、「20周年は目いっぱい盛り上げていこう」と以前から考えていました。その一環として特設サイト“WE ARE VANA'DIEL”を立ち上げ、そこを軸にインタビュー記事や動画コンテンツなどを公開しました。またゲーム本編でも、新たな物語である『蝕世のエンブリオ』(以下、『エンブリオ』)が実装され、20周年内を目処にストーリーが完結するという計画でスタートしました。
――これらの企画の結果、プレイヤー数の増加などの影響はありましたか?
藤戸:おかげさまで20周年となった2022年は、数字的に非常に好調な推移をしまして、プレイヤー数も本当に増えました。また前述の企画の影響だけではなく、サイゲームス様よりご提案いただいた『グランブルーファンタジー』とのコラボレーションの影響も非常に大きかったですね。
――確かにコラボの注目度は高かったですね。
藤戸:これまで我々が声を出して届いていた範囲の、さらに外側にまで声が届いた、という印象です。過去に『FFXI』をプレイしていた人にとっては、『プロマシアの呪縛』や『アビセアの覇者』のヒロインであるプリッシュが登場することもあり、それを知った元プレイヤーの人からの「まだ『FFXI』ってサービス継続していたんだ!」という声がとても多かったですね。これをきっかけに「20周年ならばヴァナ・ディールに戻ってみよう」と思っていただけた方が非常に多かったのではないでしょうか。現に、コラボ開催の翌月などは復帰されたプレイヤー数が非常に多く、かつてない水準の同時接続数となりました。
今後の『FFXI』はより安定・安心できるプレイ環境を目指す
――そんな2022年を踏まえ、藤戸プロデューサー兼ディレクター体制としての、今後の『FFXI』の方針についてお聞かせください。まず、これまでと変わらず継続していく部分はどういった点になるでしょうか?
藤戸:現在は月替わりでエミネンスレコードやアンバスケードを更新していますが、これらのための月に一度のバージョンアップは、今後も必ず継続していこうと思っています。なおバージョンアップの内容についてですが、これからもつぎつぎと新しいコンテンツを追加していく、といったようなことは現在の体制ではさすがに難しい状態です。一方で、今後は“『FFXI』の安定化”や、“各プレイヤーのさまざまなPC環境下でも問題なくプレイできる”という部分を保証したいと考えており、その部分に手を入れていくことを重視します。
――逆に、今後「ここを変化させたい」と考えている部分はありますか?
藤戸:これまでは“コンテンツを楽しむ”という部分を中心に据え、バージョンアップごとに新たなコンテンツを提供してきましたが、今後は“コミュニティで盛り上げる”という面も考えたいですね。たとえば、定期的に開催されているシーズナルイベントやスクリーンショットキャンペーン、さらにはゲーム外のイベントについても、もう少し規模を大きくして実施できないかと思っています。
――具体的にはどのようなものを検討されていますか?
藤戸:たとえば、このコンテンツをここまでクリアーした、ということをワールドごとに集計し、それによって何か報酬が得られるようにするなど、ワールド内のみんなが協力して、ひとつの大きな目標に向かってクリアーを目指すといったものを模索しています。かなりふんわりした言いかたになってしまいましたが(笑)、これから企画を固めていき、5~6月ごろには具体的なお話ができるようになるのではないかと思っています。
――ドメインベージョンがさらに発展したようなイメージでしょうか?
藤戸:そうですね。初期のコンクェストやビシージの連勝記録であったり、要は“プレイヤー間でのムーブメント”を作り出したいということです。そしてそれらの企画の結果、プレイヤーの盛り上がりを生み出せるのであれば、いずれはリアルのファンイベントとしても昇華できたらいいなと考えています。
――なお、ワールド全体での協力となると、ワールドごとのプレイヤー数の差も気になりますが……。
藤戸:もちろん、その点は配慮します。現在は北米のプレイヤーが集まりやすいワールドとしてAsuraがかなりの人口を誇っており、単純な累計スコアでは他ワールドに比べて達成しやすくなるのは当然です。ですから、たとえば“全ワールドで合算した値”で目標値をクリアーできるかなど、やりかたはいろいろあると思っています。
――コミュニティの面では、『もぎヴァナ』や海外プレイヤーに向けた『FINAL FANTASY XI Digest』などの、配信番組の今後も気になります。こちらはいかがでしょうか。
藤戸:現状では未定な部分が多いのですが、今年についてはまだ新規コンテンツの実装予定がいくつもありますので、回数を若干、間引く可能性はあるものの、引き続き配信を予定しています。とくに『もぎヴァナ』については、周年記念となる5月と、『FFXI』の月でもある11月は必ず放送しようと思っています。以降もまだ未確定になりますが、今後も何らかの配信はしていこうと考えています。
――つぎに、2023年2月のバージョンアップで実装された“タームフィルター”(プレイヤーごとに“NGワード”を設定できるチャットフィルター機能)についてうかがいます。ここに来て新たなシステムが実装されるとは予想外でしたが、今後もこういった施策は継続されるのでしょうか?
