『ディアブロ4』発売直前インタビュー。一本道ではなく、プレイヤーに選択肢を与えたかった

hororo
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※『ディアブロ4(Diablo IV)』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 Blizzard Entertainmentより2023年6月6日に発売予定の『ディアブロ4(Diablo IV)』。本作の開発を率いるエグゼクティブプロデューサーのロッド・ファーガソン氏と、アソシエイトゲームディレクターのジョセフ・ピエピオラ氏に対して、メディア合同の発売直前インタビューを行うことができました。

 リリースを目前にした両名の気持ちや、度重なるベータテストから得られたフィードバック、そして開発に対する姿勢などさまざまな質問に対する答えをお届けします。

 また、『ディアブロ4』の発売に際して、これまでのシリーズで語られてきたストーリーをまとめた記事も公開中! 初めてシリーズに触れるかたはもちろん、過去作を遊んだことがあるかたも、ぜひ復習もかねて読んでみてください。

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  • ▲ロッド・ファーガソン氏。『ディアブロ』フランチャイズのエグゼクティブプロデューサーおよび代表を務め、『ディアブロ4』、『ディアブロ 2R』、『ディアブロ イモータル』を含む『ディアブロ』に関連する全てを監督している。

  • ▲ジョセフ・ピエピオラ氏。開発チームのアシスタントゲームディレクターであり、新機能、バグ修正、およびその他のさまざまなアップデートの責任者を担う。

一本道ではなく、プレイヤーに選択肢を与えたかった

――はじめに、発売を直前に控えた今のお気持ちをお聞かせください

ロッド・ファーガソン氏(以下、敬称略):2019年に発表されて以来ずっと作ってきましたが、今は興奮して眠れません。もともと『ディアブロ』は自分が好きだったゲームということもあり、開発も楽しんで続けてきました。そんな自分が楽しみながら作ったゲームというのを、プレイヤーが楽しんでくれるようすを早く見てみたいです。

 すでに各メディアなどからレビューがどんどん届いていて、それをにやにやと眺めていますが、発売が待ちきれない状態ですよ。早く皆さんにこのゲームを楽しんでいただきたいです。

――これまで数多のハックアンドスラッシュゲームが生まれてきましたが、『ディアブロ4』がゲームとして優れているところはどんなところでしょうか?

ジョセフ・ピエピオラ氏(以下、敬称略):『ディアブロ』はシリーズとして長い歴史を持っていますが、これまでのタイトル中の良い点を抽出し、まとめられたということこそ本作の利点だと思います。

 例えば初代『ディアブロ』からは、ダークファンタジーの魅力であったり、閉鎖恐怖症を引き起こしかねないような、ダンジョンの奥深くへ潜っていくというゲームプレイだったり。そういったエッセンスを『ディアブロ4』にも取り入れています。『ディアブロ 2』からはビルドの自由度や、アイテムを探してキャラクターを強化していくゲームプレイの部分をさらに強化して取り入れてました。そして『ディアブロ 3』からは、アクションと戦闘の気持ちよさを抜き出しています。

 つまり『ディアブロ4』は、過去作の集大成と言ってもいいでしょう。加えて、今作では“プレイヤーが自由に選択できる”ということに注力しているため、ダークファンタジーの世界をどっぷり楽しんでもらえるのではと思います。

――オープンワールド導入によって、ディアブロの魅力が損なわれるのではないかといった懸念はあったのでしょうか? 逆にオープンワールドによってより輝いた魅力などあれば教えてください

ジョセフ:初代『ディアブロ』や『ディアブロ 2』では、ゲームの展開がリニア(一本道)な作りでした。どんなプレイヤーが遊んでも、だいたい同じように進むというのが、一般的な『ディアブロ』プレイヤーのイメージだと思います。しかし今回は、オープンワールドにすることでプレイヤーに選択肢を与えるということをゲームのコアにしています。ですが、これをあまりやりすぎてしまうと、今までのファンにとっては違和感を感じてしまうため、そのバランスにはかなり気を使いました。

 『ディアブロ』のゲームプレイの根本は、モンスターをガンガン倒して、強いアイテムを手に入れ、自分を強くしていくことであって、一本道であることではありません。これをオープンワールドのなかでしっかりと楽しませるということが大事な点でした。初代『ディアブロ』や『2』のプレイヤーの行動を振り返ると、効率化を重視するあまり、ゲームプレイ自体の楽しさを味わえていなかったのではと思ったのです。どれだけ効率よくモンスターを倒し、どれだけ効率よくアイテムを収集するかということにプレイヤーの意識が向きすぎていたので、これをもう少しナチュラルにゲームプレイのほうに盛り込めたらいいなと。

