『超探偵事件簿 レインコード』レビュー。本格的なミステリーとアトラクション感のある謎解き、そして超探偵たちとの交流が楽しすぎる

カワチ
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 スパイク・チュンソフトから6月30日に発売予定のNintendo Switch用ダークファンタジー推理アクション『超探偵事件簿 レインコード』。本作を発売に先駆けて約4時間プレイした感想をお届けします。

 さらに、シナリオ・ディレクションを担当した小高和剛氏と、プロデューサー榊原昌平氏へのQ&Aセッションの模様もお届けします。

相棒の死に神ちゃんのおかげで探索が楽しい!

 記憶喪失の探偵見習い・ユーマ=ココヘッド と、ユーマにとり憑く死に神ちゃんが未解決事件に挑む『超探偵事件簿 レインコード』。

 ゲームは事件解決のための手掛かりを集める現実世界での“調査”と、調査で集めた証拠を駆使して真実へと辿りつく“謎迷宮”というふたつのパートがありますが、今回はその両方をプレイすることができ、ゲーム全体としてはごく一部ではあったものの、本作の基本的な流れやシステムの概要は分かりました。

 とくに画面写真だけでは分かりづらかった“謎迷宮”の魅力も理解できたのでしっかりお伝えしていこうと思います。

 なお、今回の試遊ではゲームの最初からではなく、“クギ男”と呼ばれる殺人鬼の事件を調査する部分をプレイすることができました。本作はミステリーのゲームであるため、物語に関する言及はしませんが、本編のスクリーンショットは掲載しているのでネタバレを見たくない人は気をつけて下さい。

 本作の調査パートはユーマを操作してカナイ区を探索。街の人々と会話をしたり事件現場を調査したりして、証拠となる“解鍵(かいかぎ)”を集めることになります。カナイ区は広いので探索しがいがあり、とくにメインのストーリーと関連した部分の調査に関しては死に神ちゃんがしゃべりまくるので歩いているだけでも楽しいです。

 事件の調査は“世界探偵機構”に所属する“超探偵”のメンバーとともに行うことになります。“超探偵”はそれぞれ特殊な能力を持っており、今回のプレイで同行したのは殺人現場の第一発見時の状況を視られる“過去視”を持つハララ=ナイトメア。このハララがかなりいいキャラクターなんです!

 性別は不詳で、お金しか信じないという打算的な人物ですが、じつは面倒見のいい人なのではないかと思わせるような描写もチラホラ。独自の魅力を持ったキャラクターになっています。作者の小高さんは『ダンガンロンパ』シリーズでも魅力的なキャラクターをたくさん創作しているので今回のキャラクターも楽しみです。

 ユーマは超探偵から許諾を得ることと能力発動中に手をつなぐことで超探偵の能力を共有することができるため、視覚的にも能力の内容が分かりやすいのがポイント。本作ならではの新鮮な謎解きができます。

 超常的な能力ではありますが、今回プレイした感覚では、しっかりルールが提示されているのでミステリーとしてフェアに作られていることを感じました。

 また、調査を進めたり、街の人の悩みを解決するサブクエストをクリアしたりすることで探偵ランクがアップ。探偵ランクが上昇すると獲得できるスキルポイントを使用して“謎迷宮”で役立つスキルを獲得できます。スキルは選択肢を選ぶ謎解きの不正解の選択肢を減らすものや、アクションの難易度を下げるものなど便利なものばかり。

 本作には難易度選択はありませんが、こういったスキルを入手していくことで難易度を下げることができます。敢えてスキルを取らずに挑戦するというプレイもできそうですね。

異空間のダンジョンだからこそのギミックがおもしろい!

 『ダンガンロンパ』では学級裁判で事件の真相を探ることになりましたが、本作では事件の謎が具現化した“謎迷宮”という異空間のダンジョンを進みながら謎を解いていくことになります。

 事件の順番などを当てるスポットセレクトなどのオーソドックスなものから、危機一髪ゲームのような見た目で正解となる文字を選んでいくものなど、バラエティに富んでいて楽しいです。

 集めた証拠(解鍵)で隠された真実を暴きますが、謎怪人に行く手を阻まれることも。この謎怪人は事件の真相を隠そうとする人物の意思が具現化したもので、今回のプレイではアマテラス社保安部の捜査課長であるセス=バロウズが立ち塞がりましたが、現実ではありえない巨大な姿で立ち塞がるので迫力があります。

 一方で死に神ちゃんも巨大化して、障害を避けたり排除したりしながら謎怪人を追い詰める“大進撃 死に神ちゃん”というモードもあり、『ダンガンロンパ』シリーズ以上にハチャメチャな展開が待っています。

 ここは謎迷宮が異空間であることや3Dでグラフィックを制作しているため、ダイナミックな演出が可能であることが利点だと感じました。ゲームの流れとしてはミステリーということで『ダンガンロンパ』シリーズと似ていますが、演出のおかげでかなり違う感覚で楽しむことができました。

 また、謎怪人の発言を回避しつつ、矛盾を見つけたら対応する解鍵をセットした“解刀(かいとう)”で反論する“推理デスマッチ”は、見た目の印象からアクション要素が強いのかと思っていましたが、実際にはボタンで雑音をかわすのは簡単ですし、超探偵の力を借りれば無敵になることもできるので、難しくはありません。派手な演出による爽快感はありつつ、アクションがニガテでも安心して遊べるのは親切です。

小高和剛氏と榊原昌平氏へのQ&Aセッションの模様をお届け!

