『Q REMASTERED』再ブームの鍵はVtuber!? 『空気読み。』『Q』と配信者向けヒットゲームを連発する栗田Pに直撃インタビュー

電撃オンライン
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 昨今、多くのVtuberやゲーム実況配信者に取り上げられ、話題を集めているパズルゲーム『Q REMASTERED』。2015年にアプリとして登場した原典『Q』から数えると、じつに8年の時を経ての再ブーム──そこにはどのような仕掛けが存在していたのか? そして開発スタッフは、この現状をどのようにとらえているのか? 気になるあれこれをプロデューサーの栗田祐介氏と、プロモーションを担当している石井英貴氏に聞いた。

 なお、インタビュー後半では続編となる『Q 2 HUMANITY』についてもお話しいただいているので、ファンは要チェック!

栗田祐介氏
株式会社リイカ ゲーム事業本部ゲーム開発部 部長
ゲームデザイナー/ディレクター/プロデューサー/グラフィックデザイナー
1976年生まれ。千葉県出身。2002年株式会社マトリックスにプランナーとして入社。2008年株式会社ジーモードにて自身初のヒットタイトル『空気読み。』を制作。2012年より株式会社リイカに在籍『Q』シリーズを手掛ける。

石井英貴氏
株式会社リイカ ゲーム事業本部ゲーム運営部 部長
株式会社GameOn、DMM.comラボにてPCオンラインゲームタイトルの運営PDを経験。2016年よりliicaに在籍。現職ではソーシャルゲームの運営及び受託運営、海外アライアンスを主体とした新規開発を行っている。

実況配信が人気の火付け役に! プレイヤーの姿を見て浮かび上がってきた開発者のジレンマとその解決策

──人気Vtuberや動画配信者たちの実況プレイなどをはじめ、さまざまな界隈で話題を集めている『Q REMASTERED』ですが、そもそもどういう流れでVtuber方面に広がったのでしょうか?

栗田:最初のきっかけは、2月初旬に“にじさんじ”の樋口楓さんがライブ配信をしてくださったところからです。本当に感謝しかありません。

栗田:社内ではスマホアプリの頃から「『Q』は動画映えする」という話をよくしており、自信もあったのですが、昨年の『REMASTERED』のリリース直後は一切反響がなくて。もしこれがダメだとすると、今、どういうものを作っていけばいいのか……? と、ゲーム制作者としてわからなくなっていたところがあります。

 そんななかで、樋口楓さんをきっかけとして盛り上がっていただけたことは純粋に嬉しく思いましたし、自信にもなりました。……反面、本音としては課題のほうが多く見つかった側面もあります。数々のライブ配信を視聴してよくわかった『Q』のダメな部分ですね。

──『Q』のダメな部分……具体的にはどのへんでしょう?

栗田:配信を拝見していて、長時間同じステージで足踏みしているときにハラハラするんですよ。難しさを面白がるゲームですから、いいと言えばいいのですが……“とはいえ”ですよね。スマホ版でプレイヤーの離脱が激しかったところの事実を映像化して見せられたような気がします(笑)。ライブ配信を見ながら世界でただ一人すごいイヤな汗をかいています。

──難しさがウリのゲームとして、そこはジレンマですね。ゲームのアイデンティティをつぶすわけにもいかないでしょうし。

栗田:ほかにも色々ありますが、つまるところ“あるポイントまで進んだら一旦そこまでの結果が出る”的な“ゲーム内段落”の不在が気になりました。ステージは膨大にあるものの、ちょうどいい区切りとしてゲーム側からフィードバックをもらえるようなポイントが存在しませんからね。終わりどころも次の目標も立てづらい構成になってしまったな、と。

 ただ、この点については、まもなくリリースする『Q REMASTERED』のSteam版で、その解消につながるアイデアを1つ盛り込んだステージが追加されています。ぜひ試していただきたいですね。

──それは楽しみです。どのようなアイデアなのか気になるところ。

栗田:あとは、なんといっても今はマルチプレイ要素が欲しかったなと思います。ここらへんは、はじめて感じたというより「知ってはいたけど、やっぱりそうですよね」って再認識というか、答え合わせできたみたいなイメージです。こちらについては、開発を進めている続編の『Q 2 HUMANITY』では大々的に解決していたりするのですが……それこそ、難易度も含めてね(笑)。

