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『青ブタ』無意識を愛で上回る。最高に真っ直ぐでかっこいい、“青春ブタ野郎”の物語の魅力を劇場アニメに備えておさらい【第1回】

ハチ
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 6月23日に劇場アニメが公開予定の『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』。人気ライトノベルを原作とした、切なさと瑞々しさが入り混じるファンタジーとして展開されています。

 本記事では、劇場アニメをもっと楽しむためにTVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の内容を小説をベースにしつつ振り返っていきます。

『青ブタ』シリーズって?

 『青春ブタ野郎(青ブタ)』シリーズとは、シリーズ累計発行部数250万部を突破する電撃文庫の大人気ライトノベル。作者は鴨志田一先生、イラストは溝口ケージ先生が担当しており、2023年7月7日には最新第13巻『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が発売予定です。

 2018年に第1巻から第6巻序盤までがアニメ化、2019年には第6巻から第7巻までが劇場アニメとして公開されました。そして、今回劇場アニメとして公開となるのは第8巻『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』です。

 さらに、第9巻『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』も劇場でのアニメ公開が決定しています。

『青ブタ』シリーズのはじまりは……やっぱりセクシーなバニーガールから!

 小説第1巻『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』は、TVアニメでは第1~3話で描かれています。

 物語は、峰ヶ原高校2年生・梓川咲太が、図書館でバニーガール姿の桜島麻衣と出会うところからはじまります。図書館にバニーガールがいるなんて……さらに、桜島麻衣は活動休止中とはいえ、芸能人だというのに誰も見向きもしない。こんなおかしな状況に咲太だけではなく、視聴者も「これは夢……?」という不思議な感覚になってしまいますよね。

 小説だと、麻衣のバニーガール姿を巻頭イラストや挿絵でも見ることができました。アニメでは動きが加わり、人をのぞき込んでみたり、手をふってみたりと動き回る麻衣バニー……すごくかわいいです。

 そんな麻衣を咲太が目で追っていると「驚いた。君にはまだ私が見えてるんだ」と話しかけてきます。幽霊でもなければ夢でもないなら、見えるに決まっているのに一体どういうことなんでしょう。

 咲太が不思議に思っていると「金輪際関わらないで」と、麻衣はどこかへ行ってしまいます。

 次の日、学校で咲太は麻衣を見かけ、友達の国見に「見えているか?」と尋ねますが、どうやら見えている様子。学校帰りに盗撮されそうになる麻衣を助けたことで、麻衣は“自分が人から見えなくなっている”という、自分に起きている不思議な出来事を話します。どうやら見えている時と見えない時があるようで、その調査のためにバニーガール姿でいろいろな場所に出没しているそうです。バニーガール姿を選んだ麻衣……ナイスチョイス! と思った読者も少なくはないはず。

 咲太は、そんな麻衣にそれは“思春期症候群”ではないか、と言います。“思春期症候群”とは、思春期の少年少女の不安定な精神状態が引き起こす不思議現象のことです。麻衣はなぜ私のこんな話を信じるのかと尋ね、咲太は妹である花楓と自分の身に起こったことを話します。

 花楓はネットでのいじめを発端に、心の傷が身体に刻まれる"思春期症候群"を発症。その時、咲太の胸にも大きな傷ができた……という壮絶なものでした。ネットから離れることで花楓の症状は治まったとのことですが、それ以来、咲太もスマホを持たなくなったようです。いまどきの高校生でスマホを持っていないのはなんだか新鮮! アニメでもたびたび、家の電話から通話する様子を見ることができますよ。

 咲太は麻衣の“思春期症候群”を治すべく、芸能界への復帰を勧めます。麻衣が映画のポスターを見ていたことから、麻衣が本当は芸能活動をしたいということを見破っていたようです。

 「やりたいなら我慢なんてしなければいい」。そんな咲太の言葉を聞いて、麻衣は芸能界への復帰を決心します。咲太はぼーっとしていそうに見えて、しっかり人のことを見ている人だなぁと感じますね。

 続く第2話では、心の距離が少しだけ縮まった咲太と麻衣が初デート! と思いきや……咲太は待ち合わせ前に、謎の女の子とおしりを蹴り合うという事態になり大遅刻。この謎の女の子ですが今後、物語に関わってくるので注目してくださいね。