──今回の試遊だけでもボリュームの多さに驚かされました。本編もボリュームは多いのでしょうか。

小高和剛氏(以下、敬称略):はい。今回、みなさんにはシステムを中心に見てもらいましたが、『ダンガンロンパ』と同じくキャラクターの会話は多いので、かなり長くなると思います。

榊原昌平氏(以下、敬称略):メインストーリーやサブクエスト、エピソード収集のやり込み要素まで含めて50時間ぐらいのプレイ時間を想定しています。

小高:今回は第1章なので行ける場所も限られていましたが、事件ごとにどんどん違う場所が追加されていくので、いろんな場所を行ったり来たりすることになります。第1章はサイコホラー風味のストーリーになっていますが、科学モノっぽくなったり学園モノっぽくなったりと、それぞれテーマが異なっており、リソースは豊富です。

 章のタイトルも推理ミステリーの作品をもじっていて、わかる人だけわかるような感じのタイトルにしているので、ぜひそこにも注目してみて欲しいです。

榊原:ボリューム的には1章が1番短いんじゃないかと思います。

小高:ユーマが最初に出会う事件なのでストーリー的には短いですが、謎解きの濃度は高いです。

 『ダンガンロンパ霧切』を書いた北山猛邦さんと一緒に謎を考えたのですけど、第1章は密室事件がたくさん出てくるので、ふたりで「この第1章だけで普通にミステリーの単行本1冊ぐらいは作れちゃうよね」という話をしていました(笑)。

──第1章の見どころは密室のトリックになるのでしょうか。

小高:密室も見てほしいですが、カナイ区の作り込みや、謎迷宮のアトラクション的な解き方など、すべてが見どころのつもりで作っています。もちろん、ミステリーの謎解き部分は面白くないといけないと思っていますし、欲張って作っているかなと思います。

──第1章は4つの密室が出てきましたけど、特に作るのが難しかったものは?

小高:“週刊『レインコード』通信”のプレイ動画でも出しているトリックは位置関係が重要なので、3Dにしたときに、どう見えてしまうんだろうという不安がありました。

 文字である小説や2.5Dの『ダンガンロンパ』ではボカせていた部分も見せることになるので、うまく成り立たせるのが難しかったですね。

──第1章だとハララがメインで登場しましたが、毎回スポットが当たるキャラクターが変わるのでしょうか。

小高:そうですね。第1章が“過去視”があったからこそ解ける謎になっていたように、探偵とトリックはセットになっています。ですから、章ごと行動する探偵は違います。そのなかで、ユーマや死に神ちゃんと探偵たちとのやり取りはみんな千差万別になっていますね。

 ハララの場合は死に神ちゃんに冷たく対応して相手にしないパターンですが、逆に探偵によっては死に神ちゃんを敵視するヤツもいれば、ゾッコンになっちゃう男の子もいますね。

──雨が降り続く街を舞台に、暮らす人々がレインコートを着ているという設定はどこから生まれたのでしょうか?

小高:まず最初に探偵たちをメインにしたお話にしたいという気持ちがあり、そこから街並みをどうすれば探偵っぽくなるかなということを考えていきました。

 探偵と言うとロンドンのイメージがありますが、ロンドンそのままの情景を作っても、面白くないので、サイバーパンクっぽい要素を入れるなどしました。ティム・バートンのようなダークファンタジーを目指したいという気持ちもあり、明るい町よりは、陰鬱というか寂しげな雰囲気にしたいと思いました。

──街のビジュアルにすごく惹き込まれました。

小高:ありがとうございます。限られたスペックのなかでどこまで作り込むことができるのかは探り探りではあったのですが、背景や謎迷宮の部分はかなり力が入っています。

──謎迷宮は、先の章に進むほど難易度も上がっていくのでしょうか?