 『ディアブロ』は、1人のプレイヤーが何体ものキャラクターを作って遊ぶことが想定されています。そのため、同じことを何度も繰り返させることはやめようと。例えば今作にはリリスの祭壇というものが登場します。これを初めて発見したときの喜びは大事だと思ってはいますが、別のキャラクターをプレイした際に、もう一回これを全部探すのかと考えた場合、それは余計な手間だと思いました。なので2人目以降のキャラクターでは、解放済みのものはそのままの扱いにしています。

 このように、プレイヤー側がこれまで行っていた効率化や作業の部分はこちらのゲーム作りで削減していくことにして、オープンワールドを楽しむことに時間を割いてもらえるような作り方を心がけました。

――初代『ディアブロ』からはや25年が経過し、ゲーム業界の環境にもさまざまな変化が起きていると思います。これまでのナンバリングタイトルと比べ、本作を作っていくなかで、開発スタンスの変化などはありましたか?

ロッド:初代『ディアブロ』は悪魔を題材としたダークなゲームとなっていました。当時の感覚としては、親にはこのゲームをプレイしていることを隠す、というレベルのアングラなものであったと私は思っています。しかしそこから25年経った今、こういったダークなトーンの作品はメインストリームにまでなってきていると感じます。「ウォーキングデッド」や「ゲーム・オブ・スローンズ」など、ダークテイストな作品も一般的に受け入れられているという状態ですから。そこで『ディアブロ4』ではもう一度、根本にあるダークな雰囲気を押し出していこうというスタンスでした。

ジョセフ:『ディアブロ4』は、ストーリーを魅せることに力を入れました。これまでも天国対地獄という構図を描いてきましたが、今回はそれが大々的にフィーチャーされています。『ディアブロ』の歴史のなかで名前はでてきていたものの、登場はしてこなかったリリスとイナリウスという二大キャラクターが今回のストーリーのメインです。

 長らく続いてきた天使対悪魔という戦争に、プレイヤーがしっかり巻き込まれながら物語を見ていくことができる、ということが我々がフォーカスしたポイントになります。イナリウスやリリスが、なぜこのようなことをしているのか。プレイヤーだけでなく、彼らの視点からもストーリーが展開されていくので、そのあたりも今回の目玉ですね。ぜひ『ディアブロ』の、ダークだけど美しい世界観を見てほしいです。

ロッド:25年前のゲームと比べたときに大きく変わったのは、現在のゲームはライブサービス化しているということでしょう。昔は開発チームの規模も小さく、発売後は手を加えられないため、チーム全体で休暇を取って旅行に行くこともありました。しかし現在のライブサービスゲームに関しては、発売=スタートラインのような状態です。

 Day1パッチや次のアップデート、拡張パックの開発など、つねに何かしら動いていないといけないため、必然的にチームの規模も大きくなっています。そのように大きくなったチームをどうやって回していくのか、ということを考える必要ができたことも、開発環境の大きな変化だといえるでしょう。

マルチプレイを気兼ねなく行える環境作りに注力

――『ディアブロ4』では敵モンスターはプレイヤーのレベルに依存する可変式になっています。低レベルのプレイヤーと高レベルのプレイヤーが同じ空間にいる可能性もあると思いますが、その場合モンスターのレベルというのはどのように決定されるのでしょうか?

ジョセフ:仮にレベル10のプレイヤーとレベル50プレイヤーがいっしょにいた場合、モンスターはレベル50のプレイヤーから見るとレベル50になっています。一方、レベル10のプレイヤーから見ると、そのモンスターはレベル10になっています。同時にこのモンスターを攻撃した場合でも、レベルに応じたダメージが入ります。

 ただしモンスターにはパーセンテージでダメージが入るので、例えばレベル10のプレイヤーが放つファイアボールのダメージはレベル10相当ではあるものの、モンスターのHPでいえば25%のダメージが入るのに対し、同様の攻撃をレベル50のプレイヤーが行った場合、モンスターのHPの30%が入る、というような処理がされます。よって、いっしょに戦っているプレイヤーが何レベルであろうと、自分と同じくらいの戦力のプレイヤーがいっしょに戦っているように感じるはずです。