 咲太は駅へ向かいますが、麻衣はもう帰ってしまっているかと思いきや居ました。咲太は勝負パンツで挑むくらいにデートを楽しみにしていたのでよかった~(笑)とこちらも安心してしまいます。

 麻衣は咲太へ、鎌倉に向かう電車の中で「どうして、私にかまうの?」と聞きます。すると咲太は「美人の先輩とお近づきになれるから」と、おちゃらけたあとに「誰にも頼れないのはしんどいから」と答えます。

 咲太自身、妹の事件を経て学校で浮いてしまったり、家族がバラバラになってしまったりと大変な経験をしていますが、国見や理央という友達がいます。そして、たびたび相談に乗ってもらい頼っている姿が描かれていることから、咲太は次は自分が救ってあげたい、と感じたのかもしれませんね。

 そんな咲太の思いとは裏腹に、麻衣の“思春期症候群”はどんどん悪化。花楓や国見だけでなく、麻衣の母親までもが桜島麻衣を忘れてしまう事態に。

 咲太が理央に相談すると“学校で麻衣は空気のような存在として扱われており、学校の誰からも観測されていない。そのため、意識が働いていない睡眠がきっかけで桜島麻衣を忘れてしまうのではないか”と仮説を立ててくれます。

 眠ったら麻衣を忘れてしまうことを恐れて、咲太は眠らないように。もしも麻衣の記憶をなくしてしまった場合に備えて、麻衣とのことをノートに書き残します。小説では“1日でも麻衣を覚えていたい。1分でも麻衣の側にいたい”と咲太のまっすぐな気持ちが綴られていて、うるっときてしまいます。丁寧に綴られるキャラクターたちの想いを、文字でじっくりと読めるのも小説版の魅力ですね。

 どんどん衰弱していく咲太を見て、麻衣は咲太が寝ていないことを察し、心配して咲太の家までついてきます。すると、絶対に寝ない、という咲太が急に寝てしまいました。なんと、麻衣が睡眠導入剤を飲ませてしまったのですが、このシーンが本当に切ないんです。麻衣は“咲太が寝たら、麻衣のことを忘れてしまう”のをわかっていたので、本当は眠ってほしくないに決まっているのに……。麻衣は咲太に優しい声でお礼とさよならを言います。

 お互いを大切に想っているのに、一緒にいられなくなってしまうなんて、もう悲しすぎる展開……“思春期症候群”があまりにもつらすぎます。

 翌朝、咲太は麻衣のことを忘れていました。正直、咲太なら覚えてくれているのでは……? という期待があったので、きっと麻衣も覚えていてくれていることを期待していたんじゃないでしょうか。この事実を知った時の麻衣の気持ちを想像すると、心が締め付けられるような感覚に。

 けれど、学校へ行くと、理央から“全校生徒の無意識を梓川の愛が上回ればいい”と書かれた紙を受け取ります。理央も咲太同様、麻衣の記憶をなくす前に、この紙を咲太に渡すようにというメモを自分宛てに残していたようですね。さすが理央!

 咲太が妙に不鮮明な昨日のことをなんとか思い出そうとすると、霧が晴れていくように麻衣の記憶がよみがえってきました。この時の感情は小説では“胸の中に嬉しい気持ちがあった。悲しい思いも見つけた。楽しい気分もあった。それなのに強烈な切なさも込み上げてくる”と表現されていました。“思春期症候群”でも、人の気持ちまで消すことはできない。想いの強さは世界を変えることができる、ということかなと解釈しています。

 記憶を取り戻した咲太は、“全校生徒の麻衣への無意識を愛で上回る”べく、グラウンドに出て全生徒の前で告白します。大胆! すると、麻衣の姿が現れ、すべての人が麻衣の存在を思い出します。ついに麻衣の“思春期症候群”が治まったようです。

 告白の返事はおあずけになってしまいましたが、気持ちが通じ無事にハッピーエンド。本当によかった……。咲太の真っ直ぐなかっこよさも伝わるエピソードでした。これから、もっともっと2人の中が深まっていくのが楽しみなラストです。

 次回はアニメ第4話から第6話、小説第2巻『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』で描かれる、咲太とおしりを蹴り合った謎の少女との物語を振り返ります。近日公開予定です。

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

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