『信長の野望・新生with パワーアップキット』開発者インタビュー! 攻城戦、評定衆など新要素追加で真の名作となり得るのか!?
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3月30日に配信された“「信長の野望」シリーズ40周年記念特番”で、ついに発表された『信長の野望・新生with パワーアップキット(以下、新生PK)』。
同番組では攻城戦、評定衆、直談といった新要素もお披露目となり、『新生』の続報を心待ちにしていた多くのファンを滾らせた。その発売予定日は7月20日!
今回は一日千秋の想いで『新生PK』発売を待つファンのために、開発プロデューサー兼ディレクターである劉迪(リュウ ミチ)氏に現在お話できる範囲での新要素のあれこれをお聞きしてみた。
劉:まず最初に、みなさんにお詫びさせてください。『新生』は発売後のセールスも好調で高い評価もいただきました。一方で、いろいろな事情が重なって、発売後のアップデートをほとんど行うことができませんでした。
――そうですね、過去の作品に比べても『新生』はアップデートが少なかったと思います。発売直後の完成度から「ここからどれだけ面白くなるんだろう」と、アップデートを心待ちにしたユーザーは少なくなかったはずです。
劉:みなさんがそのことで不信感を抱かれているのはこちらも感じておりまして、期待に応えられなかった点について、まずはこの場を借りてお詫びしたします。
――それでは本題に入らせていただきますが、『新生』では「君臣一体」を作品テーマに挙げられていました。今回『新生PK』が目指すテーマはなんでしょうか?
劉:いわゆる『新生』の「君臣一体」とは、自ら考えて行動する、まるで生きているかのような武将たちとともに天下を目指す戦国体験を指していました。『新生PK』はそのさらなる深掘りをテーマに、武将たちとどう関わっていくのか、誰を重用するのかをよりフォーカスしています。
それと開発プロデューサーである私個人の目標としては、このタイトルをもっと育てたいと思っています。というのも、『信長の野望』シリーズは弊社の看板タイトルですが、どちらかというと国内向けの作品でした。まだまだ世界での認知度は高くないので、世界中の方から看板タイトルと思ってもらえるように届けていきたいと思っています。
――確かに過去シリーズで、英語に対応しているのは『創造』以降のみですね(※Steam版)。
劉:日本の戦国時代がテーマということで、当社もあまり海外展開に力を入れてはいなかったと思います。最近は日本の歴史をテーマにした他社のヒット作品も見かけるようになりましたが、『信長の野望』は歴史SLGというジャンルで内容がディープなのもあって、なかなか入りにくいところがあると感じています。そこでストラテジー的な面白さをもっと伝えて、ストラテジーゲームとしての『信長の野望』を世界に広めていきたいと思っています。
すべての城が固有ってホント? 攻城戦!
――では新要素の具体的な内容をお聞きしますが、まずは公式配信でも目玉となっていた攻城戦について概要を改めて教えてください。
劉:『新生』では1枚マップ上で行われていた攻城戦を、『新生PK』では改めて1つのモードとして追加して、よりリアルな戦いを楽しめるようになります。攻城戦が発生するには特定の条件が必要で、詳細は後日公開いたしますが、「戦略上重要な戦い」という位置づけになります。ここはけっこう大事なワードです(笑)。モチーフとしては籠城戦になります。
――特定の条件とのことですが、攻城戦マップはすべて固有、206種類を用意したという話でしたよね。その数を聞いたとき、毎回攻城戦が発生するような印象を受けたんですが、そういうわけではないんですね。
劉:そうですね。日本全国にたくさんの城がありましたが、実際の戦国時代において、すべての城でが戦略上重要な戦いを行ったわけではありませんよね。あの敵が攻め寄せてきたら、ここで食い止めよう、と戦略上の位置づけを定めていた場所があると思うんですよ。河越城や金ヶ崎城、備中高松城の戦いを例にするとイメージしやすいでしょうか。
――つまり、ここで籠城しよう、というポイントを設定すればそこで攻城戦が発生する。防衛側にイニシアチブがあるわけですね。それはCPU側も?