小高:難易度自体はそれほど上がらず、後半になるほど演出が派手になっていくイメージです。また、ゲームを進めることでスキルを入手できるので、そのスキルを身に付けることで腕前を補うことができます。3つの選択肢があったら、そのうちの1つを消すことができるようなスキルもありますね。

 3Dで操作することに慣れるまでちょっと時間はかかるかもしれませんが、『ダンガンロンパ』に比べればゲームオーバーになることは少ないんじゃないかと思います。

──死に神ちゃんの魅力について教えてください。

榊原:オープニングムービーでは人魂から人型に変わるのですが、そのシーンが愛嬌があってかわいいのでぜひ観てみてほしいです。

小高:小松崎(小松崎類氏:本作のキャラクターデザインを担う)や高田(高田雅史氏:本作のサウンド担当)とは死に神ちゃんは分かりやすいキャラクターではないのかもしれないという話をしました。ヒロインなのか、ヒロインじゃないのか、ユーマを助けているのか、困らせているのか、彼女は曖昧なキャラクターです。

 今まで自分が書いたキャラクターはどちらかというと、分かりやすい記号っぽい人物が多かったのですが、死に神ちゃんはゲームをクリアしたあとの意見が変わるんじゃないかと思います。好きになってくれる人もいるでしょうし、逆に受け入れられない人もいると思います。ぜひ意見を聞いてみたいですね。

──死に神ちゃんはイラストの表情パターンがすごく多いですが、最初からたくさん作る想定だったのでしょうか。それとも、小松崎さんの筆が乗っていったのでしょうか。

小高:死に神ちゃんの制作は3Dモデルの原型を作ってから、スパチュンに構図をつけてもらい、そこから小松崎がイラストにするという流れで行いました。

 『ダンガンロンパ』のときよりも1枚にかかるコストが低くなっており、その分たくさん描くことができました。スパチュンから追加をお願いされることもあれば、小松崎のほうで勝手にどんどん追加しちゃうこともあれば、僕のほうでお願いすることもありました。ただ、死に神ちゃんの人魂に関しては、小松崎が追加したものが多いですね。

──どれぐらいの表情パターンがあるのでしょうか?

小高:死に神ちゃんの人魂だけで80くらいで、人型も入れると100パターンを超えるぐらいあると思います。主人公のユーマの表情パターンも同じくらいの数になりますね。

──謎迷宮のシチュエーションや仕掛けは、最初にシナリオを考えてから、こういうものが必要だということを話し合って作られていったのでしょうか?

小高:謎迷宮は非常に苦労しまして、制作期間6年のうち、3年ぐらいはその部分を作っていました。本日の先行プレイまでみなさんも“謎迷宮”と言われても全然なんのことかイメージできなかったと思うのですが、それはスパチュンのスタッフも同じでした。

 最終的には自分がシナリオのなかにゲーム中にやって欲しいことも書き、できないことは相談し合うという形で制作していきました。

榊原:大変でした(苦笑)。

小高:もうちょっと割り切って簡単な構造にしようかなとかも思ったりもしたのですが、実際に作れないわけではないので、そのまま制作することになりました。

──ある程度完成したものを見たときは感動しましたか?

小高:いや、初めて最初から最後まで歩けるようになってからも苦労は続き、テンポがよくなるようにブラッシュアップしていきました。すべてを手探りで作った割にはアトラクションっぽくできたなと思っていて、今は満足しています。

──謎迷宮に搭載されている“死に神ちゃん危機一髪”のシステムが奇抜で面白いと感じたのですが、どのようにして実装されたのでしょうか?

小高:ほかのモードもそうですが、『ダンガンロンパ』の“ひらめきアナグラム”のような文字を一文字ずつ入れてくモードを死に神ちゃんとユーマのふたりで協力してやりたいということをシナリオに書き、スパチュン側と協議して“死に神ちゃん危機一髪”のようなゲームになりました。

 企画書の時点で、謎を解くと死に神ちゃんが脱衣をするという要素を入れたかったので、それが元にもなっていますね。“大進撃 死に神ちゃん”に関しても同じような感じで、『ダンガンロンパ』のMTB(マシンガントークバトル)のように犯人の悪あがきを打破するシステムを入れたくて、死に神ちゃんの体を大きくして犯人の砦をぶち壊していくアイデアを考えました。

──街の人々の依頼をこなすシステムは『ダンガンロンパ』にはなかったもので新鮮に感じたのですが、小高さんはどのようにかかわっているのでしょうか?

小高:“探偵たちとの語らい”という死に神ちゃんフィギュアを集めると、夜行探偵事務所の人たちとコミュニケーションできるモードがあり、それはトゥーキョーゲームスが書いています。

 街の人から依頼を受けてこなすものに関しては、まず、スパチュン側にシナリオを書いてもらって、僕の方で手直ししています。テキストに関してはたとえばチュートリアルの文章なども、全部目を通しています。

──榊原さんはプロデューサーとして小高さんとやりとりしてみてどうでしたか?

榊原:開発陣もこれまで『ダンガンロンパ』シリーズを作ってきているので分かっている部分もあると思いますね。コミュニケーションもしっかり取れていたと思います。

小高:そうですね。いい意味でも悪い意味でも遠慮はしないですね。どうしても変えたいときは変えたいと言うし、迷っているときは素直に迷っていると言いました。

 自分もシナリオに関して指摘をされてもぜんぜん傷つかないですし、「そういう風に感じるんだ」と思って直すこともありました。

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