“厦門国際ゲームコンテスト”金、銀、銅賞受賞者インタビュー。日本インディは1人開発が多い!【電撃PS】
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中国・厦門で開催された“厦門国際アニメマンガフェスティバルゲームコンテスト”。今年のコンテストでは、最優秀ゲーム賞の金賞・銅賞を日本のインディタイトルが受賞、他の賞についても多数の日本タイトルが受賞するなど、大きな盛り上がりをみせました。
アワードセレモニー後、最優秀ゲーム賞を受賞した『ジラフとアンニカ』『东东(DONG DONG)』『MeltLand』の開発者にインタビューを実施。受賞の感想や今後の予定などを伺った。
金賞『ジラフとアンニカ』
――最優秀ゲーム金賞受賞おめでとうございます。今のお気持ちはいかがでしょうか。
斉藤敦士氏(以下、敬称略):そうですね、ちょっと驚きました。受賞については全く予想していませんでした。
――斉藤さんが最初のプレゼンでしたが、その後のタイトルを見ていても『ジラフとアンニカ』はすごいなという印象でした。
斉藤:よかったです。自分だとウケているのかよくわからないんですよね。
――他のタイトルの印象はいかがでしたか?
斉藤:銀賞を受賞された『东东(DONG DONG)』は特に印象に残りましたね。日常、現実をテーマにすることは私も最初に考えたのですが、ちょっと自分には難しいかなと避けた部分でした。
実は『ジラフとアンニカ』は日本を舞台に作ろうとしていました。元々マンガのネタとして考えていて、そのときは日本が舞台だったのですが、いろいろな理由で洋風にしたほうが都合が良かったんです。
でも『东东(DONG DONG)』はストレートにアセットも作って、しっかりと自国を表現されているのでよかったですね。
――『东东(DONG DONG)』はチームで開発しているという点も大きいかもしれませんね。
斉藤:それもありそうですね。コンセプトの段階で一番興味を惹かれた作品でした。
――『ジラフとアンニカ』は”ジブリっぽさ”があると思うんですけど、そういった部分からの影響はありましたか?
斉藤:それはあると思います。ジブリ”というよりは世界名作劇場系なんですけど。赤毛のなんとか……(笑)。
――戦わないとか全体的に優しい世界観が印象的ですが、そういった狙いがあるのですか?
斉藤:そうですね。そうしたいというのもありましたし、アンニカに棒を振らせてみたのですが、違和感があったんです。なんでこの子は棒で叩いてるのだろうと。”ゲームだから”って理由で済ますこともできるのですが、やはりちょっと変でした。
アクションゲームだと、アレ入れなきゃ、コレ入れなきゃというのがあると思うのですが、そういった部分は割り切って消してしまって、自分の伝えたい所に絞った感じです。
――本作の戦闘はリズムゲームですが、リズムゲームはお好きなんですか?
斉藤:以前はイニスというリズムゲームが得意な会社で働いていたので、リズムゲームは好きですね。そこでは『押忍!闘え!応援団』というタイトルを開発していてマンガの表現などもやっていたんです。
46歳にもなり、年齢的にゲームを作るキャリアとして折り返し地点だと思ったので、『ジラフとアンニカ』ではその総決算的なところもやりたいと考えていました。
――賞金の使い道はどうされる予定でしょうか?
斉藤:賞金は海外のイベントの遠征費用などに使えたらと考えています。
――具体的にはどこのイベントに行く予定ですか?
斉藤:来年の台北ゲームショウには行く予定です。丁度厦門からも近いですし。それ以降は決まっていないのですが、ヨーロッパかアメリカのどちらかに行けたらいいなと思います。
――訪問予定の地域では販売するという感じでしょうか?
斉藤:そうですね。市場が大きいのは英語なので、英語は絶対に対応しなければいけませんし、中国語も今後は絶対かなと思っています。Steamだと30%のユーザーを占めているんですよ。ちなみに日本語は1%です。なので対応しないという選択肢はないかなと。
――この世界観はマンガとかアニメなどで展開しても面白いかもしれません。
斉藤:そうですね。ただ話自体はきれいに終わっているんですよ。続編があるような形にしていないので、シリーズ化とかは難しいかもしれません。
――アンニカが死ぬなんてことはないんですよね?
斉藤:アンニカは死なないですよ! 本作はインディなのですごく低予算で作っていますが、本当はもっとちゃんとしたのを作りたいのでちゃんと売れてほしいと思っています。開発も今は1人ですが、別に好きで1人でやっている訳ではありません。
3Dモデルや音楽は外注していて、フルタイムでやっているのが私だけなんですよ。なのでフルタイムで動ける仲間がもう1人ほしいなと思っています。でもこれがコケると多分ないですね。
――昨年金賞を受賞した『RPGタイム!』も2人で開発されていましたね。
斉藤:『RPGタイム!』は2人でやっているのがすごい羨ましいんですよ! いろんな悩みを相談できる仲間がいるっていうのはやはりいいですね。1人よりは2人。2人よりは3人……。
――最後に、金賞を得た『ジラフとアンニカ』はどうなっていくのでしょうか?
