『シェンムーⅢ』レビュー。シリーズ初プレイでも安心! 住人たちとの交流に癒やされる……【電撃PS】

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 11月19日に発売されたPS4/PCソフト『シェンムーⅢ』。本作は18年ぶりとなるシリーズ最新作で、アクションアドベンチャーとして非常に自由度の高い作りになっています。

 筆者はシリーズ初プレイだったのですが、とにかく『シェンムーⅢ』は独特な作品! ゲーム自体はアドベンチャーとバトルパートを繰り返して進んでいくオーソドックスな作りですが、村や街、人々の作り込み、演出の見せ方などによって、本作ならではの雰囲気をかもし出しています。

 ほかのゲームと同じように『シェンムーⅢ』をレビューするなら、プレイフィールに関して少し気になる部分が目立ちます。たとえば、初見の会話シーンがスキップ不可能であり、スタミナがなくなるとダッシュできなくなるなど。ただ、不思議なことに『シェンムーⅢ』では、そういった部分が作品にいい味を生み出しているんですよね。単純にプラスな点はプラス、マイナスな点はマイナスというわけではなく、各要素が『シェンムーⅢ』という作品を構築しています。

 本作を手掛けたクリエイターの鈴木裕さんは、公式サイトで「ゲームが嫌いなわけではなく、現実の方が楽しいから、ゲームをプレイする時間がなくなってしまう。でも、作ることは好きだ」「ゲームの枠を超えたところにある楽しさを、新しい遊びにかえて、ゲームユーザーに届けたい」と表明しています。そういった想いが、本作のような独特のゲームを作り上げているのだろうなと思いました。以下で、どのような点が独特であるのか説明しましょう。

『Ⅰ』から続く壮大なストーリー

 主人公の芭月涼が父の仇を討つため、各地を旅して友と出会ったり、戦いを繰り広げたりしていく『シェンムー』。1999年に第1作、2001年に第2作が発売されており、本作はシリーズ最新作になります。

 ストーリーに関しては『Ⅱ』のエンディング後となっており、完全に続編となるストーリーが描かれます。過去作のダイジェストムービーが収録されているので、シリーズ初プレイの自分でもなんとなく物語の流れが理解ができました。もちろん、より深くストーリーを知りたい場合は、PS4で『シェンムー Ⅰ&Ⅱ』が発売されているので、そちらをプレイするのもアリです。

『Ⅱ』のラストでは、中国の奥地である桂林の白鹿村でヒロインの玲莎花(レイ・シェンファ)と運命的な出会いを果たし、村に隠されていた鏡と同じ、巨大な龍と鳳凰のレリーフを発見するところでエンディングを迎えました。本作は、その続きとなるストーリーで、白鹿村をはじめとした桂林の人々と交流をしつつ、父の仇である藍帝の行方を捜してくことになります。

すべてのキャラクターから感じられる個性とリアリティ

 オープンワールドの元祖とも言われる『シェンムー』ですが、注目すべきは行動範囲の広さよりも、その密度になっています。本作では少しでもイベントが進むと、そこに住んでいるほぼ全キャラクターのセリフが変わるので、情報を集めるために彼らと会話をしているうちに親近感が沸いてきます。

 彼らにはそれぞれルーチンワークがあり、夜になると自分の家に帰るなど、NPCではなく1人の人間として作られています。そのため、本作には脇役というキャラクターがいないんです。さらに多彩なサブクエストも用意されており、これらをこなせば彼らとの交流をさらに深めることができます。

 また、こういったアクションアドベンチャーの場合は、敵とのバトルが頻繁に発生することが多いのですが、本作では村の人たちとの交流が中心。例えば、作中の最初の舞台・白鹿村では、美しい景観を味わいつつ、のんびりと暮らす人々と仲よくなっていくという体験ができます。これは、ほかのゲームでは味わえない感覚でしたね。

 作り込まれているのはキャラクターだけでなく、彼らの住んでいる家の中も同様。引き出しやタンスを開けることができ、生活を垣間見ることができるようになっています。こういう細かい作り込みが、本作をリアルにさせているのでしょう。