──プレイヤーたちの実況放送が、開発者にとってゲームの弱点を客観的に判断する機会になるというのはすごいなって思いました。フィードバックになっているんですね。

栗田:そうですね。『Q』で感じた弱点の解消策は並走して進めているので、楽しみにお待ちくださればと思います。

Twitterによる仕掛けが功を奏した『Q REMASTERED』のプロモーション

──この『Q』シリーズに『空気読み。』(※1)など、今や栗田さんといえば配信向きのヒットゲームを連発するクリエイターというイメージがあります。

(※1)『空気読み。』は、株式会社ジー・モードの登録商標です。

栗田:じつは、自分が作者の『空気読み。』は『1』と『2』、そしてニンテンドーDSiウェア版のやつだけで、その後のタイトルはノータッチなんです。そこから『Q』のリリースまでの時間も、さらには『REMASTERED』のリリースまでも間が空きすぎていますから、連発というような華麗な感じではまったくないですよ。

 ただ、それぞれが配信向きなのは多分そのとおりなので、自分はそういうものを作るのに向いているのかもしれません。これらに共通する強みや弱みも見えてきましたし、おかげで次にどういうものを作ればいいのかもよく把握できました。

 それと、今回の拡がりの流れについては『Q』の公式ツイッターがかなり大きな役割を果たしていると認識しています。そのあたりについてはプロモーションを担当している軍師、石井から話をしてもらいたいと思います。

石井:軍師とか、そんな大げさなものではないのですが(汗)。お話を振っていただいたので、プロモーションに関してもお伝えさせていただきます。前述のとおり、栗田の『Q』に関する思いであるとか、「『Q』は動画映えする」といったお話は普段から聞いていました。

 いつもは部署も違うこともあり、報告を聞いているだけの事が多かったのですが。今回はせっかくにじさんじの方に取り上げていただいたわけですし、我々も一緒に盛り上げたいということで、栗田と相談してTwitterを使った施策を中心に、楽しくお手伝いさせてもらいました。

──施策の具体的な内容もお聞きしてよろしいですか?

石井:端的に行った事として、セールスに直結するプロモーションではなく、“配信者ファーストの環境”を用意しようという意識を、チームの内部で徹底しました。具体的には、配信者さんの配信予定を把握したら、可能な限り公式Twitterでご案内させていただく事。そして、配信終了時にも公式の感想を含め、配信URLを引用リツイートしてご案内するようにしていました。

──それにはどのような狙いがあったのでしょう?

石井:配信者さんや配信者さんのファンの方にとっては、ご自身の配信への流入やアーカイブ再生が増えたら純粋に嬉しいのではないか? というところがきっかけですね。

 我々としてもゲームの魅力に触れていただく機会が得られますし、ライブ配信というVtuberさんが主流にされている配信方式なら、視聴者さんとの協力や“プレイを後ろでみるようなヤキモキする共感覚”を楽しんでいただけるのではと考えました。そのため、ゲーム配信に関しては間口を広げさせていただくお手伝いのつもりで、できるだけのご案内をさせてもらっています。

──実際、公式サイトから動画配信用の素材がダウンロードできるようになってますからね。この間口の広さは、まさに“イマドキのプロモーション”だなって思います。

石井:ありがとうございます。たくさんのショート動画や切り抜き動画が上がっている状況を鑑みまして、動画や見どころをSNSで紹介しやすいように“#Qこれ観て”キャンペーンなども実施しました。こういったプロモが、3月などの週末付近で毎日20名から30名近くの方にライブ配信を行っていただけるという状況につながったのではないかと。

──ライブ配信の数だけではなく、ソフトそのもののセールスにも影響があったのでは?

石井:はい。販売本数としてはありがたいことに、樋口さんがプレイいただいてからの約一カ月で、それまでのセールス本数の3倍以上にまで伸びてくれました。私たちとしてもあらためて、ゲームをたくさんの方に知っていただくことの大切さを学ばせていただきましたね。

『Q』というタイトルに込められた想いとは……

──『Q』というシンプルなタイトル名にも独特のセンスを感じるのですが、こちらを思いついた経緯をあらためておうかがいできますか?

栗田:『Q』というタイトル名を発案したのは、本作のサーバーエンジニアです。当時開発中の、まだ名前がついていなかった“このゲーム”の名前はどうするか? 色々な案を出していた頃、当時オフィスで隣の席だった彼に「お前も何か考えろよ」と無茶ブリしたところ、「だったら『Q』というのはどうですか?」と返ってきまして。

 その意味を聞いてみたら、「このゲームは解き方が決まっていないので、Q&Aでいうところの“A”がありません。僕たち開発側は“Q”だけを用意するので、アンサー(A)はプレイヤーのあなたが作ってください……って感じです」と言われ、絶句したんですよね。

──素晴らしいセンスの持ち主ですね。

栗田:はい。自分も『空気読み。』の頃から、キャッチコピーや命名にはけっこう自信があったのですが(笑)。この返事を聞いたときは「なにこの人!? スゴすぎる……」ってドン引きしました。的確すぎるしかっこよすぎて。その場で即決しました。もうこれ以外ないと。

──その『Q』をNintendo Switchで発売しようと考えた経緯はなんだったのでしょう?