藤戸:先ほどもお話ししましたが、今後はこのような“プレイの快適さを支える要望”を反映していくことを重視したいと思っています。他者のハラスメント行為や不正行為に対して対処してほしいという要望はたくさんいただいており、そこへの対応策はなるべく取っていきたい。今回のタームフィルターはその一環として、開発から“こういうものを作りたい”と上がってきた案件でした。
ただ、どこまで効果があるかは作ってみないとわからない部分もあり、事前にそれほど喧伝はしませんでした。しかも仕様上、使う方ご自身でファイルの準備やフィルタ内容を設定しないといけないので、人を選ぶ機能になってしまっているのは申し訳ないなと思っています。
――確かに、タームフィルターの設定はある程度PCの扱いに慣れていないと、少しハードルが高いと感じました。
藤戸:ですので、今後の実装物については「こういった対策のための機能を実装しました」というだけでは終わらずに、そこから先も手を入れてより使いやすくしていきたいと考えています。
『エンブリオ』の最終バトルは新フィールドで! 新たなマスタートライアルも登場
――いよいよ物語が佳境を迎えつつある『エンブリオ』についてもうかがいます。2023年1月実装分では、かなり衝撃的な物語の展開があり、また驚くべき敵との戦闘がありました。今後の展開の進捗や見どころをお聞かせください。
藤戸:2月に放送した『もぎヴァナ』でも少し触れましたが、いよいよ最終回となる第11回の前編が3月に実装され、そしてすべての結末となる後編が5月に実装予定となります。最後に向かってスタッフ一丸で制作している最中なので、かなりいいものに仕上がるのではと期待しています。
とくに最後の戦闘となる場所は「いままでとは違う新しい表現でやりたい」ということで、2年前からそのためのバトルフィールドを制作していました。いまはもうほぼでき上がっていて、エフェクトやサウンドを組み込んでいる最中です。この戦闘のために新しい楽曲も準備してもらって、先日すでに水田(水田直志氏。『FFXI』コンポーザー)が録音を済ませました。この新しい戦闘曲とエンディングに流れる曲は、5月の実装時に聴くことができます。
――新たなバトルフィールドについて、もう少し詳しくお願いします。
藤戸:新しいエリアを作るのは、『ヴァナ・ディールの星唄』の醴泉島(れいせんじま)以来になります。醴泉島自体ももう何年も前に作られたものですし、当時手掛けたスタッフは現在別の開発チームに移っていますので、今回は彼らに『FFXI』の開発を手伝ってもらう形でお願いしました。
ちなみに、開発機材も古いものをイチから組み直して使用していたのですが……2022年12月に実装予定だった『エンブリオ』が、1ヵ月延期になりました。じつはあれは、作業の途中で機材が故障してしまったことが直接の原因でした。なにぶん古い機材なので、別のものを取り寄せるにもかなり時間がかかってしまって……。あのときはプレイヤーの皆さんにご迷惑をお掛けしました。いまはもうリソース自体は組み上がりましたので、仮に機材が壊れても大丈夫です(笑)。
――かなり綱渡り的な状況だったのですね。
藤戸:めちゃくちゃ綱渡りでした……。先ほども「定期的に新コンテンツを提供していくのは難しい」というお話をしましたが、こうした機材の老朽化も大きな要因のひとつになっています。「開発機材が壊れたので別のものに交換しよう」となっても、交換した機材が壊れている可能性もあり、実際に使ってみるまで正常に作動するかどうかわかりません。このような状況なので、今後新コンテンツを提供するための安定的な開発環境を整えることは難しい、と判断せざるを得ませんでした。
――なるほど、そのような要因もあったのですね。
藤戸:……と、そのようなことを聞くと、これからの方針に若干不安を感じてしまうプレイヤーの方もいるかとは思います。でも、こちらとしても「何か新しいことをやりたい」という気持ちはつねに変わらず持っていますし、なにより『FFXI』を放置する、ということはまったくありません。それは今後、毎月行われるバージョンアップからも感じ取っていただけるだろうと思っています。
――『エンブリオ』完結後についてですが、既存のコンテンツに何か追加要素はありますか?
藤戸:現状のエンドコンテンツと呼べるものは、オデシーの“シェオル ジェール”とソーティのふたつがありますが、ジェールに関してはVeng25が当初から予定していた最終形となります。一方でソーティについてはまだ完結していない状態で、『エンブリオ』をクリアーすることでスタートする“プライムウェポン強化のためのコンテンツ”としても利用されます。今後はエンピリアン装束の強化やジョブ専用耳装備の取得に加えて、プライムウェポンの強化のためにもソーティに通っていただければと考えています。
――『エンブリオ』完結後に予定されている新たなコンテンツはありますか?