斉藤:ほとんど完成しているんですよね……(笑)。今回賞を頂いたのですが、その賞に恥ずかしくないクオリティでリリースしたいと思っています。
銀賞『东东(DONG DONG)』
――最優秀ゲーム銀賞を受賞した感想をお聞かせください。
Pilipala Studio:皆さんの発表されたタイトルが特に素晴らしかったので、この賞を取れてびっくりしています。すごく嬉しいです。
――どれくらい開発されているのでしょうか?
Pilipala Studio:開発期間は1年間です。
――45分というプレイ時間でしたが、今後もっと長くなる予定はありますか?
Pilipala Studio:長くしたいのもありますが、もっと選択肢のあるゲームとして作っていきたいと思っています。
――現時点で選択肢はないのでしょうか。
Pilipala Studio:まだ分岐は用意していません。
――本作の開発において、影響を受けたゲームはありますか?
Pilipala Studio:背景の雰囲気の作り方などは、アニメや映画からの影響が大きいですね。ゲームからの影響は遊び方がほとんどです。
――チームの表現として、ゲーム以外の選択肢もあったのでしょうか?
Pilipala Studio:私達はデジタルアートというものを専攻しており、最初はアニメや映像などで表現してみたんです。ですが、ゲームのほうがより世界に入り込めて、ほかのメディアよりも共感しやすいと感じました。これからはもっと共感できるようなものにしたいと思っています
――『东东(DONG DONG)』は販売する予定はあるのでしょうか?
Pilipala Studio:今はまだ販売のことを考えておらず、とりあえずもっとゲームを改善していきたいと思っています。
銅賞『MeltLand』
――最優秀ゲーム銅賞に選ばれた感想はいかがでしょうか。
箱崎正崇氏(以下、敬称略):光栄です。魅力的なゲームがあるなかで、まさか選んでいただけるとはといった感じです。
――今回応募しようと思った理由をお聞かせください。
箱崎:昨年金賞を受賞した『RPGタイム!』の藤井トムさんに「応募してみたらどうか」と言って頂いたのがきっかけです。
――子供の頃から水の波紋などが好きで、『Wa Kingyo -和金魚-』を作ったあとに『MeltLand』を作ってと、好きなものを追求し続けているのはすごいですよね。どんなところが魅力なのですか?
箱崎:水の見た目も好きなのですが、同じ形を繰り返さないというか、波でも同じ形がありません。予測のつかない形とかでしょうか。
――水自体が好きなのでしょうか? 水に伴う現象でしょうか?
箱崎:現象ですね。見ていて気持ちいいし、触っても気持ちいい。水以外にもスライムやゲル状のものも好きですね。
――ちなみに『Wa Kingyo -和金魚-』を作られたきっかけは何だったのでしょう?
箱崎:昔に机の下を魚が泳ぐCMを見てから、いつか魚が泳ぐアプリを作りたいと思っていました。
――『Wa Kingyo -和金魚-』は、ゲームというよりシミュレータっぽいですよね。対して『MeltLand』のようなゲームらしいゲームになりましたが、なぜでしょうか。
箱崎:『Wa Kingyo -和金魚-』を3D化しようと水槽を作っていて、ハイトマップで高さを表現した際、「これは水槽にするよりゲームにしたほうが面白いものができるのでは」と方向転換していきました。
――それはいつ頃ですか?
箱崎:6年前ですね。
――その時は金魚はいたのでしょうか?
箱崎:金魚はその段階でストップしています(笑)。
――ゲーム開発は6年間かかったのでしょうか?
箱崎:開発自体は3年くらいですね。途中でストップして『GriGri3D』という立体視のアプリを開発していました。
――『GriGri3D』の開発は『MeltLand』に生かされているのでしょうか?
箱崎:UIに生かされていると思います。
――開発はずっとお一人だったのでしょうか?
箱崎:そうですね。今年まではプログラマの知り合いが居ないなかでやっていて、先日Googleのインディフェスで賞を取ってから知り合いができ始めた感じです。開発はずっと一人ですが(笑)
――金賞を取られた『ジラフとアンニカ』も1人で開発されていますが、日本のデベロッパーの方は1人の方が多いようですね。
箱崎:周りを見ても1人で作っている人は多いですね。好みが合えばいいんですけど、衝突するのが怖いというのもあるかもしれません。
――賞金は何に使われる予定ですか?
箱崎:開発費に使いたいのと、支えてくれている妻と子供に還元したいと思います。
――現在は開発一本で生活されているのでしょうか?
箱崎:現在はインテリアデザイン事務所に努めていて、その合間で制作しています。家に帰ると子供の世話があるので、行き帰りの電車の時間を使っていますね。
――今後は『MeltLand』のバージョンアップを続けていくのでしょうか?
箱崎:色々構想もあるので、そちらもやりたいなと思っています。ストアのほうでフィーチャーしてくれることが決まったので、そちらの効果で収益が上がるといいなと思います。
© 2019 by Atlier Mimina
© 2018 MASATAKA HAKOZAKI
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