劉:そうですね。CPU側の大名も、ここで籠城するぞと事前に指定して、各地で戦略上重要な戦いとしての攻城戦が発生するようになります。今回改めて君臣一体を深掘りしようというテーマは先ほどお伝えしましたが、攻城戦も単純に発生させる、というものではなく、武将をどう活躍させるかというところから始まりました。当時、武将が自分の領地をもらったら、そこを必死に守っていた時代でしたので、所属する城を領主たちが必死に守るというイメージになっています。
――領主たちが、ということは籠城戦は大名がいなくても采配できる……?
劉:そうですね。「この城はお前が守れ」と、指揮権を委譲する形になります。逆に言うと、CPUが籠城指定している城はプレイヤー側勢力に大名がいなくても采配が可能ということになります。
――『新生』では全盛期の織田や豊臣と戦う際、複数のルートから攻め込まれてとても手におえないような状況になっていました。籠城で采配が可能であれば、大名が戦っている逆サイドを籠城采配で守る……といった戦略が取れるようになりますね。ただ気になるのは、CPU側も籠城できるようになると攻略のテンポが悪くなりませんか?
劉:そこは私達もすごく気にしていて、慎重に調整をしているところですね。攻城戦では必ず威風が発生するなどのメリットもありますので、苦労に見合ったリターンは得られます。
――威風というと、本作はさまざまな要素が威風に集約された結果、『新生』では本格的な攻城戦の機会が少なかったです。なので、攻城戦が追加されたこと自体が意外なんですが、『新生PK』では威風に仕様上の変更はあるんでしょうか?
劉:威風の弱体化などは特にしておらず、むしろ追加効果が入ってさらに遊びやすくしています。ただ、籠城設定した城は威風で寝返らないようになっていて、制圧するためには攻城戦が必要になります。
――であれば、CPUが前の方の城をすべて籠城設定してるとなかなか大変ですし、自分側も最前列どころかすべての城を籠城設定すると思います。
劉:無条件に設定できるわけではありません。城の他の新要素にも絡む話なのでまだすべてはお伝えできませんが、“戦略上重要な戦い”に位置付けるわけですから、それ相応の籠城準備は必要になります。実際の籠城戦がそうであったように、何かしらの戦いに備える新しい仕組みがありますので、そこは続報をお待ちください(笑)。
――威風の話が出ましたが、通常の野戦に関しての変更はないんでしょうか? マップや海戦の追加などいかがでしょうか。
劉:こちらの変更はありません。ただ、不具合などはもちろん対応させていただいています。
――細かい話になるんですが、弱小勢力でプレイしているとどうしても自分が得意な、有利な戦場で戦いたくなります。郡ごとに戦場が固定化されているならば、事前に戦場の地形を偵察できてもいいと思うんですが……?
劉:そこは私達も考えた部分で、最初は事前に地形が見えていたんです。しかし、戦場に関しては「今回こんな場所なんだ~」くらいの気楽さで臨んで欲しいという思いがあり、あえて実装しませんでした。『大志』のとき戦場を選べすぎてしまい、どうしても戦略がワンパターンになっちゃうな……という反省も上がったんです。
組織がより躍動する、評定衆!
――ではもう一つの新要素、“評定衆”について教えてください。
劉:評定衆は勢力に設定できるもので、一定以上の身分が就任できる重臣のようなものになります。勢力の方針が変わるので、現代で言う会社の役員みたいなものですね。3人まで任命できる「家宰」は勢力全体にかかるバフ(強化)とデバフ(弱体)、5人まで任命できる「奉行」は政策の追加や費用削減などに影響を与えます。ちなみに家宰は家老以上、奉行は部将以上の身分が必要になりますね。
――家宰はバフだけではなくデバフもあるんですね。
劉:開始時の所属武将が持つ家宰効果は、各勢力で方向性を設けています。例えば織田であれば鉄砲が強くなる家宰効果、武田であれば騎馬が強くなる家宰効果を、という感じですね。任命すれば結果的に織田は鉄砲が強く、武田は騎馬が強いといった方向性を持つことになるんですが、これはいわば『大志』の志のようなイメージになります。今作は「君臣一体」がテーマなので、家臣を任命することで方向性が決まる形にしています。
――なるほど。『大志』のときにあった志は、勢力の独自性を出せた良システムだと思っていました。『新生』でその要素がなくなったのが残念だったんですが、こういう形で再び独自性を表現されているのはうれしいですね! 任命の人選によって付け替え可能なのもワクワクできます。
劉:それと奉行も戦略性に大きな影響を及ぼすことになります。じつは固有政策に関しても別勢力で発令可能になるんです。
――! つまり織田信長を配下にすれば「天下布武」を自勢力で使えるようになるというわけですか。あれ、でも例えば北条家の「五箇条の訓戒」だと氏康、氏政ら複数の候補者がいるわけですよね。誰が固有政策を持っているんだという選別はどうなってるんでしょう?