栗田:『Q』の続編はひとまずSteam版の開発を進めておりますが、当初はNintendo switchで開発を進めていたんですよ。これを受け、続編に先駆けて再度『Q』の存在を周知していくことを目的に作ったというのが理由です。

──先ほどもお話しに出ましたが、Nintendo Switch版の公式サイトでは誰でも手軽に動画配信素材が入手可能となっているのが印象的で。こちらはどなたのご提案だったのでしょうか?

石井:動画配信素材に関しては、マーケチームのスタッフが当初から準備をしていました。リリース前から配信者の方向けの施策は検討していましたが、売り切りタイトルということもあり、なかなか費用を割いて配信者の方にご相談するのは難しくて。

 であればせめて、やろうと思ってくださる方にはできるだけ手間をかけないようにしよう……そんな意図のもとに準備したものです。最近の配信を見て、ヒーローのキャラクターなどの人気もわかりましたので、素材は現在も増え続けています。

──スマホ版にあったヒント機能をオミットされたのは、SNSなどでヒントを共有することを狙ったうえでのことかと推察しております。実際のところ、ヒントをなくした理由についてもお聞かせいただけますか?

栗田:ヒント機能のオミットは……すみません。そんなお洒落な理由ではなく、絶対儲かりそうにもないので、運用にあたって費用が発生するサーバーを使いたくなかったからです(苦笑)。

──なるほど(笑)。でも、あのオミットがSNSでの拡散に繋がったところもある気がしますよ。ちなみにアプリ版には1000問ほどの問題が導入されているとのことですが、Nintendo Switch版の総問題数はどれくらいなのでしょうか? また、リマスターするにあたってオミットされた問題などはあったのでしょうか?

栗田:問題数はアプリ版のほうが遥かに多くて1500問ほどあり、もっと言うと『Q craft』という、ユーザーが問題を作れるアプリからのアップロード問題もあり、それも含めると数十万問あることになります。

 大して、Nintendo switch版は全1280問です。オミットした問題群もありますが、これはスマホ版で他社の版権タイトルとコラボしたときの問題になります。『Q craft REMASTERED』も今こそあればなぁとか思いますが、またこれもサーバーが必要になりますので……。

本当に開発者自身も解けていない? 難易度“HELL”モードの真実

──地獄といわれる難易度“HELL”モードについては「開発者自身も解けていない」といううたい文句でビックリしました。失礼ながら、こちらは本当なのでしょうか? それほどの超絶難易度を盛り込んだ狙いについてもお教えください。

栗田:本当です……が、解けていないのはたしか7問ですね。全部というわけではありません。問題を腐るほど作っており正直ネタ切れも甚だしいため、『Q』というゲームの問題を作るというのはこれで最後にしようと思っていて。それを踏まえ、どのような問題にするのが適しているのか? と考えました。

 何も特殊ギミックを使っていないローンチ時のように純粋な問題もあれば、もうこれ以降はないということで「いつか誰かが解ければいい」くらいの超絶難しい問題もあり、真の意味で“A”が無い“Q”を最後に置いておくというコンセプトとなっています。「作者でも解けない」はキャッチコピー的にも強いと考えました。

 ただ……リリースから2~3日後には、昔からの常連のお客様にすべてクリアされてしまいまして。完敗です(汗)。

──数ある問題たちはどのようにして生み出されているのでしょうか? アイデアの源泉などがあるならお教えいただければと思います。

栗田:パズルゲームとしては特殊だと思いますが、ちゃんとしたゲーム的な流れのようなものを一切考えず、まずはシチュエーションだけ書き連ねます。

「コップ、中に玉、出す」
「モアイ、重い、カベまで移動させる、倒しちゃダメ」

というような絵コンテをあまり時間を掛けずに紙に書き連ね、それをエンジニアに実装してもらい、実際に触れる状態になったら自分もそこで初めて「さて、どうやればいいのかな?」と試していく流れですね。

──正解ありきではないってことですか? それはだいぶ斬新な作り方に思えますね。

栗田:ええ。時に「え? 何言ってんだこいつ……こんな問題できるわけなくないか?」と自分で自分に向き合うことになりますね。ただ、「解き方が最初から決まっていない」ことがこのゲームにとって重要であり、必要なことなんですよ。

 もしも「まずこの玉をこっちに運ぶ。したがってそれをしやすいように広めに描けるスペースを確保しておき……」みたいに、あらかじめ流れを想定して構成を考えてしまうと、解き筋が最初から見えてしまうので。結果、「人によっていろいろな解法がある」という本作のコンセプトから逸脱してしまうんですよ。