 そしてプレイヤーが一番付き合うことになる、主人公の芭月涼。彼もまた『シェンムー』に登場する住人、いやそれ以上に個性的なキャラクターになっています。ひとことでいうとストイックな人物なのですが、ぶっきらぼうというわけでもなく、どちらかというと礼儀正しい男です。昔ながらの日本男児という感じでしょうか。ただ、その受け答えが独特で、変に抜けているところがあるというか……。そのせいか芭月涼の一挙一動から目が離せなくなってしまいました。

 また、本作で見逃せないのがヒロインの莎花。白鹿村では、莎花の家が冒険の拠点となりますが、彼女が晩ごはんを作ってくれ、出かけるときに「いってらっしゃい」と言ってくれるのが、なんか新婚っぽくてドキドキしました。とくに料理をしているときは近くによると、トントントン……と包丁で食材を切る音が聞こえてきて、リアルで温かい気持ちになります。

世界観に合ったアルバイトやミニゲームの存在

 父の仇を追うという目的がある本作ですが、アルバイトやミニゲームなど、多彩なミニゲームが用意されています。昨今のハイエンドのゲームだと、ミニゲームも本格的なものが遊べたりもしますが、本作で遊べるミニゲームはまさにミニゲームといったものばかり。

 白鹿村で遊べるのは銀玉を落として遊ぶパチンコのような“落とし玉”や、石を投げてポイントを稼ぐ“石投げ”など、渋いものばかり。派手さはないものの、村の雰囲気に合っていて世界観を損なうことなく、単純ながらハマッてしまって楽しいです。

 お金稼ぎは、薪割りのアルバイトや生薬を集めるなど、独特なものを用意。お金はミニゲームを遊んだり、回復アイテムを購入したりするときに必要ですが、その入手方法も村の生活に密着しており、別のゲームをプレイしているような違和感はありません。すべての要素がしっかりつながっているのが『シェンムーⅢ』のポイントですね。

 なお、バトルの要素は少ないと書きましたが、涼の目的は仇討ち。本作では寸拳、馬歩、散打などの修行でパラメータを上げることができ、各地の道場で試合を行って自由にバトルを楽しむことも可能です。試合に勝てば段位が上がっていくので、最高位を目指すのもあり。

 ちなみに、本作では技書というアイテムを使うことで新しい技を覚えられます。この技書はお店で購入したり、各種アイテムを集めて交換したりすることで入手可能。いろいろな技を使えるようになれば、よりバトルも派手でかっこよくなります。

物語が進むと新たな舞台が登場!

 最初の舞台である白鹿村だけでも、やり込み要素がたくさんある本作ですが、次の舞台となる鳥舞は広大な街となっています。より多くの店や人々が登場するので、探索のしがいがあります。

 新たなミニゲームなども登場。過去作のキャラクターに国際電話をかけることもできました。そのほか、鳥舞の街のいたるところに隠されている、マスコットキャラクターの“ちょうぶちゃん”を見つける遊びも!

 舞台が変わることで、これだけおもしろさが変わる作品は記憶にありません。完全に旅気分というやつでしょうか。初めて白鹿村を歩き回ったとのと同じような気持ちを、再び味わうことができました。

 本作はクラウドファンディングで資金を集めたゲーム。正直、プレイするまではそこまでボリュームがあると思っていませんでした。ただ、実際にプレイすると、とにかく奥が深くてやることがたくさん! そしてプレイすればするほど、登場するキャラクターや舞台のことが好きになっていきます。ぜひともじっくりプレイして、この『シェンムーⅢ』の世界に浸ってください!!

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シェンムーIII

  • メーカー: Deep Silver
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: アクションADV
  • 発売日: 2019年11月19日
  • 希望小売価格: 6,980円+税

シェンムーIII(ダウンロード版)

  • メーカー: Deep Silver
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: アクションADV
  • 配信日: 2019年11月19日
  • 価格: 6,980円+税

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