劉:これは個別に設定していまして、全員ではないんですが、血族であれば固有政策を持っていることが多いです。実は血族の一門というと、他の大名家にもいますよね……。
――!! つまりあの大名家やあの大名家でも「五箇条の訓戒」を使える可能性があるわけですか。北条家の強さを支えている強政策ですから、これだけでもCPUの勢力拡張に変化がありそうですね……。評定衆というと『戦国立志伝』の家臣団くらいのものかなと甘く見てたんですが、家宰も奉行も戦略に大きな影響を与えそうですね。
劉:家臣団とモチーフは似ていますが、内容は大きく違っていますね。また、自由に任命できるわけではないので、早く昇進させるために重用したり、固有政策が欲しければその勢力を滅ぼしにいったりと、戦略性も上がっていると思います。
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一武将との駆け引き、直談
――こちらも新要素となる“直談”について教えてください。
劉:直談はさまざまな条件下で発生するもので、条件をつけて相手と直接交渉するものになります。『大志』の調略と見た目は似ていますが、条件をさまざまに提示できたり、寝返り調略以外のシチュエーションも多く、まったく別のものです。自分から実行できるものもありますが、多くは進行中に自然と発生するものとなります。
――画面を見たとき、一番うれしかったのが寝返り相手に身分を提示しているところでした。毎回、組頭からやり直してもらうのが大変で……。
劉:そこはちょっと勘違いされてる部分でして、身分を提示しているのではなく、所領を安堵していて、その結果としての身分提示なんです。侍大将以上の地位がないと城主にはなれませんから……。つまり身分だけを餌に交渉を持ちかけることはできません。
――直談は、寝返り以外にどんなシチュエーションがあるんでしょう?
劉:出奔を直前で引き止めたり、登用を一度断られた捕虜と交渉したりなど、交渉に成功する可能性がある場合に発生するチャンスタイムみたいなものです。あとは交戦中の講和交渉ですね。
――直談での講和は戦略にものすごく大きな影響を及ぼしますよね。
劉:そうですね。一定期間の停戦を結べるほか、城の明け渡しやほかの勢力との交渉を制限するなどの条件を付加することができます。相手から持ちかけられたときに足元を見て条件を追加しすぎると、「それなら停戦期間増やしてよ…」となるのでさじ加減も必要です(笑)。
――正直『新生』は大国を相手にすると怒涛のように敵が流れ込んできて、難易度が高いというよりもプレイヤー側が対処に疲弊してしまった面はあると思います。“わんこそば”なんて言われてましたが、直談による停戦でいわば息継ぎができるようになったのはありがたいですね……。
劉:ちなみに直談ではありませんが、抗戦すると敵の攻撃が止まらなくなる件に関しては新しい仕様を設けて幾らか制限がかかるようになります。もちろんプレイヤー側にもかかる要素なんですが……遊びやすくなったと感じてもらえるはずです。こちらは後日の情報公開をお待ちください。
そのほか気になる要素は?
――PVでは武将2200人とありましたが、『新生』の時点で2200人を謳っていました。『新生PK』での武将追加はないんでしょうか?
劉:いえ、追加武将ももちろんいるのですが、そこまでの数ではないので2200人という表現に替わりはなかった感じですね(笑)。
――公式配信では織田信雄の新グラフィックが話題になっていましたが、新グラフィックに関してはどうでしょうか?