──おっしゃるとおりかもしれませんね。

栗田:じつは、良問ほどテキトーに書いたやつです(笑)。ちなみに、1000問以上の約半数は「みんなのQ」というお客様から募集した問題だったりします。考える部分を自分以外にゆだねるというのは、AI時代の先駆けですね。

──時代を先取りしていたんですね(笑)。“解き方は無限大”というキャッチコピーも「まさに!」といった感触ですが、実際に開発スタッフが思いもよらない形で目的に辿り着くプレイヤーさんも多いのでしょうか? ユニークな解き方や印象に残った解き方などがあれば教えてください。

栗田:すべてのプレイヤーさんが遊んでいる様子を見ることはできないので、全体的な把握は出来ておりませんが……。主にYouTube等の配信で活動されている方々のプレイは拝見させてもらっていて、あくまで作者としての私見ですが、印象に残るものはたくさんあります。

 ユニークな解き方といえば、やきじゃけさん、スニャイルゲーミングさんのHELL攻略動画でしょうか。曲芸みたいな解き方をされており、本当にお見事です。「へぇ~そうやって解くんだこれは?」と感心しながら拝見しております。自分では解けないので(笑)。

──なるほど。

石井:にじさんじの樋口楓さんによる暴力的なゴリ押しですとか、ホロライブの博衣こよりさんのHELL攻略、かずのこさんの腹筋を破壊される面白プレイなども拝見していて印象的でした。さくらみこさんのワードセンスや葉山舞鈴さんのボールと会話しながらゲームを進めていただく配信も、本当におもしろかったですね。

──どの問題をどれくらいのプレイヤーさんがクリアしているのかなど、開発サイドはある程度把握することはできるのでしょうか? これまでに全問回答した人、HELLをすべて解き明かした人などが、いったいどれだけおられるのかが気になっています。

栗田:先ほどお話しましたとおり、『Q REMASTERED』はサーバーを使っていない都合上、プレイヤーの皆さんのクリア状況は把握できていません。スマホ版ですと、各問題のサムネイルに表示されている数字がクリア人数の目安になりますけどね。集計こそしてはいませんが、難易度“HELL”まで含めての全問クリアされた方は数少ないかと思います。ここらへんはTwitterで「#シンQマスター」で検索すると出てきますよ。

新作は夏ごろにアーリーアクセスが開始? 気になるこれからの『Q』

──続編となる『Q 2 HUMANITY』も発表されていますが、こちらはどれくらいの時期のリリース目標となるのでしょうか? また、どのような遊び方ができるようになっているのでしょうか?

栗田:夏にSteam先行でアーリーアクセス版をリリースできれば……と予定しています。今回の盛り上がりで自分が手を取られ気味で、やや遅れているのですが。もどかしいところです。

 元も子もありませんけど、新作のコンセプトは『Q』を否定する形でゲームデザインをしています。難易度を落とし、ほどよく簡単で、ほどよく『Q』らしい難所もあるバランスに仕上げたいんですよね。

──そうなんですか? 思い切った決断にも思えますね。前作から方針転換した真意をお聞きしたいです。

栗田:あまりにも難しすぎて離脱してしまうプレイヤーさんが多いというのは、スマホ版からの問題点としてあったんですけど。『Q REMASTERED』の配信を見ていても、行き詰まった問題で何十分も足止めされ、同時接続数が如実に落ちるタイミングは配信者にとってデメリットだろうと容易に察せられますし。この2つは問題としての根幹は同じだと思っていますので、多分続編のコンセプトは間違っていません。

 ゲーム内容について具体的にお話しますと、続編ではキャラクターを操作するアクションゲーム要素が加わっており、また比重としても大きくなっています。そこに従来の『Q』と同じく、描くことと物理演算の併せ技で問題を解いていくゲーム性ですね。

 社内でプレイしてもらうときなどは『Q REMASTERED』のイメージで触れた全員が、最初はまったくの別物だと驚くのですが、遊んでいくとちゃんと『Q』だと分かっていただけています。Steamのリモート機能を使ってオンラインマルチで4人同時プレイができるのですが、これがかなり面白いことになりそうですね。

──どんなゲームに仕上がるのか……。ひとまずは、夏ごろのアーリーアクセス版を楽しみにしております。

栗田:既存タイトルでいえば、他社の『ヒューマン フォール フラット』のイメージが近いかとも思いますが。キャラクター同士のワチャワチャやカオスがありつつ、描いたり、持ったり、投げたりして『Q』をやっていくゲーム性です。プレイヤーさんにとって、ゲームとしてはもちろん新たな配信用ウェポンにもなってもらええたら嬉しいなぁと思っています。

 ちなみに『Q REMASTERED』のSteam版は、まもなく審査に提出します。こちらはもうちょっとだけお待ちください。

──楽しみです。本日はどうもありがとうございました!

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