 もともと『ディアブロ』という作品は、孤独に一人で探索する楽しみにフォーカスしているのですが、今作ではオープンワールドかつマルチプレイになったことで、ほかのプレイヤーから迷惑に思われないことも大事にしています。例えば、レベルの高いプレイヤーが現れて一瞬でその場のモンスターを狩ってしまったり、レベルの低いプレイヤーがいっしょにいても何もやれることがなかったりすることをなくすための処置です。孤独感のあるなかで、ほかのプレイヤーに出会うことが少し嬉しいイベントになるような体験を感じてほしいなと思い、調整してきました。

ロッド:これまではフレンド同士でプレイしようとしても、レベルが合っていなかったり、プレイしているエリアが違ったりしていっしょに遊ぶのが難しいことがありました。無理やり遊んでも、弱い人は端っこで死なないようにするしかなかった。そういったことが、今回は一切なくなります。そのうえでクロスプレイもサポートしていますので、レベルを気にせずいつでもフレンドやほかのプレイヤーと遊べるようになりました。

 もうひとつ、オープンワールドの仕組みですが、普通のRPGではスタート地点のモンスターはスタート地点にふさわしいレベルであり、キャラクターのレベルが上がるつれてそのエリアに戻ってくる理由がなくなってしまいます。オープンワールドを作っている以上、一度通過したエリアへ戻らないという状況は避けたかったのです。どれだけレベルが上がったとしても、世界各地に行く理由がある、行っても楽しめるというゲームプレイを作りたかったため、このような作りにしています。

 ただ、すべてのものがこのスケーリングに当てはまるわけではありません。例えばワールドティアを上げる場合。キャップストーンダンジョンと呼ばれるコンテンツを攻略することで、次の難易度に挑戦することができるようになります。こういったものに関しては一定のレベルに定められています。これをクリアできるかどうかが挑戦のベースラインとして設定しているため、ここに関してはレベルの調整は一切入りません。

――ハクスラにあまり馴染みがないプレイヤーでも、悩まずに進めることに感心しました。本作から入る人に向けた配慮や工夫などがあれば教えてください

ジョセフ:この質問自体が我々が狙った到達点でもありますので、これが聞けて本当に嬉しいです。ハクスラ初心者でもスムーズに理解できるということはもともと目指していたことです。開発初期の頃からキーボード&マウス操作だけでなく、コントローラーでの操作も念頭にいれており、どんなゲーム経験を持つプレイヤーでも入りやすいベース作りを心がけてきました。ストーリーやゲーム全体の流れを通じてプレイヤーに徐々に新しい情報を出していき、学びを得られるというのが大前提にあります。

 ただしこれをやりすぎてしまうと、ハクスラ慣れしているプレイヤーにしてみれば、少し物足りないと感じてしまうでしょう。初心者と経験者の両方が楽しめるバランスを考えることが重要でした。

 例えばプロローグの段階では、ほぼ何もできない状態ですが、それが終わった瞬間に世界が広がり、やれることが増えていきます。最初はシンプルなスキルしか使えませんが、レベルが上がることによって、新しいスキルや新しい発展先が解放され、カスタマイズの幅も急激に広がっていく、というような感じですね。

ロッド:『ディアブロ』シリーズは25年以上の歴史もありますし、ナンバリングの4作目ということもあって、もしかしたら未経験のプレイヤーは「過去作をやったことがないからいいや」と思ってしまうかもしれません。しかし物語は過去作からしっかりと分かれていますし、今作から入っても、ストーリーを楽しめるはずです。ストーリーでも、今のこの世界の状況をプレイヤーに教えながら展開されていくので、新規プレイヤーでも問題ありません。

 ゲームを始めてすぐにそのままオープンワールド世界に放たれて、「さあ、あとは自由に楽しんでください」と言ってしまっては、本当に馴染みのないプレイヤーにとっては、何もわからない状態になってしまいます。

 そのため、レベル1~5くらいまでの展開は、ほぼ計算済みの作りになっています。プロローグはプレイヤーにエンジンをかけてもらうというか、慣れてもらうための作りであり、そこからはプレイヤー自身が強くなっていきながら、いろいろ学び、この世界を楽しんでもらえるような設計にしました。学ぶこと自体はすごく簡単なゲームになっているはずです。ただし、マスターすることはすごく難しいですよ。