藤戸:『エンブリオ』完結後にプライムウェポンを強化できるようになるわけですが、せっかく作っても「使う場所がなくては意味がない」ということになりますよね。かといって、プライムウェポンの力試しとなる新コンテンツが、今後プレイしていくうえで必須なものになってしまうのもどうかと思うので、新しいマスタートライアルをいくつか企画しています。これまでのマスタートライアルでは、武器としての実用性はないものの白く光る特殊な武器をクリアー報酬として入手できました。しかし、これまで実装された両手剣などの武器種以外にも、未実装のものがいくつかありますので、それらを新マスタートライアルで入手できるようにすることを予定しています。
――おお! それは入手できる武器種も含めて気になります。
藤戸:前述のように、この新マスタートライアルは“プライムウェポンの力試しの場”という意味合いもありますので、これまでのものより難度はかなり高めになると思います。登場する敵もふさわしいものを用意していますので、楽しんでいただけると思いますよ。
――ちなみに、プライムウェポンの最終段階への強化については、『エンブリオ』のクリアーが必要になるのでしょうか?
藤戸:はい。『エンブリオ』のクリアーが必要になりますが、そのあとは自分のペースで最終段階まで強化を進めることができるようになります。早い人なら、年内にひとつは完成するのでないでしょうか。
――年内にひとつ!? 完成までに約半年はかかるということでしょうか?
藤戸:実際には、もっと早く完成させてしまう人も出てくるかもしれません。ただ、プライムウェポン強化の主体となる場所が、いまのところ20時間に1回しか入れないソーティですので……。なお、これまで混雑が続いていた対策として、2月のバージョンアップでレイヤーエリアを追加したのと、また少々トラブルもありましたが、続く3月バージョンアップでソーティへの入室待機列の処理方法に調整をいれました。これで以前よりは待ち時間が短くなっているのではないかと思いますので、敬遠されていた方はこの機にトライいただければと思います。
――強化の行程は、かなり歯応えのあるものになりそうですね。
藤戸:そうですね。現状でのプレイスタイルに即して、ソロでもコツコツ強化できるようにはしてあります。ただ最終段階の強化については、少々きびしい、という感じになるかもしれません。なお、プライムウェポンを最終段階まで強化すると、いわゆる“モヤモヤ”が付くようになります。
新プロデューサーとしての抱負 そして冒険者へのメッセージ
――それではまとめとして、『FFXI』の新プロデューサーとしての抱負をお聞かせください。
藤戸:『FFXI』では新年度のプロジェクト目標を毎年考えているのですが、それとは別に新プロデューサーとして個人的な目標も作りました。それは、“何らかの形で『FFXI』を残していきたい”ということです。いまの世の中はスマホゲームやPCゲーム、家庭用ゲーム問わず、オンラインのゲームが主流になってきましたが、それらはサービスが終了してしまうと何も残らない、というケースが本当に多いのです。
仮の話ですが、20周年を迎えて多くの人で盛り上がった『FFXI』というタイトルが将来的にいつか終了して“思い出しか残らない”ということになるのだけは、絶対に避けたい。ヴァナ・ディールに存在していたキャラクターたちがどのように動いていて、どんな空気感で当時プレイしていたのか、ということを、どんな形でもいいので記録を残していきたいと考えています。
――その一環として、特設サイト“WE ARE VANA'DIEL”などを企画されたのでしょうか。
藤戸:はい。そういう意味では“WE ARE VANA'DIEL”は、いわば“ゲームの外側から見た『FFXI』の軌跡”ということになります。しかしそれだけではなく、自分としてはもっと内側からの記録……どんなゲームで、どのようなワールドがあり、どのようなシステムが使われていたかに始まり、最終的な理想としては“ゲームの形として別タイトルになっても『FFXI』がちゃんと残っている”ということを目指したいと思っています。もちろん、そこにいたるまでは膨大な手間が掛かりますので、いまは各種資料をしっかりと形に残していこうと考えています。
――最後に、ヴァナ・ディールの冒険者の皆さんにメッセージをお願いします。
藤戸:ここまでの話で「『FFXI』は近々サービス終了を予定しているのではないか」と不安に思わせてしまうようなことも言ったかもしれませんが、そんなことはまったくありません。今年はサーバーリプレイス(老朽化したサーバーを新しいものに取り替えること)も予定していますし、サービス終了が間近だったら、そもそもプロデューサーを新たに立てる、ということもありません。プライムウェポンについても、人によっては完成に何年もかかってしまうでしょうし、そんな状況でサービスを終了してしまうのはさすがにひどいでしょう(笑)。
ですから、より多くの方にヴァナ・ディールを最後までしゃぶり尽くしてもらうために、安定した環境を維持し続ける――そのための準備や土台作りをもう何年も前から進めています。今回の体制変更は、『FFXI』のサービスを継続させていくための、サービスを終了させないための施策だと考えていただけたらと思いますので、今後もぜひ『FFXI』を楽しんでください。
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