劉:数はまだ伏せますが、新しい顔グラフィックも多く用意しています。近年注目されている武将や、シリーズファンなら「やっとか!」と思ってもらえるようなチョイスもしています。また固有特性は結構な数を追加していますね。聞きたいかなと思っていくつか持ってきました(笑)。
まずは「赤備え」。これは山県昌景ら複数の武将が持っているんですが、最初に敵と接触した際に敵の体力を減らす効果があります。山県の場合は戦法で敵の体力を減らすこともできるので、相乗効果であっという間に敵の体力をなくすことができますね。
次は蒲生氏郷の「鯰尾兜」。これは戦場で一番槍を取ると自軍全体の攻撃力を強化できるというもので、蒲生の逸話にちなんだ能力となっています。
それと吉川元春の「百戦錬磨」。これは体力が減っても能力がほとんど下がらないというもので、粘り強く戦えます。『新生』の合戦は体力の影響がかなり大きいですから、吉川なら1人でもそうとう粘れるようになるんじゃないでしょうか。
最後に細川藤孝の「右文左武」は、所属城のすべての特性レベルを+1するというものです。「竜騎兵」のような他の特性を上乗せでき、すべての特性を強化するので影響は大きいです。このほかにも特性はたくさん追加しているので、続報にご期待ください。
――どれも滅茶苦茶便利そうじゃないですか……。ちなみに新特性以外の見直しなはされてるんでしょうか? 具体的には稲富祐直に砲術は追加されたのか、なんですが。
劉:すみません、追加しました……。ですが厳密には砲術ではないので、リリースされたら是非チェックしてみてください(笑)。また、一部の武将は特性の見直しも行っています。
――PVでの文言ですが、充実の編集機能とありました。こちらは過去の『PK』で出来たことは一通りできるということですよね。
劉:そうですね。武将編集など基本的なものは入っています。イベント編集機能は入っていないです。
――個人的に一番注目しているのが新勢力作成です。新勢力作成があるということは、築城がある、築城があるということは郡の紐づきの移し替えがあるってことですよね?
劉:そこに関しては申し訳ございません。今回築城要素を入れることはできませんでした。築城を入れると城に紐づいた郡のシステムをすべて見直すことになってしまって、とてつもない労力がかかってしまいます。私たちも最後まで実現する方法を探っていたんですが、入れられる新要素が大幅に減ってしまう程の大きな仕様変更になりそうだったんです。
――残念ですが仕方ないですね……。では新勢力はすでにある城を譲ってもらう形なんでしょうか?
劉:そうですね。本拠を譲ってもらうことはできないので、複数の城を持つ勢力から譲ってもらう形になります。
――『新生』が発売してからたぶんずっと言われ続けてると思うんですけど、北条強いですよね。CPUのルーチンの変更などはあるんでしょうか?
劉:今調整している段階で、なんらか手を打ちたいと思っています。我々としては意図的に北条を強くしたいつもりはなくて、城の所持数が強さに影響することや三国同盟などシステムと合致して結果的に強くなってしまうんです。ただ北条一強を良しと思ってるわけではありませんので、武田や上杉も含めて伸び方が変わる形にはしたいですね。
――こちらもバランスの話なんですが、CPU同士が外交していないように見えるんですが、そこは調整されるのでしょうか?
劉:CPU側も外交はしています。ただ、あまり活発に外交を行うと、発生するはずのイベントが発生しない、ということもあり、『新生』ではイベントを崩さないために、あえて止めていた部分はあります。イベントと関係ないところでは静かに動いてはいたんですが、あまり積極的ではなかったですね。でも評定衆の外様の件もありますし、外交しないのも変ですので手は入れています。まだ調整中なのでどういう形か明言はできませんが、外交に動きがあるようにしたいですね。
――では最後に『新生PK』を待ち望んでいるユーザーのみなさんに一言お願いします。
劉:『新生』は発売当初に高い評価をいただいたものの、アップデートができなかったことで厳しい言葉をいただく結果になりました。期待をしてもらっていただけに、申し訳ない気持ちです。そのぶん『新生PK』は力を入れて、『信長の野望』の最高傑作、「君臣一体」をテーマにした唯一無二のプレイ感をお届けするつもりですので、ご期待いただければ幸いです。
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