 もちろん、これまでの世界から一新されたわけではないので、過去作をプレイしてきた人が楽しめる要素もあります。例えばメインキャラクターのひとりであるロラスは、『ディアブロ 3』に登場したキャラクターですしね。

 ちょっと話は逸れてしまいますが、障がい者向けの字幕を入れたりもしているので、そういう意味でも幅広いゲーマーに楽しんでもらえるように作りました。

発売後もフィードバックを生かし、さらに磨きをかけていく

――これまでのテストでは、プレイヤーの国ごとの特徴など出ていましたか? 日本のプレイヤーの傾向などがあれば教えてください

ジョセフ:全3回のベータテストを経て、たくさんのフィードバックを頂きました。多かったのはバランスに関するもの、レジェンダリーアイテムに対するものでしたね。日本からのフィードバックで多かったものは、やはりローカライズに関するものです。

 もう少し説明が欲しい、説明が物足りないというフィードバックを受けていますので、これに関しては学びと受け取って改善していきたいと思います。本作は17の言語にローカライズされていますが、正直すべての言語でまったく同じ品質のローカライズができているとはいえません。ただ、本作はライブサービスのゲームですので、アップデートしながら良くしていきたいと思っています。

 グローバルでよくあったフィードバックとしては、難易度が高く感じたというものがありました。しかしこれは、サーバースラムで設けられていたレベル20というキャップが主な理由になっていると考えています。実際サーバースラムでは、クラスごとの特殊なシステムが解放されていない状態だったので、それを得てからが本番だと考えてください。バーバリアンなら武器のマスタリーのシステム、ネクロマンサーは死者の書というように、クラス固有の要素が解放され、ゲームプレイがさらに変化しますので、そこからクラスの本当の姿が見えてくるはずです。

 こういったビルド関連のものも、リリース時のものが最終形というわけではありません。発売後のフィードバックを参考に、もっといいものにしていきたいと考えています。

――サーバースラムで戦うことができたワールドボス・アシャバは、1度の攻撃で複数のキャラクターが倒されてしまうような段違いの強さを持っていました。ワールドボスのような存在は、集まった人数が少なくとも倒す手立てはあるのでしょうか?

ジョセフ:率直に言ってしまえば1対1でも勝てます。ただし限りなく難しいです。サーバースラムではアシャバのレベルは25、一方プレイヤーはレベル20にキープされていました。そもそもこの調整は、単純に強いアシャバと戦ってほしいという意図によるもので、発売後のゲームではこのようにはなりません。ただ、この状態でもソロで勝ったプレイヤーはいましたね。、

 実際にはアシャバはもっと高いレベルで出てくるため、このような低レベル帯で戦うことはまずありえないでしょう。そのうえで、ローンチ後は先ほど説明したクラスごとのシステムやスキルが解放されている状態で戦いますから、プレイヤー側ももっと準備された状態で戦うことになると思います。人数についても、ローンチ後にはプレイヤー人口もかなり増えますので、そこまで少ない人数で挑む状況はまずないだろうと考えています。

ロッド:サーバースラムで私は丸一日アシャバと戦い続けていましたが、8人のパーティでチャレンジして、それでも難しく感じましたね。実際、これが我々が想定しているワールドボスとの戦闘体験になります。いつチャレンジしてもしっかりと手ごたえのある戦いになるということはもちろん、しっかりビルドを考えて、アイテムを揃えてから挑戦するという楽しみかたが、ワールドボスに設定しているゲームプレイとなっています。

――最後に、日本のプレイヤーにメッセージをお願いします

ジョセフ:『ディアブロ』というタイトルは、日本のプレイヤーにはあまり馴染みのないフォーマットかなと思っています。ただ、ゲームの楽しさの部分には絶対的な自信を持っているので、ぜひ試してみてください。日本のプレイヤーの方々がどんな反応を示すか、楽しみにしています。

ロッド:ナンバリングタイトルの4作目となっていますが、シリーズが初めての人でも本当に入りやすいように作りました。なので怖がらず遊んでみていただければと思います。日本のRPGファンたちが、このダークファンタジーの世界にどんな感想を抱くのか、はやく聞いてみたいです。

©2023 Blizzard Entertainment, Inc.

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